『Opposing Souls』
「……戦わなきゃ」
チャンプの唾液と自らの涙に塗れた顔を拭い、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンは泣くのを止めた。
唇を噛みながら、トイレのカギを開けてドアを全霊で蹴り入れる。
顔を覗き込ませるように、個室の壁に寄りかかっていたチャンプの巨体が後方へ突き崩された。
「乱暴だなあ」
勿論、イリヤの膂力で崩れるような柔な肉体ではない。
チャンプを覆う脂肪の下は強靭な筋肉が秘匿されており、一見して運動不足の肥満体系に見えるものの。
全身を稼働させるのに必要な筋繊維が張り巡らされた、まさしく肉の鎧の持ち主だ。
わざと、イリヤを弄ぶように後ろに倒れたふりをしたに過ぎない。
「わああああああああああ!!!」
だが、それはイリヤも分かっていた事だった。
むしろそれこそを狙っていた。
便器の陶器製タンクに備わっている蓋をイリヤは外し、わざとらしく寝転がって痛がっているチャンプに向かって。
イリヤは渾身の力で降り下ろす。
チャンプも遊び半分だった顔から、本気の焦りを表情に滲ませるが既に遅い。
陶器と頭蓋がかち合い、その間にある肉と皮が潰される鈍い音を響く。
チャンプの視界はチカチカと点滅し、再び鈍器となった陶器の蓋を振り上げるイリヤの姿が映り込んだ。
「……おてんぱなお嬢ちゃんだねええええええええええ!!!」
もっとも、イリヤの痛恨の反撃はそこまでだったが。
降り下ろされた陶器を拳で砕き、尻餅を付くイリヤの頭を掴んで地面に叩きつける。
「ぎゃッ……!!」
「あーマジで可愛い……こんな可愛い天使ちゃんは生れて初めて見たよぉ」
口を半開きにしながら、ポタポタと涎を零すチャンプ。
自分の涎が絹のような美しい髪を汚しているとは微塵も思わず、むしろ浄化しているとさえ思っていそうな恍惚とした笑みを浮かべていた。
こんな風に抵抗してきた子供も初めてだったが、チャンプにしてみれば児戯も同然。
むしろ、今までにない美少女が想像以上に苛烈であるというギャップに燃えていた。
「君、ファーストキスはまだ? まだだよねぇ。おじさんと、イチャラブファーストキスをして結婚式を挙げようねぇぇ」
「お友達はいるかなあ? 全員、俺のお嫁さんにして穢れのない世界に送ってあげるから……言ってごらん?」
「ぜ……ぜったいに……いわない……!!」
頭蓋に圧し掛かる荷重は、カレイドステッキのない小学生が払いのけられるものでは決してなかったが。
イリヤは床に手を置きながら、懸命に抗おうと腕に力を込めていた。
チャンプは手に掛かる反発を嘲笑うかのように、ぐっと力を押し入れる。
それだけで、イリヤの体は崩れ頬が床に触れる。
しかし、またイリヤは腕に力を込めて、チャンプに抗おうとする。
勝ち目などない、絶望しか残されていない戦いに。
無意味に見える、無駄としか思えない戦いに。
涙を滲ませながら、何度も顔を打ち付けられて、口の中に血の味が充満しようとも諦めない。
『頑張りなさい!』
『お姉ちゃんが見守ってるからね!』
誰よりも強く、「生きたい」と願った少女がいた。
命を犠牲にして、イリヤを守って散っていた姉がいた。
『俺たちがあいつを食い止める。その隙に、どこか安全な場所を探すんだ!』
出会って数時間もしないのに、命懸けで自分を逃がしてくれた仲間もいた。
この命はイリヤのものだけではなかった。
イリヤが死を受け入れず、生を諦めない理由はそれだけで十分過ぎるほどだったが。
「ああ……超可愛いぃ……ギンギンだぜぇ……!!!」
想いだけでは、超えられない壁もまた確かに存在した。
チャンプはイリヤの頭を片手で抑えながら、うつ伏せに倒れた腹の底へ手を伸ばす。
体をまさぐられている感触に鳥肌が立ち、イリヤは短い悲鳴を上げる。
何をされるか、具体的な予想図が脳内に描かれる。
カチャカチャと服の金具が外されていき、スカートが脱がされた。
幼い頃、親に着替えさせてもらった時とはまるで違う。
肌を晒されていくことへの嫌悪感が、腹の底から込み上げる。
その感情に突き動かされるように、チャンプへの拒絶感が強く湧き上がってきた。
「下種め、見るに堪えんな」
冷ややかな一言を浴びせられ、チャンプが顔をあげる。
そこには髪を逆立て刀を持った一人の男──バージルが立っていた。
「ああ? ぶごおおおおおおおッッ!!!」
チャンプの顔にバージルの靴が食い込む。
前蹴りが炸裂し、チャンプの巨体が浮かび上がってトイレの壁に激突した。
「効く……かよおォォォォ!!!」
大方、正義の味方面をして子供達と愛し合うのを邪魔しに来たカスだ。
極上の獲物を前に、待ったを掛けられたチャンプは頭に血を上らせて、激怒する
────爆の玉!!
狭い密室であることすら忘れ、獲物であるイリヤすら巻き込みかねないのを失念し。
爆発の効力を持つ球を投げ付け、ショッピングモールの一角が吹き飛び炎上する。
「ぐげええええええええええええええええええええええ!!」
その中心地に居たチャンプも巨体を浮かし、トイレの窓を突き抜けて屋外へと投げ飛ばされた。
数階はあろう高さから転落し、尻に付いた火を転がりながら消化する。
「は……ぐ、はあ……!! ちくしょう、痛え……!」
だが、僅かな火傷以外は五体満足でかすり傷一つ負っていない。
常人ならば良くて手足の骨折、悪くて即死するようなアスファルトへのダイブをほぼ無傷で成功させていた。
「痛えが……あの野郎も」
モクモクと黒い煙を上げるショッピングモールを見つめながら、チャンプはざまあ見ろと破顔する
「何処を見ている」
「てめ……!!」
その笑みも、すぐさま驚嘆に歪められる。
背後から響く、冷めたバージルの声を聞き、チャンプはダイリーガーの球を握った。
「邪魔だ」
腕を振りかぶる寸前、チャンプの背負うデイバッグごと閻魔刀(やまと)の妖しい刀身がチャンプの背から胸を貫いだ。
「ぐ……え、えええええ……」
胸から生えた鏡面のような刃に写る自分の顔を見て、チャンプは断末魔をあげる。
薄汚い血を吸わせるのを拒むかのように、バージルは閻魔刀を抜き血を払う。
樽を空けたワインの如く血を拭きだしながら、切れ目の空いたデイバッグからも支給品を撒き散らしチャンプは血の海に沈んだ。
「あ……あの、ありがとうございます。おかげで助かりました」
目の前の悲惨な光景からは目を背けつつ、バージルに抱えられたイリヤは助けてもらったのだと思い、素直なお礼を口にする。
「礼はいい」
バージルは素っ気なく答え。
『イリヤさーん! ご無事で何よりです!!』
バージルのデイバッグから、イリヤの見知ったあの魔法のステッキが飛び出してきた。
「ルビー!?」
バージルの腕から降ろされたイリヤは近付いてくるルビーを両手で掴んで、涙目になって叫んだ。
ようやく、これで自分も戦える。
これなら、さっきのピエロのような相手に出会ったとしても、もう一方的にやられるだけじゃない。
自分の身くらい、自分で守れる。
その事実が、今のイリヤには何よりも嬉しかった。
「そいつに頼まれて、お前を探したまでの事だ」
やはりバージルは素っ気なかった。
だが、イリヤにとっては自分を助けてくれて、ルビーまで手渡してくれた相手だ。
お礼を言っても言い足りない、何か恩返しができればなと思う。
(その前にユウジとダークマイトさんを助けに行かなきゃ)
しかし今は時間がない。
また大きな借りができてしまうかもしれないが、あの二人を助けに行くのにバージルに協力をお願いしなければ。
「あの、すいません。実は……」
「さあ……構えろ」
「………………………はい?」
イリヤが口を開こうとした時、バージルは鞘に収めた刀の鍔をキンと鳴らし、威嚇するかのように鏡面のような刀身を輝かせる。
一歩でもその場を動けば斬りかかってきそうな雰囲気を帯びて、バージルは刀を腰に添えたまま身を低くして構えた。
所謂、居合の構え。
剣術に明るくはないが、イリヤもアニメなどで達人のキャラがああいう構えをするのを見たことがあった。
『あのですね。イリヤさん、私とこちらのバージルさんとは取引をしてまして』
ルビーが沈んだ声で語り始めた。
──俺にイリヤという小娘を探して何の得がある?
──それはもう、わたしを握ったイリヤさんは鬼に金棒、アーサー王にアヴァンロンですからね。
──ギリシャ神話のヘラクレスを倒し、世界最古の英雄王ギルガメッシュをぶっ飛ばし、世界救済を願うエインズワースに喧嘩を売りほぼ壊滅させる大暴挙!!
──あーもう、英霊も魔術師も千切っては投げ千切っては投げ~、一騎当千の戦士ならぬ傍若無人の大魔王へと一気に変貌します。ですから、きっとお役に。
──いいだろう。その小娘に興味が湧いた。
『あのぉ…このバージルさん、殺し合いに乗っていまして……イリヤさんを見つけたらその場でタイマンを条件に、イリヤさん探しを手伝ってもらってたんです……』
「ええええええええええええ!!? 何、勝手に変な約束してんのルビー!!?」
『仕方ないじゃありませんかあ! そうするしかなかったんですもん』
ルビーが人であれば、イリヤは胸倉をつかんで揺さぶりながら怒鳴っていただろう。
「そういう事だ。女」
バージルの目は笑っていない。イリヤの戦闘準備が整うまでは待つつもりらしいが、一切の隙を見せず視線がイリヤのみに向けられている。
たかが子供と侮る事はなく、その実力を確かめようと本気で殺し合いをする気だった。
イリヤは観念したようにルビーを握り転身する。
『一応言っておきますけど、あの人滅茶苦茶強いので、手加減とか考えないほうが良いですよ』
「どうして……こんな事に……」
お漏らしで濡れたパンツとズボンすら履き替えていないのに、どうしてこんなことになったのか嘆きながら。
ピンクのコスチュームと星の杖を携えたカレイドライナーの姿となって、イリヤはバージルと対峙した。
「く……斬撃(シュナイデン)!」
躊躇いながらも、先に仕掛けたのはイリヤ。
魔力を先鋭化させ、ナイフのように尖らせた飛ぶ斬撃をルビーの先端から数発撃ち出す。
バージルの構えは居合、踏み込めば一太刀で斬り伏せられる。
剣士を相手にするのであれば、飛び道具が有利だろう。
様子見と安全策を兼ねたイリヤの一手は。
──呆気なく破れた。
バージルが構えを解く。
すっと背筋を伸ばして直立すると、手にした刀を正面へ掲げる。
次の瞬間、刀身が弧を描いた。
滑らかな動作で刀を半円状に旋回させ、その切っ先が空気を裂いて鋭い軌跡を刻む。
バージルに殺到する魔力の斬撃が旋回する閻魔刀に一つの漏れもなく絡めとられる。
蜘蛛の糸のように絡め取られた斬撃が、すっと地面へ伸ばされた閻魔刀の切っ先から滑り落ちる。
寸分の狂いもなく一列に整列した斬撃の群れを前に、バージルは閻魔刀を大きく振り抜いた。
まるで刀で水面を掬い上げるかのように斬撃の列を一挙に掬い上げ、そのまま弾き飛ばす。
「嘘ぉ!!?」
弾き出された斬撃が遠心力を得て一斉に旋回する。
主を鞍替えした無数の斬撃が、今度はイリヤ目掛けて殺到する。
「っ……!」
咄嗟にイリヤは正面へ防御壁を展開。
直後、轟音とともに斬撃の嵐が叩きつけられた。
ガガガガガッ!!
防御壁を削り、弾き、なおも押し寄せる無数の刃。
イリヤは歯を食いしばり、その猛攻を真正面から受け止める。
(この人……強い、このままじゃ勝てない……)
斬撃の雨が止んだ、その瞬間。
イリヤは地面を蹴り、一気に宙へと飛翔する。
相手がどれほど強かろうと、空中まで刀が届くことはない。
(いない!?)
遥か上空から地上を見下ろしたイリヤの視界に、いるはずのバージルの姿はなかった。
「この程度か」
その直後。
頭上から、冷や水を浴びせられたかのような冷酷な声が降ってくる。
「速……!」
驚愕に目を見開く。
次の瞬間、飛翔するイリヤの進路を先回りしていたバージルが、閻魔刀を振り抜いた。
煌めく刀身が、空を裂く。
「薄皮一枚といったところか」
冷淡な声が響く。
胸元を袈裟懸けに斬り裂かれたイリヤの身体が、勢いを失って宙で弾かれる。
そしてそのまま、重力に引かれるように地上へと墜落していった。
『い、イリヤさん!!?』
上空数十メートルから落下しても無事でいられたのは、ルビーの物理保護のおかげだった。
それのダメージは殆どない。
「こ、れ……血……?」
だが、胸の裂け目から溢れ出す生温かい血がイリヤを血の海に浸す。
ルビーの物理保護を貫通して、僅かに切れ味が落ちたことで即死は免れたものの。
止まらぬ血の流れは、イリヤの残された寿命をカウントしているかのようだった。
まるで、シャワーを浴びているかのような、さっきのお漏らしの尿の温かさのような。
心地よい温もりに浸りながら、体は間違いなく衰弱していく。
上空から重力に従い、華麗に着地したバージルは血を払ってから閻魔刀を鞘に納めて踵を返した。
「やはり子供だな」
決着はついた。
所詮、子供は子供。
力量は完全に測れた。止めを刺すまでもなく、また救う価値もない。
次なる強者を求め、バージルは先を行く。
切り捨てた弱者を振り返る事すらなく。
「……待って……まだ、負けてない」
『イリヤさん!?』
その修羅の背中を呼び止めたのは、他ならぬ切り捨てられらた弱者──イリヤスフィール・フォン・アインツベルンだった。
左手で胸の血を押さえながら、尚も溢れ出す赤い液体を滴らせてイリヤは立ち上がる。
もう、永くはないだろう。
だから、この時足を止めて振り返ったのは、完全なバージルの気紛れだった。
「バージル……さん……わたしを、助けてくれたのは……本当にありがとう」
まずイリヤは、自分を救ってくれたことに対して、改めて律儀に礼を述べた。
たとえそこに何らかの打算があったのだとしても、自分を救ってくれたという事実まで変わるわけではない。
それだけは、バージルが成した善行なのだから。
「でも、殺し合いに乗っているあなたを、このまま行かせるわけにはいかない」
「俺を止めるのか? だが、どうやって止める」
「……この戦いに、わたしが勝ったら。殺し合いに乗るのをやめて」
少女が口にしたのは、たった一つの我儘だった。
「フン、いいだろう。俺を力で上回れるというのなら、その時はお前に従ってやる」
だが、そんな我儘を聞いて、バージルは不思議と興が乗っていた。
放っておけば、いずれ死ぬ。
わざわざ止めを刺すまでもない。そう思っていたはずの小娘。
それが今はどうだ。
先ほど、無様を演じた少女とは思えぬほどの気迫を、その瞳に宿している。
自らを圧倒した相手を前にしてなお、退くことなく立ち向かおうとしている。
その姿が、バージルの戦意を僅かに刺激していた。
「その前に、一つだけ聞かせろ」
「なぜ、立ち上がった?」
「見たところ、ルビーには治癒の機能が備わっているな。ならば、あそこで倒れたままになっていればよかったはずだ」
「……そうしていれば、お前は死なずに済んだ」
あくまで、イリヤが回復するまで悪意のある誰かが通りかからなければの話だが。
あの場でじっと回復を待ちさえすれば、イリヤが助かる見込みは僅かだが存在した。
「今のわたしには……戦う、力があるから……!!」
逃げ惑うことしかできなかった、ほんの数分前の少女とは違う。
今のイリヤには、力がある。
たとえそれが、自分自身の力ではなく、ルビーに頼ったものだとしても。
『イリヤさん、このの出血量では、もって二分ほどです。このまま倒れて、じっとしていることをお勧めしますよー』
「……二分は戦えるんだね」
『はあ……そう言うと思ってましたよ』
呆れたようなルビーの声が、イリヤの耳元に響いた。
カレイドステッキは一つ──ツヴァイフォーム使用不可。
クラスカードは手元にない──夢幻召喚使用不可。
敵は一人。
されど、その実力は英霊にすら匹敵しうる剣豪。
まさに、絶望的としか言いようのない状況だった。
戦略的撤退を進言するのが、仮にも武器兼参謀であるルビーの役目なのだろう。
だがイリヤは、きっと聞き入れない。
どうせ何を言ったところで、この少女が決意を曲げることはないのだ。
ならば。
残された手札は、一枚だけ。
「極大(マクスティール)――――――!」
魔力を、ありったけ掻き集める。
次の瞬間ルビーの先に、膨大な魔力が収束した。
「……ほう」
「──────斬撃(シュナイデン)!!!」
振り抜かれた杖から放たれたのは、巨人の腕すら容易く断ち切るほどの、極大の斬撃だった。
バージルであろうとも容易く斬り捨てることはできない。
そう信じて、イリヤは渾身の一撃を放った。
轟ッ──!!
解き放たれた斬撃が、空気そのものを震わせながら奔る。
地面を削り、周囲の瓦礫を巻き上げ、巨大な刃となった魔力の奔流が一直線にバージルへと迫った。
まともに受ければ、ただでは済まない。
たとえ相手が、英霊にすら匹敵する剣豪であろうとも。
これだけの一撃ならば。
「……」
バージルは、ただ静かにそれを見据えていた。
逃げる様子はない。
避ける素振りすらない。
ただ、右手に握った閻魔刀を、静かに構える。
そして。
閻魔刀が、一閃した。
次の瞬間。
巨大な斬撃の中央に、一本の線が走った。
極大の魔力を込めて放ったはずの一撃が真っ二つに、切り裂かれた。
上下へと分かたれた斬撃が、バージルの身体を避けるように空を駆け抜けていく。
轟音とともに大地を抉り、遥か彼方へと消えていった。
「終わりだ」
イリヤの渾身の一撃だった。
今の自分が持つ、ありったけの力を叩き込んだ。
それを斬られた。
ただ、バージルはゆっくりと閻魔刀を下ろす。
その表情には、驚愕も、焦りもない。
まるでこの程度のことは、最初から分かっていたとでも言うように。
「────!! 何処へ消えた……?」
だがその刹那の余裕は、すぐさま歪められる。
斬撃を放ったはずのイリヤの姿が消えていた。
バージルは即座に周囲へと意識を研ぎ澄ます。
捉えた──四時の方向。
イリヤは地面を掠めるように滑り込み、低く身を沈めていた。
その指先が掴み取ったのは、散り際にチャンプが撒き散らした支給品の一つ。
クラスカード。英霊の力が込められた魔符。
イリヤの狙いは、最初からその一枚のみ。
渾身の力を込めた斬撃は、バージルの気を反らし、クラスカードを手にすための布石だった。
「ありがとう……お姉ちゃん(クロ)」
握り締めたカードから、熱が伝わる。
脳裏を揺らしたのは、悪戯っぽくも頼もしい、聞き慣れたあの声。
──思いっきり、ぶっとばしちゃいなさい!
「……うん!」
少女は覚悟と共に、夜空へカードを掲げる。
「行くよ。バージルさん、次の攻撃が本当のわたしの……ううん、わたしたちの全力────」
──夢幻召喚(インストール)
──アーチャー!!!
高まる闘気をバージルは肌で感じた。
無銘の赤き弓兵──その根源は『剣』。
幾多の宝具を模倣し、現世に産み落とす剣戟の極致。
魂の片割れであったクロエ・フォン・アインツベルンが消滅し、分かたれていたイリヤの魔力が再び一つへと還った今。
「約束された(エクス)───!!!」
少女の手にある星の聖剣は、もはやハリボテの模造品などではない。真に迫る“偽物”へと昇華を遂げていた。
「ッ!」
黄金の光を放つ聖剣を振りかぶるその一瞬、バージルは確かに見た。
赤き外套を翻すイリヤに寄り添うように立ち、その聖剣へ共に手を添える──同じ顔、同じ姿をした褐色の少女の幻影を。
それが何を意味するのかなど、言葉にして問うまでもない。
「……ダンテ」
知らず、バージルの唇からその名が溢れていた。自身にとっても、あまりに予想外の呟きだった。
血を分けた双子の弟の名を呼ぶことになったのは、一体何ゆえか。
かつて違えた道。目の前の姉妹のように、背を預け合い、手を取り合うことができたなら。
それが、偉大なる父スパーダの遺した意志のように思えてならなかった。
「悪いな」
それでも。
──俺達がスパーダの息子なら受け継ぐべきなのは力なんかじゃない!
もっと大切な────誇り高き魂だ!
父と。
そして、バージルにとっては未来の弟の魂の叫びすら否定するように。
「俺の魂は、こう言っている」
────I need more power. (もっと力を!)
バージルが、人としての姿を捨て去る。
目の前の姉妹が示した絆という在り方を真っ向から拒絶するように、禍々しき悪魔の胎動を解き放った。
「────悪魔の力を見せてやろう」
「────勝利の剣(カリバー)ァァァァァァ!!!!」
この瞬間、魔剣と聖剣の贋作、二つの極光が交錯した。
〇
光の奔流を正面から突き抜けて、バージルが剣を振りかぶる前にイリヤは自身の血でできた海にダイブしていた。
出血多量に加えて、これまでの疲労が蓄積したのだろう。
事切れるようにして倒れたのと、バージルがイリヤまで到達したのはほぼ同時。
閻魔刀と約束された勝利の剣が激突する寸前、イリヤの二分(タイムリミット)が訪れた。
「……時間切れだ」
感情を読ませない顔でイリヤを見下ろすバージル。
だが、不完全燃焼な結末に、太刀筋が僅かに震えていた。
下げた閻魔刀の切先を倒れるイリヤの頭へと向け──
カカカッッ!!
バージルへトランプが飛来した。
「くくく……君はもう十分楽しんだろ♣ 次は僕がその娘を貰おうかな❤」
「何者だ貴様」
ナイフのような切れ味を持つカードを返す刀で弾き、バージルは新たに現れた道化師に問うた。
「通りすがりの奇術師♠」
グ…
奇術師は、股間をギンギンに隆起させながら唇を吊り上げ、狂喜の相を浮かべ全身を震わせる。
グググ……
「その娘は美味しく実りそうだ❤」
その間にも股間は膨張を繰り返し、やがて最高地点まで到達するとズボンを押し上げ立派なテントを張っていた。
『へ、変態だーーーーー!!!』
ルビーはその一部始終をまじまじと観察した後に、発声機能をありったけ使い叫んだ。
〇
──提案があるんだ♦ 君がエスデスを治療している間、僕、ちょっと別行動してもいいかい♣
──小蘭を探すのを手伝って欲しいと、お話をしたばかりですが。
──二手に分かれた方が効率はいいだろ♠
──それは、まあ……。
──安心しなよ。借りは必ず返すよ❤
──悪だくみか、ヒソカ。
──ああ、君がぞっこんのセイバーとやらに手を出す気はないよ♦
──構わん。お前に倒されるなら、所詮はそれまでの男。
次に、私がお前を狩るだけの事だ。
──それ、いいね♦
──喧嘩売るなって言ったばかりですが…。
──……………あの、小蘭を探してくれるのは良いんですが。
私とこの人を二人っきりにするつもりですか?
──…♥
【F-8 ショッピングモール近辺/深夜/1日目】
【猫猫@薬屋のひとりごと】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、トンパの下剤入りジュース×2@HUNTER×HUNTER、
本(ブック)@HUNTER×HUNTER、G.Iカード×4@HUNTER×HUNTER、蔵馬の魔界薬草@幽☆遊☆白書、ランダム支給品×0~1
[思考]:脱出の手段か、未知の毒が欲しい。
1:壬氏様はいないみたいですね。
2:小蘭を探す。
3:さっき会った医官(神谷)の毒に殺されるのは願い下げ。
4:武官様(エスデス)を治療する。二人っきりか……。
【エスデス@アカメが斬る!】
[状態]:ダメージ(大 治療中)、精神高揚(特大)、セイバーに対する執着(特大)
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×0~3
[思考]:セイバーを手に入れる。
1:セイバーを手に入れる。
2:他の参加者を蹂躙し、殺し合いを楽しむ。
3:猫猫とヒソカを部下に勧誘してみたかったが…。
4:ヒソカがもしセイバーを殺したら……その時は私が奴を狩る。
※第三巻から参戦です。
〇
ああ……満足とはいえないまでも、マハトとの楽しいバトルを終えてから、ビンビンになった感度を信じて一人でこっちに来てよかった♦。
ヒソカ=モロウは眼前のイリヤを見つめながら、全身を突き抜ける悦びを噛みしめていた。
素敵なバトルだった。
バージルが魔人化した場面で、悪魔(アニマル)はお断りだと若干萎えてしまっていたが。
それを上回る収穫は確かにあった。
『……待って……まだ、負けてない』
(その眼、その顔、その心意気……)
『今のわたしには……戦う、力があるから……!!』
(いい)
『……二分は戦えるんだね」
(すごくいいよ……❤)
少女の啖呵と奮闘は。
かつて入れ込んだゴン=フリークスのように、ヒソカの股間にクリティカルヒットしたのだった。
やはり、高い潜在能力と将来性を孕んだ青い果実はいつ見てもそそられる。
壊すのが勿体なくなるまで積み上げてから、一気に崩したくなる。
「好きにしろ」
ヒソカが抱く狂おしい悦びなど知る由もなく、バージルは何の感慨もなくその肩の横をすり抜けた。
「イリヤが起きたら伝えろ。
怪我を癒しておけと。
次に会った時、お前を斬り──俺はお前達の力を必ず凌駕する」
力を得るためだけに全てを捨て去り、血の分けた唯一の弟すらその手に掛けようとするバージルにとって。
姉妹で力を合わせるイリヤの姿は────。
次は必ず切り捨てる。そう冷徹に言い捨て、バージルは去っていく。
(んー……勿体ない♣)
あれが人(ノーマル)の在り方を選んでいれば、さぞかし楽しい戦闘(ダンス)を踊れたかもしれないのに♣。
でも、エスデスはああいうのがバトル相手としては好みかな♦ などと考える。
遠ざかるバージルの背を見送りながら、ヒソカは肩をすくめるのだった。
「ああ……忘れるところだったよ。小蘭って女の子を見たかな? 探してるんだ❤」
バージルは一言、知らんとだけ言い残して、闇夜の中に姿を消した。
【F-8/深夜/1日目】
【バージル@Devil May Cry3】
[状態]:ダメージ(小)
[装備]:閻魔刀@Devil May Cry3
[道具]:基本支給品、ランダム支給品×0~1
[思考・状況]:I need more power!
1:殺し合いに乗る。強者狙い。
2:イリヤは次会った時に決着を着ける。
※参戦時期はダンテ戦一回目の直後です。
「胸はガムと猫猫から貰った薬草で止血したし、さてこれからどうしようかな♦」
選択肢は二つ。
イリヤを連れて、エスデスと猫猫の元へ戻るか。
あるいは、このまま遠ざかってしまうか。
「また、女王様(エスデス)に束縛されるのも、イリヤを横取りされるのもごめんだけど…♣」
好みではないうえに、エスデスはヒソカを部下にしたがっている。
ヒソカとしては理由もなく彼女の下に付くのは御免だった。
しかし、気絶したイリヤを安全に保護するには、エスデスの傘下にいるのは悪い選択ではない。
薬草が効くまでの数時間は、イリヤを安静にさせておきたいのがヒソカの本音だが。
エスデスが戦闘狂(ジャンキー)なのは、ヒソカも既に嗅ぎ分けている。
そうなれば、イリヤの潜在力を知れば手を出してくるだろう。エスデスは自分以上の節操なしだと、ヒソカは見ている。
美味しそうな青い果実を、横から搔っ攫われるのだけは我慢ならない。
(悩むねえ…♠)
ヒソカは頭を悩ませる。
『助けてはくれるんですね……。ですが、わたしの目の黒いうちは、イリヤさんの貞操には指一本触れさせませんよ』
「ああ、そっちの趣味はないよ♣ 興味あるのは、戦闘(バトル)の方さ❤」
ルビーにとって、結論だけ言えば、ヒソカの存在は渡りに船だった。
怪我の治療をして、更に目が覚めるまでの護衛まで買って出てくれる。
股間を膨らましているのに目を瞑れば、これ程頼もしい存在はいないだろう。
「ぜえ……ぜえ……い、生き返ったあああああ!!!」
ヒソカが治療を終え、再びイリヤを腕の中に抱き上げたその時だった。
転がっていたチャンプの死体がぴくりと蠢き、叫びと共に息を吹き返した。
「おや♣」
ヒソカは物珍しそうに瞳を細めた。
死体などそれこそ山のように見てきたが、目の前で一度死んだ人間が文字通り蘇った光景は初めてだった。
そう遠くない未来、まさか自分自身が死後に蘇る側になるとは、この時のヒソカには知る由もない。
ヨミヨミの実。
食べた人間に一度だけ二度目の生を与えるという、この世の摂理を根底から捻じ曲げる悪魔の果実。
事前にそれを支給され口にしていたチャンプは、バージルに胸を貫かれて絶命したはずの命を繋ぎ止め、再びこの現世へと舞い戻ってきたのだった。
「……さっきエスデスがどうとか言ってやがったな。イェーガーズの腰抜けか? 俺は大臣の息子であるシュラにコネがあんだぜ」
チャンプは血の混じった唾を吐き捨て、勝ち誇ったように鼻で笑う。
「てめえの持つ薬草と、その天使ちゃんを俺に渡して消えな。逆らえばどうなるか……分かってんだろうな?」
かつて帝都で遭遇した際、イェーガーズの面々は傍若無人に振る舞うワイルドハントに何ひとつ手出しができなかった。
目の前に立つ派手な奇術師風の男に見覚えはない。
だが、仮にエスデスの部下だとしても、大臣の威光を背負う自分たちワイルドハントに逆らえるはずがないと、チャンプは高をくくっていた。
「断るといったら?」
だが、ヒソカは不敵な笑みで以て、好戦的に問い返す。
「ぶっ殺してやるよ!!」
生意気な返答を返した男へ向かい、チャンプは顔を激昂に歪ませて腕を大きく振りかぶった。
──爆の球!!
まるで熟練の野球選手を思わせる隙のない投擲フォームから、音を置き去りにして放たれた一球。
ヒソカはわずかに身体を反らして直撃を交わすが、その直後、球を中心に凄まじい爆炎が巻き起こる。
腕の中のイリヤを庇うように抱え直すと、ヒソカは軽やかなバックステップで爆風の圏外へと飛躍した。
──腐の球!!
追い打ちをかけるように放たれた二投目が、一秒前までヒソカが佇んでいた舗装路を深く抉り抜く。
着弾地点のコンクリートは一瞬でドロドロに腐敗して崩れ落ち、鼻を刺す強烈な悪臭が周囲の空気を満たした。
(ボール一つひとつに込められた能力が違うのか♦)
快投乱麻ダイリーガー。
チャンプが不敵に弄ぶその帝具は、投擲する球ごとに全く異なる異質な効果を発現させ、投げては瞬時に手元へと戻っていく。
対峙するヒソカは、その威力を前にしてもなお、愉悦に満ちた瞳を妖しく細めていた。
「チッ、すばしっこい野郎だな!」
忌々しそうに吐き捨てたチャンプの眼前で、ヒソカの身体がふわりと重力を無視して跳ねた。
手から伸ばした粘着質のオーラの糸、伸縮自在の愛を即座に周囲のビル壁面へ付着させる。
ゴムのように収縮する驚異的な推進力を利用し、ヒソカは縦横無尽に夜の空を駆け巡った。
空中を高速で滑空しながら、指先から滑らかに放たれる数枚のトランプ。
──嵐の球!!
鋭い切り裂き音を立てて迫るカードに対し、チャンプが繰り出した球が激しい風を巻き起こす。
局所的に生じた凶暴なハリケーンは、ヒソカの放った凶器を一瞬で木っ端微塵に弾き飛ばした。
「んな、チンケなトランプが効くかよ!!」
確かな手応えに気を良くしたチャンプは、高笑いを上げながら狂気的な殺意をさらに加速させる。
──炎の球!!
「燃え尽きちまえ!!」
高熱の火の玉が旋回するヒソカの影を追尾していく。
──伸縮自在の愛(バンジーガム)!
だが、ヒソカの口元から、不敵な笑みが消えることはない。
オーラを薄膜状に拡げ、迫り来る火球を正面から受け止める。
衝撃を殺しながら糸のように絡みつき、オーラは限界まで後方へと引き伸ばされていく。
「なんだあ!? 球が……跳ね返ってきやがる──」
弾力と伸縮性、ゴムの性質が極限まで解放され、膨大な運動エネルギーを宿した炎の球が、驚愕するチャンプの元へと凄まじい速度で逆流した。
「伸縮自在の愛はガムとゴム、両方の性質を併せ持つ…♠」
「あッッぶねええ!!」
間一髪、地を蹴って空中へ逃れ、間近をかすめる炎の球を回避するチャンプ。
「……!?」
だが、安堵の息を漏らす間すらなかった。
球体とヒソカの指先を繋ぐオーラ──伸縮自在の愛が限界まで引き絞られた弓のように縮み、球体を即座にチャンプの背後へと引き戻す。
「球が……追尾してきやがる!」
ヒソカがまるでタクトを振るうかのように指先を滑らせるたび、炎の球はその意図を完璧にトレースし、旋回しながらチャンプを果敢に追い回す。
「チィィィ!!」
逃げ切ることは不可能。
そう直感したチャンプは歯噛みし、残る全ての球体を自身の前面に一瞬で展開。直撃のコースへ放たれた高熱の火球を、正面から強引に受け止めた。
「良いの? 防御に球、全部使って♦」
迫り来る炎を必死に防ぐチャンプの姿を冷ややかに見つめ、ヒソカが愉悦を孕んだ声で呟く。
「お、おおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!?」
六つの球体がすべて前方へと集中したその瞬間、チャンプの側面は完璧な無防備と化していた。
死角から滑り込んだヒソカのトランプが、空気を切り裂き、彼の無防備な側腹部へ深く深く突き刺さる。
「へへっ……チャンプ様のタフさを舐めんじゃねえ……! こんな紙っぺらで……ッ!」
激痛に顔を歪め、刺さったカードの隙間からダラダラと鮮血を吹き出させながらも、チャンプは凶悪な笑みを浮かべて己の肉体の頑強さを誇示した。
だが、その強がりをヒソカはくすりと嗤う。
「忘れてない? 僕の伸縮自在の愛♥」
「あぁあ!! う、動けねえ……!?」
刺さったトランプの端から密かに伸ばされていたオーラの糸。
それが、いつの間にかチャンプの足元深く、強固なコンクリートへと完璧に接着されている。
極限まで引き絞られた強力なゴムの弾性と粘着力により、チャンプの巨体はその場にしっかりと縫い付けられていた。
「ま、待て……俺に手を出したらワイルドハントとシュラが黙ってねえぞ……!」
ダイリーガーの真価は、投擲して初めて発揮される。
全身を強力なゴムの粘着力で拘束され、地面へ強固に縫い付けられたチャンプには、もはや腕一本振るうことすら許されなかった。
「エスデスだって大臣の息子には逆らえ……ッ」
命乞い混じりの威嚇を吐き捨てる男を前に、死神は顔面に笑顔を貼り付けたまま、静かに指先を滑らせる。
ヒュン────
「ごぼッ……!!」
空気を切り裂く微かな音とともに、念を込めて刃物以上に研ぎ澄まされた二枚のトランプが舞った。
鋭利なカードはチャンプの首を綺麗に断ち切り、鮮血が夜の闇へと舞い散る。
二度とその生命が芽吹くことのないよう、ヒソカは寸分の狂いもなく、完璧にその首を落としていた。
(俺の……天使……!)
首だけになったチャンプの視界には、ヒソカに抱き抱えられ寝息を立てているイリヤの姿。
せめて、あの娘だけでも穢れた大人になる前にこの醜い世界から救済したかった。
もしも首から下がまだ繋がっていたなら、絶対に届かないと分かっていても、惨めにその手を伸ばしていただろう。
(あ……?)
ふと、イリヤの姿が遮られる。
二人の間を隔てるように、足元で無数の小さな影が蠢き始めていた。
地の底から溢れ出すように次々と沸き立つ影は、やがて子供の形を成すと、地面に転がるチャンプの生首を取り囲む。
虚ろな表情の中に、逃げ場のないドス黒い憎悪を宿した瞳。
(……お、おい……やめろ、おまえら……────)
その喉から声が途絶える。
急激に薄れゆく意識の泥の中で、チャンプは理解していた。
この亡者どもは誰なのか。
かつて自分が天使と持て囃し、玩具のように弄んで惨殺した子供たちの成れの果てだと。
答えに至り、そして壮絶な恐怖を抱き締めたまま、チャンプは息絶えた。
【チャンプ@アカメが斬る! 死亡】
【残り87人】
夜の静寂に、金属同士が擦れ合う小気味よい音が響く。
「ふーん、ワイルドハントか♣」
チャンプから奪い取ったばかりのダイリーガー。その冷たい球体を指先で器用に弄びながら、ヒソカは暗がりの中でくつくつと喉を鳴らした。
マハト、エスデス、猫猫、バージル、シュラ、ワイルドハント、セイバー、そしてイリヤスフィール・フォン・アインツベルン。
玩具は多ければ多いほど良い。ヒソカは遊び甲斐のある玩具たちを思い浮かべる。
薄い唇が舌でなぞられ、殺意が満ちた。
『楽しそうですねぇ……ザ・悪役って感じの笑みですよー』
「だって……玩具は多い程、楽しいじゃない?」
心の玩具箱の中に次々に収められていく、新たな玩具達を眺めて。
ヒソカはイリヤを抱きかかえたまま深夜の静けさに溶け込むように姿を消した。
【F-8 ショッピングモール前/深夜/1日目】
【イリヤスフィール・フォン・アインツベルン@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
[状態]:気絶、疲労(大)、胸に刀傷(手当て済み)
[装備]:マジカルルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品1~3、クラスカード『アーチャー』@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[思考]
1:……。
[備考]
※参戦時期はドライ12巻59話終了後です。
【ヒソカ=モロウ@HUNTER×HUNTER】
[状態]:疲労(中)、腹部に裂傷(バンジーガムにより接合済み)
[装備]:トランプ@現実、天逆鉾@呪術廻戦、帝具「快投乱麻ダイリーガー」@アカメが斬る!
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品×0~2、蔵馬の魔界薬草@幽☆遊☆白書(少量)、チャンプの首輪
[思考]:脱出の手段を探す。集団戦闘では興奮できないからね…♥
1:脱出に役立ちそうな人材か、玩具を探す♦
2:脱出の手段がなければ仕方ないが…僕も振りかかる火の粉は払わざるを得ない…♠
3:マハトとバージルは人間ならきっといいデートができただろう…惜しいね…♥
4:この娘(イリヤ)は美味しく実りそうだ…♥
5:ワイルドハントか…敵討ち(リベンジ)に来てくれるなら、それはそれで楽しいかな♣
6:小蘭は真面目に探して保護する。猫猫には借りができたからね♦
7:エスデスと猫猫の元へ戻ろうか、離れるか、悩むねえ……♠
【トランプ@現実】
ショッピングモールに置かれていたものを、ヒソカが持ち去った。
【マジカルルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
バージルに支給。
無限の魔力供給を可能とし、Aランクの魔術障壁、物理保護、治癒促進、身体能力強化といった恩恵を与える。
【クラスカード『アーチャー』@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ】
チャンプに支給。
座の英霊と本質を置換する事で英霊になれるカード型の魔術礼装。
【ヨミヨミの実@ONE PIECE】
チャンプに支給。
死亡しても一度だけ蘇ることができる悪魔の実。
最終更新:2026年08月23日 21:55