交錯する運命




その樹海の原住動物さながらの動きで、人の姿をした獣が鬱蒼とした森を駆け抜ける。
人の姿をした獣―――相川始の脳裏に思い出されるのは、神崎士郎の言葉。

「栗原天音にモンスターをつけておいた。もう一度だけバトルファイトを行うか、ここで俺と闘うかお前が選べ。」

まるで夢の中の出来事の様だ。
この戦いが、では無い。自分が戦いを忘れ、天音ちゃん達と共に生きられると期待した事がだ。
どうやら俺は戦いの中でしか生きられない事を、運命付けられているらしい。
剣崎一真が己の身を、アンデッドに変えてまで手に入れた平穏ですら
新たな統制者による、バトルファイトへの招聘によって破られた。
そしてその剣崎もこのバトルファイトに―――あのホールに居た。
自分をホールに導いた、神崎士郎との会話が脳裏に過ぎる。

「お前は他の者と同じ様に、ホールで俺の説明を受けろ。」
その言葉ですぐ察しがついた。俺がジョーカーだと知れない形で、殺し合いに参加しろという事か。
「……『お前は』と言ったな。俺の他に立場の違うジョーカーが居るのか?」
「お前には関係が無い事だ。」

神崎士郎の言う通りだ。誰が居ようと関係無い。全ての敵を倒せばいい。

「一つ忠告しておく。お前はもう不死身では無い。
 だがこの戦いに勝ち残れば栗原天音は解放された上、願いを叶えてやる。不死に戻る事も可能だ。」

今更不死に戻りたいとは思わない。
どんな願いでも叶うと言うのなら、剣崎を蘇らせる。
もう二度とお前を、俺の為に犠牲にはしない。

前方が少し明るくなる。D-4の市街地に出るようだ。
道路上に白い影を捉える。支給されたラウズカードの、ハートのAを取り出す。
変身の制限がライダーとジョーカーで別カウントかは分からないが
変身の為の間が空く場合はライダーになり、ジョーカー化は文字通り切り札として使う事にする。
「変身」
ベルトが腰に巻かれた状態で現れる。バックル中心にあるスリットにハートのAを通す。
『Change』
カリスの姿とその手に刃を持った弓、カリスアローが浮かび上がる。
樹海を抜け敵との間合いを、一気に詰める。
そのまま敵の懐に飛び込み腹を斬りつけようとした瞬間
敵は横っ飛びでカリスアローを避け、体勢を立て直し間合いを取り始めた。
※ ※ ※ ※ ※
ジェネラルシャドウは、支給されたシャドウ剣とトランプが内蔵されたベルトを装備しながら考えた。
(あの神崎とかいう男のやり方は気に入らん。だが未だ決着を付けられぬストロンガーをこの手で倒し
デルザー軍団の覇権を争うマシーン大元帥を始末するチャンスでもある。)
このゲームを邪魔者を始末し宿敵との決着を付ける好機と捉え、戦いに向けて決意を固める。
そしてベルトからトランプを必要な枚数取り出し、シャッフルする。
戦いの前に勝敗をトランプで占うのが、ジェネラルシャドウの流儀。
多人数からなるこのゲームの場合は、さしずめ『誰が優勝するか?』だ。
多人数でもやり方は変わらない、トランプを一枚引けば占いの結果が分かる。そう、優勝者が誰か―――。

「うわっ!?」
上空からの声にジェネラルシャドウが見上げてみると、ビルの屋上から宙を舞う紙に手を伸ばしている男を見付けた。
男の居たビルに隠れる様に入り、そのまま屋上に続く階段を上る。
「こんな殺し合いなど、この俺が許さん!
待っていろ神崎士郎!!そしてクライシス帝国!!貴様らの野望は必ず打ち砕く!!
 この仮面ライダーBLACK……いや!」
(あいつも仮面ライダーなのか?屋上には他にも誰か居るようだな…)
「俺は太陽の子!! 仮面ライダーBLACK RX!!!」
屋上に出るドアを少し開け、覗き込むと男は一人でそう名乗りを上げていた。
(何だあいつは、一人で叫んでいたのか?しかもBLACK RX等というライダーは聞いたことも無いぞ?)
仮面ライダーと言うのはブラフかとも思ったが、こちらに気付いた様子も無く
男の眼と言動には、妙な説得力と真実味が有った。
ジェネラルシャドウは男が気付かない内に、その場を離れる事にした。
(もし仮面ライダーと言うのが本当だとしたら、ストロンガーと戦う前に事を構えるのは得策ではない
 ストロンガーと手を組まれると厄介だが、あいつの戦力が分からん以上、下手に手を出すのは危険だ)
ビルの向かいの建物の陰に隠れ、男がビルから出て行くのを見送り反対方向へ向かう。
前方にC-4の樹海が見える。その中から何者かがこちらに向かって飛び出してくる。
ジェネラルシャドウは弓の形をした刃の一撃をかわし、襲撃者との間合いを計り始めた。
※ ※ ※ ※ ※
「急がなくては、助けを求める人達が俺を待っているんだ!だが何処から捜せばいいんだ……」
南光太郎は他の参加者を捜すべく出発したが、何処に向かうか決めあぐねていた。
「捜すにも当てが無いし……ならばこちらから呼びかけて回るか?
 駄目だ、この広い殺し合いの舞台で肉声で呼びかけても、大して意味が無いだろう……そうだ!!」
光太郎はバッグの中から、支給品のマイクを取り出した。
マイクのスイッチを入れると、光太郎の呼吸音が周囲に響き渡る。
「このマイクを、拡声器として使えばいいんだ!!!
 殺し合いに乗った者も集まるかも知れないが、今は躊躇している場合じゃ無いぜ!!」
更に大きな声を周囲に響き渡らせ、光太郎はマイクを使って仲間を募る事に決めた。
待ち受ける運命を、知る由も無く。
※ ※ ※ ※ ※
間合いを計りながら、ジェネラルシャドウは問いかける。
「お前はハートのAか、それともジョーカーか?」
対峙する相手は追撃を加えてくるでもなく、返事を返しもしない。
「俺は先程、トランプで占ってみた。このゲームで……最初に戦う相手は誰かを」
ジェネラルシャドウは、何故かゲームの優勝者を占う事が出来なかった。
自身にも理由が分からなかったが、初めて流儀に反して結果の見えない戦いに身を投じる事になる。
「その時出たカードが、この二枚」
ハートのAとジョーカーのカードを手で弄びながら、話を続る。
「二人同時に相手をするのかと思ったが、お前の他には誰も居る気配が無……!」
何の構えも見せていなかった相手が突如、弓をジェネラルシャドウに向けると
光の矢を2本、右肩と左脇腹に放った。
片方は剣で切り払い、もう片方は身をかわすも僅かに脇腹を掠める。
(ほとんど予備動作も無しにこれほど早く、精確な攻撃が出来るとは
 こいつはかなりの実力者だ。打ち勝つのも、逃げるのも容易では無いな……)
「問答無用という事か、俺はジェネラルシャドウ。お前は……」
相手の単眼を見やる。
「どうやらハートのAのようだな」
「……違うな。俺は…ただのジョーカーだ」
自分に言い聞かせる様な返事の言葉が、初めて帰ってくる。
「ジョーカーか、万能のカードだ。だが同類のいない孤高のカードでもある……」
「お前とお喋りをするつもりは無い。戦う意思が無くとも容赦はしない」
「フ……いいだろう」
対峙する両者が構えを見せ、緊張が走る。

「このマイクを、拡声器として使えばいいんだ
 殺し合いに乗った者も集まるかも知れないが、今は躊躇している場合じゃ無いぜ」
その時、微かにマイク越しの声が聞こえる。屋上に居た男の声が。
ジョーカーにも声が聞こえたのだろう、僅かな動揺と隙が見えた。
(あの男はまだこの近くに居たのか?それならば好都合だ)
「トランプフェード!」
相手の隙を付いて、周囲にトランプを舞い散らせた。
それがジョーカーの目を晦ましている隙に、一気に間合いを開く。
「逃げられると思っているのか!」
トランプを振り払い、ジョーカーは追ってくる。
逃れられぬ運命に、追い立てられる様に。

(このままジョーカーを、あの男の下へ誘導し戦わせるとしよう。)
ジョーカーと一定の間合いを保ちつつ、ジェネラルシャドウは男の声がした方向へ逃げる。
見えない運命に、導かれる様に。



【相川 始@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:黎明】
【現在地:市街地D-4】
【時間軸】本編後
【状態】健康。カリスに変身中
【装備】ラウズカード(数枚)
【道具】不明
【思考・状況】1.カリス変身時間内に、目の前の敵を倒す。
       2.この戦いに勝ち残り、剣崎一真を蘇らせる。

【ジェネラルシャドウ@仮面ライダーストロンガー】
【1日目 現時刻:黎明】
【現在地:市街地D-4】
【時間軸】37話前後
【状態】健康
【装備】シャドウ剣、トランプ内蔵ベルト
【道具】不明
【思考・状況】1.ジョーカーを、屋上に居た男の下へ誘導し戦わせる。
       2.ストロンガーを倒す。
       3.他の参加者は手段を選ばず殺す(マシーン大元帥優先)。

南光太郎@仮面ライダーBLACK RX】
【1日目 現時刻:黎明】
【現在地:市街地D-4】
【時間軸】第1話、RXへのパワーアップ直後
【状態】健康
【装備】カラオケマイク
【道具】なし
【思考・状況】1.カラオケマイク使って仲間を募る。
       2.打倒主催。その後、元の世界に戻ってクライシス帝国を倒す。
【備考】黒幕はクライシス帝国、神崎はその手の者であると勝手に確信している。
    参加者名簿は未確認。

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最終更新:2018年03月22日 23:26