地球温暖化が叫ばれる昨今とは言え、年末ともなれば早朝は寒い
雪こそ降ってはいないもののトレセン学園外周コースの芝にはびっしりと夜露が降り、
朝から走ろうとするウマ娘達のやる気を削ぐことおびただしい
そんな外周コースに1人の黒鹿毛のウマ娘がゆっくりと脚を踏み入れた
入念にストレッチを繰り返し、特に足首を重点的にほぐしている姿を見て、小柄な鹿毛のウマ娘が声を掛けた
雪こそ降ってはいないもののトレセン学園外周コースの芝にはびっしりと夜露が降り、
朝から走ろうとするウマ娘達のやる気を削ぐことおびただしい
そんな外周コースに1人の黒鹿毛のウマ娘がゆっくりと脚を踏み入れた
入念にストレッチを繰り返し、特に足首を重点的にほぐしている姿を見て、小柄な鹿毛のウマ娘が声を掛けた
「オハヨーレクイエム、もう脚は大丈夫なの?」
「おはよう、テイオーさん
昨日お医者さんから全力で無ければもう動いても良いって言われたんだ!」
「おー、おめでとう
ま、まだ治りたてなんだから無茶はしない方が良いぞよ
このテイオー様が言うのだから霊験アラタカでおじゃるぞ」
何度も引退危機になるような怪我から復帰した名ウマ娘が言うのだからこれ以上の説得力はない
シンボリレクイエムは上手い返答が思いつかず、トウカイテイオーに曖昧な苦笑いを向けるにとどめた
「おはよう、テイオーさん
昨日お医者さんから全力で無ければもう動いても良いって言われたんだ!」
「おー、おめでとう
ま、まだ治りたてなんだから無茶はしない方が良いぞよ
このテイオー様が言うのだから霊験アラタカでおじゃるぞ」
何度も引退危機になるような怪我から復帰した名ウマ娘が言うのだからこれ以上の説得力はない
シンボリレクイエムは上手い返答が思いつかず、トウカイテイオーに曖昧な苦笑いを向けるにとどめた
『研ぐ』
あの阪神ジュベナイルフィリーズからもう半月が経過していた
その間にも有馬記念でプラネットセブンが海外挑戦するパイライトに変わる新たな日本総大将候補として名乗りを上げたり、
カフェロワイヤルが朝日杯を制してクラシック三冠路線の強者としてアピールしたりと色々あったのだが、
シンボリレクイエムは捻挫の治療でひたすらトレーナー室と医務室との往復の日々を送っていた
その間にも有馬記念でプラネットセブンが海外挑戦するパイライトに変わる新たな日本総大将候補として名乗りを上げたり、
カフェロワイヤルが朝日杯を制してクラシック三冠路線の強者としてアピールしたりと色々あったのだが、
シンボリレクイエムは捻挫の治療でひたすらトレーナー室と医務室との往復の日々を送っていた
そしてやっと今日から本格的なトレーニングに復帰するというシンボリレクイエムの顔を見て、トウカイテイオーは首を傾げた
「レクイエム何だかえらく落ち着いてるね
てっきりキミのことだから『今日からサクラグローリアを倒すために猛特訓だー!』とか言って燃えてるかな?と思ってたんだけど」
「勿論、グローリアは私が倒すよ」
てっきりキミのことだから『今日からサクラグローリアを倒すために猛特訓だー!』とか言って燃えてるかな?と思ってたんだけど」
「勿論、グローリアは私が倒すよ」
静かな声だった
意気込みや目標を掲げるような力の入った声音ではなく、既に決定したスケジュールを告げるような淡々とした声だった
意気込みや目標を掲げるような力の入った声音ではなく、既に決定したスケジュールを告げるような淡々とした声だった
「でも、それは今すぐというわけには行かない
来年のティアラ三冠路線のレース、それもオークスで私はグローリアを倒す
今はその為の準備をする時間なんだ
だから必死で努力はするけど焦りはしない
準備を全て整えなければグローリアには届かないから」
「ほー、こりゃ想像以上にいい顔になってきたね
ダメそうならこのテイオー様がありがたーいお説教をしてあげようと思ってたんだけどムダになっちゃったな」
再び苦笑いをトウカイテイオーに向けるレクイエム
「テイオーさんから見て私はそんなにダメそうに見えた?」
「うーん、メイクデビューで負けて拗ねて引き篭もってたと思ったら、
いきなりシンボリの長老組の人たちにティアラ路線に行かせろって直談判しに来たって聞いたら、ねえ?」
「あははは……」
トウカイテイオーの意地の悪い問い掛けを、レクイエムは決まりの悪そうな顔で笑って誤魔化すしかなかった
来年のティアラ三冠路線のレース、それもオークスで私はグローリアを倒す
今はその為の準備をする時間なんだ
だから必死で努力はするけど焦りはしない
準備を全て整えなければグローリアには届かないから」
「ほー、こりゃ想像以上にいい顔になってきたね
ダメそうならこのテイオー様がありがたーいお説教をしてあげようと思ってたんだけどムダになっちゃったな」
再び苦笑いをトウカイテイオーに向けるレクイエム
「テイオーさんから見て私はそんなにダメそうに見えた?」
「うーん、メイクデビューで負けて拗ねて引き篭もってたと思ったら、
いきなりシンボリの長老組の人たちにティアラ路線に行かせろって直談判しに来たって聞いたら、ねえ?」
「あははは……」
トウカイテイオーの意地の悪い問い掛けを、レクイエムは決まりの悪そうな顔で笑って誤魔化すしかなかった
「でも、実際どうなのさ?
サクラグローリアをオークスで倒すって言ってもあの末脚は脅威だよ?」
「メジロマックイーンとバチバチやり合ってたテイオーさんがそれを言う?」
「なーんだ、詰まんないの」
サクラグローリアをオークスで倒すって言ってもあの末脚は脅威だよ?」
「メジロマックイーンとバチバチやり合ってたテイオーさんがそれを言う?」
「なーんだ、詰まんないの」
マックイーンの名前を出すと言うことは、テイオーやシンボリルドルフと同じ結論にレクイエムとそのトレーナーはもう気付いていると言うことだ
これなら自分がお節介を焼く必要は無いな、とテイオーは判断して、自分のトレーニングに向かうためにレクイエムに背を向けた
これなら自分がお節介を焼く必要は無いな、とテイオーは判断して、自分のトレーニングに向かうためにレクイエムに背を向けた
「聞きたいことはだいたい聞けたからボクはもうトレーニングに行くよ、くれぐれも無茶はしないようにね?」
「判ってるよ、テイオーさん
ありがとう、ルドルフさんにもそう伝えておいて?」
「判ってるよ、テイオーさん
ありがとう、ルドルフさんにもそう伝えておいて?」
テイオーは背中で苦笑した
本当にこの敬語も使えない小生意気な後輩はえらく成長したものだ
本当にこの敬語も使えない小生意気な後輩はえらく成長したものだ
「気が向いたら伝えておく~」
そう一言告げてテイオーは今度こそトレーニングルームに向かって歩き出した
そう一言告げてテイオーは今度こそトレーニングルームに向かって歩き出した
「全く、勝手にぜーんぶ決めちゃってさ
ボクやカイチョーのお節介なんてイラネー!みたいな顔してやんの」
そう呟きながらもテイオーの顔は笑顔だった
後輩が独り立ちすると言うことは
自分達に挑んでくるイキの良い強敵候補がまた増えると言うことなのだから
ボクやカイチョーのお節介なんてイラネー!みたいな顔してやんの」
そう呟きながらもテイオーの顔は笑顔だった
後輩が独り立ちすると言うことは
自分達に挑んでくるイキの良い強敵候補がまた増えると言うことなのだから
グローリアを倒すと言ったときのレクイエムの、
レース前のルドルフにそっくりな獰猛な笑みを思い返して、
テイオーは静かに笑った
レース前のルドルフにそっくりな獰猛な笑みを思い返して、
テイオーは静かに笑った