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【デザート】

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rozen-yuri

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【デザート】

「……まだ食べるの?」
「ええ」

雪華綺晶の食欲にはいつも驚かされる。
まさにその胃袋はブラックホール。彼女が満腹になることなどあるのだろうか、と思うほどに。

「お前の胃袋はどんなってんですか……」

キッチンから翠星石の、呆れたように呟いた声が聞こえる。
そもそも彼女を我が家の食卓に招いたのは翠星石。だから当然料理をするのは翠星石。
キッチンは戦場のように翠星石が慌しく歩き回って、休む暇もなく料理を作り続けている。
僕も手伝おうとはしたけど「てめえはあいつのペースを落とす努力をするですぅ!」と一蹴された。
二人に使うには少々広すぎたテーブルも、彼女の手にかかれば一斉に皿に埋め尽くされる。
翠星石のいうことに頷けた。適度に話しかければ、そのときだけは雪華綺晶の手が止まるからだ。

「彼女を家庭の晩御飯に誘わないほうがいいわよ」

水銀燈の声が頭に響き渡る。今日帰るとき、翠星石と一緒に言われた。
全く、そのとおりだった。

「お姉さまは食べないのですか?」
「いや……もうお腹いっぱいだから」

全く食べていないけれど。彼女の食べっぷりを見たら、すぐに箸を置いてしまった。
彼女の食べ方はとても綺麗だけど。彼女の胃袋が今戦場になってると思うと、とても食べられなかった。
雪華綺晶がちょうどテーブルにある料理を食べきる頃に、翠星石が両手にのった料理をテーブルに置く。
その顔には疲労が溜まっていた。

「もうそろそろ、腹も一杯になったですか?」
「そうですわね……、でも何とか食べられますわ」

翠星石に安堵の色が浮かぶ。僕もホッとした。
彼女に使った食料は恐らく僕達が、一週間生活できただろうの分。
数分して、翠星石の作った料理が完全に彼女の胃袋に収まった。
何故か水銀橙の言葉が次々と一言ずつよみがえった。

「彼女はとりあえず満腹になるまで食わせなさい。さもなければ」

「ご馳走になりましたわ。」
「全くですう」
「さて、デザートなんてございますか?」
「は?」

僕は聞かないことにして、ゆっくりと席を立つとすぐ近くにあるソファーに座った。
テレビはつけないで、ただぐったりとソファーに体を預ける。
この場は翠星石に任せようと思う。

「この期に及んでまだ食う気ですか!?」
「あら、デザートは別腹といいますわよ?」
「んな訳あるわけねえです! デザート用の食材なんてねえです!」

翠星石の怒号が響く。
ああ、近所迷惑だろうな。ていうか雪華綺晶も遠慮っていう言葉知らないのかな?

「そこまで言うなら、蒼星石でも食ってろです!」

……はい?

「ちょっと翠星石……」

ソファから僕は抗議の声をあげる。冗談でもそんなこと言わないでほしい。
僕は翠星石に任せようとした仕返し?いや、あの翠星石が人の意図なんて察せるわけない。

「成る程。そうさせて頂きますわ」
「ええ!?」
「ちょっ、何言ってるんですか!」

君のせいだよ翠星石!
そう叫びかけて、ハッと思いとどまる。雪華綺晶は冗談が上手だ。
今回もそうに違いない。僅かに見えた希望に僕は安堵するけど。

「デザートに蒼薔薇のお姉さま……。素敵ですわ」

ソファーに歩み寄ってくる雪華綺晶。ゆっくりとソファーの前に近づいてくる。
何かその目が食べ物を見る目で、思わず身をすくめてしまった。

「きっと蒼薔薇のお姉さまは、普通のデザートよりも甘美なんでしょうね」

雪華綺晶の手が僕の肩にかかって、ゆっくりと体重をかけられる。
僕はそのとき半分パニックになっていて、成されるがままにソファに横たわる形となった。
雪華綺晶が僕の上に上乗りになると、シャツに手をかけた。

「デザートを要求されるわ」

デザートっ人だったの?ねえ?水銀燈?

「きっ雪華綺晶さん? 冗談ですよね?」

声が震える。
雪華綺晶はウットリとした目で、僕の言葉をスルーすると僕のシャツをめくりあげた。
胸の下着が見えるか、見えないかくらいまで肌が露になる。

「す…翠星石助けて……っ」

雪華綺晶の手が僕の胸に触れる。
その感触に思わず身をすくめてしまって、息が詰まった。

「雪華綺晶やめるですぅ!」

ハッとしたように翠星石が、ソファに駆け寄り雪華綺晶を引き剥がそうとする。
けれど彼女は動かない。
しばらく翠星石は頑張っていたけど、そのうち力つきるように手を離した。

「貴方達がデザートにならないことを祈ってるわ」

ごめんね水銀燈・・・・冗談だと思ってた。
僕は、涙目になりながら頭の中で水銀燈にひたすら謝っていた。

「安心してください。美味しく頂きますわ」
「うわああ! ちょっ、やめ……」
「やめるですぅ!」
「翠星石! 君は何処を触ってるんだ!」
「他人に蒼星石を奪られるくらいなら、私が先に奪るですぅ!」
「うわあぁぁぁぁぁ……」

結局僕は何故か二人に美味しく頂かれた。
次の日の朝、ボロボロの僕を見た水銀灯は、可愛そうなものを見るような目をして。

「あなたも同士ね……」

と黙って頭を撫でてくれた。
何だか無性に泣きたくなった。

end

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