29-128「昔の恋人に会いたいですか?」

諸君は昔の恋人に、もう一度会いたいと思うことがあるか?
悩む人もいるかもしれないな。
俺は会いたいと思った。すごく、すごく
奴は正確には恋人では無かったもしれないが。

・・・・・・・・・

俺は中学時代、ある女子と仲が良かった。
学校帰り、塾まで自転車の荷台に乗せる仲で、俺達は校内1、2を争うバカップルで有名だった。実体は少し違うが。
いや、正確に校内2番目のバカップルと認知されていた、と言った方が正直かもしれない。
そして、周囲は当然ヤリまくっていると思っていた。
しかし、俺達には、誓って肉体関係など無かった。それどころか、恋愛感情すら無かった、と思う。
俺はいつも必死で否定していたが、あの女は何故か否定することは一度も無かった。肉体関係の噂すら。
その度に、クラスの女子から「ヤッたのに責任取らないなんて男らしくないわ」と非難され、軽薄なジゴロの烙印を押された。
『奴は俺と本当の恋人どうしになりたいのでは』と妄想したこともある。しかし、それは無いだろうと、すぐ否定した。
あれだけの美人が俺なんかと釣り合うはずが無いからな―。

今から考えると、あの頃の俺達は、普通の恋人よりも深い絆で結ばれていたのかもしれない。
そんな俺達も、別々の高校に進学したため、卒業以来会うことは無かった。
別々の高校で、互いに新しい友達ができた、はず。向こうの友達がどんなだかは知らないが。

なお、皆は、俺が中学時代の彼女を振って、高校で新しい彼女を作った酷い奴と噂したが、そんなんじゃないことを断言しよう。
俺と高校で知り合った女の子はクラスが同じでクラブが同じだけだ。いや、そのはずだ。
性格はともかく、あれだけの美人が俺なんかを相手にするわけがないぞー。

そして、高校生活も1年が過ぎ、もう一度中学時代の『彼女』に会いたいと少しだけ思っていた頃

唐突に佐々木に出会った。

・・・・・・・・・

俺と佐々木が再会したのは、春休みの終わり頃、うちの団長が立ち上げたクラブ活動の集まりに行く途中だった。
佐々木と会ったのも偶然だと思う。偶然に、神様の悪戯に感謝しないとな。
「やあ、久しぶりだな。佐々木」
「君と会うのは一年ぶりだな」
佐々木は前から美人だったが、1年でさらに女らしくなった。
「どうだ、佐々木。今通っている私立の進学校は?」
「毎日勉強、勉強で退屈だよ。須藤みたいに市立に行けば良かったと後悔しているよ」
「お前の行きたいのは市立でなくて、、、」
「ん?何か言ったかな?」
「いや、別に」言わなくても自分で判っているよな
「しかし、君が僕のプロフィールを忘却していなくて良かったよ」
「おいおい、忘れるわけ無いだろ」
佐々木特有の話し方は以前のままだった。

そんなことを言いながら、俺と佐々木はクラブの待ち合わせ場所に向かった。
佐々木が俺の高校の友人に挨拶したいと言ったからである。
待ち合わせ場所では、我が団の団長がご機嫌斜めだった。
「遅い。あんたまた一番最後じゃないのよ。たまには一番に来なさい(後略)」
早口にそう言った団長兼クラスメートは、不安げに佐々木を見て言った。
「その人誰?」
「こいつは俺の」
「友人、中学時代の(佐々木語り省略)」
佐々木と団長、団員達は代わる代わる握手をした。
おい、そんな目で見るな。俺と佐々木は恋人なんかではないぞー


「ところで、久しぶりに会って、つもる話もあるから、今日は彼をお借りしてよろしいでしょうか?」
「え?ああ。別に良いけど」
本当は嫌そうだが、その場の雰囲気でOKする団長。
そして俺は佐々木と一緒に、とある喫茶店に入った。

二人きりで喫茶店にいる所を誰かに見られたら、恋人どうしと思われるのでは?
そして、高校に入ってから佐々木に恋人が出来たとしたら、二股かけていると誤解されないか?
そうした疑問が出てきたので、佐々木にぶつけてみた。
「幸いな事に、今の僕には恋人と言える人はいなくてね。
君の方はあるみたいだけどね。さっき会ったクラブの美人団長さんかな?」
佐々木が未だに恋人いないのは意外だった。こんなに美人なのに。それに、進学校には佐々木好みの頭の良い男が多いはずだし。
俺は中学時代よりさらに美人になっている佐々木を見つめた。
「お前に恋人いないのは意外だな。それに、俺と団長とは恋人どうしというわけではない」
「君は中学時代もそんな事を言っていたね。くつくつ
それとも、さっき団長さんの隣にいたショートカットの女の子かな?
北高に行った誰かさんみたいに、君がクラブで二股かけていると聞いているよ。
君と奴が似ているのは判っていたけど、そこまで似ているとは驚きだ」

あいつの噂は有名だが、俺の噂まで流れていたとは。つまらない噂が流れているな。全く
「一応否定しておくが、その様子だと信じてくれないみたいだな」
「どうだかな、くつくつ」

佐々木はさらに話す
「ちなみに、君は、その誰かさんの噂を聞いたことはあるかな?」
「聞いているよ。有名だからな。あっちの団長さんは」
「そうか、君もか」


実は、佐々木は俺にとって、2番目に会いたかった人だ。そして、中学時代、2番目に親しかった女の子。
佐々木に会ったら聞こうと思っていたことを、聞いても良いのかな?
「なあ、佐々木」


「今、奴に、キョンに会いたいと思うか?」
 ・
 ・
 ・
「会いたい。でも、キョンは僕なんか忘れて新しい人生を送っているだろう。僕が割り込んでも迷惑だろう」
「俺は岡本にもう一度会いたい。だからもしかしたら、キョンも佐々木に会いたいかも」

そう、中学時代、岡本は俺にとって最も親しかった女の子。周囲から恋人とみなされるくらい。
「だと良いな」
そう言って佐々木はわずかに微笑んだ。
「ありがとう。おかげで吹っ切れたよ」

「でも、あの話本当になってしまったな」
「何の話?」
「お前らが別れるなら、別々の高校に行ったカップルは全て別れるって」
「それか。だったら、君達がよりを戻したら別れたカップルは全て元通りになるのかもね。
僕のためにもよろしく頼む」
佐々木のためにか…


その後、佐々木と別れた俺を団長様は懲罰委員会にかけた。
もしかしてストーカーしてたのか?
「あれで付き合ったのがたった一年で、一年も会ってなくて、互いに2番目に好きなんて信じられない
まるっきり恋人どうしとしか見えなかった。それもずっと付き合いがあって先週会ったばかりの
でも、あんたが言うのだから事実でしょうね
あの女が、あの涼宮ハルヒの今の彼氏の元恋人か。美人だったとは聞いていたけど」
「…元彼女の岡本さんとはもっと仲良かったということ。詳細を」
「そういうことになるな。俺的には中学時代は付き合っているという感覚では無かったが…」


俺は自分が誰を好きなのか、自分でも判らなかった。
ただ、岡本にもう一度会いたいという気持ちだけがふくらんでいた。
会って何かをしようと決めていたわけでもなく
キョンの気持ちは今の俺と同じなんだろうか。それとも、もう決心がついた?
そして、岡本は今、俺をどう思っているのだろうか。
そうだ、同窓会の司会を佐々木とキョンにさせよう。


佐々木がキョンと1年ぶりに再会したのは、春休み最終日のことだった。


(涼宮ハルヒの分裂に続く)

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最終更新:2008年02月09日 15:10
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