あなたは、ヒーローに会った事がありますか?
私はあります
『ウマキュアとキャロットマン』
私がトレセン学園に入学したとき、両親はものすごく喜んでくれた
シンボリ家の遠縁の一族にあたるとは言え
ウマ娘が産まれることすら稀だった実家の親戚の中で、
久々に産まれたウマ娘が私だった
ウマ娘が産まれることすら稀だった実家の親戚の中で、
久々に産まれたウマ娘が私だった
普通のヒトだった両親は私の誕生に大喜びすると共に戸惑った
ヒトの赤ん坊とは文字通り力の桁が違う私を育てるのに
我が家の両親だけではとても手が足りない
ウマ娘の赤ん坊を育てる上でシンボリ家本家に力を借りるべく相談に赴き、
そこで私とくーちゃん、シンボリレクイエムは初めて出会ったそうだ
(ヒト同士の子供にウマ娘が産まれることは珍しいが無いわけではない
特に祖母同士がウマ娘だった場合は確率はそれなりにある)※捏造設定
ヒトの赤ん坊とは文字通り力の桁が違う私を育てるのに
我が家の両親だけではとても手が足りない
ウマ娘の赤ん坊を育てる上でシンボリ家本家に力を借りるべく相談に赴き、
そこで私とくーちゃん、シンボリレクイエムは初めて出会ったそうだ
(ヒト同士の子供にウマ娘が産まれることは珍しいが無いわけではない
特に祖母同士がウマ娘だった場合は確率はそれなりにある)※捏造設定
一歳違いのウマ娘の赤ん坊同士と言うことで私とくーちゃんは私が小学校に上がるまでは姉妹のように育った
(正確に言うなら私と母がシンボリ家本家にお世話になり、父が単身赴任のように実家で暮らしていた)
(正確に言うなら私と母がシンボリ家本家にお世話になり、父が単身赴任のように実家で暮らしていた)
シンボリ家での生活の中でくーちゃんが幼稚園頃から走る為の練習をするのに
私はいつも後ろについて回っていた
正直細かいことまでは覚えていないが、
当時の私はとにかくくーちゃんに置いていかれたくなくて必死だったと思う
くーちゃんと同じようになることが私にとっては大事なことだった
私はいつも後ろについて回っていた
正直細かいことまでは覚えていないが、
当時の私はとにかくくーちゃんに置いていかれたくなくて必死だったと思う
くーちゃんと同じようになることが私にとっては大事なことだった
小学校に入学すると同時に実家に戻ることになったときは、くーちゃんと離れたくなくて大泣きして母を困らせたことは良く覚えている
物心ついた頃の私はシンボリ本家の方が実家だと思いこんでおり、実家の父のところへ行くたびに「おじゃまちまーす」と舌っ足らずに挨拶をして父を凹ませていた
そして今度からは父のところで暮らして、くーちゃんとは別々になると聞いたときには
見知らぬ場所に行きたくなくて母曰く『物凄い大暴れして手が付けられない』有様だった
物心ついた頃の私はシンボリ本家の方が実家だと思いこんでおり、実家の父のところへ行くたびに「おじゃまちまーす」と舌っ足らずに挨拶をして父を凹ませていた
そして今度からは父のところで暮らして、くーちゃんとは別々になると聞いたときには
見知らぬ場所に行きたくなくて母曰く『物凄い大暴れして手が付けられない』有様だった
小学校に入学した後も折に付けてはくーちゃんとこに行きたいと漏らす私に両親は
『くーちゃんは中学生になったらトレセン学園にいくのだから、
あなたもトレセン学園に合格したらまた毎日一緒に遊べるよ』
と吹き込んだのだ
『くーちゃんは中学生になったらトレセン学園にいくのだから、
あなたもトレセン学園に合格したらまた毎日一緒に遊べるよ』
と吹き込んだのだ
後々考えてみればこれはシンボリ家に行きたがる私をなだめるための方便だったのだろうが、
幼い私はそれを聞いてトレセン学園に入学する事を決意したのだった
幼い私はそれを聞いてトレセン学園に入学する事を決意したのだった
小学校高学年になると、そこらもある程度理解は出来てきたが
夏休みや年末年始にシンボリ家に遊びに行くたびに
『わたしもくーちゃんとおんなじのとれせんがくえんにはいるー』
と本家の皆様方の前で言い放っていた自分の過去を取り消せるわけもなく
6年生の頃は必死で学科の勉強をしていた記憶しかない
くーちゃん本人が
『カランが来年来るのなら私も頑張る!』
とやる気を見せて前年上々の成績で合格していた分
プレッシャーも結構なものだった
夏休みや年末年始にシンボリ家に遊びに行くたびに
『わたしもくーちゃんとおんなじのとれせんがくえんにはいるー』
と本家の皆様方の前で言い放っていた自分の過去を取り消せるわけもなく
6年生の頃は必死で学科の勉強をしていた記憶しかない
くーちゃん本人が
『カランが来年来るのなら私も頑張る!』
とやる気を見せて前年上々の成績で合格していた分
プレッシャーも結構なものだった
そんな中でトレセン学園からの合格通知を受け取ったとき、
私も両親も安堵感と喜びで思わず泣いてしまった
私も両親も安堵感と喜びで思わず泣いてしまった
そして春、トレセン学園の門をくぐった私を待ち受けていたのは痛烈な現実だった
学課の方はまだついていけなくもなかったが、走る方はボロボロだった
考えてもみればこの学園に通う生徒の半分以上はくーちゃんのように幼い頃からの英才教育を受けた名門出身者、
その他は小学生のレースで頭角を現してトレセン学園を受験したアスリートだという当たり前の事実に私は打ちのめされていた
入学試験のレースでは全力で走って10人中3位とそう悪くもない順位だったので油断していたが
この学園に来るウマ娘は本当にレースに出る為に入学したものが大多数なのだと思い知らされていた
その他は小学生のレースで頭角を現してトレセン学園を受験したアスリートだという当たり前の事実に私は打ちのめされていた
入学試験のレースでは全力で走って10人中3位とそう悪くもない順位だったので油断していたが
この学園に来るウマ娘は本当にレースに出る為に入学したものが大多数なのだと思い知らされていた
初めての模擬レースの順位は、8人立ての6着
シンボリ家で教わった位置取りの知識で何とか最終直線までは好位に付けることが出来たがそこからの勝負が出来る末脚は私にはなかった
シンボリ家で教わった位置取りの知識で何とか最終直線までは好位に付けることが出来たがそこからの勝負が出来る末脚は私にはなかった
くーちゃん、シンボリレクイエム先輩とは違って
その日、私は生まれて初めてくーちゃんからのUMAINを既読無視した
模擬レースの翌日
座学が終わり教官の指導による基礎トレーニングの授業を受けている間も私は悩んでいた
座学が終わり教官の指導による基礎トレーニングの授業を受けている間も私は悩んでいた
このままトレセン学園に居続けることは今のままだと不可能だ
でも、だからと言って何をすれば良い?
基礎トレーニングを教官に言われるままに続けていれば確実に今より速くなることは出来るだろう
だが、それは私のライバル達も同じなのだ
現時点で大きく他のライバル達にスピードで劣っている今の私のままで成長したところで、未来が絶望的な事は変わらない
でも、だからと言って何をすれば良い?
基礎トレーニングを教官に言われるままに続けていれば確実に今より速くなることは出来るだろう
だが、それは私のライバル達も同じなのだ
現時点で大きく他のライバル達にスピードで劣っている今の私のままで成長したところで、未来が絶望的な事は変わらない
どうすれば良いんだろ?
シンボリ家ではこんな事は教えてもらっていなかった
まだ基礎の基礎の段階でしかなかったので当たり前ではあるが
そこから先について誰かに教えを請うならば
シンボリ家ではこんな事は教えてもらっていなかった
まだ基礎の基礎の段階でしかなかったので当たり前ではあるが
そこから先について誰かに教えを請うならば
「くーちゃん……」
ダメだ
レースで腑甲斐ない成績しか残せなかったのが恥ずかしいからといって
あんな仕打ちをしてしまった私にはくーちゃん、シンボリレクイエム先輩に頼る資格はない
レースで腑甲斐ない成績しか残せなかったのが恥ずかしいからといって
あんな仕打ちをしてしまった私にはくーちゃん、シンボリレクイエム先輩に頼る資格はない
ならばどうするべきか
ぐるぐると不安だけが綿飴のように膨れ上がる私に
答えを教えてくれる人は居なかった
ぐるぐると不安だけが綿飴のように膨れ上がる私に
答えを教えてくれる人は居なかった
栗東寮1階トレーニングルーム
普段は先輩方で混み合っているここに来るのは初めてだったが、
トレーナーさんが着いている人達がグラウンドに出ているこの時間なら
私達新入生でも使えるのではないかとまずはここでトレーニングをしてみようと思った
普段は先輩方で混み合っているここに来るのは初めてだったが、
トレーナーさんが着いている人達がグラウンドに出ているこの時間なら
私達新入生でも使えるのではないかとまずはここでトレーニングをしてみようと思った
思った通りこの時間にトレーニングルームにいる人数は少ない
見たところベンチプレスとレッグプレスマシンは使っている人が居ない
ならばまずは、脚の筋肉を増やすことを考えよう
筋トレはバランスが大事だと教わってはいたが、
今はとにかく速くなるために出来そうなことは何でもやりたかった
筋トレはバランスが大事だと教わってはいたが、
今はとにかく速くなるために出来そうなことは何でもやりたかった
レッグプレスマシンのウエイトを横に置いてある説明書と睨めっこしながらセットしていく
「初心者は体重40kgで負荷150kg 体重50kgで負荷200kgが一つの目安です
負荷が高すぎると膝や太股の故障に繋がるので注意しましょう…」
ぶつぶつと呟きながら50kgのウエイト3つをセットしていく
試しにマシンに腰掛けて体を固定し、少しずつ踏み板を踏み込んでいく
負荷が高すぎると膝や太股の故障に繋がるので注意しましょう…」
ぶつぶつと呟きながら50kgのウエイト3つをセットしていく
試しにマシンに腰掛けて体を固定し、少しずつ踏み板を踏み込んでいく
「うん、これならキツいけど踏んで戻してが出来る
なら後50kgウエイトを足して…」
「いや、アンタそれはダメでしょ?!」
「ピエッ!?!?」
唐突に掛けられた声にビックリして思わず跳び上がってしまった
なら後50kgウエイトを足して…」
「いや、アンタそれはダメでしょ?!」
「ピエッ!?!?」
唐突に掛けられた声にビックリして思わず跳び上がってしまった
着地後恐る恐る振り向いてみると
「あー、ひょっとしなくても筋トレ初心者よね?
私と同じクラスだから新入生だし」
黒鹿毛の見覚えのある同級生が、呆れたような顔で私を見つめていた
私と同じクラスだから新入生だし」
黒鹿毛の見覚えのある同級生が、呆れたような顔で私を見つめていた
「えーと、ゴメン!名前何てったっけ?
まだ皆の名前覚えきれてなくて!」
「か、カランドローネ、です」
「カランドローネさん、ね、ヨシ!覚えた!
私はレッドベレヌス!今日からもよろしく!もう覚えてくれてたならゴメンナサイ!」
「は、はい、レッドベレヌスさん、こちらこそ?」
まだ皆の名前覚えきれてなくて!」
「か、カランドローネ、です」
「カランドローネさん、ね、ヨシ!覚えた!
私はレッドベレヌス!今日からもよろしく!もう覚えてくれてたならゴメンナサイ!」
「は、はい、レッドベレヌスさん、こちらこそ?」
……何で私はクラスメイトとこんなところで挨拶してるんだろう……?
「で、思わずつっこんじゃったけど、初心者がいきなりそんな高負荷は無茶ってもんじゃないよ
見たところカランドローネさん私より身長低いし体重40kgないでしょ?」
「は、はい、今で39kgなはずです」
「マシンの説明書読んでたでしょ?そこにはなんて書いてた?」
「40kgで150kgの負荷が目安だって」
「ならなんで初心者がいきなり50kgも増量しようとすんのよ!
目安の負荷でやってみて無理なく出来るかを確かめないとマジで故障するよ!?」
「ふ、普通のことしてたら、皆に追いつけないと思ったから」
「は?何それ?」
レッドベレヌスさんの勢いに押されて、思わず私の口から本音がこぼれ出た
レッドベレヌスさんは戸惑ったような顔をしてる
……当然だよね、こんな遅い子が無茶しようとしてるなんて、カッコ悪すぎるよね……
見たところカランドローネさん私より身長低いし体重40kgないでしょ?」
「は、はい、今で39kgなはずです」
「マシンの説明書読んでたでしょ?そこにはなんて書いてた?」
「40kgで150kgの負荷が目安だって」
「ならなんで初心者がいきなり50kgも増量しようとすんのよ!
目安の負荷でやってみて無理なく出来るかを確かめないとマジで故障するよ!?」
「ふ、普通のことしてたら、皆に追いつけないと思ったから」
「は?何それ?」
レッドベレヌスさんの勢いに押されて、思わず私の口から本音がこぼれ出た
レッドベレヌスさんは戸惑ったような顔をしてる
……当然だよね、こんな遅い子が無茶しようとしてるなんて、カッコ悪すぎるよね……
「な、な、な、」
な?
「何だよそれ!
模擬レース初回終わったばっかで、もう自分に不満を持って秘密特訓!!??
キャロットマンみたいでカッコいい…!!!」
「えええええ…………」
ツンツン頭を震わせながらキラキラした目で私を見つめる同級生を眺めて
私はひょっとしてこの子はアホなんじゃなかろうかと凄まじく失礼な感想を抱いていた
な?
「何だよそれ!
模擬レース初回終わったばっかで、もう自分に不満を持って秘密特訓!!??
キャロットマンみたいでカッコいい…!!!」
「えええええ…………」
ツンツン頭を震わせながらキラキラした目で私を見つめる同級生を眺めて
私はひょっとしてこの子はアホなんじゃなかろうかと凄まじく失礼な感想を抱いていた
「模擬レース初回で6着とか、確かに良くは無いけどそこまで凹む事じゃないと思うよ」
「そうなのかなあ……」
「そうだって
そりゃ、負けたことは良くないよ?
でもそこから自分の何が悪かったのかを分析して、
そこを改善するためにトレーニングと戦法を見直すのが模擬レースの目的でしょ?
逆に模擬レース無敗でメイクデビューで惨敗とかしたほうが立ち直れないと思うよ?」
「それは確かに立ち直れなさそうだね……」
「そうなのかなあ……」
「そうだって
そりゃ、負けたことは良くないよ?
でもそこから自分の何が悪かったのかを分析して、
そこを改善するためにトレーニングと戦法を見直すのが模擬レースの目的でしょ?
逆に模擬レース無敗でメイクデビューで惨敗とかしたほうが立ち直れないと思うよ?」
「それは確かに立ち直れなさそうだね……」
あの後、ロビーに場所を移して改めて私はベレヌスと話し合っていた
(話し始めて1時間も経たないうちに彼女と私は互いにカラン、ベレヌス呼びになっていた)
ベレヌスは二つ上のお姉さんが去年デビューして今年クラシック三冠に挑戦すると言うことで
具体的なトレーニングや筋トレの方法、筋肉を増やす食事や休息の取り方等の実践的な事にもの凄く詳しかった
(本人にいったら『姉さん程じゃないよ!』って胸を張ってたけど)
そしてトレーニング計画をどのように建てるかの話になって
「そう言えばカランの模擬レースのラップタイムって今持ってる?」
とベレヌスは聞いてきた
(話し始めて1時間も経たないうちに彼女と私は互いにカラン、ベレヌス呼びになっていた)
ベレヌスは二つ上のお姉さんが去年デビューして今年クラシック三冠に挑戦すると言うことで
具体的なトレーニングや筋トレの方法、筋肉を増やす食事や休息の取り方等の実践的な事にもの凄く詳しかった
(本人にいったら『姉さん程じゃないよ!』って胸を張ってたけど)
そしてトレーニング計画をどのように建てるかの話になって
「そう言えばカランの模擬レースのラップタイムって今持ってる?」
とベレヌスは聞いてきた
「うん、持ってるけど?」
「良かったら見せてくれない?ラップタイム見たら何処が悪かったのかとかが客観的な視点から判るかもしれない
それにラップタイムでその人の気付いてない得意な戦法が見えてきたりすることもあるし」
「え、そんなことまで判るの?」
「姉さんの受け売りだけどね、
例えば本人は先行が得意と思ってても、ラップタイム見て全体のペースが一定なら、
本人の前半が速いのに後半はあからさまに遅くなってるとかだと脚の持続力が足りないって事だから、
指し追い込みの方が筋肉の質的には向いてるとか判るし」
「ベレヌスとお姉さん凄い……」
「自慢の姉さんですから!」
そう言って何度目かの胸を張るベレヌスに
「じゃ、これ見て貰える?」
と私のラップタイム表を渡す
「有難く見せて頂きますよっと……ん?」
ラップタイムを見たベレヌスの顔が訝しげになる
「何かあったの、ベレヌス?」
「何かあったというか何かしかないと言うか」
「え?」
「カラン何でコーナー回る度に極端にラップタイム悪くなってるの?」
「そ、それは私がコーナリング苦手だから……」
「そういう問題じゃないよコレ、コーナーと直線で1ハロンのラップタイムが違い過ぎる」
「そ、そうなの?」
「何で本人が判ってないのさ?」
「私子供の頃からコーナリング苦手だったから……」
「これ苦手だからで片付けていい範囲超えてない?」
「そうなの、かなあ……」
「カラン、酷いこと言って良い?」
「な、何?」
「良くこのコーナーのラップタイムでトレセン学園入れたね?」
「あう…………」
凹んだ
それはそれは本気で凹んだ
まさか同級生にまで真顔で言われるレベルだったとは……
「でも逆に言うなら、直線に入ってからのラップタイムの伸び幅は良い意味でおかしい
この200m地点から1コーナーまでのラップタイムとか、下手したらオープン戦並だよ?
まだメイクデビューどころかスカウトされる年齢にすらなってないカランが?
コレ模擬レースが1200mで4コーナー後が300mだったからカランは負けたけど、
1600mで最終直線が450mあったら全員ぶち抜いてたんじゃないの?」
確かに私は直線の追い比べは得意な方だったけど、身近にくーちゃんというもっと速い相手が居たからせいぜいが割と得意な程度だと思っていた
「いや、それは認識がおかしい、ていうかそのくーちゃんがおかしい」
さっき以上に真顔で語るベレヌスを見て、私は生まれて初めて自分がとても恵まれた環境に居たのかもしれない、と言うことに思い至った
「良かったら見せてくれない?ラップタイム見たら何処が悪かったのかとかが客観的な視点から判るかもしれない
それにラップタイムでその人の気付いてない得意な戦法が見えてきたりすることもあるし」
「え、そんなことまで判るの?」
「姉さんの受け売りだけどね、
例えば本人は先行が得意と思ってても、ラップタイム見て全体のペースが一定なら、
本人の前半が速いのに後半はあからさまに遅くなってるとかだと脚の持続力が足りないって事だから、
指し追い込みの方が筋肉の質的には向いてるとか判るし」
「ベレヌスとお姉さん凄い……」
「自慢の姉さんですから!」
そう言って何度目かの胸を張るベレヌスに
「じゃ、これ見て貰える?」
と私のラップタイム表を渡す
「有難く見せて頂きますよっと……ん?」
ラップタイムを見たベレヌスの顔が訝しげになる
「何かあったの、ベレヌス?」
「何かあったというか何かしかないと言うか」
「え?」
「カラン何でコーナー回る度に極端にラップタイム悪くなってるの?」
「そ、それは私がコーナリング苦手だから……」
「そういう問題じゃないよコレ、コーナーと直線で1ハロンのラップタイムが違い過ぎる」
「そ、そうなの?」
「何で本人が判ってないのさ?」
「私子供の頃からコーナリング苦手だったから……」
「これ苦手だからで片付けていい範囲超えてない?」
「そうなの、かなあ……」
「カラン、酷いこと言って良い?」
「な、何?」
「良くこのコーナーのラップタイムでトレセン学園入れたね?」
「あう…………」
凹んだ
それはそれは本気で凹んだ
まさか同級生にまで真顔で言われるレベルだったとは……
「でも逆に言うなら、直線に入ってからのラップタイムの伸び幅は良い意味でおかしい
この200m地点から1コーナーまでのラップタイムとか、下手したらオープン戦並だよ?
まだメイクデビューどころかスカウトされる年齢にすらなってないカランが?
コレ模擬レースが1200mで4コーナー後が300mだったからカランは負けたけど、
1600mで最終直線が450mあったら全員ぶち抜いてたんじゃないの?」
確かに私は直線の追い比べは得意な方だったけど、身近にくーちゃんというもっと速い相手が居たからせいぜいが割と得意な程度だと思っていた
「いや、それは認識がおかしい、ていうかそのくーちゃんがおかしい」
さっき以上に真顔で語るベレヌスを見て、私は生まれて初めて自分がとても恵まれた環境に居たのかもしれない、と言うことに思い至った
「じゃあ方針は決まった、明日の放課後に教官のところにこれを持って行って
コーナリングの練習をしたいって言えば良い
そうしたらどうやれば良いか方針を教えてくれると思う」
「ありがとう、ベレヌス」
「そんな改まって言わなくても」
「ううん、改まらせて欲しいの
私は今までくーちゃんの隣に行くことだけを目標にして走ってた
でも、トレセン学園で走るならそんなことは言ってられない
自分の得意不得意、自分の目指す走りにもっと真剣に取り組まなきゃいけないってようやく気づけたの
だからお礼を言わせて
私の目を覚まさせてくれてありがとう、ベレヌス」
「大袈裟だなあ……
そう言ってくれるなら嬉しいよ
でも次の模擬レースでは容赦しないからね?」
「よ、よろしくお願いします……」
そう言った後、目を合わせて二人で笑い合う
トレセン学園に入学して、初めて心から自然に笑えた気がした
コーナリングの練習をしたいって言えば良い
そうしたらどうやれば良いか方針を教えてくれると思う」
「ありがとう、ベレヌス」
「そんな改まって言わなくても」
「ううん、改まらせて欲しいの
私は今までくーちゃんの隣に行くことだけを目標にして走ってた
でも、トレセン学園で走るならそんなことは言ってられない
自分の得意不得意、自分の目指す走りにもっと真剣に取り組まなきゃいけないってようやく気づけたの
だからお礼を言わせて
私の目を覚まさせてくれてありがとう、ベレヌス」
「大袈裟だなあ……
そう言ってくれるなら嬉しいよ
でも次の模擬レースでは容赦しないからね?」
「よ、よろしくお願いします……」
そう言った後、目を合わせて二人で笑い合う
トレセン学園に入学して、初めて心から自然に笑えた気がした
そして翌日の放課後
教官にラップタイム表を見せて相談したところ
「カランドローネさんの場合、走り方そのものが問題なんだよ」
と教官から厳しい言葉を頂た
「走り方そのものですか……?」
「悪い事ばかりじゃない
カランドローネさんの走法はかなり極端な大跳び(一歩一歩の歩幅が普通より大幅に広い走り方)だ
この走り方は小回りは全く効かないけど、一度スピードが乗り出すとどこまでも延びていく、
ダービーのような最終直線の長いコースなら凄く理想的な走法だ」
「そうなんですか?」
「まあコーナリングを何とか出来るという前提条件があってのことだけど」
「あう……」
やっぱり駄目じゃないか
教官にラップタイム表を見せて相談したところ
「カランドローネさんの場合、走り方そのものが問題なんだよ」
と教官から厳しい言葉を頂た
「走り方そのものですか……?」
「悪い事ばかりじゃない
カランドローネさんの走法はかなり極端な大跳び(一歩一歩の歩幅が普通より大幅に広い走り方)だ
この走り方は小回りは全く効かないけど、一度スピードが乗り出すとどこまでも延びていく、
ダービーのような最終直線の長いコースなら凄く理想的な走法だ」
「そうなんですか?」
「まあコーナリングを何とか出来るという前提条件があってのことだけど」
「あう……」
やっぱり駄目じゃないか
「まあ、そこを何とかするのが教官とトレーナーの仕事というわけでね
まずはコーナリングの基本からやり直してみようか」
「よろしくお願いします!教官!」
まずはコーナリングの基本からやり直してみようか」
「よろしくお願いします!教官!」
コーナリング練習辛い……
脚運びの幅変えるのってもの凄く大変……
練習を終えて、自分の不器用さに深く凹みつつ寮への帰路についていると
脚運びの幅変えるのってもの凄く大変……
練習を終えて、自分の不器用さに深く凹みつつ寮への帰路についていると
「カラン!!」
「あ」
気付けば目の前にくーちゃんが立っていた
「カラン、一昨日からどうしたの?既読はついてるのに全然返事が来ないから何かあったんじゃないかと思って心配になって見に来たよ」
くーちゃんは心から心配そうな顔をしてる
私がつまらないプライドで連絡を取らなかったなんて思いもよらない、私が何かのトラブルにあったのではという私への心配だけでここへ来てくれてる
「あ」
気付けば目の前にくーちゃんが立っていた
「カラン、一昨日からどうしたの?既読はついてるのに全然返事が来ないから何かあったんじゃないかと思って心配になって見に来たよ」
くーちゃんは心から心配そうな顔をしてる
私がつまらないプライドで連絡を取らなかったなんて思いもよらない、私が何かのトラブルにあったのではという私への心配だけでここへ来てくれてる
子供の頃にくーちゃんと見てた、ウマキュアみたいに
そう思うと涙が溢れてくるのが抑えられなかった
「カラン!?!?どうしたの?!やっぱり何かあったんじゃ!!??」
「違うの、違うのくーちゃん
ごめんね、ごめんね」
「謝られても解らないよう?!
カラン一体どうしたのさ!?」
人目をはばからず泣き続ける私にくーちゃんは凄くオロオロしてる
その姿が嬉しくて、誇らしくて、やっぱり涙は止まらなかった
「カラン!?!?どうしたの?!やっぱり何かあったんじゃ!!??」
「違うの、違うのくーちゃん
ごめんね、ごめんね」
「謝られても解らないよう?!
カラン一体どうしたのさ!?」
人目をはばからず泣き続ける私にくーちゃんは凄くオロオロしてる
その姿が嬉しくて、誇らしくて、やっぱり涙は止まらなかった
ほんとうに、私は幸せものだ
悩んだときに助けてくれるヒーローと
いつでも私を守ろうとしてくれるヒーローが
こんなに身近に二人も居るのだから
悩んだときに助けてくれるヒーローと
いつでも私を守ろうとしてくれるヒーローが
こんなに身近に二人も居るのだから