「残された者達」
突如ラクロアに反旗を翻した二人の近衛騎士、デュエルとイージス。
彼らは同時に襲撃してきたザフトの軍門に下ると燃え盛るラクロアを後にする。
残ったのは瓦礫の山と途方に暮れた人々。
しかし、その逆境にも屈することなく立ち向かう者達がいた…。
彼らは同時に襲撃してきたザフトの軍門に下ると燃え盛るラクロアを後にする。
残ったのは瓦礫の山と途方に暮れた人々。
しかし、その逆境にも屈することなく立ち向かう者達がいた…。
全く、ラクス様ときたらどうも思いつきで行動する癖があって困る。
…もっとも、あそこでラクス様が名乗りでなければアズラエルが全てを仕切っていただろう。
どうもあの男は腹の底に何かを隠している節があり信用できない。
この間も勝手に国の書物庫をうろついていたので注意したことを思い出し眉をしかめながら、宰相ナタルは王女ラクスを探し回っていた。二人の近衛騎士の反乱とザフトの襲撃により陛下は重傷を負い、国も大きな打撃を受けた。
立て直すには代わりの指導者が必要だ。本来ならば大臣であるアズラエルが執政を行うはずであったが、ラクス様たっての強い希望により彼女を中心に我々が手助けをする形となった。
もちろんそれは単なる思いつきなどではなく、自分がやらねばならぬという使命感からだろうという事はナタルもわかっている。
まだまだ拙くはあるが、努力も垣間見られる。正直言ってあの王女がここまでやることにナタルも驚いていた。
彼女が思いつきで、と指摘しているのは王女が毎日1回は必ず国民の前で歌を披露する事だ。王女曰く、
「疲れきった皆を励ますには歌が一番ですわ」
だそうだ。しかし毎日毎日歌を続け、その後子供達の相手をし、更に続けて国を治めるための膨大な量の仕事。
いつ休んでいるのかと呆れてしまう。
自分の助けがあったとしても、これでは体を壊してしまうではないか。
上に立つ者の威厳とは、模範となるべき規則正しい生活に宿る。それがナタルの持論だった。
開け放った扉から溢れる外の光をきつく見据えた彼女は自身もまた執政の手助け、騎士団の指揮という二足の草鞋を履き碌な休みを取っていないことを知らずのうちに棚に上げて憤る。
だが彼女は表面上は一片も疲れを見せることはない。旅立つ際、騎士団長フラガにあまり肩に力を入れるなと受けた忠告も、国をあるべき姿に戻す日までは休むことは許されないと意味をなさずにいた。
その考えは他者に対しても例外ではなく、あまりに苛烈な彼女の方針に舌を巻く者もいれば不平を漏らす者もいる。
しかしこの過剰なまでの厳格さが、今のラクロアを支えているのも確かであった。
ナタルは、王女ラクスを発見し今日こそは休んでもらう事を固く決めると国民に囲まれ、楽しそうに微笑んでいる彼女の元へと急いだ。
…もっとも、あそこでラクス様が名乗りでなければアズラエルが全てを仕切っていただろう。
どうもあの男は腹の底に何かを隠している節があり信用できない。
この間も勝手に国の書物庫をうろついていたので注意したことを思い出し眉をしかめながら、宰相ナタルは王女ラクスを探し回っていた。二人の近衛騎士の反乱とザフトの襲撃により陛下は重傷を負い、国も大きな打撃を受けた。
立て直すには代わりの指導者が必要だ。本来ならば大臣であるアズラエルが執政を行うはずであったが、ラクス様たっての強い希望により彼女を中心に我々が手助けをする形となった。
もちろんそれは単なる思いつきなどではなく、自分がやらねばならぬという使命感からだろうという事はナタルもわかっている。
まだまだ拙くはあるが、努力も垣間見られる。正直言ってあの王女がここまでやることにナタルも驚いていた。
彼女が思いつきで、と指摘しているのは王女が毎日1回は必ず国民の前で歌を披露する事だ。王女曰く、
「疲れきった皆を励ますには歌が一番ですわ」
だそうだ。しかし毎日毎日歌を続け、その後子供達の相手をし、更に続けて国を治めるための膨大な量の仕事。
いつ休んでいるのかと呆れてしまう。
自分の助けがあったとしても、これでは体を壊してしまうではないか。
上に立つ者の威厳とは、模範となるべき規則正しい生活に宿る。それがナタルの持論だった。
開け放った扉から溢れる外の光をきつく見据えた彼女は自身もまた執政の手助け、騎士団の指揮という二足の草鞋を履き碌な休みを取っていないことを知らずのうちに棚に上げて憤る。
だが彼女は表面上は一片も疲れを見せることはない。旅立つ際、騎士団長フラガにあまり肩に力を入れるなと受けた忠告も、国をあるべき姿に戻す日までは休むことは許されないと意味をなさずにいた。
その考えは他者に対しても例外ではなく、あまりに苛烈な彼女の方針に舌を巻く者もいれば不平を漏らす者もいる。
しかしこの過剰なまでの厳格さが、今のラクロアを支えているのも確かであった。
ナタルは、王女ラクスを発見し今日こそは休んでもらう事を固く決めると国民に囲まれ、楽しそうに微笑んでいる彼女の元へと急いだ。
瓦礫の山を前に困った事になった、と誰にも聞こえないようひとりごちる重闘士バスター。
それは本人ではなく、実は副官であった闘士バスターダガーが影武者としてバスターの鎧をつけ、本人と瓜二つの仮面をつけ偽装した姿であった。
ふと、あの時のことが脳裏に蘇る。自分がこのような苦境に立たされることとなった、そもそもの原因が。
「先ほどザフトへ潜入する命が陛下より与えられた。俺が留守の間、闘士隊はお前に任せる」
「えぇっ!?どういう事ですか隊長!?」
「送っていた諜報員がやられたらしい。後任として俺が行く事となった。この事はほんの一部の者しか知らん」
「何故そのような重要な話を自分に…」
嫌な予感に包まれながらもバスターに問いかけるバスターダガー。バスターは無表情でバスターダガーの肩に手を置く。
「明日からは、お前が重闘士バスターだ」
「ええぇぇええーーっ!?」
そして頭にバスターの振る舞いから言動まで全て叩き込み、偽の鎧と仮面を与えられ現在に至る。
しばらくは一定の間隔で連絡が入っていたが、ある日何の音沙汰もなくなってしまった。
それから数日後近衛騎士達の反乱、同時にザフトの襲撃が起こる。
当然闘士隊の隊長として応戦するが、結局ザフトの破壊行為を食い止めるのが精一杯であった。
それでもいくつかの建物は破壊されたし、怪我人も続出した。
国王陛下が重傷を負ったものの、それでも死人は出なかったのが不幸中の幸いだ。
そして今はその瓦礫を撤去する作業の途中であり、城の周りは人々の往来が激しい。
丈夫さが取り柄の闘士隊にも負傷した者はおり、決して多くはない人数での作業は難航している。
毎日欠かさず行けと言われていたディアッカの店も忙しさで顔を出すこともままならない。
唯一事情を知る彼は、この耐え難い状況の中で清涼剤とも言える存在であった。
「それにしてもこの忙しいのに副隊長のヤローはどこ行きやがったんだ」
「肝心な時に役に立たねぇんだからよ」
事情を知らない同僚たちの心無い言葉も、バスターダガーを苦しめる。仲間達に囲まれているのに、彼の胸中を埋め尽くすのは圧倒的な無力感と孤独感だった。
隊長…自分はどうしたらいいんですか。何故、自分なんですか。
あまりに重いモノを背負いながら、バスターダガーは立ち尽くしていた。
それは本人ではなく、実は副官であった闘士バスターダガーが影武者としてバスターの鎧をつけ、本人と瓜二つの仮面をつけ偽装した姿であった。
ふと、あの時のことが脳裏に蘇る。自分がこのような苦境に立たされることとなった、そもそもの原因が。
「先ほどザフトへ潜入する命が陛下より与えられた。俺が留守の間、闘士隊はお前に任せる」
「えぇっ!?どういう事ですか隊長!?」
「送っていた諜報員がやられたらしい。後任として俺が行く事となった。この事はほんの一部の者しか知らん」
「何故そのような重要な話を自分に…」
嫌な予感に包まれながらもバスターに問いかけるバスターダガー。バスターは無表情でバスターダガーの肩に手を置く。
「明日からは、お前が重闘士バスターだ」
「ええぇぇええーーっ!?」
そして頭にバスターの振る舞いから言動まで全て叩き込み、偽の鎧と仮面を与えられ現在に至る。
しばらくは一定の間隔で連絡が入っていたが、ある日何の音沙汰もなくなってしまった。
それから数日後近衛騎士達の反乱、同時にザフトの襲撃が起こる。
当然闘士隊の隊長として応戦するが、結局ザフトの破壊行為を食い止めるのが精一杯であった。
それでもいくつかの建物は破壊されたし、怪我人も続出した。
国王陛下が重傷を負ったものの、それでも死人は出なかったのが不幸中の幸いだ。
そして今はその瓦礫を撤去する作業の途中であり、城の周りは人々の往来が激しい。
丈夫さが取り柄の闘士隊にも負傷した者はおり、決して多くはない人数での作業は難航している。
毎日欠かさず行けと言われていたディアッカの店も忙しさで顔を出すこともままならない。
唯一事情を知る彼は、この耐え難い状況の中で清涼剤とも言える存在であった。
「それにしてもこの忙しいのに副隊長のヤローはどこ行きやがったんだ」
「肝心な時に役に立たねぇんだからよ」
事情を知らない同僚たちの心無い言葉も、バスターダガーを苦しめる。仲間達に囲まれているのに、彼の胸中を埋め尽くすのは圧倒的な無力感と孤独感だった。
隊長…自分はどうしたらいいんですか。何故、自分なんですか。
あまりに重いモノを背負いながら、バスターダガーは立ち尽くしていた。
「ったく、ここ数日忙しいったら…これが通常営業なら売り上げはグゥレイトだぜ」
厚い雲に覆われた空の下、若き料理人ディアッカは炊き出しの後片付けをしていた。
しかしその脳裏には、大事な使命を与えられ旅立ったまま音沙汰のない男の事が浮かぶ。
突然自分の元へとやってきて、自分が与えられた任務を語りだすと装備一式を預かってくれ、後この事は秘密だ喋ったら殴る。それだけ言って旅立った彼の相変わらず不器用な態度を思い出すと笑いもこみ上げてくるというものだ。
それをあっさり承諾する自分も彼との付き合いは長いとは言え、まともではないのかもしれない。
そして彼が旅立った日、これからは用意する料理が一人分減ると考えていた自分の前にバスターが現れる。
一瞬面食らったものの、他の者ならまだしも毎日彼の顔を見ているディアッカはすぐに偽者だと理解した。
「よぅ、バスター!いつものヤツでいいよな?」
事情を配慮して普段通り接する。一方のバスターは挙動不審気味に答えた。
「は、はぁ…お構いなく」
バスターにはありえない程慎ましい態度に吹き出すのをこらえながら料理を食わせた後、店の裏に連れて行き正体を確かめる。
案の定よく出来た仮面の下には、怯えるように青ざめたバスターダガーの顔があった。
「ど…どうも…この事はどうか内密に」
「わかってる…お互い苦労するよな、実際」
バスターは辛いのが好きだが、こいつは苦手だったからこれから大変だろうと苦笑しながらも色々と注意した後解放し、次の日からは見えないように香辛料を減らしておいてやった。
彼もまた、バスターの強引な手口の犠牲者かと思うと同情しながらも嬉しくなる。
それにしても、あのバスターが潜入の任務なんて大人しい真似が出来るのだろうか?
不安になったのでバスターダガーに尋ねたが、定期的にあった連絡が途絶えているらしい。
しかしあいつの事だ、自分の料理が食えない事に不満を抱きながらも元気にやっているかもしれない。
とにかく自分に出来るのは彼を信じて鍋を振るい続ける事だけだ。ここが彼の帰ってくる場所なのだから。
片付けを終え、食堂に帰る途中瓦礫を運び出す闘士隊を見ながら、最近バスターダガーが顔を出していない事を思い出す。
バスターは何があっても必ず1日1回は来るから毎日来いと言っておいたのに。
生真面目を絵に描いたような男なので、任務への重圧に苦しんでいる事はディアッカにも手に取るようにわかっている。
だからこそ、からかいがいがある。少々捻くれたところもあるディアッカはむしろこの状況を楽しんでいた。
「あいつ…忙しさを盾に逃げやがったな」
今日は香辛料を倍にしてやろう、ディアッカはにやりと笑うと重々しい空気の中立ち尽くす、自分と同じく彼を待つ男の元へ走り出したのだった。
厚い雲に覆われた空の下、若き料理人ディアッカは炊き出しの後片付けをしていた。
しかしその脳裏には、大事な使命を与えられ旅立ったまま音沙汰のない男の事が浮かぶ。
突然自分の元へとやってきて、自分が与えられた任務を語りだすと装備一式を預かってくれ、後この事は秘密だ喋ったら殴る。それだけ言って旅立った彼の相変わらず不器用な態度を思い出すと笑いもこみ上げてくるというものだ。
それをあっさり承諾する自分も彼との付き合いは長いとは言え、まともではないのかもしれない。
そして彼が旅立った日、これからは用意する料理が一人分減ると考えていた自分の前にバスターが現れる。
一瞬面食らったものの、他の者ならまだしも毎日彼の顔を見ているディアッカはすぐに偽者だと理解した。
「よぅ、バスター!いつものヤツでいいよな?」
事情を配慮して普段通り接する。一方のバスターは挙動不審気味に答えた。
「は、はぁ…お構いなく」
バスターにはありえない程慎ましい態度に吹き出すのをこらえながら料理を食わせた後、店の裏に連れて行き正体を確かめる。
案の定よく出来た仮面の下には、怯えるように青ざめたバスターダガーの顔があった。
「ど…どうも…この事はどうか内密に」
「わかってる…お互い苦労するよな、実際」
バスターは辛いのが好きだが、こいつは苦手だったからこれから大変だろうと苦笑しながらも色々と注意した後解放し、次の日からは見えないように香辛料を減らしておいてやった。
彼もまた、バスターの強引な手口の犠牲者かと思うと同情しながらも嬉しくなる。
それにしても、あのバスターが潜入の任務なんて大人しい真似が出来るのだろうか?
不安になったのでバスターダガーに尋ねたが、定期的にあった連絡が途絶えているらしい。
しかしあいつの事だ、自分の料理が食えない事に不満を抱きながらも元気にやっているかもしれない。
とにかく自分に出来るのは彼を信じて鍋を振るい続ける事だけだ。ここが彼の帰ってくる場所なのだから。
片付けを終え、食堂に帰る途中瓦礫を運び出す闘士隊を見ながら、最近バスターダガーが顔を出していない事を思い出す。
バスターは何があっても必ず1日1回は来るから毎日来いと言っておいたのに。
生真面目を絵に描いたような男なので、任務への重圧に苦しんでいる事はディアッカにも手に取るようにわかっている。
だからこそ、からかいがいがある。少々捻くれたところもあるディアッカはむしろこの状況を楽しんでいた。
「あいつ…忙しさを盾に逃げやがったな」
今日は香辛料を倍にしてやろう、ディアッカはにやりと笑うと重々しい空気の中立ち尽くす、自分と同じく彼を待つ男の元へ走り出したのだった。
おまけ:コミックワールドネタ(ディアッカ分多め。誕生日おめでとう!3/29)
バスターダガー誕生
バ「明日からはお前が闘士隊の隊長だ」
ダ「えぇぇええーーっ!?」
バ「ほら、鎧も用意してある。」バァーーン
ダ「おぉーっ!って顔はどうするんですか!根本的に違いますよ!」
バ「安心しろ、これがある。」
(仮面を取り出す)
ダ「うぉっ、すごい!そっくりだ!これどうしたんです?」
バ「石膏に顔突っ込んで作った」
ダ(…良く見たらところどころに張り付いてる…)
バ「明日からはお前が闘士隊の隊長だ」
ダ「えぇぇええーーっ!?」
バ「ほら、鎧も用意してある。」バァーーン
ダ「おぉーっ!って顔はどうするんですか!根本的に違いますよ!」
バ「安心しろ、これがある。」
(仮面を取り出す)
ダ「うぉっ、すごい!そっくりだ!これどうしたんです?」
バ「石膏に顔突っ込んで作った」
ダ(…良く見たらところどころに張り付いてる…)
相談
バ「というわけだ、俺の装備一式預かってくれ」
デ「お安い御用だぜ!」
バ「じゃあ頼んだぞ。」
すたすた…ズズズ(コマの外からでかい風呂敷を引っ張ってくる)
デ「?」
バ「ざっと見て600というところだ」
デ「グゥレイトォ!」
バ「というわけだ、俺の装備一式預かってくれ」
デ「お安い御用だぜ!」
バ「じゃあ頼んだぞ。」
すたすた…ズズズ(コマの外からでかい風呂敷を引っ張ってくる)
デ「?」
バ「ざっと見て600というところだ」
デ「グゥレイトォ!」
武器
バ「ディアッカよ、いつお前の店が襲われるかもわからん。
いざという時のために、俺のコレクションからいくつか使え」
デ「ハハ、大丈夫だって!いざという時はこれがあるしな!」
(包丁やおたまを取り出す)
バ「本当にそんなもので大丈夫なのか?」
デ「あぁ、料理人の俺にとっちゃこれが武器さ!」
バ「…武器…ディアッカ、少しの間これを貸してくれ」
デ「ん、いいけど?」
――――数日後、ストライク達と交戦したザフト軍
「大変です!ストライクのまわりにすごいヤツがいて近づけません!」
「何ィ!どんなヤツだ!?」
「なんかおたまとか包丁振り回してます!」
「そんなバカなヤツがいるか!」
(中華なべで剣を受けるバスター)
「いたァーーーーーーーー!」
バ「ディアッカよ、いつお前の店が襲われるかもわからん。
いざという時のために、俺のコレクションからいくつか使え」
デ「ハハ、大丈夫だって!いざという時はこれがあるしな!」
(包丁やおたまを取り出す)
バ「本当にそんなもので大丈夫なのか?」
デ「あぁ、料理人の俺にとっちゃこれが武器さ!」
バ「…武器…ディアッカ、少しの間これを貸してくれ」
デ「ん、いいけど?」
――――数日後、ストライク達と交戦したザフト軍
「大変です!ストライクのまわりにすごいヤツがいて近づけません!」
「何ィ!どんなヤツだ!?」
「なんかおたまとか包丁振り回してます!」
「そんなバカなヤツがいるか!」
(中華なべで剣を受けるバスター)
「いたァーーーーーーーー!」