気が付けば蒼星石はただ一人薄暗い部屋の中で横たわっていた。
自分は確か自分の鞄に戻って眠りに着いたはず…という事はこれは夢の世界か。
蒼星石は部屋を見渡そうと、立ち上がろうとした。
だが、それと同時に腕と足に違和感を感じて立ち上がることが出来なかった。
「あれ…何これ!?」
違和感を感じた所を見てみると、何故か荒縄で縛られていて体の自由が取れなくなっていた。
いきなりの事に何が何だか分からなくなり、蒼星石は必死になってそれから逃れようとする。
しかし、しっかりと縛られたそれが千切れる気配は無い。
水銀燈か誰かの仕業か…そう思うとますます焦りが生じてくる。
「クッ…! こうなったら庭師の鋏で…!」
解いたり引き千切るのは無理、そう判断した蒼星石は庭師の鋏を呼び出した。
鋏は床に転がり、それで縄を切ろうと這ってそれに荒縄をあてがおうとする。
これで何とか逃げられるかも知れない。
そう思った時、部屋の扉が開き明かりが差し込み、次に部屋の明かりが点いて目が一瞬眩む。
やがて目が慣れると、扉の所に立っている人影が目に入った。
ショートカットの蒼い瞳と茶色い髪をした女の子のドール…初めて見るドールだ。
そのドールは蒼星石を見つけると少し笑みを浮かべて近付いてきた。
知らないドールが現れたことに蒼星石は少し唖然としながらも、既知感を感じ凝視する。
「こんばんわ、蒼星石様」
「き…君は…?」
そう尋ねると、そのドールは笑みのまま体勢を低くし蒼星石の目を覗き込む。
蒼星石はその目の奥に何か黒いものを感じ、少しだけゾッとした。
「…分かりませんか…って、この姿で会うのは初めてですからね。あなたの人工精霊、レンピカですよ」
「レンピカ…君が…!?」
その答えに蒼星石は驚きを隠せないが、それならこの既知感も納得がいく。
「夢の中でなら、こうして会えるようになったんです」
「…そうなんだ…とりあえず、この縄を解いてくれない? 今水銀燈とかに狙われたら…!!」
とにかくレンピカが来てくれたと言う事は、自分は助かったんだと思った。
しかしそう思って発した願いは予想外の形で返された。
「…今の状況を分かってるんですか?」
静かに、だがその分不気味なレンピカの声。
同時に喉元に冷たい感触が伝わり、そこを見ると庭師の鋏が突きつけられていた。
それを持っているのは間違い無くレンピカで、その笑みは先程よりも黒くなっている。
その信じられない光景に、蒼星石は言葉を失う。
「…れ、レンピカ、何を…?」
「人にお願いする時は、よろしくお願いします、じゃないんですか?」
「な、何を言って…」
「…お願いします、は?」
更に声を低くし、目を覗き込んで突きつける鋏に力を入れる。
蒼星石は本気だと分かり、震えながらも口を開く。
「…お…お願い、します…」
「よく言えました。ご褒美に縄を解いてあげます。それに甘いジュースも差し上げましょう」
満足そうにレンピカは口を開き、ポケットから何か小瓶を取り出した。
「な、何それ…」
「さ、どうぞ蒼星石様。甘くて美味しいですよ」
「いや、いいよ! それより、この縄を…」
得体の知れない液体を飲まされてはたまらないと、蒼星石は首を振って必死に抗議する。
それがレンピカは気に入らず、表情を無くすと冷たい目で蒼星石を見下ろした。
「そうですか。では…」
「レ、レンピカ?」
レンピカは蒼星石に差し出していた小瓶に口を付けると、それを一気に口の中に含んだ。
まさか自分で飲むなんて予想していなかった為、蒼星石は呆気に取られてしまった。だが。
「んむぅっ!?」
次の瞬間、レンピカの顔が近付いてきて唇と唇が重なってきた。
そしてそのまま液体を口の中に送り込まれ、どうしようもなく蒼星石はそれを飲み込んでいく。
更に全てを飲み干すと、今度はレンピカの生温かい舌が口の中に入ってきた。
レンピカの舌は巧みに蒼星石の舌を絡め取り、歯列をなぞって口腔内を犯していく。
その舌使いに蒼星石は言い知れぬ快感を感じてしまう。
やがてレンピカが満足して口を離すと、唇と唇が銀色のアーチを結ぶ。
「蒼星石様、どうですか私の舌使いは」
「れ…レンピカ…まさか、君が全部…」
妖しい光を灯した瞳。蒼星石は全ての元凶を理解し、何故こんな事をするんだと言いたくなった。
だが、次には体中…特に下半身が熱く疼いてきてそれを言うどころではなくなってしまった。
レンピカもそれに気付き、満足そうに歪んだ笑みを浮かべる。
「そろそろ良いかな…」
レンピカは呟いて鋏を取り、腕と足を縛っている荒縄を切り落とした。
それで自由になったと思って蒼星石は逃げ出そうとしたが、全身に力が入らず立ち上がることが出来ない。
「あ…れ…?」
原因はすぐ分かった。さっき飲まされた、得体の知れない薬のせいだ。
熱っぽい潤んだ瞳でレンピカを見ると、レンピカは笑顔のまま鋏を蒼星石に向ける。
そのまま鋏を開き、蒼星石の服にあてがう。
「や…やめて…」
搾り出した願いを無視し、レンピカはそのまま一気に蒼星石の服を縦一直線に切り裂いた。
そのまま服を払いのけられ、全裸同然の格好となった蒼星石をレンピカは見下ろす。
その視線は蒼星石の秘所に向けられていて、蒼星石は恥ずかしさと服を破かれたショックで涙を流しながら目を逸らす。
「ふふふ、もう大事な所がグチュグチュでヒクヒクしてますよ。こんな状態なのに」
「…だ…誰のせいだと…」
「…何か言いましたか?」
膝を着いて蒼星石の顔を覗きこみ、乳首を乱暴に抓る。
まるで電流が流れたような強い刺激が体を走り、蒼星石の顔が苦痛に歪む。
「ああっ!!」
「涎をこんなにいやらしく垂らして…誇り高き薔薇乙女が聞いて呆れますね」
乳首を抓っていた手を離し、そのまま体の上をレンピカの指が触れるか触れないかの絶妙な加減で滑っていく。
そのもどかしい感触に、蒼星石は体をくねらせる。
「ううっくぅ…!」
指は更に下の方へと行き、いよいよ下半身の方へと到達した。
それで秘所に指が行くと思われたが、それは秘所を過ぎ内股の部分をそっと撫で回すだけだ。
予想していた所に何もしてもらえず、焦らされて辛い蒼星石をレンピカは楽しそうに眺めていた。
「どうしました? 辛そうですね」
「そ、そんな事…!」
体の方は快感を求めているが、頭では抵抗しなければと必死に正気を保ってレンピカを睨む。
その蒼星石をレンピカは甘美に酔いしれるように眺めていた。
「どうして欲しいですか? 今なら素直に言えばしてあげますよ?」
「な、何を…!」
「あと十秒以内なら聞いてあげますよ。まあずっとこのまま楽しみたいならお好きにどうぞ」
レンピカはそう言うと手を離し、十からカウントし始めた。
蒼星石はそれを聞いて、欲望と理性がより強く頭の中で渦を巻きはじめた。
快楽を求める体をこのまま放っておくか、それとも言う事を聞いて果てない快楽へ身を委ねるか…。
「…ごーぉ、よーん、さーん…」
そうしている間にも時間は減っていく。そしてカウントが切れそうになったとき、ついに蒼星石の理性が崩壊した。
「いーち、ぜ…」
「…て…くだ…い…」
「え? もっとはっきり」
「…犯してください…!」
「もっとはっきり言ってください」
「犯してください!! 僕の、僕の大事な所を弄くってください!!」
全てを投げ捨てた悲痛な叫びを聞いて、レンピカはより嬉しそうに蒼星石へ近付いて行く。
蒼星石の顔はもういつもの凛々しい顔ではなく、快楽のみを求める哀れな表情だ。
「よく言えました。それじゃあ、お望みどおり…」
レンピカはそう言うと蒼星石の秘所へと指を伸ばすと、そのまま一気に指二本を中へと差し入れた。
そのまま乱暴に掻き回し、中で暴れまわる二本の快楽が蒼星石を体の芯から感じさせる。
「あああっ、うあぁっ!!」
「可愛いですよ、蒼星石様。もっと感じちゃってください」
指を動かすたびに淫らな水音が響き、それが蒼星石の羞恥心を、レンピカのサディスティックな感情を煽る。
蒼星石も自ら腰を振り、快感を感じ取ろうと必死になっていた。
やがて蒼星石の視界が白くなってきて、腰に何かが集まってくる感覚がしてきた。
「はあっ、やあ…!!」
「イキたいですか?」
そこで手を止め蒼星石の顔を見るレンピカ。その顔を蒼星石は惚けた表情で見つめる。
「い、イキたい…イカせて…」
「じゃあ誓ってください。あなたが私の僕になると」
「っ…!!」
まさか自分の僕である人口精霊からそんな事を言われるなんて。
だが、既に快楽を求めるしか頭に無い蒼星石は何も考えず首を何度も縦に振った。
「分かりました…! 誓います…!」
「その言質、確かに受け取りました。では、イってください」
指を動かし、再び蒼星石に快楽を与えてくる。
元々限界が近かった蒼星石にはそれだけでかなりの刺激となって襲い掛かり、一気に絶頂へと駆け上る。
「ああっ、あ…うあああぁぁ!!」
体が仰け反って視界が一気に真っ白になり、蒼星石の秘所から愛液が噴き出した。
レンピカの指がギュウッと締め付けられ、やがてそれが弱まると蒼星石はぐったりと倒れこみ、指を秘所から引き抜いた。
それを舐め、蒼星石に顔を近付けて目を覗き込むレンピカ。
「はあ…はあ…」
「可愛かったですよ蒼星石様…。それでは、さっきの約束を果たしてもらいますね」
「約束…?」
レンピカは未だ呆けている蒼星石にそっと口付けると立ち上がった。
すると、蒼星石は体にさっきとは違う異変を感じて自分の腕を見た。
それを見て、蒼星石の表情が一瞬にして恐怖に染まる。
「うっ、腕が…!!」
腕が青く輝き、塵のように消えていっている。
更に首だけ起こして全身を見ると、両足両腕が同じように消えていっているではないか。
訳が分からずパニックを起こした蒼星石を、レンピカは歪んだ笑みを浮かべて見下ろす。
「誓いましたよね? 私の僕になるって…つまり、私がドールになりあなたが私の人工精霊になるということですよ」
「そんな、僕が人工精霊に…!?」
「これからは私の為に働いてください、蒼星石様。…いえ、蒼星石」
「い、嫌だ!! 誰か助けて!!」
消えていく体を見ながら、必死に助けを呼ぶが誰も来るはずが無い。
そうしている間にも体は消えていき、残るは首だけとなってしまった。
「翠星石助けて!! 助け…すい…せ…せ…」
そこで蒼星石の意識は完全に消え、後にはレンピカだけが残された。
―※―※―※―※―
「蒼星石ー。そろそろ起きるですよー」
先に鞄から起き出した翠星石が蒼星石の鞄に声を掛ける。
いつもなら先に起き出しているはずなのに今日は起きていない。それが不思議で、翠星石は首を傾げた。
「…起きないなら先にご飯食べてるですよ」
そう言い、翠星石は背を向けて部屋を出て行こうとした。
だがその時、後ろで鞄が開く音がして振り返った。
「やっと起きたですか。寝坊なんて珍しいです…ね…」
蒼星石かと思って声を掛けたが、そこにいたのは見たことも無いドール。
翠星石は呆気に取られ、そのドールは翠星石に笑みを浮かべた。
「おはようございます、翠星石」
「だ、誰ですかおめーは!? おめーなんて見たことねーです! 大体、それは蒼星石の鞄ですぅ!」
「蒼星石…ああ、元マスターのことですね」
「…元マスター?」
意味不明なことを言うドールに翠星石は訝しげに感じた。
「元マスターってどういう事ですか! 蒼星石はどこですぅ!!」
「蒼星石なら…こちらですけど?」
ドールがそう言うと、その後ろから青く輝く人工精霊が現れた。
それは翠星石を見つけると一直線に飛んで来て、何かを訴えるように翠星石の回りを漂い始めた。
「…こちらが蒼星石って…そんな、まさかおめーは!?」
人工精霊の動きとドールの発言で全て理解し、ドールを見ると庭師の鋏を翠星石に向けて立っていた。
暗く歪んだ笑みを浮かべ、翠星石の目をじっと見据えて口を開く。
「…さあ、アリスゲームを始めましょう。腑抜けた元マスターに代わって…」
終わり