「体調を崩したという事を聞いてな。見舞いに来たぞ。」
「いらない。帰りなよ、未来人。」
「…………」
お前まで僕をいじめるのか、という言葉を飲み込みつつ。藤原は見舞いのフルーツを置いた。
「明日は不思議探索とやらに行く予定らしいな。」
「まぁね。気は進まないが、キョンの誘いだしね。」
「ふむ。最期の思い出作りか。」
藤原は、確認を取る。
「いや?最期とは限らないさ。」
「(おや?)」
規定事項では、佐々木は肯定するはずだが。
「橘はどうした?お前に会うといっていたが。」
「実りある話をしたよ。」
藤原は、こめかみに指を当てる。橘が辿ったであろう運命を考えると、涙を禁じ得ない
「そうか。あんまり泣かしてやるな。あいつもお前を思って……」
「意気揚々と帰っていったけど……」
お互いに顔を見合わせる。
「え?」
「え?」
……規定事項にズレが発生したようだ。
「ジョン・スミスという来客があってね。」
「(あんにゃろう。)」
お前が佐々木と接触しては、真っ先に消されるぞ。そう考えた藤原だが……
「来客といっても、姿すら見えなかったし、その名前すら定かでないんだ。」
「…………」
TPDDに、そんな機能はない。恐らくはあのインターフェースが一緒にいるのだろう。
「(本気で姉さんと事を構えるつもりか。)」
黙って幸せになっておけばいいものを。つくづく報われない男だ。
「(そんなバカだからこそ、こうしたお節介を焼いているんだがな。)」
いくつか確認しておくべき事項があった。だが、それは全て解決しており、自分が骨を折る必要すらなかった。しかし。
「(だからこそ、ダークサイドが必要になる。)」
分岐する道。それもここから分岐するならば、『自分』は、佐々木達に会う事は二度となくなる。
「(ふくくっ。まぁそれもいい。)」
どうせ一度はそうなった身だ。
全てを選ぶのは、佐々木自身だ。
「未来を犠牲にする、という事は考えるな。」
「…………?」
「僕は既に一度は消えた身。大勢に影響などはない。選択の積み重ねが未来であり、選択の結果が未来だ。その選択をする権利は、未来にはない。
ただ、忘れるな。『僕は存在している』。それが全ての答えだ。」
To Be Continued 『Cross Road』2
最終更新:2013年04月29日 13:50