10-47「同棲生活」

「ふふ、気持ちいい――一体何処で覚えたんだい?」
「そうか? どこでってなあ……昔妹によくやってやったもんだが」
「なるほどね。キミの妹さんが羨ましいよ」
「つってもなあ、もう何年も前の話だぜ? あいつだってもう高校生なんだ」
「そうだね、もしかしたら妹さんも僕達みたいな事をやっているのかもしれないよ」
「……」
「くっくっ、力んだね、今。動揺を隠せない証だ。やはり妹さんの事は格別に大切なようだね。
 キミは全くいいお兄さんをやっているよ。
 ちなみに今のは僕のブラフだ。妹さんには彼氏はまだ居ないようだよ」
「やれやれ、相変わらずからかってくれるぜ。――何でそんな事知ってるんだ?」
「何でって、毎日メールの遣り取りをさせて貰っているからね」
「はあ? いつの間にお前らそんな仲に」
「別に意識的にキミに黙って居た訳じゃ無いさ。
 彼女も僕もキミの所有物になった覚えはない。それぞれ、只の一個人同士の付き合いさ。
 それとも――くく、疎外感を感じて焼き餅でも焼いているのかい? 可愛いところがあるじゃないか」
「ばっ……! 別に俺は、そんな」
「まあそう照れる事もあるまい。褒めているのさ」
「この歳で男が可愛いなんて言われたって嬉しくねえっての」
「そうかい? じゃあもっと言ってやろう。キョン可愛いよキョン。くっくっ」
「くそ――こうしてやる! こうしてやる! どうだ佐々木?!」
「わ、そんな乱暴な――やめたまえ、やめたまえよキョン。
 僕もいささか調子に乗り過ぎたようだ。謹んで詫びさせて頂こう」
「はは、別に良いけどな」
「あ、それだ、その優しい指遣いがたまらなく心地良い。この時は僕のささやかな毎日の愉しみなのさ」
「そいつはどうも。しかし、そんなに良いものかね、俺なんかのシャンプーが?」
「世辞は言わない主義だからね。くく、いっそ美容師にでもなったらどうかな?」
「……商売でやれる自信はねえよ」

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最終更新:2007年10月27日 10:31
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