暑い暑い夏休み。俺と佐々木は夏期講習に来ている。
「まさか初日から空気調整機が故障するとはついてない。暑いね、キョン」
そう言いながら佐々木は持ってきた団扇で涼を取る。
「暑すぎて授業に身が入らん」
教室を見渡すと、みんな暑さでまいっているようだ。
この分だと熱中症で倒れる生徒が出るんじゃないのか?
パタパタパタ
さっきから団扇で自分を扇いでいた佐々木が、俺を扇いでくれた。
ちょうど団扇貸してくれと言おうとしていた矢先だった。
うん涼しい。
「それはどこで手に入れたんだ?」
「去年の遠足で奈良に行った時に手に入れたんだ」
お寺の絵が描かれているから、京都か奈良だとは思ったが、奈良だったか。
佐々木は俺と別の高校に行って俺の知らない友達作っているんだよな。
それを考えると、ちょっと不安になった。
パタパタパタ
涼しくて良いぞ。佐々木。
「佐々木。その扇子貸してくれ」
バタバタバタバタ バタバタバタバタ
お礼に佐々木を扇いでやった。
「さすがキミは力が強い。涼しくて良い気持ちだよ」
褒められるともっとやりたくなる。
バタバタバタバタ バタバタバタバタ バタバタバタバタ バタバタバタバタ
「気持ち良いよ。キョン」
佐々木は恍惚の表情だ。
もっと扇いでやりたいが、俺も暑くなったので自分を扇ぐことにした。
バタバタバタバタ
下敷きよりも効率が良いみたいだ。
「キミは疲労困憊の様子だ。僕が代わるよ」
「いや、すまん」
パタパタパタ
「佐々木も上手いな」
パタパタパタ パタパタパタ
うん涼しい。
「疲れてるだろ。代わってやるぞ」
バタバタバタバタ バタバタバタバタ バタバタバタバタ バタバタバタバタ
「ありがとう。疲れたろう。また代わるよ」
パタパタパタ
「涼しくて良いな。ずっとこれが続けば良いのに」
「僕も同じ気分だよ。くつくつ」
最終更新:2008年07月29日 20:40