阪神ジュベナイルフィリーズ発走直前
一人、また一人と勝負服姿でゲートに収まって行く姿は嫌が応にも緊張と期待感を煽ります
そんな中でゲート入りを見ていた私はおかしな事に気が付きました
「あの、なんでパストラル先輩目をつむっておられるんです?
よく見たらオーヴァチュア先輩や、他にも何人かつむっておられますし」
よく見たらオーヴァチュア先輩や、他にも何人かつむっておられますし」
「あー、オーヴァチュアはゲート大嫌いだからね、
パストラルもそんな得意でもないし」
「ゲートの狭さが我慢ならないタイプのウマ娘には良くある対処方法だな
発走委員の声が聞こえるまで目をつむっておいて視覚的に圧迫感を感じる時間を減らすことで、
狭い所に押し込められたストレスを多少軽減するわけだ」
「いわゆるゲート難って奴ですか
それを少しでもマシにする工夫だと」
パストラルもそんな得意でもないし」
「ゲートの狭さが我慢ならないタイプのウマ娘には良くある対処方法だな
発走委員の声が聞こえるまで目をつむっておいて視覚的に圧迫感を感じる時間を減らすことで、
狭い所に押し込められたストレスを多少軽減するわけだ」
「いわゆるゲート難って奴ですか
それを少しでもマシにする工夫だと」
「そう言うこと、パストラルは普段はしてないけど今日は3番だからね」
「枠の難しい所だな
有馬記念なんかは明確に内枠有利と言われているが、
ゲートに入っている時間が長いと辛いタイプのウマ娘だと別の話になってくる」
「はえー、そんな事まで考えなきゃいけないんですね」
「枠の難しい所だな
有馬記念なんかは明確に内枠有利と言われているが、
ゲートに入っている時間が長いと辛いタイプのウマ娘だと別の話になってくる」
「はえー、そんな事まで考えなきゃいけないんですね」
「この程度は基本だよ」
「カラン?こう言う話も昔からスピードの叔母様やパーソロンお祖母様が話してくれたよね?」
「あ、もう発走しますよ!
全員ゲートに収まってます!」
「今は追及しないけど、後でね?」
「始まるぞ」
「カラン?こう言う話も昔からスピードの叔母様やパーソロンお祖母様が話してくれたよね?」
「あ、もう発走しますよ!
全員ゲートに収まってます!」
「今は追及しないけど、後でね?」
「始まるぞ」
トレーナーさんが呟いた瞬間、ゲートが開きました
『阪神ジュベナイルフィリーズ:中』
真っ先に飛び出したのは黄色の弾丸
オーヴァチュア先輩が宣言通りに先頭を切って逃げていきます
そのままグングンと加速してリードを作ろうとしていきますが、
後続の先行集団も2,3バ身ほど距離を開けてきっちり追走していきます
「オーヴァチュアとしてはもう少しリードを取りたいところだけど
後ろもわかってるから離され過ぎないようにしてついて行ってるね」
「阪神の外回りコースは平坦な直線が3コーナーの入り口まで続き、
そこから4コーナーまでは緩い下り坂になっている
ここでは体力を温存するのが正攻法と言われていて、実際例年はゆったりしたペースになりやすい
しかし今年はオーヴァチュア君が大逃げ宣言したせいでここから既に駆け引きが始まっているな」
オーヴァチュア先輩が宣言通りに先頭を切って逃げていきます
そのままグングンと加速してリードを作ろうとしていきますが、
後続の先行集団も2,3バ身ほど距離を開けてきっちり追走していきます
「オーヴァチュアとしてはもう少しリードを取りたいところだけど
後ろもわかってるから離され過ぎないようにしてついて行ってるね」
「阪神の外回りコースは平坦な直線が3コーナーの入り口まで続き、
そこから4コーナーまでは緩い下り坂になっている
ここでは体力を温存するのが正攻法と言われていて、実際例年はゆったりしたペースになりやすい
しかし今年はオーヴァチュア君が大逃げ宣言したせいでここから既に駆け引きが始まっているな」
トレーナーさんの解説通りにオーヴァチュア先輩と先行集団が後ろの差し追込集団との距離を取ろうとどんどん前に加速していきます
後方集団は一定の距離を保って着いていこうとしていますがジリジリと離されていきます
「オーヴァチュアがレースの流れをかなり加速させてるね、このペースで脚は残るの?」
「普通なら無理だろうな、いくらなんでもペースが速すぎる」
後方集団は一定の距離を保って着いていこうとしていますがジリジリと離されていきます
「オーヴァチュアがレースの流れをかなり加速させてるね、このペースで脚は残るの?」
「普通なら無理だろうな、いくらなんでもペースが速すぎる」
既に3コーナーから4コーナーの下り坂に突入するオーヴァチュア先輩は
中継でもわかる満面の笑みを浮かべています
下り坂を利用して更に加速して、少しでもリードを広げようとしているようです
中継でもわかる満面の笑みを浮かべています
下り坂を利用して更に加速して、少しでもリードを広げようとしているようです
「トレーナー、これもしかして……」
「うむ、恐らくは」
二人は目を合わせて一言
「「掛かってるね」な」
「うむ、恐らくは」
二人は目を合わせて一言
「「掛かってるね」な」
「え、オーヴァチュア先輩狙って逃げてるんじゃ無いんですか?」
「狙っているにしても明らかにオーバーペースだよ
この後の直線のことを考えたら飛ばしすぎてる」
「これで後ろの脚を削れているならまだ良かったんだがな、
先行集団はともかく後方集団の体力はまだまだ残っているように見える
直線の坂でまとめて一気に交わされるぞ」
「狙っているにしても明らかにオーバーペースだよ
この後の直線のことを考えたら飛ばしすぎてる」
「これで後ろの脚を削れているならまだ良かったんだがな、
先行集団はともかく後方集団の体力はまだまだ残っているように見える
直線の坂でまとめて一気に交わされるぞ」
その言葉通り、オーヴァチュア先輩を先頭に最終直線に突入した先行集団の前に、
阪神レース場の高低差1.8mの坂が立ちはだかります
阪神レース場の高低差1.8mの坂が立ちはだかります
坂の手前で最内を突いて先行集団に襲い掛かったのは、後方集団の先頭を走っていたパストラル先輩でした
「パストラルが内から交わしにいった!前はもう脚が残せてない!」
「これは差し切るな、脚色が全く違う」
その言葉通り4コーナーでは5バ身程あったオーヴァチュア先輩のリードはもう1バ身ほどしかありません
「パストラルが内から交わしにいった!前はもう脚が残せてない!」
「これは差し切るな、脚色が全く違う」
その言葉通り4コーナーでは5バ身程あったオーヴァチュア先輩のリードはもう1バ身ほどしかありません
坂を登りながらどんどん差を詰めるパストラル先輩
必死の形相で粘るオーヴァチュア先輩
必死の形相で粘るオーヴァチュア先輩
しかし坂を登りきった直後、パストラル先輩が完全に交わす体勢に入りました
これは決まった
見ている皆がそう思ったその時
これは決まった
見ている皆がそう思ったその時
金色の流星が大外から飛んできました
「「グローリア!!」先輩!!」
「登りであの脚が出せるか!?ジュニア級だぞ!?」
「登りであの脚が出せるか!?ジュニア級だぞ!?」
坂の手前ではまだ先行集団の後ろ辺りだったグローリア先輩が、
急坂をまるで平地のように『加速しながら』駆け抜けました
オーヴァチュア先輩もパストラル先輩も粘ろうとしますが文字通り加速が違いました
急坂をまるで平地のように『加速しながら』駆け抜けました
オーヴァチュア先輩もパストラル先輩も粘ろうとしますが文字通り加速が違いました
ゴールまで後100mの地点では1バ身あったパストラル先輩のリードは一瞬で無くなり、
グローリア先輩がゴール板を駆け抜けた時には逆に1バ身の着差がついていました
グローリア先輩がゴール板を駆け抜けた時には逆に1バ身の着差がついていました
「…………」
「…………」
「嘘……」
今見たものが信じられません
坂を越えるまではこのレースはパストラル先輩の勝ちとしか思えませんでした
しかし坂の中腹で理不尽なまでの加速力でグローリア先輩が一気に詰め寄り、
そのまま並ぶ間もなく交わしてゴール板を駆け抜けたのです
「…………」
「嘘……」
今見たものが信じられません
坂を越えるまではこのレースはパストラル先輩の勝ちとしか思えませんでした
しかし坂の中腹で理不尽なまでの加速力でグローリア先輩が一気に詰め寄り、
そのまま並ぶ間もなく交わしてゴール板を駆け抜けたのです
あの、ちょっと天然で心優しい普段のグローリア先輩からは想像もつかないような、
相手の心をへし折る絶対的な勝ち方
『着差以上の力の差を感じる』
という良くある言葉の意味を体現するようなその走りに私は完全に呑まれていました
相手の心をへし折る絶対的な勝ち方
『着差以上の力の差を感じる』
という良くある言葉の意味を体現するようなその走りに私は完全に呑まれていました