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『秋とあの子とお買い物』

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rozen-yuri

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『秋とあの子とお買い物』

 秋のカラっとした陽射しが降り注ぐ、すっきりとしたある日の事。とある家からの一つの人影が現れた。

「じゃあ、行こっか」

 蒼い瞳に、ダークブラウンの髪を後ろでまとめ、ジャケットにジーンズという格好の女性が、後ろを振り向き誘うように手を差し出した。その様子はお嬢様に付き添う執事のようだった。

「うん。……あと、からかうの禁止!」

 ジャケットの女性の後を付いていく形で現れたのは、緋翠のオッドアイに栗色のショートカット。ワンピースに上着、七分ズボンとどこか秋らしい格好の女性。
 ほんのり頬を赤く染めて、ジャケットの女性を睨んだ。

「ふふ、だって楽しいんだもの。蒼星石いじるの」
「人の事いじって楽しまないでよ……レンピカっ」

 二人は従兄弟同士だった。レンピカが英名なのは、レンピカの母親がハーフで彼女はクォーターだからだ。
 クォーターと言っても外国人っぽさといえば、外見が普通より大人っぽい事だけ。日本語はペラペラだし、和食も大好きである。(納豆は苦手らしいが)
 普段は外国に住む彼女だが、今日は遊びに来たのだった。

「ほらほら、早く洋服買いに行こう」
「誤魔化さないでよ!」

 ちょっとしたじゃれあいをしながら、二人はデパートへ向かった。
 本日の目標は、洋服を買う事である。

「…い、いっぱいあるなぁ……」
「どれが似合うかな?」

 あまりお洒落というものに縁遠い蒼星石は、服の多さにあたふたしていた。ちなみに毎回翠星石と来る時もこんな様子である。
 そんな蒼星石をよそに、レンピカは手慣れた様子で服を選んでいた。

「…んー……これ、とか?」
「す、スカート短過ぎだよ…!」
「じゃあ…これは?」
「は、派手なのはちょっと……」
「どんなのが良いの…?」
「う…わ、分かんない……どれも…僕なんかには似合わないもん……」

 レンピカはまたか、と心の中で小さく溜め息をついた。自分に自信が無さすぎる蒼星石は、たまにネガティブモードに入るのだ。
 どう慰めようか考えていると、ふ、ととある服が視線に入った。落ち着いた色の膝下までのワンピースに、濃い色の上着。

「……これだ」

 近くの店員を呼び、試着をお願いした。店員が了承すると、ネガティブモードになっている蒼星石に服を渡した。

「ほら、ネガティブになってないでこれに着替えてきて」
「え…?ちょ、ちょっと…レンピカ!?」
「お着替え、お手伝い致しまーす!」

 何故かハイテンションの店員に引っ張られ、蒼星石は試着室へずるずると連れて行かれた。

 五分後。漸くカーテンが開いた。

「……うん、やっぱり似合ってるね」

 レンピカは納得したように頷いた。

「…え、えっと…これは……」
「すみません、これ下さい」
「ありがとうございます」
「ちょ…!レンピカ!?」

 既に財布を取り出し、交渉を済ませている従兄弟に蒼星石はただ呆然とし、そして溜め息を吐いた。

「…ひょっとして、彼氏さんですかー?」

 蒼星石の後ろにいたハイテンションの店員は、耳元で囁いた。

「かっ…!?ち、違いますよ!あの子は女の子だし……」
「あら、そうだったんですかー。それにしてもかっこいい人ですねぇ」
「……………」

 店員の声は聞こえていなかった。ぼそ、と誰にも聞こえないような小さい声で呟いた。

「……恋人、か……」

―――――

 デパートから出ると、近くの公園をぶらぶらと散歩していた。

「タグは切ったから、そのままその服着てて良いよ」
「うん………って、こ、このままでいるの!?」
「可愛いから良いじゃない。似合ってるんだし」
「…うー……」

 蒼星石が着ていた服はレンピカの手にあり、着替えは不可能だった。
 恥ずかしそうな顔をしながら、自分の着ている服を見つめる。

「……本当に、似合ってる?」
「勿論だよ」
「………あ、ありがと……」

 顔が赤いのを隠すように、俯いた。そんな蒼星石を見て、レンピカはくすり、と笑った。
 その後、レンピカが訪れた時だけ、蒼星石はこのワンピースを着ていたとか。


end 
 

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