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貴女しか見えない

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rozen-yuri

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だれでも歓迎! 編集

 
 
蒼星石。
もう隣に居ない大好きだった人。
蒼星石が居なくなってから、何度も何度も蒼星石と一緒にいる夢をみた。
鞄のなかで気づいたら頬を濡らしていることも、少なくは無い。
もう、蒼星石は居ないから。
そう思うと私の心にポッカリと穴が空いた気分がした。

――君は一人で歩ける強さを持っている

蒼星石の言葉が時々頭に響く。
そのたびに私は否定するように頭を横に振った。
貴女が居なくては私は歩けない。今まで歩いていたのは貴女が居たから。
過去に戻りたい。会いたい。触れたい。
最近は以前に増して強く思うようになった。
蒼星石の夢を真紅と一緒に見たときから、私の中でなにかが壊れ始めていたのかもしれない。

「月が綺麗ですね水銀燈」
「どういうつもり?」

今、蒼星石の魂は姉、水銀燈が持っている。
蒼星石が彼女に奪われてからしばらくたって、私は深夜によくnのフィールドを出入りするようになった。
それは蒼星石がいるんじゃないかという、僅かな期待から。
今夜は満月のようで、暗い闇に月が映える。
蒼星石と一緒に見た満月を思い出して、少し悲しくなった。

「蒼星石に会いに来たんです」

如雨露を持って私は呟く。
少し戸惑いの表情を見せていた水銀燈の顔が、驚きに変わる。

「私から奪おうっていうの?」

水銀燈の翼が大きく広がって、私を威嚇するように黒い羽が舞った。
奪う。
それは私が嫌う行為だったのに。これから自分がそれをしようとしているのに。
自己嫌悪というものが全く起きなかった。

「あなたに恨まれる筋合いはないわ。だって私はそのために生まれたんだもの」

アリスもお父様もどうでもいい。
私にって重要だったのは、蒼星石が私の隣に居るか居ないか。
だから、私にとっての姉の言葉は何の意味も示さない。

「だから私はあんたの貰ってあげる。それが罪滅ぼしって奴かしらね?」

水銀燈が唇の端を吊り上げて、僅かに笑い声をこぼした。
黒い羽が、私の周りを飛び交う。
大嫌いだった黒い羽も、今は何となく嫌いじゃなかった。

「アリスになることも、お父様も、私にとっては何の価値もないものです」

彼女の顔が驚愕に変わりかけて。
「歪んだ愛情ってやつ?」と、すぐに表情を戻した。

「勝っても負けてもいい。蒼星石に会えるならそれで」

何とでも言えばいい。
蒼星石が私のそばに居てくれるなら。
永遠に眠る事も怖くはない。

「月の魔力にやられちゃったんじゃないの? 死に急ぐことないでしょうにね」

夜空に浮かぶ満月を見上げながら、水銀燈は不適に笑って言った。
月の魔力にやられた、というのも間違ってはいないと思う。
恐ろしく心が穏やかで、これほど冷たくなったのは初めてだから。
『壊れた子』という不名誉な言葉は、今の私にこそ相応しい。
蒼星石というすべてを失ってしまった壊れた子。

「いいわぁ。始めましょ、アリスゲーム」

水銀燈を仕留めれば。
蒼星石のローザミスティカ……蒼星石は私のものになる。
心に開いた穴も全部とは言わないけど、きっと塞がってくれる。

「がんばるですよ……、蒼星石」

もしも敗れても。
きっと私は蒼星石と同じ場所に立てる気がする。
勝てば貴女は私のもの。敗れても私は貴女とまた一緒に歩むことができる。
……もうすぐ会えますよ、蒼星石
 

                  end

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