68-890『のんべえ佐々木』

佐々木とルームシェアをし、体の良い同棲生活をしはじめてから、一ヶ月。気付いた事がある。
佐々木は、実はかなりの酒好き。のんべえだ。
ベランダで、プランターを置いて育てているのは、ハツカダイコン。これに塩を少しつけて、ハーブを入れた白ワインと一緒に頂くのが、休日の佐々木のランチだ。
谷口と釣りに行って、ブリを獲ってきた時は、日本酒を振る舞ってくれたな。谷口は、佐々木の料理の旨さに涙を流していたっけ。
「キョン、明日は休みだし、少し飲むかい?」
「ああ。」
本日は、蕎麦焼酎に、蕎麦。爽やかな後口が、酒を進ませる。
酒を飲んだ佐々木は、いつも以上に饒舌だ。
「とっておきを出すかな。」
佐々木が一番好んでいるのは、スコッチウイスキーだ。因みにこいつは、かなりお高い。
「僕が一番好きなのは、スコッチウイスキーだよ。こないだ、橘さんに飲ませたら、すぐにひっくり返ったがね。」
くつくつと笑う佐々木。
「ストレートで飲むと、とても美味しいなどとは思えないんだが………匂いも癖があるしね。」
「確かにスコッチウイスキーは、個性的だが。」
嫌いな奴は、とことん嫌いな味。それだ。
「蓼喰う虫も好き好き。まさにそれだよ。僕は、いつもこのお酒を飲むと、君を思い出す。
癖があって、飲み込む時に抵抗があって、美味しさを知ると病み付きになる。………君みたいな奴だ。」
「バカか。」
佐々木は、愉快そうにくつくつと笑う。
「お前がそれだろ。」
癖があって、抵抗があって、知ると病み付きになる。………そりゃ間違いなくお前だ。中毒患者がお前の目の前にいるからな。
「お褒めの言葉は至高の音色。」
佐々木は、グラスに氷を入れ、スコッチウイスキーを入れる。
「夜を語り明かすとしようか。………好きな味になるまで、待ちながらね。」
氷が溶けて少しずつ味が変わってゆく、スコッチウイスキー。喉を焼く強さと、好みの味を知ると抜けられない魅力。
「ハードボイルドだな。全く。」
「くつくつ。お互いにね。」
今夜は眠られそうにないな。

END


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最終更新:2013年02月03日 18:03
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