「そんな目で見詰めないでくれ。私があなたに夢中なのは、あなたが一番知っているでしょ?」
最近、佐々木は家庭菜園に凝っているらしい。
裏庭に玉葱を植えたから、少し持っていけという事で佐々木の家にお邪魔しているんだが……
「お前は何をしているんだ、佐々木……」
そこには、葱坊主に話し掛ける親友の姿があった。
「やあ、キョン。」
麦わら帽子に長袖のTシャツ、オーバーオールに軍手。そして長靴。少し汗ばんだらしく、背中が少し透けている。
「植物は言葉を解するというからね。褒めて美味しくしようかと。」
「……お前はアホだ。」
「何を言う。実践にて試しているんだ。実際にお母さんや橘さんは美味しいと涙を流していたよ。」
そりゃそうだろ。母親は娘の心遣い、橘はお前の育てたものだというだけで、至上の美味だろうよ。
「割には口説き文句を並べていたが?」
俺の言葉に佐々木がニヤリと笑う。
「くっくっ。……食べる時は口説き文句が必要だろう?」
「言ってろ、アホ。」
大概呆れた俺に、佐々木は言った。
「キミが僕を食べる時のようにね。」
END
おまけ。
結局、俺は玉葱を貰わなかった。いや、貰えなかったといってもいい。
佐々木に口説かれた玉葱なんて、正直想像したくもない。頭から食われろ。俺は食ってやらん。
家に帰ると、妹がオニオンサラダを食べていた。
「あ、キョンくん!佐々木お姉ちゃんから貰った玉葱!すっごい甘いんだよ?」
……俺が玉葱を大嫌いになったのは、言うまでもないな?
END
最終更新:2013年07月01日 00:53