40-333「佐々木家・家族日記」

-----12月25日 (木) 天気:晴れ-----

 なんということか。 クリスマスに私の番が廻ってくるとは。
 今日は書きたいことが沢山ある。
 いやしかし、書くべきかどうか。
 自分の気持ちに整理がつかない今──この日記を通じて、両親に相談すべきか。
 私は悩んでいる。 中学生の時は随分と人間を侮っていたようだ。
 “恋”というものに溺れ、振り回され、悲しみ、嘆き、苦しむ。
 そんなマイナスのイメージしか持っていなかったからなのか。
 馬鹿にしていた──ああ、そうさ。
 自分はそんなになるまいと、唯一つ認めることができた愛は父親と母親の間にあるもの。
 自分が生まれたそれだけが本当の愛なのだと、自分に言い聞かせていた。
 ──思い込みも甚だしいな、と自分でも思う。
 だから「片思い」は“恋”だと思っていた。
 想いは自分からの一方通行。 そして、空回り。
 そして私は選んだ。 自分と相手の絆が壊れないほうを。

 昔話はここまで。 続きはまたいつか書こうと思う。
 少し固めの文章で語ってみたはいいけど、思い出してみると僕は愚か者だね。
 今も家でくすぶっている。
 彼は彼で楽しくやっているんだろうなあ…。
 なんて、何も出来なかった僕が後悔するのはしかたのないこと。
 思い切って明日にでも乗り込んでみようか。 うん、そうしよう。
 今日は面白いテレビを見て、読みかけの本を読んで、暖かいベッドでぐっすり眠ろう。
 ……それでも頭から離れないんだろうな。
 だけど憂えてはいられない。 そんなのに負けてしまったら、心が押し潰されてしまいそうだから。
 僕が「恋」も「愛」も同じもの、かけがえのないものだと気づいたあの時から僕は───。

 お父さん、お母さん。
 今日の日記はとりとめがなくてごめんなさい。
 メリークリスマス。


 ──ある日の佐々木家・家族日記より抜粋(都合により父・母からのコメントは省略)──

---日記の「コメント・メッセージ欄」より抜粋---

 子どもの成長を見るのは楽しく、嬉しくもあり、また少し寂しいものでもあります。
 今回は何かが上手くいかなかったみたいね。 詮索はしません。 あなたの人生だもの。
 私が言うのもなんだけど、あなたは「心」っていうものへの対応が少し苦手ね。
 私の娘だけあるわね…(ここだけの話、私もそうだったのよ)。
 恋に答えはありません。 経験から学びなさい。
 あなたは一途だから想い人はずっと変わらないかもしれない。
 それは病気なんかじゃなく、あなたがピュアな女の子だという証なのよ。
 だから、楽しみなさい。 精一杯ね。    母より。

◆追記事項:長々とごめんなさい。


 娘の成長を見るのは楽しいものである。
 もう高校生だから恋というものを心に覚えても不思議はない。
 ただ……ただ父親としては寂しいもの……る。
 その想い……を…えてほし……

※以下多量の水滴(おそらく涙であると思われる)により字が完全に滲んでいるため解読不可。

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最終更新:2009年03月14日 22:57
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