ライダー・ロード

 婦警の制服で包んだ小柄な痩身を躍動させ、小沢は街を駆けていった。
 肩に届く、後ろでひとまとめにした髪を汗を飛ばしながら揺らし、気の強そうな瞳の視線を周囲に張り巡らせる。
 海岸で少女の声に応えるために別れてしまった、城戸真司を探すためだ。
 彼女は息を弾ませ、瓦礫が散らばり、激戦の跡を残すコンクリートの道を蹴り続ける。
 剥き出しになった鉄筋が飴のように融解しており、崩れた灰色の壁はまだ壊されたばかりである事を主張するように、細かい破片をパラパラと落とし続けていた。
 道に落ちている瓦礫を飛び越え、彼女は崩れた壁から続く血痕を発見した。
(乾ききっていないということは、最近できたばかりのようね。城戸君自身の物というのは……可能性が低いわ。
城戸君を追いかけるのに少し時間を置いたけど、こんな状況を生み出せるような大きな戦いがあれば私も気づくはず。
ここで戦いがあって、怪我人を発見して手当てしようと運んだというところかしら。ヨロイ元帥のこともあるしね。
まったく、あの子はあれよ。ジャーナリストといっていたけど、祭りを取材に行って御輿を担ぐタイプ。
目の前のことしか見えないんだから……)
 呆れ半分、好意半分でため息を吐く。血痕が民家まで続いている為、慎重に足を運ぶ。
 あの民家に城戸がいると確定したわけではない。この破壊の後を生み出した殺人鬼が身を潜めている可能性もある。
 彼女は窓の人影に警戒しながら、聞き耳を立てる。中からは二人の男の会話が聞こえてきた。


 ベットに眠る男が一人。そばにはボロボロのグレイのスーツがかけられている。
 綺麗に揃えられていただろう茶髪は崩れ、鍛え抜かれた上半身は包帯に身を包まれていた。
 揃えられてはいるが、太い黒の眉毛が瞼とともに震え、徐々に瞳が開かれていく。
「痛っ」
 矢車は激痛に呻いた。上半身を起こしていくと、自らの長身を包む、白いシーツが身体からずり落ちる。
「気づきましたか?」
 そばにある木の椅子に腰をかけた、漆黒の髪と太い眉、意志の強そうな瞳を持つ、白いジャンパーとスラックスで鍛えた身体を包みんだ男が、自分に声をかけてきた。
 矢車は木目調の壁紙が張られた周囲を見渡し、自分に仮面ライダーである事を思い出させてくれた、茶色の長髪を持った青年がいないことに気づいた。
「俺は南光太郎といいます。早速ですが、一つ聞かせてください。あなたはクライシスの思惑に乗って城戸君を襲ったのですか!?」
 南光太郎という名前には聞き覚えがある。荷物を受け取った暗いホールで、赤い複眼を持つ、緑と黒の身体を持つ戦士……仮面ライダーがそう呼ばれていた。
 その彼が変身を解いただろう姿の光太郎は、自分が怪我人であることも構わず、語気を強めながら両腕を掴み問いかけてきた。
 矢車は痛みに顔を顰めるが、自業自得だと内心で呟く。
「俺に仮面ライダーである事を思い出させてくれた彼……城戸君は?」
 彼は感謝の気持ちを表し、神崎につっかかっていた城戸の行方を尋ねようと光太郎に顔を向けると、驚愕の表情が眼に入った。
「あなたも……仮面ライダーなんですか?」
「『元』仮面ライダーザビーだ。クライシス皇帝の使者とかいっていた奴に負けて、変身能力を失ってしまったがな」
「クライシス!! やはりこの戦いはクライシスが裏で糸を引いていたのか!!」
 怒りに震える光太郎が、自分から手を離し、確信の叫びを上げる。
 自虐で心を満たしていた矢車は、眼前に拳を震わせる男に疑問を投げつける。
「クライシス、奴らはどういった存在なんだ?」
「奴らは、クライシス帝国は地球を支配しようと狙う連中です。神崎はおそらく、奴らと手を組んだのでしょう」
「そうか。だとしたら、あの怪物はこの殺し合いで試されている新兵器だということか……」
「新兵器?」
「俺はこの戦いが何らかの新兵器の実験だと睨んでいる。クライシス帝国が黒幕だというのなら、俺を襲ったグランザイラスという怪物の実戦テストかもしれない。
そんな奴と戦闘して、俺はザビーを失った……」
「矢車さん……」
 自分が搾り出した悲痛の声に、同情しているらしい。
 しかし、光太郎はすぐに表情を元に戻した。
「仮面ライダーともあろうあなたは、何故城戸君を襲ったのですか?」
「それは……」
 矢車の後悔を含んだ返答は、ドアを蹴破る音に中断される。
 光太郎とともに警戒の視線を玄関に向けると、ずかずかと遠慮なく家に踏み込む気の強そうな女性がいた。
 矢車は荷物を受け取ったときに呼ばれた名前は小沢澄子だったなと、思い出す。
「あなたは……」
「城戸君を襲ったですって! あんた、どういうつもり!?」
 声をかけようとする光太郎を無視し、小沢が食ってかかる。
 矢車は眼を細め、自らの愚かさに後悔しながら心の内をさらけ出し始めた。

「グランザイラスに負けた俺は力を求めた。そして、力を持つ城戸君が妬ましかったんだ。
俺はザビーを失った。なのに、彼はまだ力を持っている。くだらないことだが、その時俺は本気で思ってしまったんだ。
南君、小沢さん、そんな俺を笑ってくれ」
「何で私の名前を知っているのか気になるけど、今は置いとくわ。続けなさい」
 小沢はにこりともせず、警戒しながら先を進める。光太郎は矢車の心の吐露に、痛ましそうな表情を向けていた。
「俺は過ちを犯してしまった。だが、城戸君が俺に正しい道を示してくれた。
彼は聞いたんだ。俺も誰かを傷付ける為にライダーになったのかって。
それで思い出した。俺は誰かを守る為に、平和のハーモニーを奏でる為にライダーになったんだと!」
 矢車は息を吐き出す。小沢の瞳には自分を試すような光に満ちていた。
 だが今の矢車は光を恐れない。自分の光を示す為、小沢の瞳を見つめ返す。
「俺は二度と間違わない! たとえ変身できなくても、たとえ仮面ライダーでなくなったとしても、仲間を集めて脱出をする!!
それが、俺のパーフェクトハーモニーなんだ!!」
「素晴らしい!」
 光太郎が小沢を跳ね除け、矢車の両手を強く握る。
 その瞳に宿す、強い喜びに矢車は軽く引いてしまった。
「俺は、この戦いで素晴らしい仮面ライダーに三人も出会った! 闇を切り裂き、光をもたらす乾さん。
あなたを目覚めさせた城戸君。そして変身能力を失っても、みんなを救うことを諦めない矢車さん。
変身できないなんて関係ない。あなたは紛れもない仮面ライダーだ! ともにクライシス帝国の野望を打ち砕きましょう!!」
「ああ、俺なんかでよければ、いくらでも力を貸そう」
 興奮する光太郎に、手を握り返して答える。
 続けて、小沢の方に顔を向けると、彼女は腕を組み自分たち二人を笑顔で迎えていた。
「見た目と違っていい根性持っているじゃない。いいわ、城戸君を襲ったことはその根性に免じて許してあげる」
 矢車は己に対する苦笑を混じった表情を返す。しかし、彼はまぶしい光のような小沢の笑顔に、顔を背ける気はなかった。

「さっきからあなたは何なんですか? いくらなんでも失礼すぎませんか?」
 矢車の決意に共鳴していた光太郎が、小沢の態度を諌める。
 彼の気持ちも分からないでもない。小沢の不躾な態度は、少し前の自分なら不協和音だと判断しただろう。
「良いんだ、南君。元はといえば、城戸君を襲った俺が悪いんだ」
 だが今は違う。矢車は闇をかいま見て、自分が完璧でない事を知った。
 ゆえに彼は、自戒の念もこめて小沢の言葉を甘んじてうけている。
「あら、私は城戸君と組んでいたのよ。彼の事を心配するのは当然でしょう?」
「だからといって、あなたには遠慮がなさすぎる。矢車さんに失礼じゃないか」
「俺は構わないさ。ところで、小沢さんはこの殺し合いの事をどう思っている? 俺たちは、神崎とクライシス帝国が手を組んでいると考えているんだが……」
 正直、遠慮のなさは光太郎もいい勝負であるが、言葉にすると睨み合いが加速するだけだろうと矢車は思い、話題を変える。
 もちろん、情報を得る為でもある。神崎がクライシスと組んでいるというのは、自分の考察と光太郎の情報を合わせてだした結論だが、まだ情報が足りない。
 答えを確信に変え、脱出への糸口を探す必要がある。そのために、些細な情報でも聞き逃す気はなかった。
「……悪いとは思うけど、クライシス帝国については聞かさせてもらったわ。
神崎士郎とクライシス帝国が組んでいる可能性は低いと言わざるをえないわね」
「それはあなたがクライシス帝国を甘く見ているからだ!」
「南君、落ち着いてくれ。小沢さん、そう思う根拠は?」
 憤る光太郎を宥め、矢車は顎に手を当てる小沢に尋ねる。見たところ彼女は聡明そうだ。
「私は城戸君から神崎の目的を聞いたわ。妹を復活させる為、こんな馬鹿げた殺し合いを始めたみたい。
そんな奴が、わざわざ地球を支配するという目的の連中と手を組むのかしら? 用が済めば自分たちもろとも殺されかねないのに?」
「随分と個人的な事情だな。他に城戸君から得た情報は?」
「神崎士郎は前に似たような戦いを開催しているわ。そのときは十三人で殺し合わせたみたいだけど。
カードデッキと呼ばれる変身アイテムを使って、鏡の向こうで戦って、最後の一人は願いを叶えるらしいわ。
どういった原理で殺し合いをすると願いが叶うのかは分からないらしいけど、城戸君を除く多くのライダーは願い事の為に殺しあった。
まとめると神崎士郎は、鏡を通して細工が出来て、殺し合いを過程におけば願い事を叶える力をもてて、カードデッキを作り上げて変身能力を持たせることが出来る。
私が持っている情報は以上よ」
「ありがとう。参考になる」
「神崎士郎……恐ろしい奴がクライシスと手を組んだものだ」
 どういたしましてと言う小沢の情報を整理し、光太郎の呟きを聞きながら、矢車は考察する。
(神崎士郎は鏡を通して俺たちを監視している可能性を、小沢さんは言外に告げている。
つまり、現状で分かっている神崎の能力は、
一、鏡を通して人を見張れる。
二、殺し合いをさせることで願いを叶える力を持てる。
三、変身能力持たせられる。おそらくは神崎本人も変身できると仮定して問題ないだろう。
一に関して問題なのは、俺たちが何らかの脱出行為を働いて、それが現実になりそうになったときに首輪を爆破されるということだ。
だが地図を見る限り、鏡やそれに類するものが存在しにくい樹海もある。それに、見張るには人数が多すぎる。
他の監視方法もあると考えた方が自然だろう。盗聴機あたりか。首輪に関しての話題は筆談なりで秘密裏に動かないといけない。
小沢さんは気づいているかもしれないが、南君に話をするとややこしくなりそうだから、この話題は保留だな。
二に関しては、神崎は完璧で無いという証拠だ。能力は高いが、対処できない相手ではない
三は、脱出したとしても神崎との戦闘は避けられない。
なるべく多くの戦闘できる仲間を集めたい。だが、俺以外の変身できない人を見捨てる気はない。
そして俺たちの身に起きたことを考えると、一~三以外にも能力を持っている可能性がある。
大人数がこの島に拉致されて殺し合いを強制されて、デイバックを受け取ったときは空間移動もした。これらは神崎の能力なのか?)
「クライシスめ。時空の彼方から俺たちを弄びやがって」
 矢車の悩みを解決する一言は、光太郎の口から出てきた。
 あまりにもタイミングの良い発言に驚きながらも、光太郎に問いかける。
「南君、クライシス帝国の連中は空間移動させることが出来るのか?」
「奴らはそれくらい簡単に出来ます。異次元である怪魔界から、地球を狙っている恐ろしい連中です。
俺も、地球から奴らの戦艦に転移させられたことがあります」
 再び礼を言い、考察を進める。
(となると、やはりクライシスと神崎が手を結んでいる可能性は高い。
神崎は妹を生き返らせる為、クライシスは実験場としてつかう為、お互い利害が一致したというところか。
小沢さんは組んでいる可能性が低いといったが、神崎が自分たち兄妹以外はどうでもいいと考えている可能性はある。
城戸君を巻き込んだ殺し合いが上手くいかないから、クライシスと組んで大規模な殺し合いを計画したとしたら?
そのために管理する技術、場所を提供してもらったとしたら?)
 矢車の疑問は膨れ上がり、答えを求める。だが全てを解決する情報はまだない。
 答えが出そうで出ない、もどかしい思いを抱え懊悩する。
「私に対する質問は終わった? そろそろ城戸君の居場所を教えてくれない?」
 小沢の言葉にハッとし、光太郎に顔を向ける。
「南君、俺も知りたい。城戸君は今どこにいるんだ?」
「城戸君は少女の放送で告げられた、仮面ライダーファイズ、乾さんと一緒にF7エリアに向かっています。
そこに知り合いがいたみたいです」
 矢車は神崎に殴りかかった青年を思い浮かべ、危なっかしいコンビだなと感想を抱く。
 小沢がデイバックを掴み、踵を返すのが見えた。
 その様子を見て、光太郎が声をかける。
「小沢さん、どこに行くんですか?」
「F7エリアよ。さっき突っかかったことは謝るわ。どこかで出会いましょう」
「待ってください。危険すぎます!」
「大丈夫よ。気合と根性で生き延びて見せるから」
 光太郎が呆れているのが見える。
 矢車は彼女の言葉に笑顔を浮かべ、傷ついた身体を起こそうとする。
「矢車さん! あなたは重症なんだ! 無理をしないでくれ」
「そうよ、大人しく寝ていなさい」
 珍しく、馬の合わない二人が同じ意見を言う。
 この二人は似たもの同士だと感想を抱いた。
「そういうわけにはいかないさ。小沢さんが気合と根性で何とかするなら、元仮面ライダーの俺も踏ん張らないとな」
 矢車は震える手で包帯が巻かれただけの身体に、スーツを引っ掛ける。
 続けてデイバックを取ろうとするが、膝が折れ、取り落とす。デイバックの中からは壊れたザビーゼクターがこぼれ落ちた。
 小沢がため息をつき、光太郎に視線を向ける。
「南君、彼をベットに戻してちょうだい」
「言われなくてもそのつもりです」
 矢車は無理矢理戻そうとする光太郎に抵抗する。
 自分が誓った、誰も見捨てないという信念を実行する為だ。
「小沢さんを置いてはいけない。外にはグランザイラスがいるかもしれないんだ。
俺たち仮面ライダーは人を見捨ててはいけない。違うか? 南君」
「その通りですけど……」
「まずは自分の身体を優先したほうがいいわ。そうでないと救えるものも救えないわよ」
 矢車は小沢の言いたいことは理解している。だが、こんな危険地帯を一人で行かせるわけにはいかない。
 言うことを聞こうとしない自分の様子に、小沢は呆れたようなため息を吐いた。
「分かったわ。あなたの体調が戻るまで、出発は保留するから、今は寝ていなさい」
「だけど小沢さんも南君もしなければならないことがあるんだろう? こんなところで足止めさせるわけには……」
「あなたの体調が優先よ」
「矢車さんの体調が優先です」
 まったく同時に二人が言い、自分を咎めた視線で射る。
 やはり二人は似たもの同士だと内心で笑い、限界が来て光太郎にもたれかかる。
 そのまま意識を失い、静かな寝息を立てた。
 すーすーと静かな寝息とともに、時計の秒針が刻まれる音が響き、静寂がその空間を支配した。


(本当、城戸君といい、南君といい、矢車さんといい、仮面ライダーってのはみんな純粋ね)
 今まで自分がであった仮面ライダーの人なりを考える。光太郎は多少馬が合わないが、善人であることは理解していた。
 彼ら全てが、彼女の知るもっとも純粋な人間、氷川誠に重なり微笑を生ませる。
 先程の少女の訴えを思い出す。彼女が出会った仮面ライダーも、彼らのように純粋だったのだろう。
 彼らに託し、希望を見出すのも分かる。だが、同時にその純粋さは弱点にもなる。
 純粋さを逆手に取り、彼らをコントロールして殺し合いを加速させようよ考える、悪質な連中は必ずいる。
 自分の役目は決まった。彼らを騙す連中を見分け、間違った方向へと進ませない。
 そのために城戸との合流は遅れる。彼の無事を祈りつつ眠る矢車を静かに見つめる。
 ふと、矢車のデイバックからこぼれ落ちた壊れた蜂型メカ、ザビーゼクターを手に取る。
 その様子にクライシスめ、許さんと、矢車に気遣ってか小声で繰り返す光太郎は気づいていない。
 ザビーゼクターを点検すると、僅かに駆動音が聞こえてきた。
(もしかして……まだ生きている?)
 誰かに握りつぶされたらしく手形が残っている。外郭が剥がれ落ちていて、回路も寸断されている。
 だから、聞こえた起動音は本当に微かで、すぐにザビーゼクターの核は沈黙していった。
 それはまるで、小沢に自分がまだ戦えると示しているようだった。
(なかなか根性があるじゃない。いいわ、難しいけど、設備とパーツさえあればあなたを蘇らせることができる。
後は私に任せて、眠っていなさい)
 ザビーゼクターを復活させることを誓い、自分のデイバックに収める。
(とりあえず設備らしき場所の探索ね。首輪を解除するときにも使えるはず。
まあ、なかったらそのときはそのときよ。後首輪の現物が欲しいわ。
ひとまず分解して、仕組みを調べないとね。そのときは鏡、もしくは反射する物体を排除して、盗聴機を警戒しないと。
……けど、鏡から監視できなくなって、盗聴機からの情報が遮断されたら不審に思って首輪を爆発させるか、何らかの手を打つはずだわ。
まったく、面倒なことをしてくれるわね。うまくやる以外方法がないじゃない)
 難事に気が重くなるが、闘志は一向に衰えなかった。
 神崎士郎を殴り、城戸を含めた仲間とともに焼肉を食べに向かう事を決めたのだ。
 そして、アンノウンとの戦闘という修羅場を潜り抜けている彼女の決意が揺らぐはずもない。
(待っていなさい、神崎士郎。ただの人間が一番怖い事を、思い知らしてあげるわ)
 彼女は小沢澄子。常に立ち向かい続け、アギトとG3、彼女の世界の仮面ライダーを助けた人間だった。


(ここはどこだ?)
 矢車は、暗闇が支配する広大な空間に一人佇んでいた。
 周囲に人影はいない。不思議に思い周りを見渡すと、一人の男が近付いてきた。
「誰だ!!」
 姿を確認できるところまで男が近付き、矢車は驚愕する。
「いいよなー、お前は。仮面ライダーとして仲間ができて。どうせ、俺なんか……」
 黒い、右袖のちぎられたボロボロのロングコートでたくましい肉体を包んだ男が、拍車のついたブーツで足音を立てながら現れた。
 その顔は、矢車想と同じ顔だ。しかし、瞳には全てを嫉妬し、光を疎い世界を敵に回している闇が宿っている。
「何か用かな?」
「ふん、いずれお前もこうなる。俺たちみたいのが光を求めたって、しっぺ返しを食らうだけさ。
今までの出来事を考えろ。仲間を集めようとして、出会った最初の奴はワームだ。次は殺戮者。
そして、グランザイラスという化け物。今は仲間に恵まれたが、いずれ痛い目に遭う。
所詮お前は、地獄の住人となる以外に道はない」
 彼の言葉に思い出すのは、城戸真司を襲った出来事。あの時自分は、力以外必要としなかった。
 あのときの狂おしい渇望。対峙する自分はそのときの自分だと、理解した。
 だから、眼を逸らさず気合を入れ、視線をぶつける。
 たとえこの出来事が、夢の中だとしても、乗り越えなければならない。
「しっぺ返しか。構わないさ。たとえ何度も壁にぶつかろうとも、俺は……」
 暗闇が静寂に包まれ、時が止まるような錯覚を生み出す。
 聞こえるのは自分の呼吸音のみ。夢の中なのに不思議だと思いながら、腹に力をこめる。
「二度と仮面ライダーである事を捨てはしない。泥の中を這いずり待っても、光を手放さない。
俺が救う。シャドウの隊長じゃない。仮面ライダーだから、そう決めた」
 言い放ち、矢車は自分を跳ね除け、道を進む。暗闇を恐れる気持ちはない。
 彼の心には、何よりも輝いている光があったからだ。
「ふん、いずれ分かる。いずれ……な」
「本当はザビーに……仮面ライダーに未練があるんだろ? 俺だから分かる」
 皮肉の笑みを浮かべる自分を背に彼は駆ける。
 どんな地獄を見せられようとも、彼のフォルテッシモな決意は変わらない。
 パーフェクトハーモニーを、全ての仮面ライダーに響かせる。壮大な夢は、矢車を強くさせていった。
【小沢澄子@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地G-5】
[時間軸]:G3-X完成辺り。
[状態]:多少の打撲と火傷。相変わらず沈着冷静。
[装備]:精巧に出来たモデルガン。
[道具]:カイザポインター、GX-05ケルベロス(但し、GX弾は消費)、壊れたザビーゼクター。
[思考・状況]
1:矢車の回復を待つ。
2:真司と乾巧(草加)に追いつく。
3:乾巧(草加)の人格を自分の目で確かめる。
4:ザビーゼクターを修理する(パーツと設備、時間さえあればザビーゼクターを修理可能だと考えています)
5:脱出の方法を考える、首輪の解析(道具と仕組みさえ分かれば分解出来ると考えています)
6:氷川誠、津上翔一と合流する。
[備考]
クライシスと神崎士郎が手を組んでいる可能性は低いと考えています。
まだ乾(草加)の話ででていた警官の制服の男(氷川)の情報は得ていません。

【南光太郎@仮面ライダーBLACK RX】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地G-5】
[時間軸]:第1話、RXへのパワーアップ直後】
[状態]:健康。
[装備]:リボルケイン
[道具]:カラオケマイク(電池切れ)、ハイパーゼクター
[思考・状況]
1:矢車の回復を待つ。
2:矢車も目覚めあと、真司と乾巧(草加)に追いつく。
3:矢車想を再び仮面ライダーザビーへと戻す手段を探す。
4:シャドームーンを捜す。
5:打倒主催。その後、元の世界に戻ってクライシス帝国を倒す。
[備考]
黒幕はクライシス帝国、神崎はその手の者であると勝手に確信しています。
ガタックゼクターをクライシス帝国の罠だと勝手に確信しています。
草加を巧、ファイズだと思い込んで、全面的に信頼。

【矢車想@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地G-5】
[時間軸]:8話 ザビー資格者
[状態]:重症。全身打撲&火傷&刺傷(急所は避けていました。大出血もありません)
    睡眠中。
[装備]:ライダーブレス(ザビーゼクター破壊)
[道具]:無し
[思考・状況]
1:睡眠中。以下は睡眠前の思考。
2:仲間を集めてパーフェクトハーモニーで脱出!
3:乾巧(草加)と真司に追いつく。
[備考]
矢車はBOARDという名前に嫌疑(ワームの組織では?)
カブティックゼクターは、どのような形でかは分かりませんが島に存在します(不明支給品?)
クライシスと神崎士郎が利害の一致で手を組んでいる可能性が高いと考えています。
[全員の共通事項]
全員異世界の人間だとは思っていません。
名簿の人間は同一世界から来たと思っています。
ワーム、アンノウンについてはまだ話し合っていません。
小沢が求める設備はD-6エリアの研究所が有力ですが、他に存在するかは後の書き手さんに任せます。

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最終更新:2018年11月29日 17:26