邂逅
「はぁっ…はぁっ…」
「待て!」
ザフト王国・アプリリウス市。ザフトの首都であるその中を駆け抜ける影と追う影。
「お前達は回りこめ!俺はそのままヤツを追う」
「「「了解!」」」
追跡者であるザフト騎士団ジュール隊隊長である騎士イザークは
部下たちに命令を下すと自身も走り出す。
入り組んだ路地裏へと追い込むが逃走者は全く苦にせず逃げ続ける。
「ただの賊ではないということか…だが!」
軽量化されているとはいえ、走る上では重りにしかならない盾を
逃走者へと投げつける。くるくると回転しながら落ちていくが
ぎりぎり逃走者の脚に当たりバランスを崩すことに成功する。
イザークはすかさず飛び掛り逃走者を押さえ込む。
「貴様ぁッ!何故ドゥーエ城に忍び込もうとした!」
捕まった男はイザークの怒声にも動じず
「へへっ、さすがは騎士イザーク。ダテにその若さで隊長はやってねえやな」
「貴様、何がおかしい!」
「まぁ落ち着けよ。全部話してやる。あんたなら大丈夫だろう」
「どういうことだ?まぁいい、全て話してもらおうか」
「おっと、ここじゃまずい。着いて来な…そう警戒すんなよ」
男に連れられ、路地裏を進む。その複雑な道のりにイザークもさすがに戸惑いを覚える。そして
「やぁ、イザーク君。元気だったかな?」
「あ、貴方は!?」
連れてこられた場所で待ち受けていた思いもよらぬ人物に驚愕するイザーク。
更に彼を驚かせたのはその人物の口から紡ぎ出される数々の言葉だった。
国の有力者たちの失踪、アスラン王子の幽閉、それ以外にも多くの不審な出来事全てにクルーゼの影があること。
そして自分達はクルーゼから国を取り返すために活動している『穏健派』という存在だということ。
「信じられん…いや、クルーゼよりは貴方のほうが…いや、しかし」
「そう思う君の気持ちもわかる。だが、できることなら我々に協力してもらいたい」
あの男が城に忍び込もうとしたのは王子を探すためか…一度に色々な情報が入ってきてやや混乱気味だが
「わかりました…再びかつてのザフトが戻ってくるならば、是非協力させてください」
イザークは胸を張って言葉を返した。『穏健派』の中心人物は満足そうに頷き口を開く。
「ありがとう、イザーク君。それでは、早速頼みたいことがあるんだ」
「はっ!私にできることなら」
「これを…いや、今日はやめておこう。半ば無理やり連れてきてしまったからね」
確かにそろそろ戻らないと怪しまれるかもしれない。イザークはその人物に礼をし立ち去ろうとする。
「その代わり、今度来る時は君以外にもう一人連れてきてくれないか」
「もう一人、ですか?」
「あぁ、我々には人手が足りていないのでね。できれば君の部下で、信用に足る人物がいい」
「部下…どうしても必要ですか?」
「隊長である君が目立つ行動は控えた方がいい、わかるね?」
それはそうだ、納得したイザークはもう一度恭しく礼をする。その瞳には決意の色があった。
「では、気をつけて。また会える日を楽しみにしているよ」
教えられた道を通りなんとか誰にも見つからないように城へと戻る。
「待て!」
ザフト王国・アプリリウス市。ザフトの首都であるその中を駆け抜ける影と追う影。
「お前達は回りこめ!俺はそのままヤツを追う」
「「「了解!」」」
追跡者であるザフト騎士団ジュール隊隊長である騎士イザークは
部下たちに命令を下すと自身も走り出す。
入り組んだ路地裏へと追い込むが逃走者は全く苦にせず逃げ続ける。
「ただの賊ではないということか…だが!」
軽量化されているとはいえ、走る上では重りにしかならない盾を
逃走者へと投げつける。くるくると回転しながら落ちていくが
ぎりぎり逃走者の脚に当たりバランスを崩すことに成功する。
イザークはすかさず飛び掛り逃走者を押さえ込む。
「貴様ぁッ!何故ドゥーエ城に忍び込もうとした!」
捕まった男はイザークの怒声にも動じず
「へへっ、さすがは騎士イザーク。ダテにその若さで隊長はやってねえやな」
「貴様、何がおかしい!」
「まぁ落ち着けよ。全部話してやる。あんたなら大丈夫だろう」
「どういうことだ?まぁいい、全て話してもらおうか」
「おっと、ここじゃまずい。着いて来な…そう警戒すんなよ」
男に連れられ、路地裏を進む。その複雑な道のりにイザークもさすがに戸惑いを覚える。そして
「やぁ、イザーク君。元気だったかな?」
「あ、貴方は!?」
連れてこられた場所で待ち受けていた思いもよらぬ人物に驚愕するイザーク。
更に彼を驚かせたのはその人物の口から紡ぎ出される数々の言葉だった。
国の有力者たちの失踪、アスラン王子の幽閉、それ以外にも多くの不審な出来事全てにクルーゼの影があること。
そして自分達はクルーゼから国を取り返すために活動している『穏健派』という存在だということ。
「信じられん…いや、クルーゼよりは貴方のほうが…いや、しかし」
「そう思う君の気持ちもわかる。だが、できることなら我々に協力してもらいたい」
あの男が城に忍び込もうとしたのは王子を探すためか…一度に色々な情報が入ってきてやや混乱気味だが
「わかりました…再びかつてのザフトが戻ってくるならば、是非協力させてください」
イザークは胸を張って言葉を返した。『穏健派』の中心人物は満足そうに頷き口を開く。
「ありがとう、イザーク君。それでは、早速頼みたいことがあるんだ」
「はっ!私にできることなら」
「これを…いや、今日はやめておこう。半ば無理やり連れてきてしまったからね」
確かにそろそろ戻らないと怪しまれるかもしれない。イザークはその人物に礼をし立ち去ろうとする。
「その代わり、今度来る時は君以外にもう一人連れてきてくれないか」
「もう一人、ですか?」
「あぁ、我々には人手が足りていないのでね。できれば君の部下で、信用に足る人物がいい」
「部下…どうしても必要ですか?」
「隊長である君が目立つ行動は控えた方がいい、わかるね?」
それはそうだ、納得したイザークはもう一度恭しく礼をする。その瞳には決意の色があった。
「では、気をつけて。また会える日を楽しみにしているよ」
教えられた道を通りなんとか誰にも見つからないように城へと戻る。
「何、取り逃がした?…貴君は前線だけでなく本国でも満足に事を成せないのだな」
城内のみならず市内の警備も担当しているヘビーゲイツの小言を浴びながらイザークは
自分の部隊の詰め所へと戻る。先ほど一緒に逃走者を追っていた部下の視線が痛い。
アマルフィ村での一件以来ジュール隊は以前よりも肩身が狭い。こんな自分と共に
命をかけて国をひっくり返すような行動に走ってくれる者はいないかもしれない。
「隊長、どうかしましたか」
眉間に皺を寄せやや近寄りがたい雰囲気を発する彼に声をかけられるのは隊に一人しかいない。
「シホ…」
そうだ、彼女なら。何故だかわからないが自分を慕ってくれるこの少女に、そう思って
立ち上がるが、いざ行動に移ろうとするとためらってしまう。
俺は彼女に頼ってよいのか?巻き込んでしまっていいのか?様々な葛藤が頭の中を駆け巡った。
だが迷う暇などない。信じるのだ、この少女を。意を決して視線を向ける彼女に呼びかける。
「シホ、話がある…ついてきてくれないか」
何やら勘違いした他の隊員たちが騒ぐ中、シホは口元の端を緩ませまっすぐ自分を見つめてこう言った。
「えぇ、お供します。どこまでも」
城内のみならず市内の警備も担当しているヘビーゲイツの小言を浴びながらイザークは
自分の部隊の詰め所へと戻る。先ほど一緒に逃走者を追っていた部下の視線が痛い。
アマルフィ村での一件以来ジュール隊は以前よりも肩身が狭い。こんな自分と共に
命をかけて国をひっくり返すような行動に走ってくれる者はいないかもしれない。
「隊長、どうかしましたか」
眉間に皺を寄せやや近寄りがたい雰囲気を発する彼に声をかけられるのは隊に一人しかいない。
「シホ…」
そうだ、彼女なら。何故だかわからないが自分を慕ってくれるこの少女に、そう思って
立ち上がるが、いざ行動に移ろうとするとためらってしまう。
俺は彼女に頼ってよいのか?巻き込んでしまっていいのか?様々な葛藤が頭の中を駆け巡った。
だが迷う暇などない。信じるのだ、この少女を。意を決して視線を向ける彼女に呼びかける。
「シホ、話がある…ついてきてくれないか」
何やら勘違いした他の隊員たちが騒ぐ中、シホは口元の端を緩ませまっすぐ自分を見つめてこう言った。
「えぇ、お供します。どこまでも」