モンスター

 放送が近付き、草加が気絶している面子を起こす。眠りの深い蓮以外は目を覚まし、天道の死を知った。
 浮かぶ無念の表情。零れ落ちる涙。紡がれる悲痛な叫び。支配する絶望の闇。
 夕日は落ちていき、仮面ライダーたちを闇に包ませていく。
 灰になった天道の身体。彼らはその前で、悲しみに満ちた顔をしていた。
 その中、動く者がいる。カリス、またの名を相川始
「始!?」
 剣崎が驚き、彼を見る。だが、始は放置されていたバイクに跨り、脇目も振らずエンジンを起動させる。
南光太郎。シャドームーンからの伝言だ。結城丈二を返して欲しければ、F5エリアのビルまで来いと言うことだ」
「なにっ! 信彦と会ったのか!?」
「お前に言うべきことはそれだけだ。さらばだ!」
「待つんだ、始! お前に言うことが……」
「剣崎、俺たちは会わないほうがいい。……もし再会するとなるなら、俺かお前、どちらかが優勝するときだ」
 言い残し、始はバイクで遠ざかる。その様子を剣崎は悔しげに見つめていた。
「なかなかやるじゃないか。その姿で煽って殺しあうことを促進させるなんて」
 告げたのは草加雅人。凍てつく眼差しで剣崎……いや、剣崎に擬態した神代を射抜いていた。
 だが、剣崎はその長髪を揺らしながら、草加へと向き直る。
「違う。今の俺は剣崎一真だ。……神代は俺の中で友達の死を悲しんでいる」
「どういうことだ?」
「神代は自分の中にいる俺を消さなかった。だから死んだ後でもああして始と再会できた。俺は神代に協力す……」
 剣崎の決意の言葉は、放送を告げるチャイムに邪魔される。
 もうそんな時間かと考え、剣崎は耳を澄ませた。神代は悲しみに沈んでいる。
 彼の純真な願いを叶えるため、心を鬼にして放送の内容をメモにとった。


 告げられる放送の内容。草加は天道の死を目の前で見た。ヒビキの死も秋山から聞いているし、死体も確認した。
 殺された人数は八人。真理を生き返らせるカウントダウンは順調といっていい。
 だが、放送で告げられるべき怪物の名がなかった。
「生きていたか! ドラスッ!!」
 草加はクシャッと名簿を握りつぶし、歯を鳴らして天を睨みつける。隣で水が崩れるような音がして、振り返ると姿を戻した神代がいた。
 白い燕尾服に乗る端正な顔には、怒りの表情が浮かんでいる。続けて彼は駆け出し、その場を離れていく。
 草加は一瞬どうするか迷ったが、放っておくことにした。目的は見当がついている。
 天道の死に涙していた氷川が、彼に声をかける
「どこに行くんですか? 神代さん!!」
「ドラスは生きていた。だが、逃がさん! 俺が殺して、この殺し合いで頂点に立ち、全てを無かったことにする!
……天道の死も、カ・ガーミンの死も、このふざけた殺し合いも、全て無かったことにする!
氷川、ドラスを倒したらお前の決闘を受けよう。俺は頂点に立つのをやめる気はない!」
「待ってください、神代さん!! 一人じゃ危険です!!」
 だが、彼の言葉は届かず、神代はその身体を瓦礫の山へと消していった。
 やはり、草加の予想通りドラスを殺しに向かってくれるようだ。どれほどドラスが傷ついているかは知らないが、変身に対する制限さえ解ければあいつ一人でもダメージを与えれるかもしれない。
 できれば相打ちして欲しいが、高望みが過ぎるだろう。
(それにしても、あれで生きていたとはな。だがな、ドラス。お前の苦しむ時間が増えただけである事を、その身に味あわせてやる。
覚悟しろよ。真理、君を汚した奴らは俺の手で始末するから、安心してくれ)
 草加の歪んだ決意は止まらない。その決意を叶えるため、面子を見回す。
 誰も彼も絶望に沈んでいた。天道が死に、ドラスが生きていたとなれば当然だろう。
 だが草加には知ったことじゃない。早く立ち直り、戦力になってもらわなければ困る。
 ドラスを殺すため、ジャーク将軍と名乗る軍団を潰すための駒が戦力にならないなど、洒落にならない。
 つかつかと矢車に詰め寄り、その顔を観察する。
 彼のエリート然とした端正な顔は打ちひしがれ、目の周りに隈ができ、消耗を露にしている。
 悔しさからか、身体を震わせていた。放送を聞いてから、いや、天道が死んでから彼は一言も発していない。
 それがいっそう彼の絶望の深さを示していた。面倒くさいなと内心呟き、怒りを混ぜて胸倉を掴む。
「なんだ、そのふぬけた顔は? お前は脱出を目指していたんだろ?
たかが一人死んだだけで、もうギブアップか? 完全調和、笑わせる」
「草加さんっ!」
 声を張り上げる氷川を無視して、腕に力を込めて矢車の頭を上げる。
 まだ瞳に光は灯っていない。
「そいつを殺した張本人、ドラスを殺そうともしない。たかだか一人死んだだけで脱出を諦める。
お前に率いられたのがこの集団の運の悪いところだ。お前のような、ふぬけたリーダーをもつところだったのがな」
「草加っ! もうやめろ!」
 巧が草加の腕を掴んでくる。矢車を投げ捨て、返す腕で巧の頬を殴りつけた。
 しかし、巧にも怒声を張り上げる気力はないようだ。その様子に更に苛立ちを募らせる。
 まるで、天道の死で真理の遺体を汚された事実を忘れたかのような、巧の姿に。
 一瞬、草加は我を忘れてしまった。
「どうした、乾!! お前もふぬけたか!? あのドラスって化け物が何をしたのか忘れたのか!?
真理の遺体を冴子と組んで灰にしたんだぞ! 埋葬すらできなくしたんだぞ!
お前にとって真理はその程度の存在だったてことか? ふざけるな!!」
「草加…………」
 呆然とした巧の顔が草加の怒りを頂点にたたせた。
 雨の中、真理に否定された日を思い出す。あの時自分の拳は受け止められたが、今はすんなりと入っている。
 人を殴る音が再度響く。草加が巧を殴るのを阻止しようと、南、氷川、木野が動こうとする。それよりも先に草加は言葉を紡いだ。
「真理はな、俺を救ってくれるかもしれない女なんだ! 俺の母親になってくれるかもしれない女なんだ!!
この俺の言葉、忘れたといわせないぞ! 乾!!」
 その言葉に貫かれたように、誰も動かない。否、一人だけ、反応した者がいた。
「そうですよ、今は落ち込んでいる場合じゃない!」
 いち早く瞳に熱い思いを復活させた男、光太郎が賛同してくる。
 草加は立ち直りの早い男だと呆れる程度には頭が冷えてきた。
 少し熱くなりすぎたようだが、結果的には成功だ。
「ドラスが生きていたのなら、何度でも倒す。それが、俺たち仮面ライダーの使命です!
みなさん、力を合わせて、天道さんの仇を討ちましょう! ドラス、許さん!!」
 力強く宣言する光太郎に呼応し、みんな瞳に力を取り戻していく。
 だが、矢車だけはいまだに憔悴したままだ。まあ、構わない。
 戦力が一人減った。ただそれだけだ。
 始の言っていた言葉を思い出す。シャドームーンと呼ばれた銀色のライダーの強さを草加は知っていた。
 南と相打ちさせておくことが得策かと考え、答えが決まっている質問をする。
「……それじゃ、南くん。シャドームーンとのことはどうするんだ?」
「草加さん、合流場所を決めてください。結城さんを助けた後、俺もそこに向かいます」
「分かった。それじゃあ合流場所は……」
「その合流場所について、提案があります」
 草加は声の主、木野へ向き直り先を促す。
「私たちはここに来る前、他の方とチームを組んでいました。彼らは戦えないメンバーが混ざっていたため、とある場所に待機してもらっています。
そこを合流場所と決めて、戦力を一箇所にまとめたいのですが、どうでしょうか?」
「悪くない提案だな。どこなんだ?」
「あそこに見える、一番高いビルの屋上、そこが合流場所です」
「E4エリアの中央か。そこへ向かうぞ。南もそこが合流場所でいいな」
「はいっ!」
 光太郎は勢いよく答え、シャドームーンの待つ決戦の場へと足を向けた。
 だが、その彼にかけられる声があった。
「待ってくれ、僕も行く」
 声の主、日下部ひよりに全員の視線が集中する。
 彼女はその視線を真っ向から返していた。


 時間は少しだけ遡る。
 天道だった灰は彼女の手から零れ落ちる。その行為で彼の『死』という運命は、止められないものだったような気がしてきた。
 最初会ったときは偉そうな、変な奴だと思った。チューリップを見るのを誘ったときはお節介で強引な奴だと思った。
 樹花を見て穏やかな顔をする彼を少し羨ましく思った。兄だと打ち明けた彼に、期待を寄せた。
 そして、ひよりは自分の身体に絶望する。彼の妹である資格は無いと。
 そんな時、彼女は見知らぬこの土地へと拉致された。
 目の前で人を殺され、恐怖する彼女。氷川、シャドームーン、リュウガ。彼らがいなければ、自分は天道に再会する前に死んでいただろう。
 同時に、先に天道が死ぬこともなかったのでは?という疑問が頭から離れない。
 最後に彼は自分と仲間を守るために、死を覚悟して変身した。
 守りたかったのに救えなかった。こんなに辛い思いをするなら、

 化け物の自分が、あの二人、天道と加賀美の代わりに死ねばよかったのに。

 二人が揃っている姿が好きだったが、もう見れない。
 天道が生きているときは実感できなかったのに、今は絶望という形でひよりに圧し掛かってくる。
 天道なら何とかしてくれる。そういった思いが、彼女にもまたあったからだ。
 涙が手の甲を濡らしていく。その彼女の耳に、知り合いの名が入る。
南光太郎。シャドームーンからの伝言だ。結城丈二を返して欲しければ、F5エリアのビルまで来いと言うことだ」
 僅かの間、自分たちの傍にいた彼。
 彼はどうしているのだろうと、思っているとき天道の死が空より告げられた。
 その甘い言葉に切り裂かれる心。
 再び絶望する彼女に、天道の言葉が蘇る。

『ひより、俺はお前を最後まで守ることはできなかった。だが、リュウガや氷川はきっとお前を助けてくれる』

 だが、氷川は傷つき、リュウガは連れさらわれてしまった。
 拳を痛いほど握る。
(もう、守られるのはイヤだ)
 いつも、自分は守られてばかりだった。ジョーカーだったリュウガに最初襲われたときは、ギターを背負った男に助けられた。
 最初草加に襲われたときは氷川が助けてくれたのだろう。
 襲われる天道を目の前に戦おうとした自分を、ジョーカーをやめてまでリュウガは助けてくれた。
 そして、再度襲ってきた草加から、氷川と結城が守ってくれたと聞いた。
 なのに自分は誰にも報いてない。だから、天道に代わって戦おう。
 リュウガも助けに行きたい。
 ゆっくりと立ち上がり、光太郎の背中を見つめる。
「待ってくれ、僕も行く」
 まずは、少しの間だけ、守ってくれたシャドームーンに会いに行こう。
(天道、まずはお願いしに行くよ。シャドームーンに、仮面ライダーになってって)
 兄の想いを叶えるため、ひよりは前に進む事を選択する。
 たとえそれが、天道の望まぬ『戦い』への決意だとしても。


 ひよりの頼みを聞き、光太郎は断ろうとする。
 自分はただシャドームーンに会いに行くだけじゃない。彼と戦うかもしれないのだ。
 しかも、結城を救いにだ。もし彼がゴルゴム時代の記憶を取り戻すようなことがあれば、彼女は容赦なく殺されてしまう。
 そんな危険な場所に無力な彼女を連れて行くわけにはいかない。
 光太郎の判断はもっともだ。だが、ひよりは折れない。
「頼む、あいつに会って、話したいことがあるんだ」
「ですから、結城さんを人質にとり、俺と戦おうとしているシャドームーンの元へは一緒に行けません。みんなと俺と結城さんの帰りを待っていてください」
「駄目だ! 僕は誰にも傷ついて欲しくない。シャドームーンにも……だから一緒に行かせてくれ」
 さっきからこのやり取りを繰り返している。
 天道の妹なだけはあると、疲れたようにため息を吐く光太郎に、氷川が肩を叩く。
「南さん、僕も一緒行きます。ひよりさんを守るのは僕に任せてください」
「氷川くん!」
 氷川は驚く回りの視線を、決意を込めた表情で返している。
「僕がいれば、ひよりさんが危険な目にあいそうなときにフォローに入れます。
南さんは気にせずにシャドームーンと決着をつけて、結城さんを助けてください。
その後、彼を味方に引き込みましょう」
 まっすぐに信念を込めた視線に貫かれ、光太郎は一瞬動きが止まる。
 何を言っても彼は揺るがないだろう。
 数十秒沈黙の時が流れ、光太郎は観念したかのように長々とため息を吐いた。
「……氷川さんが一緒ということなら、了解しましょう」
「氷川、お前は小沢さんを助けに行きたいんじゃないのか?」
「ええ。ですが、小沢さんがいたなら、自分に構わず南さんと共にシャドームーンのところへ向かえといったはずです。
あの人なら大丈夫。小沢さんなら危険を切り抜いてくれますし、リュウガさんもいます。
二人を信頼して、僕はひよりさんと南さんと共にシャドームーンのところに行きます」
 もちろん、言葉とは裏腹にすぐに助けに向かいたいに違いない。
 それでも彼はひよりの願いを叶える事を優先し、仲間を信じる事を選択した。
 ならば、自分がそれに応えなければどうする。光太郎は、氷川という仮面ライダーと共に、シャドームーンと決着をつけに向かう事を決めた。
「ひよりさん、氷川さん、行きましょう。信彦のところへ!」
 静かに頷く氷川を見つめ、その足で地面を力強く踏みしめた。


「木野さん、またお会いしましょう。気をつけて」
「君のほうこそ気をつけてください。相手が相手ですから」
「分かっています。津上さんによろしく言っていてください」
 そう告げて遠ざかる三人の男女の人影を、木野は見つめる。
 氷川誠はこの殺し合いにおいて仮面ライダーとなっていた。驚くのと同時に、それは当然だろうとも思う。
 彼は警察官としての義務だけではなく、氷川誠としての信念で無力な人を守っていた。
 決して逃げない彼に、仮面ライダーの力の源、ガタックゼクターが力を貸したのも当然だろう。
 彼ほど仮面ライダーに相応しい男はそうそういない。橘と同じく、彼は仮面ライダーであるべきだ。
 そして、自分はどうなのだろうか?
 橘を殺し、天道を救えず、睦月が更に闇に染まっていくのを止められなかった。
 津上からは仮面ライダーであり続ければいいと言われたが、自分では許せそうにない。
(雅人、俺に俺自身を許せる日は来るのだろうか?)
 自らの咎についての問いかけを死人にする。もちろん、答えは返らない。
 彼の罪悪感は大きくなるだけだった。


 三人の姿が消え、三十分ほど経つ。まだ変身はできない。
 草加は移動を開始するべきだと考え、振り返る。
「そろそろ移動をするとしよう。ドラスの拡声器で殺人鬼が向かってくる可能性があるしな。
今の俺たちで対抗できるかどうかは、見れば分かるだろう」
「ええ、特に私たちの仲間を殺した浅倉は駆けつけてくる可能性が高い」
「それに草加、あいつはデルタを使っていた。もしかしたら、北崎を殺したのも奴かもしれない」
 巧の言葉に少し疑問を浮かべるが、すぐに消え去る。
 草加の時間軸では三原が使っていたが、北崎及び巧の時間軸ではデルタのベルトは奴の手にあったのだろう。
 だとすれば、あの男を殺した相手は浅倉。確かに油断はできない。
 二人に肯定の意を伝え、準備をする。矢車の様子を伺うが、まだ沈んでいる。
 呆れ、まだ気絶している秋山を背負って、樹海を目指す。
 彼らの話では、浅倉は東に向かったということだ。
 なら西であるC5エリアは比較的安全のはずなので、そこを通ってE4エリアへと向かう。
 そこで別メンバーと合流し、ドラス、ジャークたちを殺して、最終的に優勝を目指す。
 今のパーティを支配する自分なら問題ないはずだ。
 誰も見ない、影になる位置で草加はほくそ笑む。
 だが、彼は忘れていた。最後の最後まで油断はできないのが、戦場であるということを。

 彼らが準備を整え、移動を開始しようとしたときだ。
 ダイナマイトが爆発したような轟音が轟く。
 草加たちが驚き、振り返ると車が宙を舞い、やがて地面へと叩きつけられて火柱を上げる。
 車があっただろう場所に、炎を背にして一人の魔人が佇んでいた。
 黒い強化スーツに白いライン。白のフォトンブラッドは脈のように全身に三本線走っているが、肩の辺りは鳥の羽を髣髴させている並びだ。
 額には三角を逆にした模様に、V字のアンテナが突き出ている。
 オレンジ色の瞳でこちらを両腕をぶら下げた、脱力した姿勢で見る。
 草加に怖気が走る。多くのオルフェノクを退治した彼でも悪寒を感じるほど、今のデルタは危険な雰囲気を漂わせていた。
 炎の爆ぜる音だけが響き、D6エリアの研究所跡に偽りの静寂が訪れた。
 突如デルタが天を仰ぎ、

「おおおおおおおおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!!!!」

 空気を震わせ、地面を踏み砕く。
 それで突き出た人の上半身ほどもある巨大な瓦礫を掴み、雄叫びながら投げてくる。
 草加は地面を蹴って、蓮を担ぎながらビルの陰まで走る。
「ファァァイィィアァァァッ!!」

 ―― BURST MODE ――

 デルタの銃より放たれる光弾が、草加の足元を爆ぜさせる。
 頬に一発かすめながらも、ビルの陰へと逃れた。
 巧、木野、矢車も追いつき、隠れる。
「やはり来たか」
「……あいつっ!」
 怒りを露にする二人。矢車は無言。
 担いでいる秋山を降ろし、草加は思考する。
(撃ちながら近付いているな。死ぬわけにはいかない……しょうがない)
 ため息を深々と吐き、矢車から返してもらっていたカイザドライバーを巧に投げる。
「草加、これは……」
「おい! そのベルトは適合できないと死ぬんだぞ!」
「安心しろ。乾は適合者だ。乾、特別に貸してやる。奴を追っ払うぞ」
 狼狽する矢車に答え、巧に確認を取る。頷き返すのを確認して、草加は蓮の懐からナイトのカードデッキを取り出す。
 真司と組んでいたとき、彼らの持つ変身システムは誰でも変身できる事を確認している。
 蓮が寝ていたことに感謝する。起きていたとしても言いくるめられる自信はあるが、同時に時間も食う。
 よけいな手間が省けるのを安心して、窓ガラスにカードデッキを掲げようとする。
 その草加の右手が、木野に掴まれた。
「……どういうつもりだ?」
「そのカードデッキ、私に貸してくれませんか? 逃げるだけの時間を稼ぎますので」
「あんた、何言ってんだ!」
 驚く巧。その言葉を無視して、木野を睨む。
 白い光弾は建物の壁を削っている。こちらをなぶる気なのか、迫ってくる歩みの気配は遅い。
 もっとも、それも時間の問題だ。ゆっくりと木野の狙いを確かめる暇はない。
 続きを言えと顎で先を促す。
「乾くんを変身させて今離れると、ジャークたちのときや、今みたいに襲われる状況に完全に対応できません。
ここは私がそのカードデッキで浅倉をひきつけます。乾くんはみなさんを護衛してください」
「……死ぬ気か?」
「いいえ、生きて闇を切り裂き続けます。橘と北岡の分も。
草加さん、そのカードデッキを貸してください。私はあいつと因縁もありますので」
 まっすぐ貫く瞳に乾や氷川と似た、気に入らない色を宿している。
 だが、ここで一人残ってもらう方が自分の生き残る確率が上がると判断し、無言でカードデッキを渡す。
「ありがとう」
「D4エリアのレストランで三十分だけ待つ。それ以上時間がかかったら、死んだとみなす。いいな」
 確認をとると木野は頷いた。草加は蓮を担いで移動を開始する。
 巧は動かない。苛立たしげに彼を呼ぼうとしたとき、木野が巧に話しかける。
「行ってください、乾くん」
「けど…………」
「そんな顔をしないでください。私は生きて帰ります。だから、みなさんを頼みます」
 巧は悔しげに俯き、やがてこちらにやってきた。
 草加は思い出したかのように、すれ違いざまに木野の耳元へ囁きかける。
「デルタのベルトは誰でも変身できる。制限時間に倒せないようなら、それを利用することでも考えるんだな。覚えとけ」
 木野が頷くのを確認して踵を返す。
(これでもし、木野が奴を倒せたとしたらデルタのベルトを手に入れる機会もくるわけか。
首輪をしている限り変身アイテムは多ければ多いほど有利。木野、お前は利用させてもらうぞ。せいぜい頑張るんだな)
 冷たい思考の下、木野の声が聞こえるのを待つ。
 木野の変身と同時に飛び出すと小声で起きているメンバーに告げ、移動の準備を始める。
「変身ッ!!」
 木野の声がどこか遠く聞こえた気がした。


「変身ッ!!」
 木野は窓ガラスにナイトのカードデッキを掲げ、銀のVバックルが装着されたのを確認する。
 両腕をクロスさせ、空いているベルトの中央へとカードデッキをセットする。
 幾重にも西洋騎士を模した鎧が現れ、木野に装着される。
 ベルトの蝙蝠の紋章と同じ形をしたバイザーの下、青い瞳を向こうにいるであろう浅倉に向ける。
 北岡が使っていたカードデッキと同じシステムの装備。なら使い方はある程度把握している。
 トリックベントなど、特殊能力はドラス戦で見ていた。それらをぶっつけ本番で使いこなせるかどうかは分からないが、最低でも仲間の逃げる時間は稼がなければならない。
 このライダーに不慣れな自分はスペックで押すしかないと、内心蓮に謝りながら『サバイブ』のカードを取り出した。
 バイザーが盾と剣が一体化したダークバイザー・ツバイへと進化する。
 カードをセットしたと同時に、更なる『変身』を告げる電子音が廃墟となった市街地へと響いた。

 ―― SURVIVE ――

 銀の鎧と黒のカードデッキが青に染まり、鎧を縁取るように金のラインが形成される。
 背中より翻るマント。ナイトサバイブとなった木野はビルの陰から踊りだし、その速さを持ってデルタとの距離を詰めた。
「がぁぁぁぁっ!!」
 獣のような唸り声を発するデルタに弓へと姿を変えたダークバイザー・ツバイを向ける。
 ダークアローより発射される光弾で牽制し、滑るように懐にもぐりこみ、
「むぅん!」
 続けて横一文字にダークブレードを振るう。
 しかし、デルタはとっさに瓦礫を持ち上げガードする。
 バターのように瓦礫を切り裂いたのはいいが、デルタへの当たりは浅く、拳を頬に打ち込まれる。
 脳を揺さぶられながらも、自身も左拳でデルタの腹を貫いた。
 しかし、攻撃を受けながらのため拳は軽く、さほどダメージは与えていない。デルタが構わず連撃を開始する。
 それでもナイトサバイブは仮面の下で、ニヤリとほくそ笑んだ。
 左腕のダークアローから光弾が発射され、デルタの腹を焼く。
 爆ぜる反動で離れるデルタを見つめ、自分の作戦が上手くいった事を確認した。
 もしこれが木野と会ったときの浅倉なら成功していたか分からない。今の彼はなぜかは知らないが冷静さを欠いているのが見え、そこをついたのだ。
 そこにつけ込み時間を稼ぐことには成功した。もう草加たちの気配は感じない。
 なぜこの男が狡猾さを失い、暴れているのか疑問は持つ。
 だが容赦するつもりはない。この男は北岡を殺した。城茂の先輩、風見志郎も殺したらしい。
 なら自分がすることは一つ。仮面ライダーとして悪を倒す。
 想いを新たに、ダークブレードを上段から振り下ろす。
 だが、甲高い音が響き、デルタが持つ剣で防がれたのを知る。
 その剣はドラスの使っていた怪魔稲妻剣。天道の死に動揺して回収するのを失念していた。
 三合ほど斬り結ぶ。デルタは剣を無茶苦茶に振るうだけだが、ナイトサバイブとなった木野も剣術には疎い。
 ナイトサバイブはデルタの力強い剣の衝撃を辛うじて捌きながら、脇腹を斬りつける。
 しかし、デルタは痛みに構わず斬りつける。
「ぐぅ!」
 ナイトサバイブの胸部アーマーに袈裟懸けに傷が走り、血が吹き出る。
 敵は痛みに呻く様子がない。いや、奴は前から痛みに関しては求めている節があった。
 この程度の痛みでは動きを止めることすら叶わない。そこまでナイトサバイブは思考して、トリックベントのカードをバイザーへと収める。

 ―― TRICKVENT ――

 ナイトサバイブは分裂した分身に紛れながら、デルタを貫く隙を狙う。
「おわぁぁぁぁぁぁあああぁぁっ!!!」
 一人切り裂かれるが、腕に携えた弓を放ちデルタを焼く。貫かれている痛みにも構わず、暴れ続ける敵を見つめ続ける。
 デルタは出鱈目に剣を振るい、銃弾を放ってあっという間に分身を全て砕く。
「イライラするんだよぉぉぉ!!」
 やっと人の言葉を放ったと思えば、すぐ獣の唸り声をあげ続ける。
 デルタは貫くダークアローの矢を無視して迫り、こちらの首を掴んだ。
 ナイトサバイブは脱出しようと斬りつけるが、意にも介されず壁へ叩きつけられる。
「ぐ……」
 腕に対し矢を放つが、握力は弱まらない。二度、三度続けてデルタは自分を壁に叩きつける。
 血を仮面の中へ吐き出し、瓦礫の山へ向かって投げ出された。
「う……くは……」
 怪我の様子をチェックする。アバラが折れたが、多少激しい動きをしても肺に刺さることはないだろう。
 内蔵の破裂の心配をしたが、吐き出した血の量からそれはないと判断する。
 もちろん、ダメージは深刻だ。本来なら戦える状態か怪しい。
 だが、それは敵も同じ。見ていると、北岡との激闘が尾を引いているらしい。
 それでも普段以上の戦闘力なのは、彼の心が狂気に支配されているからだろう。
 精神が肉体の限界を超越する。医者である彼が何度か見た奇跡を、浅倉は醜悪な形で顕在させていた。

 その浅倉の姿が、医者として、人として余計に許せない。

 ナイトサバイブは跳ね上がり、地面を蹴ってデルタに当身を仕掛ける。
 転がっていきながらもこちらを睨んでいるデルタを確認し、カードをバイザーに収める。

 ―― BLASTVENT ――

 デルタの喪った左目側より、竜巻が発生し、吹き飛ばす。
 ナイトサバイブは続けて切り札を切る。

 ―― FINALVENT ――

 ダークレイダーの背にナイトサバイブは飛び乗り、バイクに変形したそれに跨る。
 バイクの先端よりデルタを拘束する光が放たれる。
「がぁっっ!!」
 しかし、デルタは跳んでそれを回避し、デルタムーバーをこちらに向ける。

「チェェェェェッッックゥゥゥゥ!!」

 ―― EXCEED CHARGE ――

 放たれるポイントマーカー光が三角錐のエネルギー体を展開し、デルタの蹴りが迫る。
 だが、エネルギーを貼り付けたままバイクが走る。
 悪魔の蹴りと仮面ライダーのバイクの衝突が廃墟の空気を震わせる。
 何度目か分からない爆発音が響いた。

「ぐ……かっ……」
 傷だらけの身体に力を入れて、木野は立ち上がる。
 制限時間がきたわけでなく、ダメージを受けすぎたため変身が解除されたのだ。
 浅倉も同じらしく生身の姿になっていた。
 だが敵はデイバックから黒いカードデッキを取り出し、ガラスに向かって構える。
「変身!!」
 戦わずにはいられないといわんばかりに、瞬時に身体をオルタナティブ・ゼロに変える浅倉。
 その姿は北岡を殺した姿。木野の心が燃え上がり、右前方五メートルほどにあるデルタのベルトに向かって地面を蹴る。
 オルタナティブ・ゼロが迫る中、木野はデルタドライバーを腰に巻いてデルタフォンを口元へと運ぶ。
「変身!!」

 ―― Standing by ――

 デルタフォンをそのまま降ろして、腰のデルタムーバーへと接続する。

 ―― Complete ――

 音声入力を確認したデルタドライバーが白いラインを走らせ、黒い強化スーツを精製する。
 先ほどは敵として対峙した身体。しかし、今は木野の力となって存在していた。
 だが、それは同時に毒へと耐える試練でもある。
「がぁぁぁっ!!」
 オルタナティブ・ゼロが武器を取るのも面倒だといわんばかりに拳をぶつける。
 その連打を捌き、膝蹴りを腹に当てる。空気を吐きながら後退するオルタナティブ・ゼロの顔を跳ね上げる。
 続けてデルタは胸へと拳を四発当て、よろめく隙に首を掴んで投げ飛ばす。
 瓦礫に埋もれていくオルタナティブ・ゼロを見つめながら、デルタは必死に闘争本能を抑えている。
(これは……!)
 デモンズスレートは木野の意識を侵略して、凶暴化しようとする。
 このままデルタの毒に身を任せて暴れれば、どんなに楽になるだろうかと考える。
 力を振るって、だれかれ構わず殺しまわりたいという思考が押し寄せてくる。
 しかし木野は必死にその欲求に抗っていた。
 アギトの能力もあるが、何よりも木野は仮面ライダーになりたい一心でデモンズスレートを押さえつけていた。
 自分の目を覚ました橘。目の前の男に殺された北岡。今まで出会った仮面ライダーに憧れ、自身もそうなりたいと願っている。
 デルタの毒に負けた瞬間、自分は二度と仮面ライダーになれなくなる。
 それだけは、イヤだった。必死に両脚で地面を踏みしめ、橘の『仲間だ』という言葉を糧に正義の炎を心に燃やさせる。
 瓦礫を跳ね除け、オルタナティブ・ゼロが迫る。
 カウンター気味に振るう拳はオルタナティブ・ゼロの腹を捉える。しかし、敵も黙って殴られるだけではなく、同時にこちらの方を打ち抜いた。
 衝撃を感じながらも、毒に抗いながら拳を振るい続ける。
 人を殴る鈍い音が、廃墟に断続的に響く。
 どれくらい殴り続けたか分からなくなったとき、身体がよろめいて三メートルほど後退する。
 敵の攻撃に備えて構えるが、敵も同じくよろめいて後退していた。
 お互いの荒い息遣いしか聞こえてこない。なぜなら、一歩も動かないのだ。オルタナティブ・ゼロが自分と同じく一撃をかける隙を狙っているのには気づいている。
 どちらかの攻撃が先に当たれば、それで決着がつく。先制をとるため、敵の呼吸から攻撃の瞬間を見逃さないよう注意する。
 風が吹き、瓦礫が軽く崩れる。その音を合図に、二人はそれぞれの得物を敵へと向けた。
「チェック!」
「うあぁぁぁああぁ!!」

 ―― EXCEED CHARGE ――
 ―― FINALVENT ――

 鏡よりミラーモンスター・サイコローグがバイクに変形しながら飛び出す。
 オルタナティブ・ゼロは飛び乗り、こちらへとスピンしながら襲ってくる。
 デルタが向けた銃身より、ポインターエネルギーが飛び出し、三角錐の白いエネルギーを展開する。
 エネルギーを引き連れながら迫るオルタナティブ・ゼロ。
 それは奇しくも、先ほどのナイトサバイブとデルタの激突の展開を逆にしたような形だった。
 悪と正義を入れ替え、ファイナルベントとルシファーズハンマーがお互いしのぎを削る。

「ぬぅぅぅぅおぉぉぉぉぉぅっ!!」
「うがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!」

 戦士と獣の咆哮が廃墟で轟く。
 莫大なエネルギーは破壊の力を持って、二人の視界を白に染め上げていく。
 ミサイルが激突したような爆発が上がり、廃墟を更に崩壊させていった。


 相川始は放送について思考する。
 知り合いが呼ばれていたが、彼の心配の種はそれではない。
 もちろん、橘が死んだのは悲しいが、いつかは殺さなければならないと覚悟していた。
 だが、剣崎は違うだろう。彼は橘を慕っていた。
 自殺するような真似はしないだろうが、ショックを受けてその隙を狙われないだろうか心配をする。
(杞憂だな。新たな仲間が何とかしてくれるだろう)
 彼は仲間を作っていた。当然だろう。
 剣崎は自分とは違う。怪物ではなく、人々を守る仮面ライダー。
 この殺し合いでも希望を持ち、各仮面ライダーと協力をしているに違いない。
 そこが彼の美点であり、欠点でもある。
 だから彼を優勝するため、自分が泥をかぶればいい。
 始はバイクを黙って進める。
 殺戮者として、死神として、進むために。


 神代剣はドラスを探しに森を掻き分ける。
 もちろん、姿は無い。
 しかし、この付近にいるはずだと瓦礫を排除し、押し進む。
 ふと、足元に携帯電話が落ちているのを発見した。
 不思議に思いながら拾うと、そこには橘が少年へ銃を突きつけている画像があった。
「なんということだ……」
 剣崎の記憶では橘は多少頼りないが、心強い仲間である。
 そして、正義感に満ちていた。橘の死に剣崎が悲しむほどである。
 幸い、剣崎の意識は感じられない。
 神代は携帯電話をデイバックにしまり、このことを胸に収める。
 剣崎を悲しませるのは、彼の本意でないから。
 この森もやがて禁止エリアになる。そうなる前にと、丘の麓を回り、隣のエリアへと侵入する。


「そろそろ三十分だ。例の場所に向かうぞ」
「待ってくれ、草加。あと十分だけ待ってやれないか?」
「最初に宣言したはずだ。三十分経ってもこない場合は死んだとみなすとな」
「だけどよ……」
「君はまたこのメンバーを危険に晒してもいいというのかな? 全滅すれば真理の仇も討てないんだぞ?」
「でもよ、後十分。それだけなら待ってもいいじゃねえか! あいつは俺たちを助けるために逃がしたんだぞ!」
「だからこうして、無傷で君の言う他メンバーと合流しようとしているじゃないか。
君のいうとおりに行動して、全滅することこそ、木野の想いを無駄にしているんじゃないのかな?」
 心にもない事を言い、巧を言いくるめる。
 反論がないのを確認し、移動をしようとしたとき、レストランの自動ドアが開くのを確認する。
 無言で巧と視線を合わせると、彼は前へ出てカイザドライバーを構える。
 草加はいつでも逃げ出せるように構える。だが、それは要らぬ心配だったようだ。
 現れた人物は、全身に怪我を負った木野だったからだ。
「おい、あんたっ! 何とか切り抜けてきたのか」
 巧が嬉しそうに近寄ると、木野は弱々しげに笑う。
 その様子を見つめ、草加は冷静に彼の状態に気づく。
「すまない。デルタのベルトは一時奪ったが、また奪い返されてしまった。
だが、ナイトのカードデッキだけは死守した。秋山くんが起きたら返してやってくれ」
「あんたの手で返せばいいじゃないのか?」
「乾、それは無理だ」
「草加、どういうことだよ」
 矢車が何かに気づいたように駆け寄り、木野の様子を見る。
 力のない彼の顔が、更に絶望を宿して陰りを見せている。
「お前、なんて顔をしてんだよ! いったい……」
「いいんだ、乾くん。私は……俺はもう長くはない……」
「何言ってんだよ! あきらめんな!!」
「俺は医者だ……。助かる傷かどうかくらい、判断できる。
すまない、浅倉を……倒せ……なかっ…………た」
 木野の息が荒くなり、血を吐く。
 草加は悲痛な表情を浮かべる二人を冷ややかに見ながら、木野を使えない奴だと内心吐き捨てた。
 倒すのが無理なら、デルタのベルトくらい回収して欲しかった。
 無理なものはしょうがないかと、三文芝居のような三人のやり取りを見つめる。
(早く終わらないかな。敵に襲われると厄介なのに)
 太陽は完全に沈み、夜の闇が迫っていた。


 木野は悲痛な表情を浮かべる矢車と巧を見つめる。
 しかし、その視界も次第にぼやけていく。腕に力が入らない。
「津上に……俺の代わりに……闇を切り裂いてくれと……いってくれ。
結局俺は……仮面ライダーとして生きていけなかったな」
「そんなことねえよ! お前はちゃんと仮面ライダーとして浅倉と戦ったじゃないか!
誰にも、お前を仮面ライダーじゃないなんて言わせねえ!」
「そうだ。何も天道に続いて、あなたまで……」
「……ありがとう。橘……雅人……今……俺もそこに……」
 木野の身体が崩れ落ち、カードデッキが落ちて乾いた音をたてた。
 最早身体は動かない。
 矢車と巧の慟哭がレストランに木霊する。

 吹雪く山に木野はいる。
 隣に眠りかける弟を担ぎ上げ、声を張り上げる。
「雅人! しっかりしろ!!」
 頷く弟ともに、木野は生きるための道を行く。
 やがて闇は切り裂かれ、二人の兄弟に光がもたらされた。


 夕方と夜の境目の紫色の空の下、高くつまった瓦礫が崩れ落ちる。
 頂点に血だらけの手がかけられ、やがて持ち主が全身を見せた。
 血だらけの身体に、怒りを乗せた彼は空を見上げる。

「あぁぁぁぁぁああぁあぁ!! イライラするんだよぉ!!!」

 吠えるのは人在らざる叫び。左手に持つデルタドライバーを強く握り締め、更に吠える。
 彼の胸中を支配するのは飢餓。木野という強敵を倒しても、彼の飢えは満たされない。
(なぜだ!? なぜイライラする!! あいつを、北岡殺せたのに! 仮面ライダーとかいう奴も殺せたのに!!)
 握る拳からデルタの念動力が発せられ、瓦礫が吹き飛ぶ。こんなんでは駄目だと、瓦礫を殴りつける。
 へこむコンクリートの壁。血だらけの拳を携え、浅倉は天に吠える。
 その姿、モンスターのごとく。


木野薫 死亡】
残り26人
【相川 始@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:夜】
【現在地:樹海C-5】
[時間軸]:本編後。
[状態]:胸部に抉れ。腹部に切傷。一時間変身不可(カリス)
[装備]:ラウズカード(ハートのA、2、5、6)、HONDA XR250
[道具]:サバイブ(烈火)。アドベントカード(ギガゼール)。首輪探知機(レーダー)
[思考・状況]
1:天音ちゃんを救う。
2:剣崎を優勝させる。
3:ジェネラルシャドウを含め、このバトルファイトに参加している全員を殺す。
[備考]
※1:相川始は制限に拠り、ハートのA、2以外のラウズカードでは変身出来ません。
※2:HONDA XR250は制限により、あらゆる能力で変化することが出来ません。

神代剣@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:夜】
【現在地:樹海C-7】
[時間軸]:スコルピオワームとして死んだ後。
[状態]:中程度の負傷。背中に斬撃による傷。始への憤り。
    一時間変身不可(スコルピオワーム&サソード&ブレイド)。
[装備]:サソードヤイバー。剣崎の装備一式。
[道具]:陰陽環(使い方は不明)。携帯電話。 ラウズアブゾーバ
    ラウズカード(スペードのA、2、3、5、6、9、10。ダイヤの7、9、J。クラブの8、9)
[思考・状況]
1:天道の死に悲しみ。
2:始と再会し、手を汚す前に自分の手で殺す。
3:この戦いに勝ち残り、ワームの存在を無かったことにすることで贖罪を行う。
4:さらに、自分以外が幸せになれる世界を創る。
5:秋山蓮といずれ決着をつける。
6:氷川の決闘の申し出を受ける。
7:橘は殺し合いに乗っていた?
[備考]神代は食パンを「パンに良く似た食べ物」だと思ってます。
※1:剣崎と神代剣両方の姿に切り替えることができます。剣崎の記憶にある人物と遭遇しそうなら、剣崎の姿に切り替えるつもりです。
※2:神代剣結城丈二への擬態能力を得ました。但し、変身は出来ません。
※3:神代剣は首輪の解除方法を得ました。但し、実際に首輪を解除できるかは不明です。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

【浅倉 威@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:夜】
【現在地:市街地D-6】
[時間軸]:本編終盤辺り。
[状態]:抑えられない殺人衝動。左目負傷、全身に大程度の負傷(打撲、火傷など)、大程度の疲労。腹は満腹。
    二時間変身不可(オルタナティブ・ゼロ&デルタ)。
[装備]:デルタフォン、デルタドライバー。
    カードデッキ(オルタナティブ・ゼロ)。怪魔稲妻剣。
[道具]:ファイズブラスター。三人分のデイバック(風見、北崎、浅倉)。
    グランザイラスの破片。カードデッキ(ゾルダ)。
[思考・状況]
1:アギトもストロンガーもあきらも皆、殺す。
※音撃金棒・烈凍はC-5エリアの森に放置されています。

秋山蓮@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:夜】
【現在地:市街地D-4】
[時間軸]:34話龍騎サバイブ戦闘前後。
[状態]:中度の負傷。気絶中。一時間変身不可(ナイト)
[装備]:なし。
[道具]:配給品一式。
[思考・状況]
1:気絶中。以下は気絶前の思考。
2:戦いを続ける。
3:神代を逃がしはしない。
4:リュウガに話しがある。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

【乾巧@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:夜】
【現在地:市街地D-4】
[時間軸]:中盤くらい
[状態]:全身に中度の負傷。疲労中。応急処置済み。一時間変身不可(ウルフ&ファイズ)。
[装備]:ファイズドライバー(ファイズポインター、ファイズショット、ファイズアクセル)
[道具]:ミネラルウォーター×2(一本は半分消費) カレーの缶詰 乾パンの缶詰 アイロンを掛けた白いシャツ。
[思考・状況]
1:放送の内容と天道の死と木野の死に絶望。
2:浅倉とドラスを倒す。
3:神崎をぶっ飛ばす。
4:城たちと合流する。

草加雅人@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:夜】
【現在地:市街地D-4】
[時間軸]:ファイズ終盤。
[状態]:背中に切り傷。全身に強度の打撲。参加者全員への強い憎悪。ドラスに特に強い憎悪。
    一時間変身不可(カイザ&ファイズ)。
[装備]:カイザドライバー(カイザブレイガン、カイザポインター)。
[道具]:救急箱。精密ドライバー。バタル弾。配給品一式×5(北岡、木野、キング、睦月、草加)
    ディスカリバー。 GA-04・アンタレス。カードデッキ(ナイト)。サバイブ(疾風)
[思考・状況]
1:このメンバーを利用して、ドラス、冴子に復讐。
2:ゲームの参加者の皆殺し。
3:馬鹿を騙し、手駒にする。
4:デルタドライバーを手に入れたい。
[備考]
※バタル弾は改造人間のみに効果あります。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

矢車想@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:夜】
【現在地:市街地D-4】
[時間軸]:8話 ザビー資格者
[状態]:疲労と悲しみと絶望と。一時間変身不可(キックホッパー)
[装備]:ライダーブレス(ザビーゼクター破壊)
[道具]:ホッパーゼクター&ホッパー用ZECTバックル。ゼクトマイザー。3人分のデイバック(佐伯、純子、矢車)
    トランシーバー(現在地から3エリア分まで相互通信可能)。
[思考・状況]
1:天道、木野の死、ドラスの生存に絶望。
2:仲間を集めてパーフェクトハーモニーで脱出!
3:戦闘力の確保。
4:リュウガに僅かに不信感。
[備考]
※1:クライシスと神崎士郎が利害の一致で手を組んでいる可能性が高いと考えています。
※2:ゼクトマイザーは制限により弾数に限りがあります。現在、弾切れです。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

南光太郎@仮面ライダーBLACK RX】
【1日目 現時刻:夜】
【現在地:市街地E-5】
[時間軸]:第1話、RXへのパワーアップ直後】
[状態]:全身に軽度のダメージ。一時間変身不可(RX)。
[装備]:リボルケイン
[道具]:カラオケマイク(電池切れ)。トランシーバー(現在地から3エリア分まで相互通信可能)。首輪(ドクトルG)。
[思考・状況]
1:打倒主催。その後、元の世界に戻ってクライシス帝国を倒す。
2:シャドームーンと決着をつけ、結城を助ける。
3:シャドームーンを仮面ライダーにしたい。
4:草加を始め、闇に落ちた仮面ライダーを救う。
[備考]
※1:黒幕はクライシス帝国、神崎はその手の者であると勝手に確信しています。
※2:ガタックゼクターへの誤解は解けました。
※3:ドラスをクライシスの怪人だと思っています。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

氷川誠@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:夜】
【現在地:市街地E-5】
[時間軸]:最終話近辺
[状態]:中程度の負傷。胸に大火傷。一時間変身不可(ガタック)。
[装備]:拳銃(弾一つ消費)。手錠等の警察装備一式(但し無線は使えず、手錠はF-4のビル内に放置)。
    ガタックゼクター&ベルト。GX-05ケルベロス(但し、GX弾、通常弾は全て消費)
[道具]:但し書きが書かれた名簿。デザートイーグル.357Magnum(4/9+1) 。
    デイバック五人分(氷川、ひより、リュウガ、岬、明日夢) 。
[思考・状況]
1:光太郎とともにシャドームーンのところに行く。
2:リュウガを信頼。
3:小沢、リュウガの救出。
4:津上翔一、との合流。
5:此処から脱出する。
6:神代と決闘。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

日下部ひより@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:夜】
【現在地:市街地E-5】
[時間軸]:本編中盤 シシーラワーム覚醒後。
[状態]:右肩に重傷(応急処置済み)。わずかの打撲。一時間変身不可(シシーラワーム)
[装備]:なし
[道具]:なし
[思考・状況]
1:天道と加賀美の死に深い悲しみ。
2:シャドームーンを仮面ライダーにしたい。

[大集団全員の共通事項]
時間軸にずれがあること、異世界から連れてこられたことは情報として得ました。
仲間である人物と敵であろう人物の共通認識がされました。

[その他共通事項]
GM-01改4式(弾切れ)、拡声器はD6エリアに放置されてます。

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最終更新:2018年11月29日 17:43