感情の生き物 ◆dKv6nbYMB.



誰も踏み入るな。

誰も邪魔をするな。

私は何者の干渉も許さない。

私の永遠は私だけのものだ。



殺意と暴威の嵐が荒れ狂う。
鬼の王の触手が眼前の命を刈り取らんと振るわれる。


栗花落カナヲ。
早川アキ。
朝倉シン。

鬼舞辻無惨が真っ先に狙うのは―――早川アキ。
三人の中では彼が一番重傷だ。加えてカナヲには既に毒を注入してあり、シンもギリギリ有効射程外である。
それだけではない。
無惨は更に先を見据えていた。
カナヲは鬼殺隊という異常者の一員だ。無惨は彼女の存在など知らないし知っていても柱でもない一隊員のことなど覚えている筈もないが、彼女の身に纏う隊服は紛れもなく鬼殺隊のものであることくらいはわかる。
このまま戦えば無惨の勝利は確実であるのは疑いようもないことだが、彼が最も危惧したのは異常者故の異常思考である。
『無惨に得点を渡すくらいなら』と重傷の早川アキを彼女が殺し入手できるポイントを減らされる可能性も無きにしも非ず、といったところだ。

とはいえ、無惨にとって眼前の三人は多少動ける程度の塵にすぎない。
何度でも言うが、このまま戦えば無惨の勝利は揺らぎなく、狙う順番でなにが大きく変わるかといえば、単に死ぬ順番くらいのものである。

アキの眼前へと迫る触手。

―――花の呼吸 弐の型 御影梅

それを防ぐは、カナヲの技。
球体を描くような連続の斬撃で触手を受け流し凌ぐ。
カナヲは剣の腕前だけで評価すれば柱にも匹敵しうる。
その為、防ぐことに専念すればある程度は張り合える。

そして動いたのは彼女だけではない。

「ッシ、早川さん回収完了!」

朝倉シンがアキを抱きかかえ、無惨の射程距離から即座に離脱する。
シンはカナヲが無惨の攻撃を受け止めようとした時には既に動いていた。
彼は無惨の攻撃の一端とその心情を見た時、心は絶望に染まっていた。
だがすぐに切り替えた。
彼は曲りなりにも元・殺し屋だ。死線を潜り抜けてきたのは一度や二度ではないし、坂本の"なんてことない日常"を護るためには常に心身を賭けている。
なにより、エスパーである彼は日柄、坂本に死のイメージを突きつけられている。

(想像の中で何度も殺してきたのはこういう時の為だったんスね、坂本さん!)

恐らく違うが、過程はどうあれ"死"への耐性ができていた為に、シンは抱いていた絶望を振り払い、即座に行動に移ることが出来た。
アキの容態を看る余裕はない。
しかし、致命傷ではないものの、決して浅くない傷ではないのはわかる。
このままアキを連れて逃げることも、アキを戦わせることも不可能と瞬時に悟ったシンは、支給品である"不壊刀"を手に無惨を見据える。

「よせ...!」

アキが血反吐を吐きながら静止の声をかけるも、シンは止まらない。
カナヲ一人では場が保てないのは一目瞭然だ。だから、まずは少しでも彼女の負担を減らさなければならない。

(銃でもあればよかったんだけどな...けど坂本さんなら!)

坂本であれば、どんな武器でも使いこなしこの局面を乗り切れるだろう。
自分はまだその領域に至っていないのは理解している。
それでも、坂本なら、みんなの"なんてことない日常"を護ろうする少女を見捨てるような真似はしないだろう。
だからシンもそれに習う。
殺し屋では味わえないあの温かい時間を平和を望む人に失わせたくないのは、彼も同じだから。

触手と不壊刀がぶつかり、甲高い音が鳴る。
見た目以上に重い。
シンは剣よりも銃の方が得手とはいえ、走行中のジェットコースターから飛び降りても(受け身ありとはいえ)軽傷で済むほどの身体能力の高さを有している。
その彼でも無惨の攻撃はとても受け止めきれるモノではなかった。
これを実質片手で捌き続けているカナヲの強さには敬服しかない。

(けど、さっきよりは幾分かはマシだ)

初見の不意打ちとカナヲとの攻防、そして彼のエスパー能力を合わせて通してシンは無惨の戦闘スタイルを解析する。

(こいつは決して殺しや戦闘のプロじゃない。ただ力任せに腕を振り回してるだけだ!)

シンはこれまで多くのプロと戦ってきた。
その経験値と無惨の思考を読むエスパー、そして決して壊れない刀があれば辛うじて無惨とカナヲの戦いに介入できる。

無惨までは攻撃が届かずとも、シンとカナヲは防御に専念し己の命を繋ぐことに成功する。

しかし。
鬼舞辻無惨は鬼殺隊の柱の面々ですら相手にならないほどに強力である。
弱体化の薬を撃ち込まれていない本来のコンディションであればただ一人を除いて瞬く間に制圧されてしまう。
そのはずだが。

(挙動が鈍い)

無惨は己の身体の違和感に気づく。
己が想定しているよりも腕を振るう速度が遅い。
その証拠に、片手落ちの隊士にそこそこ動ける人間など、とうに殺害していてもおかしくないというのに、彼らは未だ健在である。
毒もそうだ。
最初の襲撃で指を切断したカナヲには毒がまわっているが、掠り傷を幾度も受けているシンにはまだ流せていない。
一瞬触れただけでは流すことが出来なくなっているのだ。


(やってくれたなあの男)

ビキリ、と無惨のこめかみに青筋が浮かぶ。
鬼舞辻無惨をこんな遊戯に巻き込んだ以上、その力のほども理解しているのは間違いない。
恐らく、このままでは殺し合いが成り立たないと判断し、袈裟の男は身体になにか細工をしたのだろう。
許せない。奇妙な術を使う程度の人間がこの身体を弄るという愚行そのものが。

無惨は戦いが嫌いだ。
博愛主義だとか平和的な解決を望むだとか、そんな殊勝な心持ではなく、単に嫌いなのだ。
戦いとは、無惨の最も恐れる"死"の観念にいっそう近づけるものにしかすぎないからだ。

だから部下の上弦の鬼たちとは違い、最小の労力で効率的に狩ることしか考えない。

(この中で一番の使い手はやはりあの小娘だ)

いまの戦況の膠着は、カナヲが無惨の攻撃を半分以上引き受けることで成り立っている。
ならば、カナヲさえ落ちてしまえばあとはゴミを払うよりも簡単な作業になる。
シンへとまわしていた触手がカナヲに向けられ、且つ背中から生えた数多の触手が襲い掛かる。

取り囲まれて潰される。
そう判断したカナヲは後方に跳ぶ為に足に力を籠める。

だが。

「えっ!?」

カナヲは前方に向けて走り出していた。
この行為にはカナヲ自身が一番驚いていた。
己の意思は間違いなく後方への跳躍に向いているのに。

驚愕するのはカナヲだけではない。

「...!?」

無惨もまた、困惑と驚愕の入り混じる表情を浮かべていた。
カナヲが前方に向けて走り出したことではない。
カナヲを潰そうとした途端、触手があらぬ方向へと分散したことにだ。

互いの驚愕により停止する戦場。

「打搅你(失礼)」

沈黙の世界にふわりと一陣の風が舞い降りた。

「晚上好(こんばんわ)、僕も混ぜておくれよ」

中華服の青年が、無惨へと人懐っこい顔で笑いかけた。



僕は強い人が好きだ。

強い人との戦いは僕をさらに強くしてくれるから。

妹の仇を取るために強さを求め始めたけれど、きっとそれが全てじゃない。

戦闘狂。

本能から戦いを求めているから、災厄に等しいUMAも好きになれるし、無暗に戦いの機会を奪おうとする人を嫌いになる。

それが僕の真実だ。

僕はそんな僕を嫌悪しない。

だから、ほら、見せておくれ。きみの強さを。

その強さを食らって、より高く跳んで魅せるから。



何者だ、という問いかけすらなく、無惨は触手を振るう。
乱入者が誰であれ、鬼舞辻無惨のやることは変わらず屠殺のみ。
狩りの邪魔をされたと思う以上に、手間が省けたとしか思わない。

カナヲとの間に立つ青年目掛け、その頭蓋を叩き潰さんと右の触手が振り下ろされ―――なかった。
無惨が振るっていたのは左の触手で、狙いも胴を薙ごうとしていた。
その触手も、青年の持つ巨大な棍棒のようなもの―――鉛筆で防がれる。

「...!?」

まただ。また、自分が考えている攻撃とは違うものを繰り出していた。
困惑に囚われる隙を突き、カナヲは青年を引っ張り戦線離脱を図ろうとする。

が。

ドンッ、とその硬い背中で押され、カナヲは勢いよく弾き飛ばされる。

「カハッ!?」
「对不起(ごめんね)!僕、一人でこの人と戦いたいからさ!君たちは離れてた方がいいよ!」

吹き飛ばしたカナヲには一瞥もすることなく、青年は無惨に向き合い笑顔のまま鉛筆を構えなおす。

「那么,斗争吗(さあ、やろうか)」

その言葉にピキリ、と額に青筋が浮かぶ。
たかだか一人の人間が私を斃そうというのか。
あの一方的な戦況を見て、勝てると思い込んでいるのか。
まったくもって不快だ。思い上がりも甚だしい。
いいだろう。いいだろう。
貴様の妙な小細工ごとその薄気味悪い笑顔を潰してくれよう。

無惨は両の触手を同時に振るい青年の顔を潰そうとする。
青年はそれを受けるではなく、身を屈め躱し、強く地面を踏み込み高速で前進する。
無惨は青年の挙動を見て冷静に分析する。

なるほど。人間としては上澄みと言える身体能力を有しているらしい。
だがそれでも所詮は柱と同程度。自分の敵ではない。

(小細工で狙いを逸らそうとも無駄だ。奴が間合いに入ったところで、蹴り上げてやればいい)

無惨が狙うのは触手を使わぬ蹴撃。触手を自在に操れなくするというのなら、そもそも躱すことが出来ない距離で攻撃してやればいい。
迫る青年を間合いに入れる為、待ち受けようとする無惨。

「なに...!?」

だが、彼は足を動かしていた。たたらを踏み、青年から距離を取るように足が勝手に後退し始めたのだ。
青年はその様子に、ニィと口端を釣り上げ、巨大鉛筆を握りしめ直し、無惨の胸部へと放つ。

「可哀想...待ちたかったんだよね、真実(ほんとう)は」

己の行動を見透かしたかのように笑みを浮かべながら棒を振るう青年に、憎悪と嫌悪を抱きつつも困惑する。

(やつの小細工は攻撃に対するものではないのか!?)

一度目と二度目は攻撃手段を思考とズラされた。三度目は行動そのものが、思考を否定するかのように邪魔された。
奴は己への敵意ではなく、行動そのものへと干渉している。
その結論に至った瞬間、無惨の表情は憤怒で真赤に染まりあがった。

(気づいたのは三回目、か。少し遅かったな)

怒りのままに振るわれる触手と怒気を捌きつつ、青年―――シェンは考える。
眼前の彼は戦闘の経験が少ない。
だから、自分の否定能力『不真実(アントゥルース)』がどういうものかはわかっていても、アンディやスポイルのように対象を視界に入れるのが条件であることにはたどり着いていないだろう。
けれど、それを補うほどの膂力がある。
人間を容易く引きちぎれるほどの。己の功夫と武器を通して受けてもノーダメージでは防ぎきれないほどの力が。
純粋な暴力の高さだけで見れば、大型UMA相当の力を有しているのが眼前の男だ。

防御に回した鉛筆ごと後方に弾き飛ばされ、地面を舐め頬に痣を作りながらもシェンは笑う。

「いいね!きみの強さ、僕の夢の糧にさせてもらうよ!あ、ちなみに僕の夢は天下無双だから!」
「思いあがるな異常者が...!」

歓喜と怒りの念が交差し、間髪入れずに戦闘は再開する。

「栗花落さん!」

無様に地面を舐めるカナヲに、シンは慌てて駆け寄り容態を看る。

「大丈夫っすか栗花落さん!」

殊更に心配するシンに、カナヲは手で制し大丈夫だと告げる。
そんな彼女にホッと一息を吐くと、シンは青年へと視線を移す。

(さっきの打撃のダメージは大したことはなさそうだけど...あいつ、なんてやつだ!)

青年は無惨の猛攻にも怖気づかず立ち向かっている。
そこまではいい。
それだけならばカナヲも自分もやったことだから。
けれど、エスパーで思考を読めば彼の異常さを嫌でも思い知らされる。

(あいつ...この状況を楽しんでやがる!)

自分もカナヲも、己の命を繋ぐのに必死だったのに対し、青年は自分が優勢に立っているわけでもないのに、無惨の強さに心底喜んでいる。
戦闘狂。
殺し屋をやっている中で稀に見た類の狂人だ。

(幸い、こっちを敵視してないだけマシか...今のうちに逃げねーと!)

シンは殺し合いに抗う者ではあるが、自ら勇んで死地に向かう愚者をも救いたいと思えるほどお人よしではない。
殺戮者と戦い時間を稼いでくれるなら願ったり叶ったりだ。
シンはカナヲの手を引き、アキのもとまで運ぶとすぐに撤退の準備に入る。

「今のうちに逃げるっスよ!早川さんは俺が担ぐんで...栗花落さん?」

アキに肩を貸し、逃げようとするシンだが、返事をしないカナヲに嫌な予感がして足を止める。

(まさか、あの狂人も助けようって言うんじゃ...)

鬼殺隊はただの復讐者ではなく、民間人を護るためにも戦っている。
だから会って間もないアキやシンも護ろうと戦うし、無惨の攻撃も率先して引き受けてくれた。
その為、如何な人間であれ護ろうと無茶をするのではないか―――シンの懸念は杞憂に終わる。

カナヲの顔が青ざめ、ガクガクと身体を震わせていた。
明らかに様子がおかしい。この症状は恐怖や疲労とはまた別のモノだ。
シンが思わず手を差し出そうとしたその時だ。

―――鮮血が、舞った。

カナヲの口から血が溢れ出したのだ。

「なっ!?」

シンは驚愕しつつもカナヲの容態を看て推察する。
この出血の仕方は単なる外傷ではない。実際、カナヲは指など身体の一部は斬り落とされても致命的な傷だけは防いでおり、後から響くような打撃も受けていない。
ならば考えられるのは、殺し屋世界における代表的な殺害方法の一つ。
速攻性はなくとも、確実に敵を葬れる暗殺における代表役。

「毒...!?」

シンの呟きにカナヲは理解する。
鬼舞辻無惨の血は人を鬼に変える。しかし、全員が適合する訳ではなく、適性のない者はそのまま死に至ってしまう。
つまりだ。

「たぶん最初の指を斬り落とされた時...無惨の血を入れられたんだと思う」
「ッ...治す方法は!?」
「わからない。けれど、たぶん私はもうすぐ死んでしまうと思う」

己の命の期限が迫る中、カナヲはかえって冷静になれた。
鬼舞辻無惨は全ての元凶であり鬼殺隊員全ての怨敵だ。
カナヲ自身は比較的因縁が薄いとはいえ、恩人であり愛する蝶屋敷の面々が救われるなら絶対に斃したいと思っていた。
だから、この逃げ道を塞がれた状況はかえって彼女にとっては有難かった。
怨敵を前に逃げ出したという負い目を抱えることなく、最期まで立ち向かえるというのだから。

「私は逃げても無駄みたいだから...行くね」
「待て」

無惨のもとへ向かおうとするカナヲを呼び止めるのは、アキ。
彼は痛む身体に鞭うち息を荒げながら問いかけた。

「あいつの血が毒になってるなら、あいつが死ねばあんたは助かるんじゃないか」
「...どうだろう。斃されたことがないからわからない」
「俺はデビルハンターとして色んな悪魔を見てきたが、そういう呪いじみた攻撃をしてくる奴の対処法で一番確実なのはそいつを殺すことだった」
「...俺はそういう妖怪じみたやつのことはわからないけど、是非はどうあれ、あいつを殺さなきゃなにもわからないってことスよね」
「そうなるな...それが出来る可能性が無いわけじゃない」

己のデイバックに手を入れたアキを見て、シンとカナヲは思い出す。
無惨の襲撃に会う数十分前。
三人の配られた中で一番強力且つ最強の防御手段だったソレは、身体能力が一番低いアキが持つべきだと押し付けたことを。
説明書の効果を信じるなら、確かにあの無惨をも倒せるかもしれない。
けれど、ソレを防御ではなく無惨打倒に使う場合、高確率で使用者は死ぬ。
当然だ。なんせソレは相手に密着した状態でなければ使えないからだ。
だが、カナヲが命を繋ぐにはもはやソレに頼るしかないのが現状だ。

早川アキ。
栗花落カナヲ。
朝倉シン。

この中で最もソレを使うのに相応しいのは

「俺がコレで殺してくる」「これは私が使うべき」

アキは未来の悪魔の力で数秒先の未来が見える自分が適任だと思った。
カナヲは自分の命を救うためにアキとシンの命を散らせたくないと思った。
アキとカナヲ、二人の言葉は同時だった。
だが、初動が早かったのは―――カナヲ。
シンがエスパーで思考を読み取るよりも早く、アキの腕を掴み上げ、ソレを掠め取ると、シンとアキが止める間もなく駆け出していく。

「栗花落ッ!!」

止めようとする二人を瞬く間に引き離す速度でカナヲは駆ける。
三人の中で一番身体能力が高いのはカナヲだ。だから彼女は止まらないし、彼らは止められない。

(ごめんね二人とも。私のことはいいから。貴方たちが護りたい人たちの為に戦って)

仮に無惨の殺害が成功したところで、アキの推測通りに自分の毒が消えるかはわからない。
そんな賭けに二人を巻き込み犠牲にするわけにはいかない。

(私の問題は私が片をつける)

手に持つソレを残された指で握りしめ、カナヲは駆ける。



私の大切な人たちはずっと苦しそうだった。ずっと悲しそうだった。

感情をうまく出せなかった私はそれを見ても涙を流せず、汗だくになるのが精いっぱいだった。

そんな私をみんな責めなかったけれど、そのたびに心の中で思っていた。

みんなと一緒に泣けなくてごめんなさい。泣けない理由を言い訳にしてごめんなさい。

それだけじゃなくて。

大好きなみんなを泣かせる鬼が、私は許せないと。

密かに、けれどずっと思っていた。



息を切らし、身体のところどころに痣や切傷を負いながらも笑顔を絶やさぬシェン。
息を切らすことなく、身体につけられた傷など見当たらないにも関わらず、額に青筋を浮かべ険しい顔を浮かべる無惨。

どちらが優勢かは火を見るよりも明らかであるのに、どちらが追い込まれているかがもはやわからないほど、戦況はあべこべだった。

シェンは無惨との戦いを楽しんでいた。
不真実はしっかり発動し、技量では勝っている筈なのに、それだけでは勝利出来ぬ無惨の強さ。
今まで戦った中で一番強いのは、アンディのもう一つの人格『ヴィクトール』だが、彼に次ぐ強さを見せてくれる者などこれ以上なく貴重な体験だ。

無惨はひたすらに不愉快になっていた。
明らかに自分よりも劣る人間を中々殺せない現実に。己の行動を制限されるという異常事態に。
今の彼は、夏場の蚊に苛立つ人間に近い心境にあった。

再びシェンが地面を蹴り、無惨に立ち向かう。短時間の間に幾度も交わされるも、しかし未だに打開できず。
無惨にとってある種、困難ともいえるこの状況。しかし遂にその均衡が崩される。

その要因は、彼の才覚によるものだった。

例えば一つの複雑怪奇な数式があったとしよう。
人間の数多の数を占める『凡百』は、その過程を計算で答えを出しその速度で才能の優劣を決める。
だが一部の『天才』は違う。過程を省き、閃きでその答えを脳髄に浮かばせる。それは高度な脳の下地が合理性を極めて導き出した答えであるからだ。
ひたすらに合理的に死を回避する鬼舞辻無惨は紛れもなく後者であった。
その彼が現状を打破する為に直感的に行ったのは、シェンの視界外からの攻撃による殺害。
実際、彼の出した答えはこれ以上なく正しかった。
シェンの否定能力『不真実』は好意を抱いている対象を視界に入れることで発動する。
常時発動している訳ではないが、しかしシェンの築いてきた戦闘経験値は彼に的確な判断力を齎し、且つ彼自身の鍛錬の賜物である功夫と肉体を掻い潜って殺害するのは、実力が勝る者でも困難極めてしまう。
『不真実』の能力の全容を知り、背後を取ろうとすれば正面から挑んでしまい、避けようとすれば避けられず。
言葉で嫌われようとしても戦闘狂である彼には如何な罵倒も通じず、どう足掻いても正面から不真実に晒されたまま戦うハメになってしまう。
故に、常に視界に入れられている一対一の戦いにおいてシェンは難攻不落の要塞ともいえるだろう。

しかし。
鬼舞辻無惨には彼にのみ許された特権があった。彼の身体には五つの脳が生えており、それすらも破壊されない為に位置を定めず体内をぐるぐると蠢いている。
その脳はどれもが鬼舞辻無惨そのものであり、思考はなくとも合理性の極められた指令を出せる高度な脳であった。
故に、そのうちの一つが無惨の足元にまわった瞬間、無惨がなにがしかの行動をする前にひっそりと足の平から地面に触手を放ち、そこを掘り進んでも不真実の対象にはならない。
他の四つの脳が不真実に苦戦している間も、地面を進む一つの脳はシェンの視界外にあるため不真実から外れることが出来るのだ。

不真実は対象の脳の指令の伝達を否定する能力である。
如何な天才であれど本来は脳は一つであり、仮に無惨と同じことをしようとも不真実からは逃れることはできない。
これが鬼舞辻無惨の特権。生きる為に合理性を極めた生物にのみ取れる解答である。

数秒後、無惨本体の攻撃を鉛筆で受け、その隙を突かれたシェンは地面を突き破り伸びた触手に背後からその心臓を貫かれる。
それが覆らない結果。無惨の5つの脳のうち、一つしか知り得ぬ確定された未来だ。


その未来を『視た』者が一人。


「栗花落、中華の足元だ!!」


叫ぶのは、比較的遠距離から戦況を見ていたアキ。
彼はカナヲはもはや止められないと判断し、せめて彼女を手助けしなければと未来を視た。
そこには、地面から生えた触手に背後から心臓を貫かれるシェンの姿が映っていた。
だから叫んだ。
シェンを助ける以上に、カナヲの持つソレを決定的な有効打にするために。

戦場を駆けていたカナヲは、反射的にシェンの足元を見る。
その数舜後、盛り上がる地面を見てカナヲは理解する。
無惨のやろうとしていたことと、アキの叫びの意図が。

(ありがとうアキ)

心中で礼を述べ、カナヲは己の眼球に全神経を注ぎ込む。

―――花の呼吸 終の型 彼岸朱眼

見開かれ、現れるは朱色の瞳。
カナヲの視界に映るのは、地面を破壊しゆっくりとシェン目掛けて迫る一本の触手。
彼女の目が赤く染まったのは、動体視力を極限まで上げたことによる眼球への圧力で出血した結果であり、その恩恵として周囲の動きは鈍く遅く見える。
だからカナヲは握りしめたソレを一寸の狂い無くシェンと触手の合間に挟みこめた。
本来ならば貫かれる掌は、しかしなにを貫くこともなくカナヲの掌に触れるのみだった。

「えっ!?」

背後の騒動に思わず振り返るシェンだが、『不真実』を発動する暇もなくカナヲは無惨のもとへと駆けていく。

(なんだ?)

その行為に無惨は違和感を抱く。
死にかけの隊士がやぶれかぶれに特攻するのは配下の鬼を通じて腐るほど見てきた光景だ。
それだけならばとるに足らぬと捻り潰すだけだが、カナヲがシェンを庇った一連の流れの違和感を見過ごすことはできなかった。
鬼殺隊にとって日輪刀は生命線である。
これがなければ鬼を殺せず、唯一の有効打であるために防御においても自然と日輪刀を用いる。
だが、いまカナヲは日輪刀を使用せず、掌でシェンを庇った。
しかも、触手はシェンの背中どころかカナヲの掌すら貫くことが出来なかった。

(あの掌―――なにか危険だ)

無惨の脳髄が警鐘を鳴らす。
一旦、距離を取ろうとするも、しかし動けず。

(またやつの術か!)

シェンは咄嗟に『不真実』を発動し無惨とカナヲを見ていた。
結果、無惨はその場に留まったが、しかしカナヲは止まらなかった。
『不真実』は好感度によって発動の成否が別れる。
シェンは無意識のうちに、攻撃を庇ってくれた感謝よりも、無惨との戦いに横やりを入れられたという不快感を抱いていたのだ。
カナヲにとってはそれが幸いした。お陰で彼女が無惨の逃亡を許すことがなくなった。

無惨本体の怒りに思考が煮えだつよりも早く、シェンの背後の触手が彼に攻撃を仕掛け、それを鉛筆で受け止めたシェンの視界が無惨とカナヲから外れる。

これで相対するのはカナヲと無惨の脳四つ。
無惨は両腕と背中の触手をさらに細かく枝分かれさせ、とにかくカナヲの接近を阻害する為に効果範囲を広げたのだ。

(ダメ...数が多すぎる!)

いくら動体視力が優れ全てがゆっくりに見えても、彼女の肉体は一つであり限度がある。
全ての触手が人体を穿つのに十分な威力を有しながら、且つ速度も保っている。
その数は百以上。
迫る触手の群れに絶望するよりも早く、カナヲは判断を下す。

「―――――ッ!!!」

声にならぬ咆哮を上げ、右手のソレで触手を受け止めていく。
その一方で、日輪刀を握る左腕には瞬く間に無数の孔が穿たれていく。

(護るのは足と頭だけでいい。左腕は―――捨てる)

防ぎきれなかった頭部への被弾で鮮血と共に肉と髪が舞い散ろうとも構わない。
のけぞりかける頭部を無理やり前へと向かせる。
ぶちぶちぶち。
千切れていく筋繊維と肉と骨から伝わる激痛に悲鳴を上げる左腕にも耐え、決して減速しないように歯を食いしばる。
負けるものか。絶対に退いてたまるものか。
私がここで全てを終わらせるんだ!

(カナエ姉さん、私に力を―――みんなを護る力を!)

ぶちり。
カナヲの左腕が千切れ跳び、大量の出血と共に鬼を斃すための刀すら吹き飛んだ。
薬物を使用していない人間である以上、この地獄のような激痛から逃れることはできない。
現に、カナヲの目からは涙が溢れている。
なのに。
カナヲは、あろうことか感情を表に出すことを苦手としていた栗花落カナヲが嗤った。

(良かった...これでみんなを、師範を護れる!誰も死ななくて済む!)

減速することなく、無惨の懐に跳びこむカナヲ。
がら空きの胴体に向けて、カナヲは残された右の掌を伸ばそうとする。
握りしめたソレは充分に衝撃を食わせた。
たとえこれで殺せずとも間違いなく次につなぐことはできる。

(私の命も、なにもかもをあなたに全部あげるから。だから一緒に死にましょう)

己の死を覚悟した瞬間、カナヲの脳裏に幾つもの顔が浮かんでは消える。
売りに出されかけ、自分を本当の妹のように扱い自分を救ってくれた胡蝶しのぶと胡蝶カナエ。
カナヲが感情を表に出せなかった為に付き合いに四苦八苦しながらも、それでも家族同然に扱ってくれたアオイたち蝶屋敷の面々。
鬼殺隊で会い、共に鍛錬と経験を積んだ志を同じくする仲間たち。
この殺し合いで出会い、共に抗おうとしてくれた心優しき二人。
凍てついていた感情に温もりを取り戻すキッカケを与えてくれた少年、竈門炭治郎。

走馬灯。
死の間際に瀕した者が見るという、脳髄から振り絞られた記憶の波。
不思議と、その中には嫌な記憶など一つもなかった。
まるで安らかな旅路を願うように、綺麗なモノしかそこにはなかった。

(ああ、こんなに穏やかな気持ちで死ねるなんて思ってもみなかった)

全身を蝕む痛みさえどこかに消えてしまうほどに、幸せな記憶に微睡ながら、カナヲは優しく微笑んだ。











パギャ











その音は絶望への汽笛。

(え?)

無惨へと向けていた右腕が、届くことなくずるりと落ちていく。
同時に、視界がぐらりと傾いて地面に落ちていく。

ズキリ。ズキリ。

無くなっていた筈の激痛がぶり返してきて、左腕と右腕、そして胸から下までもが苛まれる。

(うそ。なんで)

自分の腕も、迫る地面もひどくゆっくりに見えた。
墜ちていく視界の中、カナヲは見た。
無惨の両手と背中から生えた幾本もの管。それとは別の、ズボンを突き破り、腿から生えた八本の管が。
そして理解してしまった。
自分はいま、あの管に身体と右腕を両断されてしまったのだと。

(いやだよ)

先ほどまであった執念が深く暗いモノに沈んでいく。
首だけになっても食らいつこうとする気概すら消し去られてしまう。
なのに。
朱色の目は現実を嫌というほど突きつけてくる。
ゆっくりと、逃がさないように。
己の下半身が前のめりに倒れ、中に詰まっていた赤いモノが地面に零れようとするのを。
栗花落カナヲは、鬼舞辻無惨に対して一矢報いることなく殺されたという地獄の景色を。

(どうしてこんな)

私、頑張ったのに。
痛いのも苦しいのも我慢してすごくすごく頑張ったのに。
どうして―――あいつはあんなにも澄ました顔で佇んでいるの。

「いやだ」

思わず声が漏れる。
それが最期の言葉になるというのに、どうしても止められない。

くしゃくしゃに顔を歪めたカナヲが遺した言葉は、愛する者たちへの感謝でも遺言でもなく、怨敵への呪詛でもなく。

「いやだよぉ」

ただ一人の、絶望に染められた少女の嗚咽だった。





「わかってるよ、そんなこと」





憧れた人がいた。

彼は全ての悪党から恐れられ、全ての殺し屋の憧れだった。

そんな彼が殺し屋を止めてまで護りたいと願うモノの正体を知った。

そして学んだ。人間は守るものがある方が必死に戦えるのだと。

その護るものは、あったかい方がイイもんだってことを。

そして思ったんだ。このあったかいものは、俺だって全身全霊で護り抜きたいと。




シンは少女に対してなにもできなかった。

ただ、駆けていくカナヲには身体能力の差で追いつけず、無惨の攻撃の盾になるどころか、彼女を盾にする形で追走するだけで。
結果的には、カナヲを犠牲に無惨の懐へと飛び込むことしかできなかった。

「貴様の存在に気が付いていないとでも思っていたか?」

カナヲの影に隠れていたシンの存在に、無惨は既に気が付いていた。
だからなんら慌てることなく、腿から放つ管を正確にシンを抹殺する為に放つことができた。
迫る死の脅威にシンは―――ひどく冷静だった。

カナヲへの追悼もなく。己の心臓を貫こうとする管にも恐怖を抱かなかった。

彼は殺し屋だ。
幾多もの銃口を向けられる死地には慣れているし、敵味方の死も経験している。
だから、たとえ左腕が貫かれようとも、即死に繋がる攻撃は避け、この状況を打開する術に手をかけることが出来た。

(ああ、わかってんだよ、栗花落さん)

エスパーを使わずともわかる。
このまま何も残せず終わるなんて嫌だ。そんな彼女の想いが。
それはそうだ。
あれだけ必死に食らいついて、目前にまで辿り着いたというのに。
その結果があのエセマイケルのすまし顔ときた。

(そんなモン、許せるわけがねえよなぁ)

彼女はこんな仕打ちを受けていい子ではなかった。
誰かを常に庇い護ろうとする心優しき少女だった。
きっと、坂本の妻のように、結婚したら人を温かくしてくれる素敵な女性になるはずだった。

それを目の前のこいつは奪った。少女の最期が無念に終わってしまった。

(だったらやるしかね~だろ...そうだろ坂本さん)

この機を逃せばもはやチャンスはない。
少女の無念を無念で終わらせない為に。逃げて追いつかれて殺されて彼女の死を無駄にするのではなく、たとえ五体満足じゃなくても生きて活路を開くために。
この殺し合いを終えた後、彼女の墓を建てて労いと感謝の言葉をかけてやるために。

彼は、朝倉シンはこの期に及んでも未来のことを見据えて死地に臨んでいた。

ドッ、と音を立て吹き飛んだ左腕。
知ったことか。俺が生きてこいつを倒せれば俺たち―――俺と栗花落さんと早川さんの勝ちだ。
それが彼女にとって一番の手向けになるはずだ。
拾い上げたカナヲの右腕を無惨の腹部に当て、彼女が握りしめていたソレの名をそっと唱えた。



「『排撃(リジェクト)』」





俺は自分の無力さが嫌いだ。吐き気がする。

俺と関わった奴はいつも死んでしまう。

いつも。

いつも。

いつも。

いつだって俺だけ残してみんな逝ってしまう。

もう目の前で死なれるのはご免だと何度思った。何度も決意した。

なのに、なんで俺は同じことを繰り返してしまうんだ。


早川アキはガクリと膝を着いた。
爆弾でも落ちたかのような規模の爆発は周囲に暴風が踊り、砂塵を巻き上げる。
やがてその砂塵が晴れた先にはなにもなかった。
カナヲも、無惨も、シンも。
ただ、半径数十メートル規模の陥没があっただけで、そこに生者はいなかった。

初めはアキが手にし、次いでカナヲが、最後にシンが使った支給品の名は排撃貝(リジェクトダイアル)。
空島で作られた、与えた衝撃を吸収し、自在に放つ衝撃貝(インパクトダイアル)と同じ性質を有しながら、出力が10倍を誇るという古代の絶滅種である。
当然ながらノーリスクではない。反動は凄まじく、特に排撃貝は使用者の命を危険に追いやる可能性がある諸刃の剣だ。
無論、そのことは支給品の説明書に書かれてはいたが、本来ならば使用者は死なない範囲で使うのが常識だ。
当然ながら、支給品の説明書にはそんな型破りな使用用途の例など記載されているはずもない。
ましてや、人体や家屋を容易く破壊する攻撃を数十発以上吸収し、それを10倍にして放つなど。
結果、朝倉シンの身体は反動に耐え切れず跡形もなく四散した。
誰もが想定だにしていなかった結末である。

「シン...栗花落...」

アキの顔には無惨を倒した喜びなど微塵もなく。
ただただ後悔と無力感だけが滲んでいた。

最初の不意打ちを防ぐのに失敗し重傷を負った挙句にカナヲにまで被害を及ぼした。
シンがカナヲへの加勢に向かう中、怪我が尾を引きなにもできなかった。
排撃貝をカナヲが掠め取った時にも、身体能力の差で引き留めることもできなかった。
シンが追い付けないなりにそれでもベストを尽くしたのに対し。アキは彼に追いすがることすらできなかった。
アキは、この戦いにおいてなにもできやしなかった。

「また...俺は...」

いつもそうだ。
バディを組んだ者はすぐに死なせ。
長らく組んでくれた女性は自分を救うために悪魔に全てを捧げて消滅し。
自分を庇う為に大勢の顔なじみが死んだ。
なのにアキはいつも生きている。いつも仲間の死を見届けている。
誰も救うことなく、いつも誰かに生かされている。
自分はいつも護られるだけの弱者だ。

早川アキの目に涙は流れない。
流すには関わった時間が短すぎるし、なによりここに至るまでも死を見すぎて枯れてしまった。

「...おぇっ」

ただただ、無力さに打ちのめされた少年の嗚咽だけが、そこにはあった。



ザパァ、と豪快な音と共に水滴が撒きあがり影が浮かぶ。
びちゃびちゃと音を立てて地面を水が濡らす。

「...ッ!」

影―――鬼舞辻無惨は苛立ちと共に地面を殴りつけた。

(やってくれたな...あの男め...!)

シンが排撃貝を突き出した瞬間、無惨は後方に跳び躱すつもりだった。
なのにその足は前に向いていた。またもやあの小細工能力だ。
だがそれだけならばまだシンの持つ手を弾き飛ばすなり防げる手はあった。
なのに、あろうことかシンは咄嗟に屈みその腕を地面に押し付けた。
結果、直撃こそはしなかったものの、排撃貝から放たれた衝撃は小規模な爆発を起こし、無惨はその煽りを受け遥か彼方へと吹き飛ばされてしまったのだ。

(奴だ...奴さえいなければ、私の得点は十五点になっていた筈だ!)

無惨が憎悪するのは、妙な術を使う中華風の男。
アレの乱入で全てが狂った。
殺せるはずの獲物はほとんど殺せず、要らぬ疲労と手傷を負ってしまった。

(奴は必ず殺す)

この程度の傷であれば放っておけば再生する。
ギリリ、と憎悪と憤怒の表情を浮かべ、鬼の王は獲物を求めて歩き始めた。





【栗花落カナヲ@鬼滅の刃 死亡確認】
【朝倉シン@SAKAMOTO DAYS 死亡確認】

※シンは自爆扱いになるため、無惨がポイントを獲得できたのはカナヲの分だけです。

【一日目/未明/F-6/水辺】


【鬼舞辻無惨@鬼滅の刃】
[状態]:ダメージ(中、再生中)、疲労(中)、激怒、憎悪、半裸。
[ポイント]:5
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品1~3
[思考]
基本:10人殺す。願いを叶える。
1:再生しながら次なる獲物を探す。
2:袈裟の男(羂索)も殺す。
3:自分にポイントを献上しに来ない配下の鬼共、どうしてくれようか。
4:先ほどの連中(アキ、シン)とあの中華風の男(シェン)は絶対に許さない。
[備考]
産屋敷邸襲撃前より参戦。
シンはまだ生きていると思っています。




(申し訳ないことをしたなあ)

シェンは爆心地跡を見ながらしょんぼりと眉を下げる。
無惨とシンの最後の攻防。
シェンは不真実を使用しながらそれを見ていた。
カナヲの必死極まる攻防、そしてその無念を継ごうとしたシン。
如何に戦闘狂といえども、彼らの覚悟を無為にするほどシェンは人でなしではなかった。
だから彼は逃げようとする無惨を否定した。結果、それは成功した。
彼にとって想定外だったのはシンだ。
無惨とカナヲ・シンの戦いに割って入る前、シェンは三人を視界に入れて不真実を使っていた。
その時はカナヲと無惨だけ影響があり、シンには効果が及んでいなかった。
シンの人となりがわかっていなかった以上、あの時の彼の強さではシェンの好感度はあがらなかったからだ。
だが、最後の攻防で。
彼は死地にいながらも冷静に行動し、最適な解を取り無惨の喉元に食らいつきかけた。
その姿を見てシェンはシンを好きになってしまった。
如何に否定能力を使いこなしているとはいえ、他者に対する好感度の自在な調整だけはできないのだ。
だから、排撃貝を無惨に向けて使用しようとしたシンは地面に向けて放つことになり、結果として無惨は吹き飛ばされこそはしたが、恐らく生き残ってしまった。


「...真的对不起(本当にごめんね)。このお詫びは必ずするからさ」

シェンは爆心地に残された不壊刀を回収し、蹲るアキに肩を貸し、場所を移動するように促す。
彼らはこの青年を護ろうとしていた。
なら、せめてこの彼を治療できる場所まで運ぶことで罪滅ぼしをしよう。

残された二人の男は、とぼとぼと頼りない足取りで診療所へと向かうのだった。




※排撃貝@ONE PIECE(カナヲの支給品)、カナヲとシンの支給品一式は全て衝撃で吹き飛びました。


【一日目/未明/E-7】


【シェン@アンデッドアンラック】

[状態]:全身にダメージ(中)、疲労(大)
[ポイント]:0
[装備]:ウルージの巨大鉛筆@ONE PIECE
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品1~2、不壊刀@アンデッドアンラック
[思考]
基本:強者を探し戦いを挑む。
0:ファンと戦い倒す、
1:強者であれば手合わせ願う。状況によってはアンディも対象。
2:さっきの人(無惨)ともまた手合わせ願いたいな
3:弱い人は特に興味ないかなー。風子ちゃんみたいな真っすぐな子は嫌いじゃないけど。
4:アキを診療所へ運ぶ。

【ウルージの巨大鉛筆@ONE PIECE】
シェンの支給品。怪僧・ウルージが扱う棍棒のようなもの。
パシフィスタとの戦いでも壊れていないあたりかなり硬いことが窺い知れる。
SBSにて、巨大な鉛筆であることが判明した。もしかしたらウルージさんはこの鉛筆を削れる鉛筆削りを探して空島から偉大なる航路に乗り出したのかもしれないとのこと。

【不壊刀(倶利伽羅)@アンデッドアンラック】
シンの支給品。『不壊』の否定能力を持つ"一心"により作られた刀。
文字通り決して壊れない頑強さを持つ。




【早川アキ@チェンソーマン】
[状態]:全身打撲。頭から出血。左腕の骨折。脇腹に裂傷。精神的ダメージ(絶大)、無力感(絶大)
[ポイント]:0
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品1~2
[思考]
基本:殺し合いには乗らない。
1:俺は...また...
2:デンジ、マキマさんと合流したい。パワーは……大丈夫だろうな?
3:猗窩座、サムライソードには警戒。
[備考]
栗花落カナヲ、朝倉シンと情報交換しました。
未来の悪魔との契約後、闇の悪魔との戦闘前より参戦。
支給品の一つである日本刀@現実は粉々になりました。


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スピカ 投下順 一番強いヒーローの
スピカ 時系列順 一番強いヒーローの

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鬼ごっこ 早川アキ 翳る心
鬼ごっこ 鬼舞辻無惨 沸血インヘリット
START シェン 翳る心
鬼ごっこ 栗花落カナヲ GAME OVER
鬼ごっこ 朝倉シン GAME OVER


最終更新:2022年12月20日 21:17