Let's go XXXX ◆FRuIDX92ew
一人の女性が風に吹かれながら佇む。
その女性の深緑の髪が、風に煽られ流れるようにたなびく。
……こうしている間にもあの魔王オディオによって開かれたこの殺し合いの場で望まぬ血は流れ、尊い命は奪われていく。
「……許せない」
自然と怒りがこみ上げてくる。それに答えるように女性、リンは拳を強く握り、奥歯と奥歯を軋ませた。
その怒りの矛先は他でもない魔王オディオ。
その絶大な力を使い、殺し合いを平気で開き、殺戮を繰り広げさせる存在。
そのオディオを倒すのは勿論の事、ここで起こりうる殺人を出来るだけ止めることも考えなければならない。
殺人の快楽に溺れているモノや私利私欲の為に殺人を犯すモノならともかく、望まない殺人を繰り広げている人間なら、何か手段はあるかもしれない。
形はどうあれ、殺人が起こりうる可能性を最小限に食い止め、一人でも多くの人間を救わねばならない。
相手は未知の力を持つ魔王、その魔王に立ち向かっていく上で一人でも多くの仲間がほしい。
「……にしても、せめて武器のひとつ位無いと対抗しようがない、か」
まず取り出したのは、一見なんの変哲も無い腕輪。
しかし、これを付けることによってほぼ確実に攻撃を食らったときに反撃をすることができるらしい。
あまり気乗りはしなかったが、彼女はそれでも着けることにした。
次に出てきたのは一本の長剣、すらっと美しい刀身が彼女の目の前に飛び込む。
「剣……か、力にはなるか――――」
止まった。言葉が、思考が、視界が、意識が。一瞬の余裕すらなかった。
何かが怪しい、おかしいと感じさせる隙すら与えずに「それ」は彼女を取り込むように精神を犯していった。
彼女が運悪く引いてしまったのは呪われた武器、皆殺しの剣。
剣から発せられる強力な殺意により、絶大な破壊の風をあたり一面に振りまく恐ろしい武器。
故にこの剣を持つものは完全に意識を攻撃することに向けるため、守備をするということは皆無に等しくなる。
何よりも恐ろしいのは、その剣から発せられる殺意に所持者が同化してしまう事だ。
「フフフ、アハハハ、ハハハハハハハハ!!」
この場にいる彼女の知り合いが一度も見たことの無いような笑い方。
口角が裂けるほど上がり、目はいわゆる濁ったドブ川のような色をしている。
今の彼女が。否、今の剣が求めるものはただ一つ。
真紅の、血。
「ねえ、誰かいない?」
「やれやれ、また面倒なことに巻き込まれたみたいね……」
ため息をつきながらメガネの少女、
ルッカはその場にしゃがみこむ。
無論、殺し合いなんてするつもりは無かったが。周りの人間が全員そうとは限らない。
誰かを殺すのもゴメンだし、誰かに殺されるのもゴメンだ。
「はぁ……どうしようかなあ」
途方に暮れながら支給のデイバッグを漁る。
真っ先に出てきた名簿は大体を読み飛ばし、最後のほうにあった知り合いの名前で目が止まる。
クロノ、カエル、
エイラ、そして魔王。
「……と、いってもどこにいるのやら」
どこにいるか分からない仲間の身を案じても、何も変わらない。
残酷な現実に、ため息をつくことしかできなかった。
ふと首に手を当てる。そこにはこの殺し合いに参加させられているという証に等しい金属の感触がある。
叶う事ならこれを研究したいが、下手に弄繰り回せば自分の命が危ない。
「サイエンスの行き着いた先でもこれはちょっと苦労しそうね……」
この数分間で何回目かすら分からないため息を漏らす。
自棄になってもう一度デイバッグの中に手をいれ、八つ当たりするように中身を掻きだす。
中から出てきたのは、見たことも無い物質。見たことも無いボウガンのようなもの、そして電子回路の部品。
それらを目にした瞬間彼女の目の色が見る見る変わっていく。
発明家の娘である彼女が、黙っているわけが無いラインナップ。すぐさま三つとも手に取り、仕組みを究明し始めた。
「さて……まずは、これから」
真っ先にルッカが手をとったのは見たことも無い物質。
付属の紙によるとどうやら爆弾らしく、火薬や原材料はまったくもって不明だが爆発の余波を別の次元に送り込むことができるらしい。
つまり、至近距離にいても自分は爆風の被害にあわない爆弾だということだ。
「次元転移か……次元連結だのなんだのの本があったわね。あれの応用?」
ますます興味が沸き構造を理解するために分解しようと思ったが、分解しようにも分解することができないのでとりあえずポケットに入れた。
「……次はこれね」
かつてロボを修理したときにもこんな部品は見当たらなかった。
付属の紙にも「HUMANISM」と書いてあるだけで何の部品かはさっぱり分からない。
「ロボに組み込んだらなんだかすっごく強くなりそうよね……根拠はないけど」
ただなんだか、ルッカは無限の可能性をその部品からは感じることができた。
これもどうしようもないのでとりあえずポケットに入れた。
最後に手に取ったのは見たことも無いボウガン。
大まかに見回してみると、どうやら自動で矢を射出する装置らしい。
言うなれば「オートボウガン」と言った所だろうか。
引き金から動作部、銃で言う弾倉部にさまざまなところにまで精密な技巧が施されている。
「ふむふむ……ここが、こーなって。あー、はいはい。それで……はっはぁ、よく出来てるわねー」
未知の文明の産物を前にしても、ルッカは研究心をむき出しにして立ち向かっていく。
「でも……ここはこうしたほうが良いんじゃないかな、その方が伝導率の問題でスムーズに射出できると思うし。
それに、まだまだ軽量化も出来そうよね。あー、基本的な工具でもいいから落ちてないかな……ん?」
改造したい欲に体を疼かせながら、オートボウガンに刻まれた一つの名前を見つける。
フィガロ、その名前を見るや否やルッカはデイバッグの方へと振り向いた。
そう、まさに振り向いたその瞬間。
一本の剣が彼女の頭上に振り下ろされんとしていたのだ。
ルッカは幸運だったかもしれない。
あまり知られていない事実だがオートボウガンはなぜだかとても丈夫である。
精密な機械ということもあるのだが、素材が頑丈なのか、その理由は不明だがとても頑丈に出来ている。
頭や体、とにかく防具の代わりにすれば打撃に関しては無敵になれる、そこまで言い張れるほどだった。
実際、そんな酔狂なマネをするのは国王はおろかフィガロ兵の中にも一人もいなかったわけだが。
そんなことも知らずにルッカは反射的にオートボウガンで剣をはじこうとした。
結果、剣が生み出した破壊の余波を少し抑えるほど攻撃の無力化に成功したのだ。
そのままルッカはバックステップで間合いを離そうとするが、相手は尋常じゃない速度でその間合いを詰めてくる。
「ったく、面倒なもん付けてるわね!」
慣れない打撃をすれば、腕に付けているあの腕輪の効果で反撃を食らってしまう。
下手に打撃に回るよりかは、魔法を使ったほうがまだいいかもしれない。
あまり気乗りはしないが、彼女はオートボウガンを上手く使いギリギリで斬撃を避けながら魔法を唱える。
「……ファイガ!」
薄暗い森林に、大きめの火球が落ちる。その火球は火柱を立て、あたりの木々を飲み込んでいく。
このとき、何故かルッカはわざと襲撃者を外していた。その理由は後に判ることになる。
火柱に飲み込まれた木が音を立てて倒れこんでくる、道を塞がれた襲撃者も流石に怯んだ様だ。
このチャンスを物にするためにルッカは全速力で走る。後ろを振り向かずにただひたすらに。
「くっ……魔法か、面倒ね」
リンは驚いていた、目の前の少女が魔道書もなしに魔法を放ったことに。
爆発に多少怯んだものの、少女が逃げていく際に立てた大きな足音を頼りに足を進める。
彼女の頭は、はじめは無かった思考で今は埋め尽くされている。
その思考は「殺戮」。
彼女が嫌っていた山賊にも似た下卑た笑いを浮かべながら、足音の方向へ駆ける。
剣はただ、怪しく禍々しく輝くだけ。
「ふぅ、ここまで逃げれば大丈夫……かな?」
必死で逃げてきた末に見つけた橋にとりあえず逃げ込むことにしたルッカ。
万が一の最悪のケースを考えて、彼女はあえてこの場所を逃げ場所に選んだのだ。
それでも、その最悪のケースが数分で訪れようとは考えて無かったかもしれなかったが。
目線の先には襲撃者、橋の上から見るとどうやら緑の長髪の女性のようだ。
その女性は今から橋に入らんとするところであり、自分は橋の半分ぐらいの距離の場所にいる。
魔法を使うのもいいが、今考えていることをやろうとするとフレアを唱えざるを得ない。
しかし、この距離でフレアを唱えきる自信は正直ない。フレア自体には飲み込まれないが次に起こる事に巻き込まれるかもしれない。
なにしろ、自分は殺人鬼ではないのだから万が一フレアが直撃して襲撃者が死んでしまったら個人的に後味が悪い。
無力化、もしくは襲撃者側の逃亡。それがルッカの望む道。それを叶えるには……これしかない。
ルッカは一つ大きな深呼吸をし、そして左手を差し出し手首を自分の方へと反らせて手招きをした。
右手は……静かにポケットの中に。
「さあ、さっさとかかって来なさいよ! 私を斬るつもりなんでしょう?!」
その言葉と同時に、女性は一気に駆ける。
「そんなに死にたいなら、殺してあげるわ!」
剣を構えながら馬の如き速さでルッカへの距離を詰める。
しかし、当のルッカは笑っていた。まるで勝利を確信した策士のように。
「はい……ビンゴ!」
多少の惜しみとともに、ルッカは不思議な物体を投げつける。
その物体は橋と衝突し、一瞬のうちに強力な爆発を生み出す。しかし、その爆風が二人を襲うことは無かった。
しかし、そこにあったはずの橋は物の見事に消え失せていた。
「ふふん……今回はサイエンスの勝ちってところね。
理系特化をナメないでくれる?」
遠く離れた女性にルッカは完全に勝ち誇ったポーズで躍り出る。
さすがに遠くに見える女性も、この距離を飛び越すことは出来なかったのだろう。
そそくさと道筋を変更して森の中へと消えていった。
しかし、その際に悔しがるそぶりを見せずに消えていったのがルッカにとって気がかりだった。
……多少無理してでも足止めしておくべきだったのだろうか?
「……ま、そんなこと考えてもしょうがないし」
回れ右で後ろへと振り向くと、そこには大きな神殿が聳え立っていた。
神殿にはあまりいい思い出はないが、そこにいくしか道は無いのだから仕方が無い。
ルッカは目の前の神殿へと足を一歩ずつ動かす。
「魔王オディオだかなんだか知らないけど、見てなさいよ。
こんな首輪、前進し続けるサイエンスの力で絶対解除してやるわよ!」
【C-8 橋の上 一日目 深夜】
【ルッカ@
クロノ・トリガー】
[状態]:わずかながらの裂傷、疲労(中)
[装備]:オートボウガン@
ファイナルファンタジーVI、17ダイオード@
LIVE A LIVE
[道具]:なし
[思考]
基本:首輪を解除する、打倒オディオはそれから
1:とりあえず神殿に逃げ込んでみる。
2:改造、首輪解除するための工具を探す。オートボウガン改造したい。
3:どこかで首輪を探す。
4:オートボウガンに書かれていた「フィガロ」の二人を探す(マッシュ、エドガー)
5:クロノ達と合流、魔王は警戒。
6:17ダイオードの更なる研究
[備考]:
※バイツァ・ダスト@
WILD ARMS 2nd IGNITIONを使用したことにより、C-8東側の橋の一部が崩れ去りました。
※参戦時期はクリア後。 ララを救出済み。
魔法の件といい、リンはやはり驚きを隠せなかった。
まさか橋が倒壊するとは予想だにしていなかった。
「……どれぐらい斬れるのかな、これ」
そんなことをふと呟く。
しかし、次の瞬間には口が裂けそうなほどの笑みへと変わる。
人で試してみればいい、まだまだここには人がいっぱいいるんだから。
皆殺しの剣の殺意は止まらない。自身が滅ぶか、この場にいる人間を殲滅するまで。
次なる獲物を求めて彼女。否、剣は駆ける。
【C-9 橋の前 一日目 深夜】
【
リン(リンディス)@ファイアーエムブレム 烈火の剣】
[状態]:狂戦士、呪い、少し火傷
[装備]:皆殺しの剣@ドラゴンクエストIV、激怒の腕輪@クロノ・トリガー
[道具]:不明支給品(0~1)、基本支給品一式
[思考]
基本:打倒オディオ
皆殺しの剣による行動方針:見敵必殺
1:殺人を止める、静止できない場合は斬る事も辞さない。
[備考]:
※参戦時期、支援状態は不明
※皆殺しの剣の殺意に影響されています、解呪魔法をかけるか剣を何らかの手段でリンの手から離せば正気には戻ります。
※C-8で爆発音がしました。神殿内部までには届かない程度です。
※C-9の中心部にルッカの基本支給品一式入りデイバッグが放置されています。
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最終更新:2010年06月24日 19:56