【横山ゆかり(当時4歳、女) 群馬・太田市・ H8年7月7日】
1996年(平成8年)7月7日日曜日、群馬県太田市の横山ゆかりちゃん(当時4歳)が、両親がパチンコに夢中になっている間に、店内をうろついていた背の低い男に連れ去られる。
2日後の7月9日午前8時、警察は機動隊員70人を動員して広範な捜索を行ったが、見つからなかった。その後、警察はパチンコ店にいた客と周辺を探検捜査したが、ゆかりが消えた時刻に白い乗用車に4歳くらいの女の子が乗ったことを見たという証言があった。
しかし、手がかりはそれだけであた。パチンコ店の中には多くの人々がいたが、すべてパチンコに夢中になった残りの店の中で一人で遊んだ女の子の姿を覚える人はいなかった。
一連の女児誘拐殺人事件でも2件はパチンコ店からの行方不明となっており、連れ去りの手口が類似していること、この事件の発生現場であるパチンコ店の防犯カメラ映像に映っていた男が、足利事件発生時に目撃された男と似ていることなどから関連性が疑われている。なお、当事件には被害者の発見または被疑者の検挙につながる情報に600万円の懸賞金(捜査特別報奨金300万円、地元の遊戯団体による謝礼金300万円)が用意されている。
捜査
捜査が進んだ中、店内のCCTVで重要な手がかりを見つけることができた。
防犯カメラには不審な男が映っていたのである。警察はこの男に注目した。
この男は身長は158cm前後と推定され、帽子とサングラスをかけており、白いシャツにニッカボッカ風のズボン、サンダルを履いており、夏にもかかわらずジャンパーを着ていた。
この男は事件当日午後1時27分頃の店に入ってきたが、歩く方法がとても珍しかった。まず店内の目立たない場所にあるトイレに立ち寄り、約3分後にトイレから出て店内を徘徊し始めた。両替したり、カードを購入したり、パチンコをせずに店内を徘徊していたこの男は、景品コーナーの前でゆかりと向き合った。午後1時33分、男はゆかりが座っていた出入り口付近の椅子に座ったが、ゆかりの隣に座ってタバコを吸ってゆかりの正面にあった灰皿に手を伸ばして使用した。
やがて男はゆかりに話しかける気配を見せ、右手で3度ほど店の外を指した。
この時、ゆかりはワンピースの裾を手で持ち上げていたがこれは何か困難や迷うとき子供たちが見える行動だという。午後1時42分、男はゆかりを残して席で起きた。結局、この男はパチンコ店に入ってきた15分ほどの時間、トイレを使った後、タバコを吸ってゆかりと話をして席で起き、直後にゆかりが母に前述した通り不明な話をしたのだ。
午後1時45分何故かゆかりは出入口側に向かったが残念ながら出入口側はCCTVの死角地帯だったので店を出るゆかりと男の姿は撮られなかった。そのため、この男とゆかりちゃんの行方不明は関係がないという主張もある。
当時パチンコ店の店員はこの男を初めて見る客だと証言したが、初めて来たお客さまはかなり馴染みのある姿で店内を徘徊した点で先延ばしで確実ではない。
決定的にこの男は以前に起きた足利が事件で目撃された真犯人と容姿が似ているという。
店の防犯カメラには男が女児に"外に行こう"と誘うように話しかけている様子が映っている。
ただしその後の行方に疑問点があり、2016年に群馬県警察がYouTubeに投稿した動画では防犯カメラ映像に映っていた女児と男が同時にパチンコ店から出たというナレーションによる説明がなされているが、同年に久田将義がニコニコ生放送とYouTubeのニコ生タックルズに配信した際に当時この事件をNHKの社会部で取材した石川清が出演して当時の取材を打ち明けたが、石川は女児は男より数分後に店を出ている様子が防犯カメラに映っていたことを話した。群馬県警察は女児と男が店を出た様子が映った防犯カメラ映像は2021年現在公表していない。
透視
2015年1月5日放送の『トリハダ(秘)スクープ超能力透視捜査スペシャル』でジョー・パワーはゆかりちゃんの両親の要請で来日し、ゆかりちゃんのいる場所を透視し、300メートル圏内までの砕石場にいること透視し、残念ながらゆかりちゃんはなくなっているとの結果だった。
超能力者ジョー・パワーによると79年~90年に起きた4件の事件は同一犯によるもので、96年の事件は、先の4件をまねた模倣犯によるものだという。
先の4件については、犯人の使用車両は白いバン、遺棄現場の畑や河川敷には、鉄のカートで遺体を運んだ。
96年のゆかりちゃんの事件については、使用車両はカローラタイプの乗用車で、色は薄系(このことは彼の最後の報告書に書いてある)、犯人は犬を飼っていて、車の座席も犬の毛だらけだという。
最後は、ゆかりちゃんの居場所(遺体遺棄場所)を探してスタッフを引きずりまわした末に、「俺は1日4時間まで」「この話はこれでおしまい」と言ってイギリスに帰ってしまった。
帰国後、英文の調査報告書(A4版1枚)を送ってきた。
だがこの場所は私有地が多い場所との事で、父親である康雄さんが警察に捜査を依頼した。
ジョー・パワーは別として、テレ朝的には「5件すべてが同一犯だ」と言いたげな編集ではあった。
ただ一人、ジョー・パワーだけが変なことを言っていた。
ジョーによると、「96年の事件だけは、先の4件とは違う犯人だ」という。
気になるのは、彼の見解は警察のそれと一致している。
警察的には、防犯カメラに映ったあの男を野放しにしている関係上、96年の事件(ゆかりちゃんの事件)を、意地でも先の4件と分離しておくのが、なにかと好都合なのかもしれない。
その警察の見解に合致することを、ジョー・パワーも主張した。
テレ朝的には、清水氏のレポートを参考にしつつ「これは、同一犯による5連続殺人事件だ」とほのめかす一方で
超能力者ジョー・パワーには警察見解そのままを語らせ、日頃お付き合いのある警察への一応の配慮を示したのかという考察がある。
単に清水氏のレポートに沿っただけの番組では面白くないので、超能力者にはその正反対のことを言わせ、清水氏の有力説と超能力者の奇説との、いわば、対立の構図を描いてみせた、というだけかもしれない。
横山家のその後
失踪から22年を前にした2018年7月3日に常に写真を持ち歩く両親は「一日も早く帰ってきて」と願い、両親は、ゆかりさんを連れてきた自らを責めてきた。父親の保雄さんは自殺も考えたと明かし、「自分が悪かった」。ただ家族に「帰ってきたゆかりが、誰をパパと呼ぶんだ」と言われ、思い直した。「自殺したら、容疑者に負けたようで悔しい。生きて、ゆかりを見つける」と語る。
失踪から23年後の2019年7月7日、両親や県警捜査員らが市内のショッピングモールで、ゆかりちゃんの写真が掲載された約2千部のチラシやポケットティッシュを配り、情報提供を呼び掛けた。父親の保雄さんは「ゆかりは無事に帰ってくる。見つかるまでは絶対に諦めない」と記者団に力強く語った。
2020年7月に上毛新聞の取材に父親の保雄さんが取材に応じ、事件当時、ゆかりちゃんはまだ生後間もなかった次女(24)から常に離れず、保雄さん夫婦に「おむつだよ」「おっぱいだよ」と教えてくれた。「この子、本当に4歳かなと思うほど面倒見が良かった」と振り返る。
ゆかりちゃんは11日に29歳の誕生日を迎える。保雄さんは「妹に頼られるお姉さんになっているだろうな」と現在の姿を思い描く。年齢を重ねてきた自分たちが体調を崩した時に「長女として支えてほしい」と願う気持ちもある。
母親の光子さんも「普通に仕事をして、結婚して、子どもも生まれる年ごろ。きっとしっかり家庭を支えるような女性になっていると思う」と想像する。
群馬県警は11日にイオンモール太田(太田市)にチラシを置き、動画を上映して情報提供を呼び掛ける。例年、保雄さん夫婦も参加してきたチラシの手渡しなど人と接触する形での街頭活動は自粛となったが、保雄さんは「世界的に大変な状況だから仕方がない。そんな中でも警察が実施してくれることはありがたい」と話す。
保雄さんは「早く見つかってほしい。そればかりを考えている。少しでもゆかりらしい女性を見つけたら情報を寄せてほしい」と訴え、24年前と変わらずゆかりちゃんの帰りを待ち続けている。
2021年7月に上毛新聞の取材に父親の保男さんは無事を願う切実な思いを明かした。25年前のパチンコ店内の様子はずっと忘れられないという。ゆかりちゃんは景品所を見て、「パパ、花火取って」とねだった。「分かった。パパが取ってあげる」と言うと、にっこりと笑顔で喜んでいた。パチンコ台に座る両親の間を行き来して、店内奥にある長いすに座っていた姿も覚えている。店内での出来事だけでなく空気感も、ありありとよみがえだが、それ以前のゆかりちゃんをはっきりとは思い出せない。
生まれてから4年間、保育園の運動会や夏祭りなどいろいろな行事があったはず。「なぜ思い出せないのか…。ゆかりがいなくなったショックが大きすぎて、事件当日の記憶ばかりが残ってしまっているのだろうか」。25年もの歳月が経過して、事件前の記憶がすっぽりと抜けてしまったかのような感覚が続いているという。事件当時8カ月だった次女(25)と、事件後に生まれた三女(21)は、毎年7月7日が近づくと、「お姉ちゃんに早く会いたいね」と言うくらいで、それ以上はゆかりちゃんの話をしない。「2人なりの親への優しさなのだろう。話さなくても、家族全員が帰りを願っているというのは分かっているんだから…」
失踪から25年後の2021年7月7日、父親の横山保雄さんは「早く見つかってほしいと思いながらの25年でした。25年も離れ離れになるなんて考えられることじゃないので、私たちがつらい分、ゆかりもつらい思いをしていると思うのでゆかりに対して申し訳ない。本来あるべき家族の元に帰してほしい」と話している。
清水潔氏による調査
日本テレビの清水潔氏が、この事件を含めた「北関東連続幼女誘拐殺人事件」についてもう一度調べ、一連の事件がすべて同一犯の犯行であるという仮説を立てた。
すると、真犯人の可能性がある男を特定し、接触にも成功。写真より老けてはいたが、やはりどこかルパン三世に似た中年の男であったという。男は独身で、週末になると県境を行き来、足利・太田近辺のパチンコ店に現れては一日中タバコをくわえながらパチンコをしていたという。すると、真犯人の可能性がある男を特定し、接触にも成功。写真より老けてはいたが、やはりどこかルパン三世に似た中年の男であったという。
まずは90年5月12日、『足利事件』当日のことを男にぶつけてみた。闇の中の禅問答のようなやりとり。同じ質問を重ねていくにつれ、男の回答はブレていく。男はついに、事件当日、足利にいたことを認めた。しかもその場所とは事件の現場だ。殺害された松田真実ちゃんが行方不明となったパチンコ店である。それだけではない。『あまりよく覚えていない』と言っていた男が、実は真実ちゃんと会ったことがあり、会話まで交わしていたことを認めたのだ。
今度は『横山ゆかりちゃん事件』についてだ。『太田市内でも女の子が行方不明になっていますが、そのパチンコ店には行ったことは?』という質問に男は即答した。『あぁ、知ってます。あの店には行ったことがありません。出ないんですよ』。行ったことがないはずのパチンコ店の出玉について明言する矛盾には気づかぬまま男は続けた。『あの日は自分は、あの店に行ってません』。
前言と矛盾する上、尋ねてもいない事件当日の行動を懸命に語るなど、相当に混乱しているとしか言えない。そもそも、やりとりの中で私は、ゆかりちゃん事件の発生日も、店名すら伝えていない。にもかかわらず、12年も前の自分の行動を、突然訪れた記者に即答できるとは。
その後、清水記者は独自にDNA鑑定を実施。4件目の被害者・松田真実ちゃんのシャツに残された真犯人のものと思われる精液と、この男が捨てたマスクから採取したDNA。
その数日後、清水氏の携帯電話にある人物から電話が来た。その人物とは司法関係者で、なおかつDNA型鑑定のプロフェッショナル。
彼は一気にこう囁いた。
「いやー、結果が出たそうです。完全一致だと。ドンピシャだと。同一人物ですよ。これは大変なことになりますよ……」
清水記者はこの男が一連の「北関東連続幼女誘拐殺人事件」の犯人であると確信している。
清水記者は著書「殺人犯はそこにいる―隠蔽された北関東連続幼女誘拐殺人事件―」の最後で、こう締めくくっている。
「何度も何度もお前のことは報じたぞ。ルパンよ、お前に遺族のあの慟哭は届いたか。
お前がどこのどいつか、残念だが今はまだ書けない。だが、お前の存在だけはここに書き残しておくから。いいか、逃げ切れるなどと思うなよ。」
関連資料
http://www.watv.ne.jp/~askgjkn/tizu1.1.gif(付近で足利事件が起こっている)
http://www146.sannet.ne.jp/oizumipolice/yukarichan.htm
http://www.police.pref.gunma.jp/keijibu/02sou1/file_yukari.html
http://www.police-ch.jp/video/16/000412.php