『I need more power!』
(キャラ)フリーレン、バージル
白銀の髪を逆立てた、蒼い装束を纏う男。その周りを漂う半透明な青の剣。
それらが意思を持ったかのように、一人の少女の元へ殺到する。
少女もまた二つに結んだ銀の髪を揺らし、冷淡な眼光を放ちながら両手に握った杖を一振りした。
魔法陣が広がり、魔力の光が蓄えられ放出される。
無数の光芒と剣が入り乱れ交差し、光芒が剣を砕いた。
パリンッ!という乾いたガラスが割れたような音を立てて、半透明な剣は破片を拡散させ、地に落ちる前に消失した。
「フン」
男は怪訝そうに眉を顰める。
自身の操る、半透明の剣の強度に疑問を抱いているようだった。
しかし、すぐさま鼻で笑い、男は興味を消した。
片足を後方に引き、腰を落とす。
剣を砕いた光芒の五月雨を前に、男は一瞬にして姿を消す。
音もなく、青い残影を残して、少女の眼前に男は居た。
左手に握る刀は鞘に納められており、右の手は柄に触れている。
鞘と刀が擦れる金属音が少女の耳朶を打ち鳴らす。
少女の胸の前に拡がる魔法陣へ、男の冷徹な斬撃が浴びせられた。
魔法陣を斬り裂き、胸に刃が触れる寸前に少女は後ろへ飛び退いた。
服が裂け、皮膚に冷たい鉄の塊が切り込み、肉が断裂する。
血飛沫をあげながら、少女──葬送のフリーレンは舌打ちをした。
(最悪だ────前衛なしで、こんなのと戦うなんて)
自らの血に塗れた美貌は、体を切り刻まれながらも無表情そのものだった。
だがその眼光だけは鋭い刃物のように、バージルと名乗った剣士を睨みつける。
『貴様も参加者か』
フリーレンの世界にはない、ビルという建造物。
その屋上で月明かりと夜風を浴びていたフリーレンは、森口という女の言っていた『命の授業』とやらに思いを馳せていた。
巻き込まれた望まない殺し合いを、さてどう出し抜き脱出しようか。
そう考えていた時に、バージルは声を掛けてきたのだ。
『俺はバージル」
『……フリーレン』
『そうか、俺は殺し合いに乗っている』
この時、咄嗟に身構えたのが失敗だった。
バージルはフリーレンを試していた。
武器をチラつかせ、殺意を浴びせ、自らが殺戮者だと名乗り。
目の前の少女がただ怯えるだけの弱者か、自らの身を守るために剣を手に取れる強者か。
後者と判断したバージルの目の色が変わった。
──しまった。試された。
ぐらりと傾く体幹。
フリーレンが体のバランスを崩し、後方へ三歩下がる。
バージルは刀の切先を向け、滑るようにしてフリーレンへと肉薄する。
フリーレンの体が穿たれる寸前、バージルの目が大きく見開かれる。
透明な力の磁場が発生し、フリーレンを中心に一帯が軋み、吹き飛んだ。
屋上を囲う作が、バラバラになって吹き飛ぶ。
足場になっていたアスファルトが舞い上がり、パラパラと雨のように降り注ぐ。
魔力感知すらさせない、不可視の衝撃波。
一級魔法使いすら、魔法による攻撃と認識できず何もできないまま磔にされてしまう。
「つまらん」
背後から、冷たい声がした。
フリーレンにとって奥の手ともいえる、魔法と認識できない攻撃。
だが、一度放てばフリーレンに隙が生じてしまうという弱点が存在する。
つまりかわされてしまえば、打つ手がない。
鮮血が舞う。
フリーレンは前のめりに吹き飛ばされ、背には大きく裂かれた切り傷が刻まれていた。
バージルは血を払い、刀を鞘へと収める。
その次の瞬間、フリーレンを半透明な剣が八本覆い尽くす。
合図もなくその全てが中心にいるフリーレンへと殺到した。
膝をつくフリーレンは顔を俯かせたまま、全方位に魔法陣を展開する。
ガキィン!! という強化ガラスを叩くような硬質な音が、夜の屋上に響き渡る。
魔法陣が罅割れ砕ける寸前、フリーレンは無数の光芒を撃ち放ち、障壁を食い破る半透明の剣を光芒が打ち砕いた。
「その光線……一体何だ」
「一般攻撃魔法だよ。知らないの? ああ、異世界から参加者を集めたんだっけ。
じゃあ、ゾルトラークも知らないか」
バージルの意識は、その一点に向けられていた。
自身の魔力から生み出した半透明の剣──幻影剣。
それを容易く撃ち砕いた、あの光の砲撃。
──ゾルトラーク。
一目見た瞬間に理解していた。
少なくとも、今の自分では斬れない。
肩で息をするフリーレンを見下ろしながら、バージルは静かに思考を巡らせる。
これほどの魔法が“一般攻撃魔法”として普及している世界。
ならば、その世界の戦士たちは、自ずと戦い方そのものを変えざるを得ないだろう。
興味深い。
当たりさえすれば、防御すら許さず命を奪う。
必殺の一撃を前提として構築された、その戦闘体系が。
「私からも一ついいかな」
流れる血を意に介さず、フリーレンもまた口を開いた。
「私は戦士じゃないけど、君は強いね。その強さを手に入れるのに血の滲む努力をしたと思うんだけれど、どうしてそこまで強くなろうと思ったの?」
「……力の為だ。力こそが全て」
感情の揺らぎはない。
それは答えというより、長い年月をかけて己の中へ刻み込んだ絶対の信条だった。
「力がないからこそ、お前は今俺に殺されかけようとしている。違うか?」
その言葉を受け、フリーレンは小さく目を伏せた。
否定はしない。
「その為には、森口の言う事を聞いても許されるって事?」
「……必要ならばな」
「そう」
数秒の静寂の後、どこか納得したように呟く。
「なるほど……分かったよ」
バージルの眉が僅かに動く。
次の瞬間。
フリーレンはゆっくりと顔を上げた。
「ここまでの会話は全て無駄だった」
先程までの静かな眼差しは消えている。
まるで汚物でも見るかのような、冷え切った拒絶だけがそこにあった。
「お前は、魔族だ」
その言葉と共に、空気が凍りついた。
纏う魔力の性質から、魔族とも人間とも判断が出来なかったが、フリーレンは吹っ切れたように言う。
バージルという男は、魔族そのものだと。
「お前をもう人間とは思わない」
魔族とは、人を騙すために言葉を得た魔物。
喋るだけの獣だ。
故に、フリーレンは最早この会話に意味はないと確信する。
自分の利益のみに特化し、追い求める。まさしく害獣そのもの。
例え異世界の存在であろうとも、この男は紛れもなく自分の知る魔族なのだろうと断じた。
「何!?」
くるんっと杖を逆さに回し、フリーレンは立ち上がる。
その刹那、莫大な量の魔力をバージルは感知した。
思わず目を張り、彼は固まった。
まるで隕石が降ったかのように、フリーレンの杖の先から魔力の極光が解き放たれる。
バージルすら瞠目するその光は、二人が立つビルを丸ごと呑み込んだ。
視界が真っ白に染まり、スタングレネードを投げられたかのように、音すら消し飛んだ。
バージルは考えるよりも先に、飛び退く。
屋上の外、人が立つ事もままならない虚空に、自ら身を投げ出した。
(この女、これだけの魔力を有して──偽装していたのか? 何の為に?)
瓦礫すら残さず消失するビルを眺めながら、バージルはようやく思考を巡らせた。
フリーレンの持つ魔力量はどれだけ高く見積もっても、バージル以下。
その筈だった。
上位の悪魔以下、中位悪魔よりマシといったところ。
だが、この魔力の砲撃は一体なんだ?
フリーレンを覆う魔力量が一気に上昇し、バージルの総魔力を遥かに超えている。
これだけの魔力を有していながら、どうして戦闘時に魔力をわざわざ抑えていたのか、バージルには見当もつかない。
「お前が魔族らしい魔族で助かった」
落下するバージルの遥か上空、フリーレンは空を飛んでいた。
────魔族を殺す魔法(ゾルトラーク)
上空から、星の輝きのように光る魔力砲。
落下し続けるバージルへと、フリーレンはゾルトラークの絨毯爆撃を開始した。
一つ一つが、あらゆる防御を貫通し対象を死に至らしめる必殺の一撃。
身動きの取れないバージルに、それら全てを避ける手段は残されていない。
(俺の油断を、誘う為か────!!)
全ては布石。
空を舞えるのに、敢えて飛べないと思わせる為に、不利な地上戦で応じたのも。
体を切り刻まれながら、死に体を演じたのも。
そして、魔力量を自ら偽装したのも。
強さを誤認させ、相手の油断を誘う為に。
実力至上主義である魔族と、そして悪魔にとって、自らの強さを隠す理由は存在しない。
だからこそ、引っ掛かる。
強さを隠すという発想が存在しないからこそ、目で見た力量こそを信じ切ってしまったからこそ。
人の道を捨て、悪魔として生きる事を選んだバージル故に。
事実として、かの七崩賢が一人──断頭台のアウラすら、その精密な魔力偽装を見抜けずに屠られてしまった。
点の砲撃が密集し、面の砲撃となってバージルを襲う。
物の数秒もせず、彼は消失しこの世を去る事だろう。
葬送のフリーレンの手によって、屠られた大勢の魔族同様に。
「────舐めるなッ!!」
バージルは腰を捻り、居合の構えを取る。
キンッ!という音と共に、バージルの愛刀──閻魔刀(ヤマト)が蒼く煌めいた。
忘れはならない。
フリーレンが葬送の名を冠し、歴史上最も多くの魔族を葬り去ったように。
またバージルも、魔帝を裏切り魔界を封じた魔剣士スパーダの血を引く、伝説の末裔。
刀が閃く。
振り抜かれた一撃は斬撃ではない。
球状に歪んだ空間そのものが、バージルの前方へと出現した。
迫り来るゾルトラークの弾幕。
だが、その蒼白の奔流は触れた端から飲み込まれていく。
まるで虚無に喰われるように。
────次元斬。
斬ったのは空間。
故に、あらゆる攻撃は異界へと追放される。
ゾルトラークがあらゆる防御を貫通するのなら、その存在を空間ごと斬り裂いてしまえばよい。
単純明快かつ、バージルにしか為しえない荒技にして神業。
「……逃げるか」
空中を漂うフリーレンは、念入りにゾルトラークを地上に撃ち込みながら、徐々に後退していく。
バージルの生死を確認する気も起きない。
このまま、魔力の砲撃に呑まれている間に撤退する気だった。
少なくとも、魔法使いが一対一で優れた戦士の前衛もなしに戦っていい相手ではない。
フリーレンは溜息を吐きながら、この場を後にした。
【フリーレン@葬送のフリーレン】
[状態]:胸と背中に刀傷
[装備]:フリーレンの杖@葬送のフリーレン
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~2
[思考]:殺し合いから脱出する。
1:傷がとても痛いよぉ……。
2:バージルを警戒、再戦するなら前衛がいないと負ける。
※参戦時期はマハト編終了以降です。
「逃げたか」
魔力の砲撃が止み、地上に降り立ったバージルが空を眺めた時、そこには星空しか存在していなかった。
フリーレンの逃走を認めたバージルは鞘に刀を収めた。
「見事だ」
異世界の強者。
バージルの相対する中で、フリーレンは紛れもなく実力者に数えられる。
魔力を制御し、自らの強さを誤認させる。
言うのは簡単だが、強者であればあるほど相手の力量を見抜く巧みさも伴うもの。
バージルが技を磨き上げてきたように、またフリーレンもそれのみに特化した研磨を積み重ねたのだろう。
その一点だけは敬意を表していた。
「だが、くだらん」
所詮は小手先の技だ。
バージルが欲する力には遠く及ばない。
ゾルトラークと呼ばれる魔法に限っては、その防御を許さない貫通力故に例外だが、フリーレンの強さはそのものはバージルの求める力ではなかった。
「フリーレン、貴様の力量ならばより高みを目指せたはずだ。より力を得られたはずだ。
こんな姑息な技法に頼らずとも……!!」
あの魔力量を十全に生かさず、ただ隙を作る為だけに隠匿する。
理屈は分かるが、理解はできない。
何の意味がある?
隙など作る必要もない。力で圧し潰せば良いのだから。
感情的になっていたバージルは、無意識の内に閻魔刀を握る手を強めていた。
「……次だ」
支給されたスマートフォンのルール説明アプリには、あらゆる願いを叶える権利があると記載されていた。
もしその力が本物ならば、バージルにとっては喉から手が出るほどに欲しいものだ。
優勝を狙ってみる価値はある。
弱者は後に回し、異世界の強者達と相まみえるのも、バージルの求める力の手がかりになるかもしれない。
「……もっと……もっと力を……!」
求める物は力のみ。
それ以外の全てを、自らの人間性すら投げ捨てて。
半人半魔の剣士は、悪魔としての道を再び歩み出した。
【バージル@Devil May Cry3】
[状態]:健康
[装備]:閻魔刀@Devil May Cry3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~2
[思考・状況]:I need more power!
1:殺し合いに乗る。強者狙い。
※参戦時期はダンテ戦一回目の直後です。
最終更新:2026年06月17日 22:45