アットウィキロゴ
ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

ローゼンメイデン百合スレまとめ@ウィキ

「蝶は花の虜、花を咲かすは蝶」

最終更新:

rozen-yuri

- view
だれでも歓迎! 編集

 
 
「蝶は花の虜、花を咲かすは蝶」


―蝶は花の美しさと甘い香りに誘われる。
蜜を求め、求めるうちにやがてはその花の虜になる―…。



「ん…」

ふわりと何かの香りが鼻をくすぐった。
ゆっくりと瞼を開くとぼやけた視界に映るのは天井。のろのろと上半身をベッドから起こす。

(…ああ、そういえば帰ってすぐにベッドに横になったんだっけ…)

休日だが朝から練習がある部活に入っているため家に帰宅するのは大体3時頃。
今日は大して特別なことをした訳ではなかったのだが、身体は疲れていたらしく、帰宅してからすぐにベッドに横になったのだ。
眠るつもりはなかったのだが案の定眠っていたらしい。
窓から射し込む茜色の光がもう夕方だということを物語っている。

「…思ってたより寝過ごしたな…」

それほど疲れていたのだろうか。自覚はなかったのだが身体がすっきりしたような気がする。
まあ、たまにはいいか。ここの所ずっと部活三昧だったし、翠星石とも…

「…翠星石?翠星石は…?」

片割れの名前が頭に浮かび、僕はベッドから降りる。
そういえば帰宅してからただいまと声はかけた覚えはあるけれど、曖昧だ。
部屋のドアを開け、廊下に出る。

いつもならばこの時間帯、リビングの台所から音がするはずだ。それは彼女が夕飯の支度をしているという僕の中での合図になっている。けれど、それも全く聞こえない。
足を進め、彼女の部屋の前に着くと立ち止まり、ドアを軽くノックして声をかける。

「翠星石、いる?」
「いますよ。どうぞですぅ」

声をかけるとドアの向こうから返事が返って来た。
ドアノブを握り、ドアを開けたその瞬間、

( !? …この香り)

甘い香りが鼻を擽った。…この香り、さっきの香りと同じだ…!
眠りから覚める前に、微かに鼻を擽った香り。
けれど今は微かではなく、はっきりと甘いとわかる。
一体何の…

「蒼星石、起きたのですか」
「え?ああ…うん。
眠るつもりはなかったんだけど」

名前を呼ばれて視線を移せば目の前にはにっこりと微笑む翠星石の顔。
手には如雨露を持っており、彼女の周りあるのは色とりどりの花。
どうやら水やりの途中だったらしい。
ああ、だから台所にいなかったのか。
翠星石の部屋の棚には鉢植えの花がたくさんあり、色々な花が咲いている。もちろんベランダにも。
本来は広い庭などで育てるべきなのだろうけれどここはマンションが故、それは叶わない。

僕の部屋にも翠星石には劣るけれど観葉植物の鉢や花の鉢がある。けれど、やっぱり翠星石の部屋はいつ見てもすごいと思う。

「もう少し眠っていれば良かったですのに…」
「え?」
「…だって、最近蒼星石はずっと部活で忙しいじゃないですか。たまには休まないとぶっ倒れるですよ」

そう言う彼女の眉は心配そうに寄っている。

「…心配かけてごめん。でも平気だよ。
少し眠ったからすっきりしたんだ」
「そうですか?ん~…まあ、顔色はよくなってるみたいですね。
でも、無理は駄目ですからね?」

腰に手を当てて僕の顔を覗き込んでくる翠星石に頷くと再び彼女は微笑んだ。

「相変わらず君の部屋は花が美しく咲いているね」
「当たり前ですよぉ。
花を愛する者として毎日の水やりは欠かせませんもの」

翠星石は得意げにそう言うと水やりの作業を再開する。彼女が花に向ける眼差しは優しい。
僕に対しても優しいけれど、それとはまた少し違うもの。
何と言えば言いのか。
慈しむような…上手く言えないが、とにかく本当に花を大切にしている。翠星石自身、花のようだとも思う。彼女が側にいるだけで、笑顔を見せてくれるだけで、心が安らぐから。
言うなれば一際美しい花。

彼女の周りの花たちが、彼女の美しさをより引き立てているようにさえ見える。
暫しの間、花に水やりをする翠星石に見とれていたが、あることを思い出した。そう、先程から気になっていたこと。

「翠星石、さっきから気になってたことがあるんだけど」
「なんですか?」
「…甘い香りがするんだ。僕が寝ていた時、微かにしたんだけど…君の部屋に入ってからはっきりと甘いってわかる」

強いけれど甘い香り。
知っている香りのはずなんだけど…思い出せない。

「何の香りか知っているかい?」
「甘い香り…?
ああ、それなら多分これですね」

心当たりがあるらしく、ポンと手を叩きベランダの方へ向かい、カーテンを開ける。外はもう、日が暮れて空は紫がかっている。
ベランダにあったのは鉢植えの山吹色の花。
小さな花が一つに纏まって咲いている。窓を開けると香りが一層強くなった。

「これ…!」
「いい香りでしょう?
「金木犀」ですよ」

そうだ、この香り…金木犀だ。

「そうか…もう金木犀の咲く時期なんだ…」
「ですぅ。秋ですから」
そう言って彼女は恍惚とした表情で金木犀を眺める。

「綺麗だね、金木犀。すごくいい香り」
「ええ、金木犀の香り…大好きですぅ」

今だに金木犀を眺めている彼女の背後に近づき声をかけると、翠星石はこちらを振り向いた。
…瞬間、風が吹き抜け、金木犀の山吹色の花が舞い散り、それと共にふわりと彼女の長い栗色の髪が靡いた。
それは、夕暮れの空を背景によく映える。
―…美しい。

一瞬の出来事なのだが、映画のワンシーンのようにゆっくりと、一つ一つの瞬間が鮮明に見えた。時間が止まったかのように、目の前の彼女から目を逸らせずにいた。

「蒼星石?」

怪訝そうに僕を見る翠星石に名を呼ばれ、我に返る。

「どうしました?ぼーっとして…?」
「………」
「蒼星石?どこか具合でも…ひゃ!?」

心配してくれる彼女にすぐに答えることはしなかった。
…否、出来なかった。無意識に身体が動いて彼女を抱きしめていたから。彼女の髪からも、仄かに金木犀の香りがする。
抱きしめながら柔らかい髪を指に絡める。

「そっ蒼星石?」
「翠星石…君は…美しいね」
「へ!?なにを突然…」
翠星石が顔を真っ赤にしている様子が手に取るようにわかる。
正直、自分でも何を言っているのかと問い掛けたい。こんな恥ずかしい台詞…けれど本心だ。

再び吹き抜けた風が、金木犀の強い香りと鉢植えの花の香りを運び、部屋中を満たす。
ああ、甘い香りに頭がぼーっとする…。
なんだかふわふわした気分だ。
夢見心地な気分に浸っていると、腕の中の翠星石に名前を呼ばれた。

「…ねえ蒼星石…」
「ん…?なんだい、翠星石?」
「こうして…貴方にぎゅうって抱きしめてもらうの…久しぶりですね」
「あ…」

そうだ…ずっと部活で忙しかったせいでこうして触れ合うことも最近なかった。

「…寂しかった?」
「べっ…別に寂しくなんか…なかったですけどぉ…少しだけ、ですぅ」
「…ごめん。寂しい思いさせて」
「いいですよ…。ただ…もっとこうして…たいですぅ…」

恥じらいを装いながらも求めるようにこちらを見つめる瞳。鼓動が高鳴る。
…吸い寄せられるように、蝶は花に誘われた。


―*―*―*―*―*―

「やっ…あっ…」

薄暗い部屋の中、静まり反った部屋に響くのはベッドの軋む音と、乱れた呼吸、そして彼女の甘い声。首筋に口づけながら、彼女の胸や秘部に指を這わせる。

「翠星石…可愛いよ…」「そう…せ…せきぃ…やぁっ…だめぇ…そんなとこ…あんっ」

白いシーツの上に横たわる華奢な身体。

月明かりに照らされて視界がぼんやりと開ける。微かな光しか射さないけれど暗闇に慣れた目はそれにより、彼女の姿も表情も明確に捉えることが出来る。
潤んだ緋翠の瞳、闇に浮かぶ白い肌には既に赤い花びらのような痕が散らされている。触れる度に反応して喘ぐ姿も、その声も…本当に、彼女の全てが美しいと思う。

「…美しいよ、とても」「いやぁっ…んっ蒼星石…窓閉めて…あっ」

心地良い風が吹き抜けた。そう、窓は開いたまま。

「蒼星石っ…」
「…それは出来ない」
「ど…うして…?」
「閉めたら…香りがしなくなるから」

金木犀の香りが、薄れてしまう。

「お願い…ですぅっ…外に声…あっ…聞こえちゃ…」
「大丈夫…ここは37階だよ?
道を歩いてる人にも聞こえやしない。隣の人だって外出してたはずだよ」「でっでも…やっぱり恥ずかしい…ですぅ…」
「…ねぇ翠星石。金木犀の花言葉、知ってる?」「金木犀の…花言葉…?真実…とか初恋…とか…」
「そう。そしてもう一つ…『陶酔』だよ」

ただでさえ、この部屋には鉢植えの花がたくさんあり、芳しい香りを放っている。それに加えて金木犀という独特の強い香りを放つ花がある。

甘い香り、熱を帯びていてる身体…目眩を覚えてしまいそう。
けれど、この目眩を覚えるような感覚がなんとも心地良く感じる。
そう、酔いしれている。金木犀の花言葉にあるように。

「…翠星石…僕は金木犀の香りに抱かれながら君に酔いしれていたい。
だから…君も快楽に酔いしれて…?」
「…あっ…蒼星石っ」

何も気にしなくていい。ただ、僕は君に酔いしれている。
だから、君も僕を感じて。
もっと名前を呼んで、もっと僕を求めて。
その声で、その瞳で僕だけを…。

「そう…せいせき…っ」「好き…だよ…っ翠星石」

どんなに君を抱いても飽きることはない。
飽きるどころか益々、君を求めている。
…まるで花の蜜を幾度となく求める蝶のように。
「好きだ…っ愛してる…」
「んっ…翠…星石も…ですっ…あぁぁああ…っ!んぅっ…」

深く口づけて、指を絡め、繋がる。

…僕は君に酔いしれる。酔いしれるということが何を意味するか知っているかい?
その意味は、「虜」だ。求めずにはいられなくなる。愛しくて君しか考えられなくなる。
僕はもう、君の虜だ。
君に誘われて、酔いしれていく。逃れる術はないだろう。
君は蝶を虜にした。
…だから、今度は僕の番。

君を今まで以上に美しく咲かせてあげる。
もっと乱れさせてあげる。
花は、咲き乱れてこそ美しい。

「…そうだろう?翠星石」
「そ…せ…せき…」



―君は花、僕は蝶。
蝶は甘い香りに誘われ、酔いしれて花の虜。
花は蝶に愛し愛されて咲き乱れる―。


END

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー