2人のライダー、2枚のジョーカー

ACT:1 リュウガ
1回目の放送、死亡者は6名か。
その内、自分が手に掛けたのはたった1人、見逃した奴の数の方が多い。
後の死亡者5名は自分以外のジョーカーが殺したか、他にも戦いに乗った奴が存在するという証拠だ。
――あんまり甘いと、すぐ死ぬぞ。
自分自身に言い聞かせた方がいい台詞だな。
迷いを振り切るように全速力で斜面を駆ける。
小丘を下りきると、景色は一転した。
敷き詰められたアスファルト、並び立つ住宅や構築物、空が段々と白んで行き、街は輪郭を現す。
地図を取り出し位置を確認する。D-5エリア辺りか。
自分への焦燥に苛まれた夜が長かった所為なのか、雲ひとつ無い晴天へ上っていく太陽の光がやけに眩しく眼に突き刺さる。
その時だった。

――みんな!殺し合いなんてもうやめてー

数分ほど前、自分が下り降りて来た丘の上。黒髪を靡かせ少女が必死に訴えかけている。
何やってんだ……殺してくれって言ってんのか!
丘に向かって駆け出した瞬間、我に返る。
何をしているんだ?俺は。 助けに行こうとでもしてるのか?
迷いに拍車を掛けるように少女の声が耳を貫く。

「殺し合えって言われたからって、人を殺すなんておかしいよ!」

やめろ!デイパックから拳銃を取り出す。
その冷たい銃身、人を殺すだけの為に作られた存在。
俺と同じだ。これで女を殺せれば、もう迷うことなんかなくなる。

――仮面ライダーは、闇を切り裂き光をもたらす!

訴え続ける女に向かい引き金を引く、反動が一気に肩まで駆け上がる。
そうだ、それだけ、それだけでいい。
だが、意思とは裏腹に懸命な叫びは、心に突き刺さって……

――麻生さぁん!ごめんなさい!
声を掻き消す銃声。
撃たれた?!拳銃をバックに突っ込み、気が付けば丘へ向かって走り出していた。
拡声器から聞こえてくるのは戦闘の様子だけ、声は途絶えたまま。

「俺は闇を切り裂き光をもたらす、仮面ライダー! キック! ホッパァー!!」

一際大きく叫ばれた正義の声に、一瞬足が止まる。
行ってどうする? 殺そうとしてたんだ。
――敵討ちは……仮面ライダーの役目だ……
正面のショーウィンドウ、映る自分の姿。
俺はジョーカーだ……
鏡の中のライダーに2度と戻らない。存在するのは俺だ。
躊躇うことなく撃鉄に手を掛ける。
派手な音を立て、砕け散るガラス。硝煙の匂いが乱された気持ちを落ち着けてくれた。
冷静になれば、鼠の様に隠れ怯えている男を見つけ出すのは簡単だった。

博士の称号を持つ男は、饒舌な命乞いを始める。
「仮面ライダーを作り出しただと?」
確かに銃口を向けられ、白衣姿で怯えている様子はとてもライダーとは思えない。
「そうだ。拡声器から聞こえた声。麻生くんも私が、」
「操る側が、操られる側になったということか。」
博士の体を力任せに叩き付け、肩、右脚、左脚へ銃撃を撃ち込む。
「グッ、ウオォ。何をするのだ!」
こいつは、すぐには殺さない。
「この騒ぎに、すぐ誰か駆け付けて来るだろう。お前の味方の麻生君か、それとも殺人者か……
せいぜい不安と恐怖って奴を楽しむんだな。」
最も、失血死する方が早いかも知れないがな。
放り出され、散乱した博士の荷物に気付く。
支給品は、コンファインベントカード。
「これは貰っておく。」
そう言い捨て、市街地の中心部へ向かう。
二度と振り返ることはなかった。


ACT:2 霞のジョー
「うぅっ……」
起き上がった瞬間、眼にしたのは……
自分の手にしたベルト、血だまりに横たわる2人の男。
1人の男は見覚えがある。あいつに声を掛けられて……
!?思い出せない。一体何があったんだ?
まさか、俺が?全身に感じる痛み、それは確かに自分が参戦したことを物語っている。
――ヒュンッ
「!!!」
自分に向かい放たれる光の矢。
まずい!縺れる足を必死に動かし、人目に付かない路地へ逃げ込む。
でも、あの惨状を見れば俺が殺ったと思うだろう。
記憶を失っている自分は何をしていた?
考えれば考えるほど、混乱する。
――俺は霞のジョー!  死ぬも生きるも兄貴と一緒だ~
兄貴と一緒に戦った時の、あれは本心なのか?
本当の俺は残酷な殺人者だったのか?
どっちが本当の俺なんだ!
自分探しの旅の結末がこんな事だなんて。
兄貴、俺はどうしたらいいんだ?兄貴……
涙が止まらない。
日の当たらない路地。行く当ても無く、ただ無我夢中に走り続けた。


ACT:3 2人のライダー、2枚のジョーカー
――変身 A Change Mantis
剣崎が死んだ今、戦いをためらう必要など一つも無い。
路地へと逃げ去る男の姿。逃がさない!
次の矢を放った瞬間―― 
拡声器から叫ばれる願い。
殺さないで、人間なら当然の感情だ。
だが、剣崎と天音ちゃん、2人をこのままにして置く訳には行かない。
――瀬川さん……その名前に呼応する、微かな気配を察知した。

誰かが呼んでいる。
俺に助けを求めている。沈み掛けていた意識と、ほぼ感覚の無い身体を気力で叩き起こす。
かすむ眼に捕えた1人のライダー。
「その体で、行こうと言うのか?」
「俺は、仮面ライダーJ!どんな、傷を、負うとも……助けを求める声を、無視出来ない。君も、ライダーなら、そうだろう?」
「……」
「早く、行かなければ。グッ、グハァッ」
夥しい吐血。そして拡声器から聞こえた惨たらしい銃撃音。
気力と身体は、糸が切れた様に崩れ落ちた。
「少女よ、大地の精霊たちよ。すまない……」
視界が暗くなり、意識は混濁する。
「俺は、もう、だめなのか?」
頬を照らす暖かな朝日に、悔しさに満ち希望を失った心が少し救われた。
ただ……
「アスファルトは冷たすぎる。せめて土の上で……」
フッと、持ち上げられ軽くなる体。街路樹の傍ら、乾いた芝生の上まで。
「……」
無言のまま立ち去る後姿。
最後の力をふり絞る。
「待ってくれ。俺の、バックの中に、首輪探知器が入っている。 持って、行ってくれ……」
素顔も、名も知らぬライダー。
だが、彼に託そう。
――大地の感触が心地良い。風は優しく、太陽の暖かな光が体を包む。
あぁ、これで少し眠れる……

変身を解かず、走り続ける。
探知機の示す反応まで、あと2ブロック。
射程距離まではまだ遠いが、感傷に浸っている暇も無い。
市街地を全速力で駆け抜ける。
丘へ続く直道へ出た瞬間、眼に飛び込んだのは晴天を切り取ったような青いジャケット。

――変身

その声と共に、折り重なる虚像……青は漆黒へ変貌する。

人間、いやライダーにも2種類有るのだろう。
剣崎や瀬川、彼等は光を求め、日の当たる場所にいる。
そして、俺やこのライダーの様に殺戮さえも手段とする日陰に棲まう者。
光に憧れ、戦い、そしてすべてが終わった時、俺はそこへ行けるのだろうか?
たとえ、辿り着くことが出来ないとしても、俺は勝ち残らなければならない!
願いを込め放つカリスアロー。
――剣崎、天音ちゃん、もう少し待っていてくれ。

【瀬川耕司 死亡】
残り39人
【リュウガ@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:朝】
【現在地:市街地D-5エリア】
【時間軸: 劇場版登場時期。 龍騎との一騎打ちで敗れた後。】
【状態:肉体、精神的ダメージも回復しつつある】
【装備:ファイズショット@555 】
【道具:拳銃(元は明日夢の物)・コンファインベント】
【思考・状況 】
1:もう一人の自分と融合し、最強のライダーになる。
2:眼前のライダーを殺す。
3:ジョーカーの役目を果たす

【相川 始@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:朝】
【現在地:市街地D-5】
【時間軸:本編後】
【状態:腹部切傷】
【装備:ラウズカード(ハートのA、2、5、6)・首輪探知機(レーダー)】
【道具:未確認】
【思考・状況】
1.ジェネラルシャドウを含め、このバトルファイトに参加している全員を殺す。
2.この戦いに勝ち残り、剣崎一真を蘇らせる。

【霞のジョー@仮面ライダーBLACKRX】
【1日目 現時刻:朝】
【現在地:移動中】
【時間軸:クライシス壊滅後。】
【状態:軽度のダメージ。】
【装備:サイ、スマートバックル(アクセレイガン付属】)
【道具:なし】
【思考・状況 】
1:混乱している。
2:精神支配は伊坂が死亡したため、解けた状態。
3:兄貴、どうすればいい?

【望月博士@仮面ライダーZO】
【1日目 現時刻:朝】
【現在地:市街地D-5】
【時間軸]:ドラス創造後。ドラスに恐怖する前。】
【状態:銃弾による重症】
【装備:毒薬】
【道具:コンファインベント⇒リュウガへ】
【思考・状況】
1:ドラスなら助けてくれるはず。
2:このまま死んでしまうのか?

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最終更新:2018年11月29日 17:21