佐々木の母親から電話をもらったのは、そろそろ三月も終わりかけの、ある日のことだった。
中学を卒業した後、佐々木とは全くあっていなかったのだが、だからと言って佐々木の母親からの頼みを無視する程、俺は冷たくない。
佐々木の母親によると、佐々木は春休みが始まった日から部屋に閉じこもりの状態になったらしい。塾にも行かなくなったそうだ
さすがに俺もその話を聞いて、言葉を失った。いったい、何があったんだ?
佐々木の部屋にお邪魔するのは初めてのことだ。
部屋はきれいに片付いている。佐々木自体も身奇麗にしている。引きこもりと聞いて、俺が想像した喪女佐々木は杞憂に終わった。
「やあ、親友。よく来てくれたね。僕はうれしいよ」
笑顔でそういう佐々木の姿を見て一安心といったところだが、佐々木よ、一体何があった?
「いや、大したことじゃない。ただ、思うことがあってね。俗世と精神を断ち切ってリフレッシュをしているのだよ」
そうなのか?
「だけど、君が来てくれたことで、少しは俗世に戻る気がしてきたよ。キョン、今日はゆっくりしていってくれないか。話したいことが
山のようにあるんだ」
その日、結局俺は夕飯までごちそうになり、家に帰ったときは10時を過ぎていた。
春休みでもSOS団の活動はあっていた。ハルヒが集合をかけたからだ。
「フリマに行くわよ!」
駅前に集合して(例のごとく俺が最後)、会場に向かう。
電車に揺られながらも、俺の頭の中は、佐々木のことでいっぱいだった。
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くっくっくっ。作戦の第一段階は成功した。遅れた時間を取り戻す。
だいたい、キョンと結ばれるのは僕なのに、あの未来からきたロリ乳牛が歴史に介入してくれたおかげで、あのキチ○イ女とキョンが付き合う
ことになった。おかげで僕は貧乏くじだ。同じ未来人だというパンジ-野郎を締め上げて(禁則事項だ、というのを無視し宇宙人に頼んでゲロさ
せてやった)真実を吐かせた。
神の力は僕がいずれ、すべて頂く。現在半分頂いた。そしてキョンも取り戻す。
モニター起動。
少し憂いを秘めたキョンの顔がアップされる。早速取り込み。キョンフォルダに保管しておかないと。
キョン、今君はなにを考えている?聞かなくてもわかるよ。僕のことで頭がいっぱいなんだろう?本当に嬉しいよ。
橘さん、隠しカメラはもう少し近づけてくれ。うん?誰か近づいているよ。やばい、あれは橘さんの敵対組織とかいう「機関」のゲイ。
橘さん、ここは一時的に戦略的撤退だ。あとはパンジ-藤原に切り替える。
うん?何であのロリ乳牛の姿が映っているんだ?
「いいなあ、姉さんの姿は。いつ見ても可愛い」
このシスコンお花畑野郎!貴様の脳みその中にパンジ-でも咲いているのか!
『お客様、ちょっとこちらへ』
車掌がパンジ-を連れ去った。愚か者のたどる末路である。
キョンのそばにいるSOS団の三姉妹ならぬ三人娘。○チガイにホルスタイン、無口人形。しかし、キョンは変な女が好きだからなあ。
人の良さそうなフリして、腹は黒いショタ木田がそう言っていたが、うん、待てよ?変な女って、もしかして・・・・・・
後でやつの思い人のちゅるやさんとやらに手紙とスモ-クチ-ズを送っておこう。
キョンはフリマを楽しんだ後、いろいろどこか買い物に出かけたらしい。深海ひじき宇宙人・九曜が画像を転送してくれたが、あれの言葉同様
とぎれとぎれのぶつ切り画像だ。おまけにキ○ガイが常にそばにいる。実に気に食わない。
今日は早めに寝ようかな。
「キョン君が来てるわよ」
母親が部屋のドアを叩く。
え、どうして?なぜキョンがここに?
「佐々木、入るぞ」
慌てて、キョンフォルダを閉じる。
「やあ、いらしゃい、キョン」
「これ、おみやげな。今日遊びに行ったんだが、ついでにこれも買ってきた」
キョンが買ってきてくれたのは、今話題のクリ-ムパン。行列しないと買えない代物だ。
もしかして、僕のために?
「ああ。昔、塾の帰りに二人で食べたことを思い出してな」
忘れもしない。あれは中学三年の11月の思い出ファイルNO185番のできごとだ。
「佐々木、俺でよかったら、いつでも相談に乗るぞ。対した力にはなれないかもしれないが」
キョンはやっぱり僕のキョンだ。優しいし、思いやりがある。中学時代と変わらない。
「よかったら、佐々木明日出かけないか?大分桜も花開いてきたしきれいだぞ」
「是非によろしく頼むよ、親友」
僕はキョンの手を握っていた。
その夜、僕はなかなか寝付けなかった。
今まで成り行き任せできたけど、いよいよ反撃開始だ。必ず、キョンを取り戻す。三人娘ども、覚悟しろよ。
明日から、少し頑張ってみよう。今日はゆっくり休むとしよう。
「だから俺は姉さんの写真を撮っていただけだ!こんなところになぜ、閉じ込められるんだ!規定事項にはないことだ!」
最終更新:2013年04月01日 00:56