37-244「電子佐々木辞書-定価: オープン価格 (キョンに限り無料)」

佐「キョン。 今日は君にプレゼントがあるんだ」
キ「ん? 珍しいな、佐々木からプレゼントなんて」
佐「失敬な。 僕だって親しい人へのプレゼントくらいはするさ」
キ「そうか、すまん。 …で、今日なんかあったか?」
佐「…いや、別に特別な日なんかではないけど…。 ま、まあ受け取ってくれ」
キ「これは…電子辞書? これって高かったんじゃないのか?」
佐「そう、電子辞書さ。 値段は気にしないでくれ」
キ「まさかお前、俺の成績のために…?」
佐「君の事…じ、じゃなくて、君の勉強の事は何時でも考えているけど、その辞書は少しばかり特別なのさ」
キ「特別って、どんな特別のことだ? 一見すると普通の電子辞書だが」
佐「実はね、音声がすべて僕の声なのだよ。 試しに簡単な熟語でも検索してごらん」

 ──[才色兼備] を検索中......
 『読み方は"さいしょくけんび"。 意味は、"女性が優れた才能、美しい顔立ち、その両方に恵まれていることだよ。
  ちなみに、「才」は才知、「色」は容姿のことなんだ。
  類義語に、「才貌両全(さいぼうりょうぜん)」や、「秀外恵中(しゅうがいけいちゅう)」などがあるよ。
  【英訳】って書いてあるボタンを押せば、英訳も出るから興味があるなら押してみると良いよ。
  くっくっ…、こんな言葉を何に使うんだい? それじゃあ、引き続き勉強頑張ってね。』

キ「こりゃあ…びっくりしたぜ。 本当に俺がもらっていいのか? 俺みたいなアホには不釣合いな気がするんだが」
佐「何を言ってるんだい。 僕がプレゼントしたんだから遠慮なくもらってくれよ」
キ「ありがとうな。 これで佐々木に頼らず自分一人の力で勉強できるよ。 コンパクトだから持ち運びにも便利だしな」
佐「(逆効果!!)」
キ「佐々木も、俺に構わず集中して勉強できるから一石二鳥って奴だな。 一石二鳥…。 検索してみるか」
佐「ち、ちょっと待ったー!」 バッ
キ「な、何すんだよ。 なんかまずい言葉でも入ってたりするのか?」
佐「ああ、非常にまずい。 あ、言葉は別に大丈夫だよ? 別にまずい事があるのさ」
キ「…変な奴だな」
佐「あはは、そうそう。 とりあえず今の君の学力から考えて…やっぱり機械よりも応用の利く、僕の頭脳の方がいいと思うんだ」
キ「なんか自慢とバカにされたのを同時にされたような気分がするんだが」
佐「き、気にしないでくれ」
キ「んー、なんか一日中佐々木と一緒にいる気分でいられると思ったのにな」
佐「!!  …やっぱりあげようか?」
キ「本当か!?  やっぱりこれがあれば佐々木も一人で勉強できて一石」  佐「やっぱりダメ!」
キ「わ、分かったから。 落ち着け、な?」  佐「…はぁ…はぁ。 …すまない。」
佐「じゃあ、明日また学校でね」  キ「送って行かなくて大丈夫か?」
佐「心配無用だよ。 それじゃ」  キ「本当に大丈夫だな?」  佐「だいじょぶだって」
キ「…分かった。 それじゃーな」
佐「うん、またね」

 夕日を正面に家路に着く彼の背中を見ながら思う。
 もしかして、彼は僕と勉強するのは嫌なんじゃないだろうか。 一人の方がいいのだろうか。
 僕はお節介なのだろうか。 嫌だって思われてはいないだろうか。
 何故だろう。 彼と同じ空間だと妙に落ち着くのは。 一人のときより集中できるのは。
 そんな不安を胸に抱きながら、右手にずっしりとそのシルバーボディを横たえる「佐々木辞書(開発者命名)」を見やる。
 これ、どうしよう…。
 それらの答えは、誰にも分からないのだった。

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最終更新:2008年10月15日 11:25
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