31-655「佐々木の彼氏?」

『佐々木の彼氏?』

俺と佐々木は学校で同じでクラスで近い席になった。第一印象はどこにでもいる普通の女の子だった。普通よりかなり美人だったが…
塾でも同じ教室になり、その縁でよく話すようになった。
出会えたのは、偶然でも何者かの陰謀でもなく、運命だと信じたい。

すぐに気付いたが、佐々木は男相手には男言葉で、女相手には女言葉で話していた。わざとやっているような気がしたが、それが何故かは今でもわからない。
佐々木と話すのはとても楽しくて、いくら話しても飽きなかった。
教室では休み時間の度に馬鹿話に花を咲かせる俺達、一緒に昼飯を食うのも当たり前になっていた。
塾は週3回だが、土曜日を除く平日の週2回には、学校から塾までの道のりを二人きりで行くのが習慣化した。
塾では馬鹿話をする暇もなく、皆必死に勉強していた。
塾が終わると外は既に闇に包まれている。その中をバス停まで自転車を押して歩く俺、少し遅れてその後ろをついてくる佐々木。
俺は自転車だが、佐々木はバスで帰る。空は星が眩いばかりに輝いていた。
「それじゃまた明日」と言って、やって来たバスに乗り込む佐々木
そんな俺達のことを、昔から佐々木を知る連中は誰も恋人と見なかったが、そうでない連中の中には俺達を恋人同士と見る者もいた。
こんなぬるま湯みたいに心地良い幸せが永遠に続くと、その時は無邪気に信じていた……

あの頃自分に正直になり、勇気を出していれば正式な恋人になれたかもしれない。いや、今でも可能性は残っているはず。そう信じたい。


二年に進学した俺達は違うクラスになり、今までのようにいつも会う関係ではなくなった。そして……
「おい、佐々木は最近前の彼氏とちょくちょく会っているみたいだぞ」
「前の彼氏って、もしかして、あの涼宮と付き合っているという噂の……」
「そうだよ。かなり丸くなったらしいが、それでも佐々木の方がずっと良いだろうな。普通」
「ふられたな、お前」ニヤニヤ
「お前が全然アタックしないから愛想つかしたんじゃないのか?今からでも告白しろよ」
(終わり)

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最終更新:2008年03月27日 22:35
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