68-935『clair de lune』

SIDE K

真夜中に、たまたま目が覚める事って無いか?たまにな。で、たまに出歩きたくなる事もな。
この寒空に、何を好き好んで歩くのかと言われても困る。本当に理由なんて無い。
「寒っ…………!」
外は、やはり寒い。まぁ当たり前なんだが。
MP3プレイヤーを耳に入れ、音楽を聴きながら歩く。歩くうちに身体が温もり、新鮮な空気が肺を満たす。……あてもない散歩だ。少し興が乗り、俺は遠回りしながら歩いた。
ここら辺は、佐々木と一緒に帰った道か。空を見上げると、群青色の空と大きな月が見える。
「……………………」
凛とした冬の寒さと、空気の澄み具合が心地よい。優しい光に見とれ、暫く空を見上げていると、あいつの事を思い出した。

なぁ、佐々木。今日は月が綺麗だぜ。

SIDE S

今日は寝付きが悪い。勉強ばかりの日々だけに、眠っておかないと疲れるんだけど………。
台所に行き、脱脂粉乳でも作るかな。寒い日は、こうして暖かくして眠るのが一番だろう。………砂糖を入れすぎて太ってしまうのが難点だけど………。
「………寒ッ………!」
半纏を慌てて着る。この綿を詰めた服を発明した、昔の人の叡智は素晴らしいと思う。
ポットからマグカップにお湯を注ぎ、一旦カップを回してお湯を捨てる。そして脱脂粉乳を入れて、砂糖を入れる。
………スティックシュガー一本位なら、いいよね?
自分に言い訳をしながら、スティックシュガーを入れて、お湯を入れてかき混ぜる。
脱脂粉乳というよりは、ただの甘いミルクのような何かになり、部屋に持って帰り……すぐに布団へ。
自制心のなさに我ながら呆れつつ………一心地つき、私はカーテンから漏れる光に気付いた。今日は満月。
道理で部屋が明るいわけだ。群青色の空と、月の光。
「……………」
眠るのが惜しくなり、暫く空を見る事にした。…………月に誘われた、というべきかしら。
優しく降り注ぐ光は、彼の柔らかい笑みを思わせる。

…………キョン。月が綺麗だね。

END

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最終更新:2013年02月03日 18:13
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