禁書 ◆Il3y9e1bmo
月夜に照らされ、霧の中に佇む古びた館。
その荘厳ともいえる閉ざされた扉の前に三人の男女が揃い踏みする。
桁外れの生命力を持ち、生命の過剰分泌で妖を引き寄せる『妖巫女(あやかしみこ)』の花奏すず。
スパイ一家である夜桜家の十代目当主にして朝野太陽の妻、夜桜六美。
そして、呪術高専東京校の一年生、呪術界御三家・禪院家をまとめる伏黒恵。
彼ら三人はお互いに多少の秘密を隠しながらも、殺し合いを阻止する者として信頼関係を築きつつあった。
「もーれつおっきな図書館だね。ここから伏黒くんの探してる本を探すの、大変そう……」
すずが不安げな声を漏らす。分かっていたことだが、大変な作業だ。
また、他の殺し合いに乗っている参加者と鉢合わせする可能性もある。
「大丈夫、他の人間の気配はしない。夜桜、花奏、ここから先はあまり音を立てずに行こう」
伏黒の言葉に二人は頷く。物音を立てないよう慎重に歩みを進め、図書館の扉のドアノブを握る。
幸い鍵は掛かっておらず、扉は多少きしみながらもするりと開いた。三人は闇夜に紛れてそのまま中に忍び込む。
それぞれデイパックから懐中電灯を取り出し、辺りを照らす。ここはロビーのようだ。
すると、六美が照明のスイッチらしきものを見つけた。それを押そうとする六美を制止し、伏黒がまずは館内のカーテンを全て下ろす。
伏黒がOKサインを出すのを確認し、六美はスイッチを入れた。すると、奥の部屋まで明かりが灯っていく。
「わあ、たくさんの本……! うちの図書室にもこんなに本は置いてないよ」
六美が思わず溜め息をつく。見ると、上は二階の天井から、奥は廊下の遥か向こうまで本がぎっしりと収められている。
「とにかく、三人で手分けして探そう。手がかりになりそうな本なら何でも構わない。そうだな……三十分後にまたここに集合でいいか?」
伏黒の提案通り三人は三方に散り、それぞれ思い思いに気になる本を探し始めた。
すずは梯子を使って高所にある書籍を片っ端から見ていき、六美は館内に設置してあった情報端末で書籍の検索をかけながら調べているようだ。
伏黒は人海戦術で行くようで、自身の術式『十種影法術』で不知井底(せいていしらず)を喚び出し、一緒に探させている。
――三十分後。三人は最初にいたロビーにそれぞれ戻ってきた。
伏黒は一冊の本を小脇に抱え、六美は本を十冊以上積み重ねて持ってきている。すずはといえば、一冊も本を持っていないようだった。
「まずは俺からでいいか? 俺が見つけたのは、これだ」
伏黒が机に一冊の本を置いた。そこには『悪魔の実図鑑』と書かれている。
「え、これって……! 確か伏黒くんの探してたやつじゃ――――」
六美が歓喜の声を上げる。
「ああ、俺の探していた本だ。だけど――」
伏黒は咳払いをし、本を開いて目次の部分を指差した。
「――情報が少なすぎるんだ」
彼の説明では、すずたちと合流する前に『悪魔の実』について知る参加者と会ったことがあるらしい。
だが、その参加者の口から説明された実のほとんどがその図鑑には記されていないようだ。
「本の構成的に誰かが意図的にページを破いたのでも、情報の記載を減らしたのでも無さそうだ。……つまり、この図鑑は不完全だってことだ」
ここまで言って、伏黒は溜め息をつきながら本を机の上に乱雑に投げ置いた。
「じゃ、じゃあ、私の番だね。私の見つけた本はあんまりアテにならないかもしれないけど……」
六美が持ってきた本には『Battle Royale』と表題が付いていた。十五冊で一連のシリーズになっているようだ。
読むと、中身は漫画だった。クラス単位で殺し合いに巻き込まれた中学生の主人公が、脱出を目指して奮闘する……という内容だ。
よく見ると中には「支給品」や「禁止エリア」、「放送」などの表記が見られる。
「……なるほど、興味深いなこの漫画に登場するプログラムと、この死滅跳躍にかなりの部分でルールの相違点が見られる。
もしかしたら、この殺し合いを打破する方法が見つかるかもしれない」
ページを捲りながら伏黒は呟く。
「でもこの話、最後に二人しか生き残れないんだよね……」
六美の言葉に、周囲に気まずい沈黙が流れる。
「さ、最後は私だよ! もーれつ凄そうなの、見つけちゃったんだよ~」
流れを変えようと、すずがあえて元気溌剌とした声でオーバーアクションを取った。
「ん、花奏も何か見つけたのか? 何も持っていないように見えるけど……」
「のんのん! それは本ではないのです! さあさあ、こっちへどうぞ!」
すずは得意げに二人を部屋の奥へと案内する。蔵書室の最奥部だ。
「ここ、若干くぼんでない? たぶん私が思うに、秘密の部屋があると思うんだよ」
伏黒と六美は絨毯が敷かれた床を撫でる。確かにくぼみが四角形になっている。
よく見れば、隠し扉のように見えないこともない。
「梯子を取る時に気づいたんだー。すごいでしょ」
「でもすずちゃん、これどうやって開けるんだろ……?」
えっへんと胸を張るすずに、六美は至極当然な疑問をぶつけた。
「うっ、それは……」
すずは黙って首を振る。どうやら鍵の類までは発見できなかったようだ。
「二人とも、ちょっと下がっててくれ。俺が開ける」
伏黒はすずと六美を下がらせ、両手で象の影絵を結ぶ。
「――来い、満象!」
すると何もなかった宙に突如巨大な象が現れ、大きな音を立てて床を押し潰す。
その巨大な尻に敷かれた床は、メキメキという音を立て歪んでいく。
象が伏黒の影へと戻った頃には、隠し扉は完全に破壊されていた。
「すごい、式神だ……!」
思わず感嘆の声を上げるすずに、あまりのことに呆然としてしまう六美。
伏黒は無理やり壊れた隠し扉を持ち上げ、脇へどかすと二人へ合図を送る。
地下の隠し扉の奥は階段になっていた。
明かりも無いため、支給されていた懐中電灯で照らしながらゆっくりと下っていく。
階段の奥には小部屋があった。その中央に教会の説教台のように一段高くなっている場所があり、そこには一冊の本が置かれていた。
「なんだろ、この本……」
すずが本を持ち上げようとそれに触れる。すると、突如その本の背表紙にギョロリとした目と牙の生え揃った口が開いた。
「花奏! それに触れるな!」
伏黒の言葉に、すずは思わず持ち上げた本を放り投げてしまう。
しかし、その醜怪な顔の付いた本は重力に任せて地面に落ちることなく空中に留まった。
「クソがァ~! あの縫い目の袈裟男ォ~~!! 否定者ですらない、ただの人間の癖にこのオレを閉じ込めやがってェ!」
顔の付いた本――古代遺物・黙示録(アポカリプス)は目覚めるなり怨嗟の言葉を吐く。
「ん? 何だ、テメェら!」
牙を剥き出し、威嚇する黙示録の異様な姿に、すずと六美は怯えたような声を上げる。
「おい、お前。今さっき『縫い目の袈裟男』と言ったよな。もしかして羂索について何か知ってるのか?」
しかし、女性陣と違って呪術師である伏黒は冷静だった。黙示録と真っ向から対峙し、羂索についての情報を聞き出し始める。
「あ~ァ、まあ知ってるぜェ? でもよォ、人間。それは物を尋ねる態度じゃないよなァ~?」
黙示録は傲岸不遜な態度で宙から伏黒を睨みつける。
――だが、伏黒のほうが何枚も上手だった。喚び出した蝦蟇の舌で黙示録を絡め取ってしまう。
「グウッ! クソッ、離せ! オレを殺せばこれ以降、課題も報酬も受けられなくなるんだぞ!」
黙示録の必死の訴えも、伏黒たちには意味が通じない。得意の記憶を流し込む攻撃も、式神である蝦蟇越しでは通らなかった。
蝦蟇の舌の強さは段々と増していく。噛みつこうにも口を押さえる形で舌が巻き付いていた。
「く、クソッ! こ、降参だ……! 止めてくれ……!」
ついに黙示録は己の敗北を認めた。
「知ってることを話せ」
伏黒は黙示録に詰め寄る。
「そ、それはまだできねェ……。あの袈裟男との契約なんだ……」
黙示録は急に弱気になり、ヘナヘナと地面に近づく。
「『まだ』? 時間が経てば話せるようになるってこと?」
黙示録の言葉を反芻していた六美が疑問をぶつけた。
「それも言えねェ……」
「『できない』、『言えない』ばっかりじゃ困るよ! 私たち、本気で殺し合いを止めたいんだよ!!」
すずが思いの外大きな声を上げた。伏黒と六美が振り返る。
どうやらこの殺し合いを止めたいという気持ちは、すずが一番強いようだ。
「……とりあえず、このままじゃ埒が明かない。この本はこの檻に閉じ込めて、この部屋から出よう」
伏黒はデイパックから小さな檻を取り出した。そこにはしっかりとした文字で『不壊』と刻まれている。
未だに抵抗して暴れる黙示録をなんとか檻に閉じ込め、三人は外を目指す。
その時である。周囲に軋むような音が鳴り響き、誰ともなく足を止める。
見ると、時計の針は午前六時を指している。
――ついに来てしまったのだ。あの放送が。
史上最悪の呪詛師による、死者を読み上げる時間が――終わりの始まりがついにその時を告げた。
【F-7/図書館/1日目・黎明】
【花奏すず@あやかしトライアングル】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品1、折り紙一式@現実、早川アキの髪の毛@チェンソーマン
[思考]
基本:出来れば、誰も殺したくない
1:六美、伏黒と共に図書館の探索
2:出来れば早く祭里に会いたい
3:カゲメイは必ず止めないと
4:六美さんとその太陽さんって人の関係が羨ましい
5:これ(早川アキの髪の毛)、元の持ち主に返したほうが良いのかな……?
6:黙示録には早く情報を話して欲しい
[備考]
※参戦時期は7巻以降。
※夜桜六美、伏黒恵と情報を共有しました。ただし妖巫女等の情報は喋ってはいません。
※図書館で『悪魔の実図鑑@ONE PIECE』、『バトルロワイヤル漫画版@現実』を発見しました。
※図書館の地下で『黙示録@アンデッドアンラック』を発見しました。
【夜桜六美@夜桜さんちの大作戦】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式、ランダム支給品2
[思考]
基本:皆が居るのに、こんな趣味の悪い事に屈したりなんてしない
1:すず、伏黒と共に図書館の探索
2:早く太陽に会いたい、太陽が心配
3:凶一郎お兄ちゃん、何かしらやらかしてなければいいんだけど……
4:皮下真には最大限の警戒
5:なに、この本……
[備考]
※参戦時期は最低でも10巻、夜桜戦線終了後から。
※花奏すず、伏黒恵と情報を共有しました。ただし夜桜家の秘密等は喋ってはいません。
※図書館で『悪魔の実図鑑@ONE PIECE』、『バトルロワイヤル漫画版@現実』を発見しました。
※図書館の地下で『黙示録@アンデッドアンラック』を発見しました。
【伏黒恵@呪術廻戦】
[状態]:健康
[装備]:なし
[道具]:基本支給品一式。ランダム支給品2、不壊の檻@アンデッドアンラック
[思考]
基本:殺し合いの打破
1:すず、六美と共に図書館の探索
2:一通り探索を済ませたら鬼ヶ島でルフィと合流
3:黙示録は一体何を知っているんだ?
4:バトルロワイヤルの漫画、役に立つかもしれない
[備考]
※参戦時期は146話後、虎杖と共に秤先輩の所へ向かっている最中。
※この死滅跳躍を開催した羂索が未来の存在で、未来では五条が復活し死滅回游が何らかの形で失敗したのではと考えています。
※図書館で『悪魔の実図鑑@ONE PIECE』、『バトルロワイヤル漫画版@現実』を発見しました。
※図書館の地下で『黙示録@アンデッドアンラック』を発見しました。
【不壊の檻@アンデッドアンラック】
『不壊』の否定能力を持つ"一心"により作られた小型の檻。
絶対に破壊することができないため、閉じ込められた物は脱出が困難になる。
最終更新:2025年08月11日 22:22