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野望

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「野望」

 俺の名は邪騎士ディープアームズ。ザフト騎士団に所属している。
正直な話、俺の実力はもっと評価されるべきだ。
しかし、『態度に問題がある』などとほざくイザークのせいで今でも騎士団の中では下から数えた方が早い地位にいる。
俺はもっと上に行きたい。そうすれば、誰も俺に意見できなくなる。存分に暴れられる。
だが、このままでは上に行くのはどうにも難しい。どうしたものかと考えながら
訓練場で武器を振っていると、呪術師のクルーゼが現れる。
何事かと思いながら剣を振り続ける、俺に話しかけてきた。
昇進の話か?などと思っていると、あながち間違いでもなく、
先日の戦いで種子捜索隊の隊長を務めていたミゲルジンがラクロアの騎士達にやられたため、後任を俺に任せたいらしい。俺は心の中で狂喜した。ザフトに入って初めてだ。
こんな大役を任せられたのは。今までの生活で一度もしたことがなかったが謙遜して聞いてみる。
「いいのですか?お…自分が、このような大役を」
「何を言う、君ならやれると思って私が直々に頼みに来たんだ。君には前々から目をつけていてね…」
詳しい事は王の間で話そうと告げるクルーゼ様の後ろを付いていきながら、俺は人生で
最高の気分を味わっていた。


「あ~、暇じゃ暇じゃ…誰かに呪いでもかけようかのう」
そんな事を呟きながら、呪術師ファントムゾノは自分の部屋でうろついていた。
できれば自分の場所をあっさりと奪ったあの男に呪いをかけたいが
呪術というのはかけた相手の精神力が自分よりも上の場合、術者が大きなダメージを負うのだ。
憎い憎いと思っているが、クルーゼが自分よりも実力が上、という事実は認めざるを得なかった。
しかしそれに我慢できず、部屋の外から顔を出すペットのナスカロックを撫でながらもその顔は憎悪で歪む。
「全く…なんであんな若造がわしを差し置いて陛下のお側に・・・わしはもっと評価されてもいいはずだぞ」
「キュエー」
心配そうに自分の顔を見つめるナスカロックを見て、我に返る。
「おぉおぉおお!よしよしよしよし!お前だけじゃよわしの事をわかってくれるのは!」
窓から顔を出しナスカロックの頭を撫でていると、兵士ジンがやってくる。
クルーゼが頼みがあるので来てほしい、との事だった。
行ってみると王の間にはクルーゼと若い騎士…確かジュール隊のだったか、が待っていた。
陛下の姿は見当たらなかった。クルーゼによれば、ミゲルジンの殉職により種子捜索隊の隊長格がいないので、後任としてこの若造を、そしてそのサポートに自分も付いていって欲しい、とのことだった。
「こんな若造に隊長などを任せて、大丈夫かね」
若い騎士が露骨にムッとした表情を作る。
「我々も若い世代を育てる事は必要です。それにそのためにファントムゾノ殿にサポートしてもらうのです。何やら今度の種子は知恵にまつわるものらしいですから。戦いは彼に任せて、種子の試練はゾノ殿にお願いしたい」
ふむ…この男がわしに直々に頼むとはな。まぁ、悪くない。少し考えたあと、了承する。
若い騎士に隊長の印となる勲章を渡し、自分には呪文書を手渡した。
一体何の呪文かと訪ねると
「私がこの前発見した古代の身体強化の呪文です。これで彼の手助けをしてやってください。まだどれ程のものかはわかっていませんが、貴方なら使いこなせるはずです。
あと、種子の場所は渓谷にあるのでご自慢のナスカロックで行くのがよいでしょう」
それらを一通り聞いたあと、王の間を後にする。フン・・・待っておれ。
今回の任務で種子を手に入れ、その勢いで今度は貴様を蹴落としてやるわい。
頭の中を野心で満たしながら、ゾノは出撃のための準備を始めた。


 最近のこの国はおかしい。陛下は民衆の前に姿を現すことは滅多になくなった。
軍に荒くれ者が多くなり、国の雰囲気もどこか重いものに変わっている感じがする。
そんな事を考え城の一角から国を眺めていた騎士イザークはため息をついた。
そういえばデュエルの姿を最近見ない。弟と戦った際に傷を受け、その傷にまつわる話で少しだけ親しくなったかと思ったらクルーゼに呼び出された後訓練場にも顔を出さず一切会わなくなった。一体どうしたのだろうか。
クルーゼに問いただしたところ、ミゲルジンを助けられなかったという自責の念から厳しい鍛錬を人目につかないところで積んでいるという。
もっともらしい話だが、この男が言うとどうも納得がいかない。とにかくしばらく復帰はできなさそうだ。
同時に先日ミゲルジンの後任に我が隊の兵を借りたいとクルーゼが申し出てきた事を思い出す。我が隊は自分も含め若者が多いが、それなりに実力もある。
ここらで大きな仕事をこなすのもいいかと思い許可したものの、
選ばれた兵は自分の予想とは全く違う、いつも単独行動が目立ち隊の中でも小競り合いが絶えない乱暴者のディープアームズであった。
別に彼を嫌ってるわけではないのだが、彼に隊長の仕事はあまりに早い。
しかし呪術師ファントムゾノのサポートがあると言う事なのでとりあえずは安心する。
だがあの二人という組み合わせは何か意図があるのだろうか。二人とも地位にこだわるタイプなので上手くいかない気もするのだが。
物思いにふけっていると、兵からクルーゼが緊急会議を開くので来て欲しい、との伝令を受けた。何やら3つ目の種子に関する情報を手にしたので二つ目と同時進行で種子を手にいれる作戦を話し合うようだ。
クルーゼの最後の種子を手に入れる作戦についての提案は、その場にいた者全てを驚かせるものだった。


フフフ…計画は順調だな。やはりこの国にある文献は資料価値が高い…これなら
『復活の日』も近い。兵士達も実力のあるものばかり、扱いづらいのは適当に
動きを封じて代わりに国の外の荒くれ者を雇う事にすればやりやすい。
しかしあのディープアームズという若者、忠義と礼節を重んじるザフトの騎士の中では珍しく野心に満ち溢れている。どこの世界にもはみだし者はいると言う事か…
この時だけ、どこか自嘲気味に笑う邪悪なる意志。
野心、か…とりあえず邪魔な呪術師と共に実験の材料にすることにしたがなかなかどうして、あの二人案外似たもの同士なのかもしれんな。彼らには仲良くしてもらいたいものだ…何せ『一緒に』戦うのだからな…フフ…。
もうひとつの実験は更に凄いものができそうだ。
やはり『ヤツら』の技術は侮れんということか。
こちらも素体の用意はできている…あまりに力に溺れすぎて部下が一人もいなくなってしまった哀れな闘士だ。
闘士といえば、わざわざラクロアからお越しになったあの男…今はまだ泳がせているが、あまり使い道がない。
こちらもラクロアに送った忍兵からの音沙汰がないな。
まぁヤツらの動向などさして気にもならんか。
さぁ、彼らがラクロアの騎士達の相手をしている間にこちらも第一陣を送り込まねばな。新しい力を得た『彼』も今度はしっかりと働いてくれるだろう。
準備はぬかりない。後はその時が来るのを待つのみか…クククッ。
邪悪なる意志の元、それぞれの思惑に秘められた野望はとどまる事を知らない。

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