ところでキミの友人の古泉君だが、彼は慢性胃潰瘍で苦しんでるよ。
「あいつも苦労を抱え込みそうなタイプだからな」
(…ああ、彼のかわりにこの場で殴ってやりたい)
ストレス性の潰瘍である場合、残念ながら医者にできるのはほとんど対症療法だけでね。
キミがどっちつかずの態度をとっていないで僕か涼宮さんかをスパッと選択してくれれば、
彼の胃潰瘍も(ひいては僕の精神病も)たちまち完治すると思うんだが。
「悪いが何のことだかさっぱりだ、佐々木」
キョン…前々から思っていたんだが、ひょっとしてキミは認知症なんじゃないのか?
「は? 認知症ってのはジイさんバアさんの病気だろ?」
それは従来の「痴呆」を「認知症」と言い換えるようになったことに起因するイメージだろう。
そもそもの認知症とは、年齢に関係なく発生する様々な症状を含んだ言葉でね、
僕が言っているのは、そのうちの「認知障害」と呼ばれるケースについてだ。
「おいおい、あんまり脅かさないでくれよ」
こと医者の脅しに限っては真面目に傾聴すべきだよ、キョン。
それはともかく、この認知障害というのは少々変わった症状をもたらす病気でね、
病名の通り、ある特定の概念が認知できなくなるのさ。
例えば「人の顔」が識別できなくなったり「数字の5」だけを飛ばして数えるようになったり、
さらには「時間の経過」という概念が認知できなくなって車の往来に飛び出したりするんだ。
時間経過を失念した人間にとって、車はあたかも「止まって」見えるからね。
「そりゃ恐いな。で、俺が何を認識できなくなっちまってるって?」
……話は変わるがキョン、中学で一緒だった須藤を覚えているかい?
その彼なんだが、最近すいぶんと女性にモテているそうでね、まぁ大いに結構なんだが、
実は今、同時にふたりの女性から好意を寄せられてほとほと困っているそうなんだ。
「羨ましい話だな。俺もあやかりたい気分だぜ」
…さらに話は変わるがキョン、僕と涼宮さんのどちらがいいんだい?
「悪いが何のことだかさっぱりだ、佐々木」