GAME
幾億ノ孤独ヲ、束ノ間癒シテクレタノハ暗黒ノ四葉。
――僕ガ触レルモノハ、スベテ灰ニナル……
「ウガァアアアッ!」
躰の底から湧き上がる咆哮。
狂喜の絶叫か、野生の本能か?そんなことはどうでもいい。
衝動に駆立てられるが侭、サーベルを振り下ろす……確実に覚醒していく意識。
骨を砕く鈍い音が快感となり全身に響き渡る。
デルタを纏う痩躯な少年……北崎は攻撃を受けながら躰と似つかわしく無い重く鋭い蹴りを放つが、
受ける痛みも弾き飛ばすスリルも戦いへの渇望を増幅させるスパイスでしかない。
――そうだ、戦いってのはこういうもんだよな?
熾烈な攻防を続ける内、次の攻撃は予測可能となる。
――結構、強いね。 デルタの力を試すのには丁度いいかな。
右、左、右下から……そして上!
上体を捻り紙一枚で躱す。
標的を失ったサーベルは石畳に突き刺さるが、それごと側頭部目掛けハンマーの如く力任せに
振り切って来る。
轟音を立て目の前の障壁が打ち砕かれていく。
粉塵から逃れるように石畳を蹴り上げ高く跳躍する。
闇に輝くフォトンストリーム……直線軌道を描くと一本の光の矢と成り急降下する。
――随分大袈裟だな……だが、どうかなァッ!
サーベルを外側に半回転させ地表間際の低い位置から一撃を放つ。
構えなく、流れるままに繰り出される動きは慣性でスピードを増し凄まじい破壊力で躰を抉る。
「ハハハハハッ!どうした、もう終わりか。もっと楽しませろよ!」
狂った様な王蛇の高笑いが龍の逆鱗に触れる!
躰を抉る痛み、地に叩き付けられた屈辱、そして怒りが血を滾らせる。
――調子に乗るなっ!僕が負けるはず無いだろ。それに何がそんなに楽しいんだッ!
ファイア
『Burst Mode』
衝撃の余波にふらつく体を支えながら、デルタムーバで王蛇目掛け至近距離から光弾を放つ!
的確な射撃は逃れることを許さない。
左足を標的に狙い撃つ!
――見かけより、充分楽しめるな……
絶え間なく放たれる光弾。
サーベルで弾き返しながら瓦礫の上を疾駆する。
一瞬、途切れる光。
――何ッ!
踏み込んだ筈の左足が空を切り、感覚は遮断される。
……アァ、役立たずの左眼の所為か。
視力の戻らない左眼の死角から次々と着弾しバランスが崩れた体は転がるように倒れ込んだ。
「一気にケリをつけてやる!」
胸のデモンズスレートが北崎の闘争本能を刺激する。
残像を残す程のスピードで瞬時に間合いを詰める。
横一直線に振払う腕が王蛇を軽々と殴り飛ばす。
弾き飛ばされた王蛇の躰は壁を突き抜け瓦礫を四方に撒き散らし、辺りを砂煙が包む。
――気持ちいい~サイコーだ。
右手を強く握り締めベルトの力を実感する。
「フフッ。ジ・エンドだね。」
もはや弱者と成り果てた獲物をイタブルように笑いながらデルタムーバの標準を定め撃鉄に手を掛けた。
『ADVENT』
突如、砂煙を掻き消し獲物を狙う暗紫色の大蛇が牙を剥く。
――こんなおもちゃに僕が負ける理由無いだろ。
仮面の下で嘲笑うように弧を描いていた眼を大きく見開く。
――ゴオォッッ
開放される凄まじい龍の闘気……ベノスネイカーに一瞬の怯みを誘う。
「どうしたの、それでおしまい?」
両手を広げ、からかいながら招き寄せる。
挑発を受けたベノスネイカーは唸り声を上げ地を這い突進する!
しかし、すべてを粉砕するはずの牙突は数歩の後退を奪ったのみ、致命傷には至らない!
「
モンスター程度じゃお前には役不足か?」
サーベルを自身の首筋に当て交い不敵な笑みを零す。
こんなに気分がいいのは、久しぶりだ……
握りしめる手に力が籠もる。
しかし、次の瞬間全身が陽炎のように揺らめく。
装甲が粒子化し鱗がはがれ落ちるように飛んで行く。
――もう時間切れか?お楽しみはこれからだろう!
「「ウオォッッ!」」
雄叫びと共に拳と剣がぶつかり合う、龍蛇の激突……互いの力は完全に拮抗し硬直する。
数十秒にも感じられた一瞬の後、行き場を無くした力と力は反発し双方を吹き飛ばす!
ガガガガガッガッッ!!!
「ゥグッッ。」
瓦礫に足を取られ膝を突く。
素早く周辺を見回し王蛇の位置を捜すが、遅きに失する。
――ユラリ……
月明かりの中、牙召杖が影を落とす。
終焉の断片、最後のカードが装填される。
『FINAL VENT』
今、紫の大蛇がとどめを刺すべく鎌首を持ち上げた。
宙を舞う姿は獲物の死を象徴する漆黒の十字架……
肉を溶かす溶解液と共に骨を断つ壮絶な連続蹴りの猛襲!
一撃、一撃がデフェンスを蹴り砕き、反撃の隙を与えず確実に肉体を破壊する。
断末魔を背に着地する、同時に装甲が剥れ落ち変身が解除される。
――いつもより手応えが感じられない?それに、もう少し楽しめると思ったが。
しかし、激しい戦いにより先程までの苛立ちは幾分解消されていた。
直撃すれば暫く動けるはずはない。まともに食らえばだがな……
倒れた敗者を一瞥すると遺跡の出口へ向かう。
――ガサッ。
瓦礫の底から気配が甦る。
瞑っていたはずの冷たい瞳は開かれ、凍るような視線を放つ。
不敵に笑う王蛇の滾る視線とぶつかり合い、緊迫が空間を支配する。
「甘いね。それで勝ったと思ってるの?」
「フン……まだ生きてるのか?」
再度、ゾクゾクと期待にも似た感情が満たされて来る。
「安心しろ、すぐに沈めてやる。」
「もう一回やるつもり?かまわないけど。」
対峙している相手はデルタの力を駆使してもなお自分と対等に戦える。
正義など破片も持ち合わせていない純粋な悪
――面白い……両者の意識がリンクする。
『――変身!』
しかしカードデッキもデルタドライバーも機動することは無く、
ドラゴンオルフェノクへも変身出来ずに声だけが闇に空しく吸い込まれていく……
「あ~ぁ。ゲームオーバーか~」
もう少しベルトで遊びたかったな。
ため息と共に、あきらめが疲労と脱力感を運んできた。
地表に腰を下ろし、頬杖つくと拗ねた様に呟く。
――どォ言うことだ!
戦闘で体力を消耗しすぎたのか?北崎とカードデッキを睨付けると、腹立ち紛れに壁に拳を叩付けた。
「しばらくは時間切れが続くって訳か?」
誰に言う訳でもなく、自分を納得させるように吐き捨てる。
時間はまだある。そのうち変身できるようになれば、コイツも含めて遊び相手には不自由しないだろう。
只、目の前に居る獲物を逃がすのは惜しいが……
「まあいい。オイ……お前は、結構面白い。あとでまた遊んでやる。」
――面白い、僕が? そんな風に思う人間がいる!?
北崎に微かな動揺が見える。触れるすべての物を灰と化す……能力のもたらす絶対的な孤独感。
それは幼児性故の残虐さと対を為し北崎の中に存在していた。
立ち去ろうとする浅倉を甘えたよう呼び止める。
「ねぇ 僕と賭しない?どっちがいっぱい殺れるか……」
「アァ?」
浅倉は突然の提案を訝しむ。
「賭けだよ~賭。ただ一人でゲームするより競争相手がいた方が面白いでしょ?
いっぱい殺れた方が相手にでこピンできるんだ。
あとで神崎とか言う奴もやっちゃって、僕たちで新しくゲームをはじめたっていい~」
「……ふざけてんのかァ?」
振り向きざま投げ付けたカッターナイフが北崎の耳を切り裂いた。
それでもなお勢いを無くさず壁に蠢く標的を仕留めると、そこでカッターナイフは狩りの役目を終えた。
「このまま続きをしたっていいよ……
でも僕の触るものはみんな灰になっちゃうよ?」
耳から滴り落ちる鮮血もそのままに、表情一つ変えずカッターナイフを抜き取り差し出す。
瞬時に切っ先から音も無く崩れさり、指の隙間から残骸が零れ落ちて行く。
「何なんだ……お前は?」
少し興味を抱いたのか薄笑いをうかべ、値踏みするように視線を投げ付ける。
――人間じゃない?
モンスターなのか?
北崎は冷たく暗い瞳とは対照的に無邪気な口調で話続ける。
おもちゃをねだる子供のように……
「僕ならすぐ獲物を見つけられるしね~それに変身して戦った方が面白いんでしょ~」
――確かに……メタルゲラス、エビルダイバー、そしてベノスネーカー。
鱗は装甲と成り牙は剣と化し、身体能力は限界まで増幅され、王蛇として君臨する。
ライダー同士の戦いに比べれば生身の争いなど只の遊戯すぎない。
ずいぶん気に入られたモンだな。それに、コイツと契約するのにカードはいらないらしい。
「フッ……少し黙れ。
お前が何だろうが俺にはどうだっていい。だが、終らないゲームは、悪くない。」
――しばらくは退屈しないで済みそうだ。
壁際に歩み寄り、先程仕留めたまだ鼓動の絶えない蜥蜴を摘み上げながら、北崎に問い掛ける。
「さぁ、案内しろ。ゲームの場所まで、な?」
【浅倉 威@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:夜明け前】
【現在地:移動中】
[時間軸]:本編終盤辺り。
[状態]:左目負傷、左足に損傷、戦いにより体力は消耗している。
[装備]:カードデッキ(王蛇)
[道具]:無
[思考・状況]
1: 終わらないゲームは悪くない。
2: こいつ(北崎)の喋り方はどうしようもなくうざい。
【北崎@仮面ライダー555】
【1日目 現時刻:夜明け前】
【現在地:移動中】
[時間軸]:本編中盤辺り。
[状態]:全身の打撲、体力消耗。
[装備]:デルタフォン、デルタドライバー。
[道具]:不明。
[思考・状況]
1:新しいゲームを始める。
2:浅倉に興味?
3:冴子さんも仲間に入れてあげてもいい。
最終更新:2018年03月22日 23:43