「ウギャー!!!」
両腕を力強く引っ張られているせいで身動きが取れない。
そして、痛い。
ハルヒ、佐々木、頼むから放してくれないか?
いつもはホラー映画くらいでそんなに大騒ぎするお前らじゃないだろ?
うちのテレビから貞子が出てきたりはしないからさ。
「僕だって怖いんだよ、キョン」
「あんた、雑用係のくせして団長を見捨てる気!?」
団長様なら団員を助けるべきだ。
見捨ててないだろ?ずっとここにいるだろ?お前ら二人がしがみついて動けないんだから。
「そ、それにしても涼宮さん、少しキョンを引っ張り過ぎではないかい?キョンが痛がっているよ」
「あ、あぁ~ら、佐々木さんこそちょっとキョンにしがみつき過ぎじゃない?」
良いから二人とも放してくれ。
佐々木(ここは逃す事の出来ない最大のアピールポイント!ホラーに怖がるフリをして可愛い女の子アピール)
ハルヒ(少し涙目になった方が良いかしら?うるうるした上目遣いで見つめるのも高得点だわ)
佐々木(しかし、油断をするとあちら側にキョンが引きずり込まれてしまう…更にもう一押し)
「僕、怖いよ~キョン」
ハルヒ(くっ、キョンの腕に胸まで押し当てるとは…この計算高い稀代の戦略家!!!)
佐々木(くっくっくっ、今のキョンは映画よりも僕の方に気が行ってしまっているはずさ)
「キャッ!」
佐々木(さりげなくキョンの太股の上に手を置きやがった!!!このアマ!!!)
ハルヒ(ふふふ…太股の内側って触れられるとゾクゾクってしちゃうくらい感度が良いのよね)
「キョンく~ん♪怖いよ~♪」
ハルヒ(妹ちゃん!!)
佐々木(当たり前のようにキョンの…)
ハルヒ(キョンのあぐらの中に滑り込むなんてこの妹…)
ハルヒ・佐々木(油断ならない!!!そしてなんて羨ましい好待遇!!!)
佐々木(まさかこんな所にまで打ち倒すべき敵がいたとは…)
ハルヒ(良い度胸じゃないのよ、妹ちゃん)
俺、足が痺れてきたぞ。
佐々木(まず片付けるべきはこの無邪気な小悪魔、妹…)
ハルヒ(キョンに妹萌えの属性があるとは思えないけど出る杭は早めに叩いておかないと)
佐々木(まずはキョンを立たせて妹さんをキョンのあぐらの中から追い出す)
ハルヒ(逆転の発想として妹ちゃんを追い出すのではなく、キョンを立たせれば…)
「キョン、実は僕、さっきからずっとお手洗いに行きたかったのだが
ホラー映画を見た後だとさすがの僕もちょっと怖いんだ。付いてきてはくれないだろうか?」
「じゃあ、あたしも」
佐々木(くっ、バレてたか!?)
ハルヒ(まだまだ甘いわね)
佐々木(妹さんを追い出す作戦とみせかけてキョンと二人っきりになろうとする…)
ハルヒ(その程度の稚拙な戦術、見抜けないこの涼宮ハルヒ様ではないわ!!!)
そんな柄じゃないだろ、二人とも。
やれやれ。
「あれ?妹ちゃん、シャミセンが呼んでるよ?お腹空かせてるんじゃないかな」
「その通りだね、ちゃんと飼い主が餌をやらないと変な所で食事をする癖が付いてしまうから」
「じゃあ、シャミセンの餌は俺が行くからトイレにはハルヒと佐々木、二人で行ってきてくれ」
佐々木(ちょっとぉ~!!!)
ハルヒ(なんでそうなるのよ!?バカキョン!!!)
佐々木(何故、女二人で仲良くお手洗いに行くはめに…)
ハルヒ(男なら少しは女を守る甲斐性くらい見せなさいよ!!!)
「佐々木さん、お先にどうぞ」
「それはありがとう、涼宮さん」
その瞬間、突然トイレの扉がぎぃっと言う音を立ててひとりでに開いた。
「ウギャーッ!!!」
「おい、どうした?ハルヒ、佐々木」
ハルヒと佐々木は二人共、どうやら腰が抜けたらしく床にうずくまっている。
「あれ?なんでここにいるんだ?長門」
「別に…お手洗いを借りていた。女性にそういう事を聞くのは失礼」
いや、それはそうなんだが、それよりもいつ家に入り込んだんだ?長門よ。
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最終更新:2009年10月09日 20:13