一雨ごとに
 この地方は
 冬へと向かう

 昼の間に暖められた大地を
 冷やすかのように
 雨が降る

 雨の日は嫌い

 雨音は
 私をあの頃へと引き戻す
 胸が締め付けられるように痛んで
 落ち着かない気持ちになる
 前よりずいぶんと
 ましにはなったけれど

 伝えたい言葉は
 もう届かない
 報告したいことはたくさんあるのに
 あなたもきっと
 喜んでくれることも
 たくさんあるのに

 私の心の一部は
 あの時
 あなたが持って
 一緒に逝ってしまった
 霞がかかったように
 思い出せないことが多いのは
 きっとそのせい

 「もしあのとき…」
 私が何かをすることが
 止める手立てになったなんて
 そう思うことは傲慢で
 それでも
 そう思うことをとめることはできない

 雨の日は嫌い

 私は無力だと
 思い知らされるから
 嫌い



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最終更新:2006年10月22日 22:03