SD STAR@Wiki

少年の話

最終更新:

匿名ユーザー

- view
だれでも歓迎! 編集

「少年の話」

むかしむかし、とは言っても長い目で見ればほんの少し前ですが、
もう過去の話なので昔と呼んで差し支えない頃の話。
ある国のある場所で、大きな悩みを抱えた少年がいました。
その国は辺境にありましたがそれなりに有名で、
そして争いを好まない人ばかりでとても平和なところでした。
ですがその国に住む人達の、特に若い人達は
とても勇敢で、何かあった時に備えて誰に言われるでもなく
自ら進んで国の騎士団に入っています。
何故争いを好まない人ばかりなのにそのようなことをするのかというと、
ある人は『この国の人達は大切なものを守るためには戦わなければならない
時があることを知っているからだよ』と答えます。
そのことについて言及すると『大昔この国に現れた勇者様の影響かもしれないね』
との答えが返ってきます。
さて、逸れた話を戻すとその少年もゆくゆくは騎士団に入って国のために戦える男になりたいと
考えていたのでした。彼の両親は彼に学者になってもらいたかったようですが、
そんなことは彼には関係ありません。
ですが少年自身もなんとなくそういった道に進んだほうがいいような気がしていたので、
それに近い道を選びました。
彼が選んだのは、法術士の道でした。それならばと両親は納得しました。
彼に魔法を教える予定の、立派なヒゲを蓄えたMS族の老人も
将来の楽しみな子じゃわい、と嬉しそうでした。
ただ一人、彼と大変仲が良かった友人だけは納得がいかないようでした。
「二人で一緒に剣を学ぼうって約束したじゃないか」
少年は困りました。自分がやりたいのは法術士なのですが、その友人と一緒に
この国のために頑張ろうという約束こそが騎士団に入るきっかけだったので、
どちらも進みたい道でした。でも進めるのはひとつです。
少年は悩んだ挙句、
「たとえ道は違っても、守るものは同じだ」
という答えを出しました
その年頃の子供にしては大変立派な言葉に、
友人は反論できるほど語彙がなかったので
拗ねるしかありませんでした。もっとも、3日も経てばそのことも気にしなくなりましたが。

かくして少年は魔法のことをたくさん学び始めました。
ですが、なかなか上手くいきません。頭では理解しているのですが、
何故かできないのです。
「僕には才能がないのか」
実は全くそんな事は無く、少年は何をやらせてもできる素晴らしい才能の持ち主でした。
が、魔法に関してはその時は才能が開花していなかったのです。
もう少し後になれば違っていたかもしれません。
とにかく、少年は悩み始めました。
「自分は間違っていたのか。だけど今更、どうすれば」
変なところでプライドがある子でしたから、それはもう悩んでいました。
ですが、ある出来事をきっかけに少年は自分の道を見つけることとなりました。

その日少年は友人と一緒に城の中で行われる模擬戦を見に行きました。
初めて見る真剣での戦いに、友人は大変興奮しています。かくいう少年も、
顔には出しませんでしたが胸を躍らせていました。
激しい戦いがしばらく続き、片方の選手の盾が弾き飛ばされ、それに対し
さらに追い討ちをかけるもう片方の選手。
盾を弾き飛ばされたほうは両手持ちに切り替えて剣でその攻撃を受け止めます。
刃と刃が何度かぶつかり、激しい音を立てたかと思うと
突如片方の剣が折れてしまいました。しかもただ折れたのではなく、
折れたほうの刃はびゅんびゅんと回転して観戦していたうちの一人―――
友人めがけて飛んでいきました。
が、友人はまだそれに対応できるような反射神経は持っていませんでした。
その場で真っ先に反応したのは少年でした。一瞬のうちにたくさんの策を練りました。
魔法を使おうかとも思いましたが使える使えない以前に詠唱が間に合いません。
もはや考えている余裕もなく友人に刃が刺さりそうになりようやく本人を含めてその場の
人々が事態に気付いた時、少年だけは別のものに気付きました。
その後はもう何も考えず、
自然に動くまま近くに落ちていた盾を拾ってその刃を弾き返しました。
そのあまりに見事な動きに、まわりの人々はもちろん、少年自身も大変驚きました。
「すっげー!何だ今の!どうやったんだ!?」
とはしゃぐ友人や
「友達のために体を張るなんて、やるなぁ」
「凄いな君!こりゃあ将来は立派な騎士だな!」
などと感心したり勝手に少年の未来を想像する周りの人や
「大丈夫か!」
と試合を中断して声をかけてきた両選手に囲まれ、
「あれは、僕がやったのか・・・?」
呆然としていました。ですが手に残る確かな感触と、自分を褒め称える人々の声、
それらは彼の心の隙間を埋めるように入り込み、そしてある決心をさせました。
「そうだ・・僕は騎士になるぞ。この盾で、この手で国を守るんだ」
こうして、少年は剣と盾の道を選びました。
ちなみに、友人のほうは剣の道はきっぱりとやめて何故か闘士の道へ進んだとか。
少年は血の滲むような努力の末、大変立派な騎士になったそうです。
そして、その後。



 ある国のある場所で、大きな怪我を抱えた男がいました。
男はひどくうなされていて、側には女の人がついています。
かなりの間が経って男は目を覚まします。
そして、側にいる人物にかなり驚いた様子で、そして何か安心した様子で
「やぁ・・ストライク。・・僕は、夢でも見ていたのかな?とてもひどい内容だったんだ」
ストライクと呼ばれた女の人は自分はその人ではないとやんわりと否定して、
本当の名前を名乗りました。
「なんということだ・・・やはりアレは、夢ではないんだな」
男は辛そうに、だけどもしっかりと現実を受け入れたような表情を作りました。
そして男はゆっくりと自分の状況を知っていき、ある決断をします。
悪夢のような過去を乗り越えて、現在と戦うことを。
一体どうするつもりなのかと女の人が尋ねました。
自分がやる事はいつだってただ一つ、と当たり前のように
「随分と汚れてしまったけれど・・・それでも僕はこの手で、人々を守りたいんだ」
大人になった少年は、答えました。

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
人気記事ランキング
ウィキ募集バナー