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情報屋

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「情報屋」

アルテミス渓谷での戦いの末、二つ目の種子を手に入れたストライク一行は三つ目の種子の在り処を探すための情報を集めていた。
「うーん、やっぱここもダメみたいだな」
太陽がもっとも高く上った頃。ストライク達は一度情報収集を中断し、
街の通りにある喫茶店で休憩しつつそれぞれが得た情報を照らし合わせていた。
「やっぱりもっと大きな街や国でないとダメかしら…」
「しかし、ここら辺じゃそうそうでかいと所はもうないだろう?」
「うぬぬ・・・そろそろ海を渡らねばならんかのう」
このやりとりを4人の真後ろの席から聞いている人物が一人。
まだ若い16,7歳くらいの少女だった。バンダナと両脇にハネ上がった後ろ髪が特徴的だ。
「でも二つはこっちにあったんだから三つ目もこの大陸にあるんじゃ…」
「北か南に範囲を広げてみる?」
悩む一行を見かねた様子で、少女は席を離れ、4人の前に現れる。
「あなた達、何を探しているの?私、場合によっては役に立てるかもしれないわ」
「君は?」
ストライクが怪訝そうな表情で尋ねる。
「私はミリアリア。情報屋よ」
「情報屋?」
「自分が持っている情報を売って、生計を立てている人達のことよ」
きょとんとするストライクにマリューが説明する。
「そういえば情報屋ばかりが住む、情報が全てを支配する街なんてのもあったのう」
「へぇ、そんなのが…って最初からそこへ行けば良かったんじゃないのか?」
「ちょっと遠いんだよ。それに、色々といわく付きの町でね」
「ま、私みたいに他の国や街を飛び回ってる情報屋は多いとはいえ、運が良かったわねあなた達」
少女が胸を張って言う。
「それで何を探しているの?」
「えーっと、ちょっと待っててくれ」
フラガが彼女に待ったをかけると、4人で円を組み相談を始める。
「…どうする?」
「教えてもらえばいいじゃん」
「でも、種子のことを話すのは…」
「今までだって散々色んな人に話してきたじゃんか」
「相手はあんな若い子とはいえ情報屋だし、ちょっと慎重になったほうがいいわね」
「こういう場合の情報料は割高と相場が決まっておるしのう」
あーでもない、こーでもないと会話を続ける4人に、ミリアリアの表情は不満そうなものに変わる
「あなた達、私の腕を疑っているのかしら?」
「そりゃ、いきなり信用しろってのもね」
フラガの答えを聞いたミリアリアは
「あなた達、ラクロアの騎士でしょう?」
「ッ!どうしてわかったんだ?」
ストライクが驚いて反応し、他の面々がため息をつく。これでは自分から教えているようなものだ。
予想が確信へと変わったミリアリアは、場の空気を自分のものにしようと言葉を続ける。
「最近じゃ結構話題よ。あ、こっちの世界ではね。ラクロアといえばこの前ザフトに襲撃を受けた国。そしてその報復か知らないけど少数の騎士達が各地でザフトの兵と戦ってる、だったかしら。
ま、勝ち目のない戦いに挑んで無謀だなぐらいにしか思われてないけどね。」
かなり勝手な自分達の評価を聞いてもストライクは黙りこんでいた。だが
「あぁ、そうだ…そしてザフトに勝つために俺たちは種子というものを探している」
「ストライク!」
あっさり秘密を漏らしたストライクをメビウスゼロが叱りつける。
「シード…?」
聞きなれない単語に、焦りの表情を見せるミリアリア。
「まさか、知らないのか?」
ストライクがおそるおそる尋ねる。
「き、聞いたことがないわね…あ、でもザフトが大勢の兵を送り込んでる所があるからもしかしたら、あそこは何か関係が…あるかも」
「何だって!それはどこだ?」
ミリアリアに一歩詰め寄るストライク。
「慌てないで、これはビジネスよ。そうね・・・その情報なら、こんなものかしら」
そう言って紙に要求する金額を手早く書き、ストライク達に見せる。
「高ッ!」
「こりゃまた結構なお値段で…」
「もう少し負けてくれないか?」
手を合わせて頼むストライクに、ミリアリアは即答する。
「ダメね。これはかなり苦労して手に入れた情報よ。1Gだって負けられないわ」
「こりゃ手厳しい」
フラガが苦笑する。
「私だってプロとしての誇りがあるのよ。それに、本当に欲しい情報ならいくら出しても惜しくはないはずでしょう?」
「いい加減にしろよ…」
ストライクが怒りを抑えるように、震えた声を発した。が、こらえきれずミリアリアに詰め寄る。
「その情報が本当なら、そこが危ないってことだろう?それに俺たちの事を知っているなら尚更教えてくれよ!」
「どうやら交渉の余地はないわね。とにかく、情報が欲しいならGを用意して」
「もういい、お前なんかに頼るものか!」
依然として態度を変えないミリアリアに憤慨して出て行くストライクを、他の3人も追う。
「何よ、正義の味方でも気取ったつもり?世の中そんなに甘くはないのよ・・・!」
ミリアリアも店を出ていく。その後、少し立ち止まり何かを考える。
「シード、か・・・少しくらい調べてみようかしら」
しかし彼女は知らなかった。その存在を知ろうとする事自体が、危険であることを。

「あの、シードってモノのことご存知ありません?」
「さぁ…?」
「おい、そこの女。貴様、種子のことを知っているのか」
ミリアリアが口にした単語を耳にして、たまたま居合わせたザフト兵達が近寄る。
(ザフトの兵士か・・・色々とめんどうな事になりそうね)
「いいえ、知らないわ」
首を横に振り、立ち去ろうとするミリアリア。
「嘘をつけ!我々はどうしてもヤツらより先に三つ目を手に入れねばならぬのだ…来い!あらいざらい喋ってもらうぞ!」
「え、ウソやだちょっと!」
情報屋としてはあまりに思慮の浅い行動を反省する間もないまま髪を掴まれ、
連れて行かれそうになるミリアリア。周囲の人々は傷つく事を恐れてか黙ったままだ。
(誰か、助けて…!)
そう思った瞬間、ミリアリアを連行しようとした兵士が殴り飛ばされる。
「おい、アンタら。これ以上乱暴すんなら俺が相手だ」
拳を鳴らすストライク。騒ぎを聞きつけて一番に駆けつけてきたのだ。
「あ・・・」
安心して力が抜けたのか、その場に座り込むミリアリア。
「調子に乗るな・・・よ゛ッ!?」
襲い掛かろうとした兵士達の武器が全て真っ二つに切断される。
ストライクの姿は蒼い鎧を纏い巨大な剣を携えた剣士に変わっていた。
「種子のこと、知りたいんなら教えてやるよ…その体にな!」
「くっそぉぉ!覚えてろー!」
捨て台詞を吐き逃走するザフト兵達。ストライクはその様子を見て
「やれやれ・・・いつまでこんな事しなきゃならないのかね」
ため息と共にひとりごちた。

「おーい、ストライク何してんの!」
静かになったところで、フラガ達が駆けつける。ストライクは何食わぬ顔でとぼけた。
「あら?さっきの情報屋さん」
マリューがストライクの後ろで座り込んでいるミリアリアを発見する。
「さっきザフトの兵が走っていくのが見えたが…」
メビウスゼロが首を傾げる。
「…フ、フン!そっちが勝手にやったんだからね!恩を着せようたってそうはいかないわ!」
「恩?なんかやったの?」
フラガが少し意地の悪い笑顔を作って尋ねる。
「そんなもん着せる気はないよ。俺が助けたいから助けた、それだけさ」
「え…そ、そう。ならいいわ」
拍子抜けしたミリアリアを尻目に、ストライクは歩き始める。
「さぁ、行こうぜ。俺たちは一刻も早く種子を集めなきゃいけないんだ。立ち止まる暇なんてないだろ?」
先ほどとは打って変わった、少し冷めた声でストライクが言う。
「…まぁ、いっか」
「それじゃあ私たちはこれで。情報屋さんも気をつけて」
フラガ達もストライクの後を追ってその場を離れる。
ミリアリアは少し考え込むが、離れていくストライク達を見据えると息を吸い力いっぱい叫ぶ。
「ラクロアの騎士!ちょっと待ちなさいよっ!」
「何だよっ!それに俺はまだ騎士じゃねぇ!」
ストライクが勢い良く振り返る。ミリアリアがメモを取り出し、近づいていく。
「アマルフィ村にザフトが大規模な部隊を仕向けたそうよ」
「え…?」
ストライクが間の抜けた表情で答える。
「私が知っているのはこれだけよ。アマルフィ村なんて田舎の村なのに、なんでそんな事するのかもわからないし」
「とにかく急いだほうがよさそうだな…でも俺たち、情報料払えないぜ?」
「いいわよ別に。私が教えたくなったから教えた、それだけよ」
「そうか。じゃあな、ミリアリア」
ストライクは満足げに頷くと、真っ先に走り出す。
「よーしみんな、行くべき所はわかった!急いでアマルフィ村に行くぞ!」
「あいよっ!」
「ふふ、急に元気になって」
「全く次から次へと。老人を労わらんかい」
「ちょっと!あなた達アマルフィ村の場所知って…行っちゃった」
ミリアリアの大声を背に消えていく一行。ミリアリアはため息をつくが、すぐに口元で笑みを作る。
「ラクロア、か・・・興味が沸いてきたわ。今度行ってみようかな」
こうして情報屋の少女の協力により、アマルフィ村という進路を得た一行。
そこで彼らは想像を上回る壮絶な出来事に遭遇することになるのだが、今はまだ知る由もなかった。

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