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寝てるふりして

最終更新:

rozen-yuri

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だれでも歓迎! 編集

 
 
夏の薄れ始めが遠のき、日の入りも早くなって、朝と夜の冷え込みをうっすらと感じ始めた頃。


双子の姉に、「冷えるから一緒に寝てくれ」、と言われた。


…確かに夏用の肌掛けだけでは少し寒い。
もっとも、寒がりな彼女のこと。「少し」程度の話では済まないから「一緒に寝て」なんて可愛いお願いをしているのだろうけど(だって彼女にとっては死活問題だ)。

もう少し厚手のものもあったけど…あれは確か押し入れの最奥部で再び使われる日を待っているはずだ。

………。


「…じゃあ、僕の方の部屋で一緒に寝よっか。」
「本当ですか!?さすが蒼星石、ありがとですぅvvV」



がばっ、と無邪気に抱きついてきた彼女から伝わってきた温もりに触れて、やっぱり自分は本当に彼女が好きなのだと改めて実感した。


翠星石は僕に覆い被さるように早々と寝てしまった。
彼女の吐息が耳にかかってくすぐったい。


……僕、結構ドキドキしてたんだけどな。
……別にいいけど。

思えば僕が彼女に片思いしてる期間もずいぶんと長くなったものだ。

…気付いたときにはもう好きだったっけ。
もちろん「普通じゃない」恋愛だってことは自覚してる。
でも、僕はスクリーンの中で甘い言葉を囁く男優にときめいたりしないし、これから出会っていくどんな素晴らしい人でも、僕が彼女よりも愛しいと思える人はきっと現れない。

これから彼女を諦めていかなきゃならないと思うたび、言いようのない感情がチリチリと胸の中を焦がしてゆく。

主にこれを考えてしまうのは1人のとき。起きているときは大体いつも一緒だから、おやすみ、と言ってから、おはよう、と言う時間までの間に考えることだ。

これを考え始めると朝まで悶々としてしまうことも多い。
翌朝、「おはようですぅ☆」なんて爽やかな挨拶をされてしまうと複雑な心境になってしまったりもする。

「好きな人がいるなら告白しちゃえば?」と察しの良い友人に言われたりもするけど、彼女にやんわりと断られた挙げ句、気まずさが充満する2人きりの家で今まで通りの生活をするなんて無理だ。
そんなリスクの高い博打をするより、今のまま、想いが通じ合うことは無くても、彼女の一番近くに居ることが出来たなら、それで…
なんて逃げ腰な思考をしてしまうのは僕の悪い癖。

………ふぅ。

今までの二の舞になりつつあった悶々とした思考を、小さく溜め息を吐くことで断ち切る。

…翠星石は僕に覆い被さって寝てるんだし、背中に腕の1つや2つ回しても、バチは当たらないだろう。

自分にしては大胆な発想に多少驚きを感じたものの、手は既に翠星石の背中に向かってゆっくりと動き出していた。

あと少し、あと少しでこの両手を翠星石の背中に置くことが出来る…

そう思った瞬間、ガバッ!!とものすごい勢いで翠星石が上体を跳ね起こした。

「ゴメンナサイ!!」蒼星石はとっさに謝る。
「何しようとしてたですかぁ?」なんて言われたら……。
首筋がヒヤリとする。
ところが翠星石はひとしきりごしごしと目を擦ったあと、ふぁ、と欠伸をして、ウル〇ラマンよろしく片手を大きく突き上げて伸びをしたあと、ドサッと蒼星石の上に倒れ込んできた。

しかし、蒼星石には(良かった!バレてない!)
とかそういう類の安心をする暇(いとま)は無かった。

翠星石が自分の顔に「胸から」倒れ込んできたからである。
「ちょっ…翠星石!!」
焦る蒼星石を知ってか知らずか翠星石はと言えば
「ん…むぅ…」
なんて言って眉間に皺を寄せて身を捩らせるから余計に顕著に蒼星石に胸の柔らかさを感じさせていく。

マズい。非常にマズい。

しかし抜け出そうとすればするほど事態は悪化(と言う名の好転)してゆく。

今は自分の顔に添って形を変えている柔らかい丘陵の下敷きになりながら、蒼星石はあることに気付いた。

(もしかして…下着着けてない…?)


(…ということは…これは限りなく生に近い感触!?)

この夏用の薄いパジャマという一枚布の下を考えると鼻血が出そうだ。変態と呼ばれてもいい。
むしろ、もう死んでもいいやぁ…


…死んでもいい、と思った蒼星石の行動力は格段に上昇した。

先程まで、亀に大爆笑されてもおかしくないペースで動いていた腕が嘘のように素早く翠星石の背中を掻き抱き、くるりと互いの位置を転換させた。

そして、蒼星石をドギマギさせていた対象に、顔をうずめ…。

「…んっ…///」

びくんと跳ね上がった翠星石から上がった甘い声に、飛び掛けていた理性が戻ってきた。

(やっぱり、寝てる間は駄目だよね…。)

普段のモラルある思考でジャスティスな判断をしたものの、このまま寝てしまうのはなんだかもったいない。

体に残る、ほんの少し大胆になれる熱の力を借りて…。

「おやすみ、翠星石。」

愛しい彼女の唇に小さな口付けを落とした。


そしてそのまま、充足感を感じながら、心地よく微睡みの渦に飲まれていった。

健やかな寝息をたてる蒼星石の隣には、熟れすぎた林檎のように真っ赤な顔をした翠星石がいた。

(反則ですぅ…///)


‐†‐†‐†‐†‐

冷えるから、なんて理由を付けないと大好きな妹に甘えることもできなくなってしまったのか。

なんて体たらくですか、と自らを叱りつけるも、久しぶりの大イベントに感じる高揚感は否めない。

大好きで誰より大切な蒼星石。気付いたときには「好き」の気持ちはシスコンの域なんてとうに超えてしまっていた。

明日の朝にはハニーダーリンと呼び合う間柄になってたらどうしようですぅvなんて物凄い期待に胸を膨らませ(すぎ)ながら、蒼星石の上に覆い被さった。

(さて…蒼星石はどう出るですか?)

とりあえず狸寝入りでもして様子を窺ってみる。

…結構な時間が経過したにも関わらず微動だにしない蒼星石。起きてはいるらしいのだが、これでは寝ているのと大差ない。

次第に募っていく(少々理不尽な)苛立ち。

(こんなに可愛い姉が一緒の布団で寝てるんですから…何というかその…少しはモーションを起こしやがれですぅ!!)

あ、溜め息吐きやがったです。

(押しですか!?押しが足りないんですか!?)
黙っていれば背中に手が回ってきたものを、何もないままこの一大イベントが終わってしまう、という焦りが翠星石を動かした。
思いきり上体を起こす。

蒼星石が謝った気がするけど気にしない。
(姉の底力を見せてやるですよ!!)

豪快に胸から蒼星石の顔にダイブ。

(焦ってます!やっぱり蒼星石は可愛いですぅvvV)

これは朝、顔を合わせたら気まずそうに真っ赤になる激カワな蒼星石が見られるかもしれないですぅ!

(…さんざんプレスしといて何ですけど…今日、下着着けてましたっけ?)

そんなことが頭をよぎった瞬間。

いきなり蒼星石に抱き締められ、視界が反転した。

いきなり目に飛び込んできた天井。
(はれ?)
と思うや否や蒼星石が自分の胸に顔をうずめてきた。
(はいぃぃぃい!?)

しかも、蒼星石が胸の中心辺りに擦りよって来るものだから…
(///こ…声が出ちまったですぅ…///)

自らの失態を噛み締めながらも、狸寝入りは崩れない辺りに、姉のプライドを見て欲しい。

本当は目を開けて蒼星石が今どんな顔をしているのか見たい所ですが…。

薄目を開けてみようか思案していたそのとき、不意に蒼星石の声が「おやすみ」、と言って、自分の名を告げ…唇に柔らかい感触を感じた。
(…??)

一瞬何がなんだか解らなかったが、唇から柔らかい何かが離れたあとすぐに、すぅっ、と息を吸う音が聴こえたので(これは唇で、自分はキスされた)、ということに気付いた。

かぁぁぁぁぁぁっ!

ボン!と音がしそうな、さながら仮装大賞の得点ランプのような勢いで赤く染まった翠星石。

(反則ですぅ…///)




自分と蒼星石の気持ちは同じなのかもしれない、と気付いた翠星石と、万感の想いを少しだけ形に出来た蒼星石。


(きっと変化が訪れる、2人の明日に乾杯!)


…翠星石から「昨日のお返し」と言われてキスされる、蒼星石の見ている夢はどうやら明日、現実のものになりそうです。


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