中学3年の昼食中の会話
「歴史上の人物に例える人格判断が流行っているそうで、妹とその同級生のミヨキチと昨日やってみたんだ。」
それで、俺の結果だけは知らない人物だった。佐々木は博識だから知っているかもしれないがな。」
「誰だったんだい?」
「正確な名前は覚えちゃいないが、ドン・ファンという名だった。」
「くっくっ……、 それは実に興味深い結果だ。」
「佐々木はその人物を知っているのか? 出来れば分りやすく教えてくれ。」
「そうかい。ドン・ファンはスペインの伝説上の人物さ。プレイボーイの代名詞として使われるよ。」
「俺がプレイボーイ!? ありえんな。あの鑑定を作った奴は一体何を根拠にしているのかわからんな。」
「僕はキミの女性遍歴は知らないけど、中学3年になって知り合ってから判断するとそういう感じではないね。
キミは誠実そうだし、女たらしなタイプには見えないよ。どちらかと言えば女心に対して鈍感なタイプに見えるね。」
「そんな風に見えるのか。俺が鈍感ね……。実際、誰とも付き合ったことがないから、女心はわからないな。
それより佐々木の弁当に入ってる卵焼きが美味そうだな。一切れくれないか? 」
「代わりにキミの弁当に入ってるポテトサラダを頂きたい。それでも良いなら交換しよう。」
「ああ、構わない」
「美味いな、この卵焼き。お前の母親は料理が上手だな。」
「その……、今日の弁当は僕が作ったんだ。それでその卵焼きを作ったのは僕なんだけど……。
何にしろ、キミの口にあったようで良かったよ。」
「佐々木は料理も上手なんだな。」
「キョンさえよければキミの分の弁当も作ってあげてもいいよ。」
「それはさすがに悪いから、弁当自体を交換するってのはどうだ?」
――
2年後の立ち話
「ねぇ、キョン。卵焼きとポテトサラダを交換した時の会話を覚えているかい?」
「覚えちゃいないな。」
「あの時の僕は間違っていたようだよ。」
「そういや、あの時からよく弁当を交換するようになったな。
佐々木の作る弁当は美味かったし、今でもお前の作った弁当が食べたくなる時がある。」
「僕としてはキミのためなら弁当くらい毎日でも……。弁当じゃなくても……」
車の通り過ぎる音で佐々木の言葉が聞き取れなかった。何ていったんだろうな
それにしても佐々木の顔が赤いな。もしかして熱でもあるんじゃないか。
「佐々木、顔が赤いぞ。熱でもあるんじゃないか。もしかして風邪か? 無理すると身体に悪いぜ。」
佐々木の額に俺の額を当ててみると凄く熱かった。やはり佐々木は熱があるようだ――
最終更新:2007年12月03日 08:00