蜘蛛糸は垂らされず ◆5IjCIYVjCc
元王下七武海の海賊、ドンキホーテ・ドフラミンゴ。
元懸賞金、3億4000万ベリー。
年齢、41歳。
この男の悪名や所業は、海を越えた世界中に伝わっている。
七武海に加盟するきっかけとなったのは、世界政府を脅迫する形だった。
ドレスローザという国を自分の能力を利用した謀略で乗っ取った。
その国に住む小人族や民、そのほか様々な人々を奴隷として武器等を製造する工場で働かせていた。
そして、自分の地位を隠れ蓑に闇の仲買人"ジョーカー"としてカイドウを始め新世界中の大海賊や様々な国家を相手に密売の取引をして富を得ていた。
だが最後は、麦わらのルフィに敗れ、築き上げた地位も追いやられ、海軍により逮捕・投獄された。
その名を持つ男が、この死滅跳躍とも呼ばれる殺し合いの舞台の上に降り立っていた。
しかし、ここにいる彼は前述したような男ではなかった。
同姓同名の別人という訳ではない。
外伝的で並行的な世界の存在という事でもない。
ただ、時間が大きくずれていた。
◆
「……ここは、どこだえ」
地図から見ればG-8に位置する場所、遊郭内のある場所で金髪の少年が1人ポツンと突っ立っていた。
まだ齢が10にも満たないであろう子供だ。
「父上ー!母上ー!ロシー!」
子供は大声で自分の家族を呼ぶ。
だが、それに応える者はいなかった。
それに対し、彼の中では苛つきの感情が募っていく。
声も荒立っていく。
「おい!いいかげん誰かいないのか!ドレイもどこだえ!」
この一人ぼっちの少年こそ、後の悪名高き海賊、ドンキホーテ・ドフラミンゴだ。
彼は、まだ何の力も身に着けていない、子供時代の頃からこの戦いの場に招待されていた。
◇
ドンキホーテ・ドフラミンゴは本来、絶対的な権力者の世界貴族"天竜人"である。
最も、今の彼自身には、その称号は存在しない。
天竜人特有の髪型や服装もしていない。
しかし、今はもう天竜人では無いという自覚は彼の中には無い。
ここにいるドフラミンゴは、父に連れられてマリージョアから下界に降りたばかりの頃だ。
自分が世界最高の権力者の一人ではなくなったことをまだ理解できていない時期だ。
「あいつ、下々民のくせに…!このおれをだれだと思っているんだえ…!よくもこんな汚い場所に…!ただで済むとは思うなえ…!」
ドフラミンゴ少年の表情は濃い憤怒の色に染まっていく。
現在彼のいる場所は、遊郭の中でも最下級に位置する切見世という所だ。
これまでの8年間、何不自由育ってきた彼にとっては相当不潔な所だと感じる。
自分が今の状況になっている原因が先ほどの額に縫い目のある男(羂索)にあることは何となく分かっている。
男が自分に向かって殺し合いをしろと言っていたことも何となく覚えている。
だがそんなことは、ここにいるドフラミンゴにとってはどうでもよかった。
羂索のこともまた天竜人である彼にとっては一人の下々民だと認識している。
考えるのは、あの無礼者の男にどれだけ苦しい罰を与えられるのかといったことだった。
あの男は天竜人である自分を誘拐した、ならば海軍大将が動かないはずは無いとドフラミンゴは思っている。
きっと、父上が海軍を動かしてくれているのが当然のことだと認識している。
そして海軍がこの島に来てくれれば、あの男を捕まえて、然るべき報いを与えられると思っている。
ただ殺すだけでは納得しない、奴隷にして徹底的に思い知らせてやると考えている。
殺し合いについてもドフラミンゴ少年は真っ当に取り組むつもりはない。
そもそも、天竜人である自分がこんなことを問題として扱うこと自体がおかしな話だ。
自分がこんなことで命を落とすなんてことを想像もしていない。
人間を殺すにしても、誰を殺すかどうかはあんなムカつく無礼者に指示されてやることではない。
10人殺せばいいのだと言われても、そんな下々民が勝手に決めたルールを守るだなんてありえないことだ。
殺すのか、それとも奴隷にするのかといったこと等は天竜人である自分が決めることだ。
せいぜい、ムカついた奴から殺すまでのことだ。
◇
最後に、ドフラミンゴが確認している支給品の一つについてここで述べる。
彼がデイパックから見つけたそれは、はっきりと言えば、悪魔の実であった。
悪魔の実とは、食べると海を泳げなくなる代わりに超常的な能力を得られる不思議な果実のことである。
模様は違うような気がするが、まるでリンゴのような形をしたその果実は確かに悪魔の実であるらしかった。
そして、ここにいるドフラミンゴはこの実を自分で食べるつもりはなかった。
本来の歴史において、ドフラミンゴはイトイトの実という超人系の実の力を得ることになる。
だが、そうなったのはその時の彼が復讐の力を求めていたからでもあった。
まだ地獄の経験をしていないこのドフラミンゴにとって、悪魔の実は自分で使うものにはならない。
天竜人にとって、悪魔の実とは奴隷に余興で食べさせて遊ぶものだ。
そんな彼の持つこの神秘の果実は、実は純粋な悪魔の実ではない。
だがドフラミンゴはこれが悪魔の実であることを確認した後、説明書の続きもろくに目を通していないため正確な正体に気付いていない。
これは、世界最大の頭脳を持つ男ベガパンクによって作られた"人造悪魔の実"だ。
それも、この死滅跳躍の舞台にも呼ばれている大海賊、百獣のカイドウの血統因子を抽出して作られたものだ。
ベガパンク本人はこれを失敗作としている。
ただ、今のドフラミンゴにとってはそういったことには関心はない。
使うとしても、遊ぶために奴隷に食べさせようと思った時になるだろう。
◆
自覚なき元天竜人、ドンキホーテ・ドフラミンゴ少年。
懸賞金、0ベリー。
年齢、8歳。
今日が彼の新しき下界デビューだ。
きっとどちらも、彼にとって地獄であることには変わりない。
【G-8/遊郭・切見世/1日目・未明】
【ドンキホーテ・ドフラミンゴ@ONE PIECE】
[状態]:健康
[装備]:
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2(確認済み)、ベガパンクの失敗作の人造悪魔の実@ONE PIECE
[思考・状況]
基本方針:あいつ(羂索)をドレイにしてこの俺をこんな目に合わせた罰を与えてやるえ
1.さっさとこの汚い場所から出るえ
2.ムカつくやつは殺すえ
3.新しいドレイが欲しいえ
4.こいつ(人造悪魔の実)はドレイに食べさせようかえ
5.きっと父上が海軍大将を呼んでくれてるえ
[備考]
※子供時代、父に連れられてマリージョアから下界に引っ越して来たばかりの頃から参戦です。
【ベガパンクの失敗作の人造悪魔の実@ONE PIECE】
ベガパンクが作った人造悪魔の実。
カイドウの血統因子を抽出して作られており、食べるとカイドウのように龍の姿に変身できる能力を得る。
青龍になるカイドウとは違い、ピンク色の龍となる。
ベガパンクが何を理由にこれを失敗作としたのかは不明。
最終更新:2025年08月11日 22:45