joker attack
(何時までもシャドームーンを抱えて、歩いていられない。ここらで休まないとな……)
結城丈二はビルが立ち並ぶ中にあるホテルのロビーに入り、ソファーにシャドームーンを寝かせた。
そして自分も隣に座り込み休憩がてら、先程聞いた麻生とヒビキの呼び掛けを思い起こす。
(あの二人か風見さんや城と合流できれば、わざわざドクトルGを利用する必要も無いんだが……)
「動くな」
丈二の首筋に、背後から鋭く尖った石が当てられた。
(こいつ何時の間に!?周囲への警戒は怠っていなかった筈だ!)
丈二は歴戦を誇る自分が、容易く背後を取られた事に驚く。
「答えろ、お前と隣で寝ている者の名前は?」
「俺は
結城丈二、そいつはシャドームーンだ」
「お前の今の行動指針はなんだ?」
(下手な嘘は付かない方がいいな、もっとも氷川くん達の事を喋る訳にもいかないが……)
「首輪を外せる技術や能力を、持った者を捜している」
「何の為だ?」
「無論、この殺し合いを壊して全員が生き残る為だ」
「では外せる者を捜しても、居なかった場合はどうする?」
「……何?」
「質問をしていいのは俺だけだ」
聞き返そうとした丈二の首筋に、石の刃が強く押し当てられる。
「………そうだな、それならば自分で外す方法を考えるしかない」
「それが不可能だから、解除法を持つ者を捜してるんじゃないのか?」
「可能かどうかは問題じゃない。問題は自分の正義に背かないかだ」
背後の男から質問が返ってこないが、丈二は話を続ける。
「俺はかつて過ちを犯した、自分で考えず他の誰かを妄信し悪事に手を貸した。
今更何をしようと自分の罪が許されるとは思わない、だからこそ俺は二度と正義を裏切る訳にはいかない。
誰かが悪の犠牲になる事を、誰かがこれ以上この殺し合いの犠牲になるのを許す訳にはいかない」
「………脅す様な真似をして、悪かったな」
首筋から、石の感触が消える。
「お前が殺し合いに乗っていないのは、怪我をしているシャドームーンを抱えていた事から大体見当が付いていた。
だが念の為に質問させて貰った、気を悪くするな」
言葉とは裏腹に悪びれた様子も無く、背後から端正な顔立ちをした二十歳位の男が前に回り込んで来た。
「確かにお互いにとって、安全な接触方法だったかもな。君も殺し合いには乗っていないようだな、天道くん?」
「ほう……俺の事を憶えていたか。だが質問は愚かだな、俺の往く道は天の道だこんな殺し合いに乗る訳が無い。
それよりお前、尾行されているぞ」
「何!?」
「大声を出すな。そいつはこのホテルの向かいのビルの3階に居る、気付いていない振りをしろ」
天道はシャドームーンの怪我の様子を見ながら、丈二に注意を促す。
「……そいつは斧と盾を持った男じゃなかったか?」
「どうやらそいつを知っているみたいだな、詳しく事情を聞かせろ。このシャドームーンについてもな」
◇ ◆ ◇
7並べと呼ばれるトランプを使ったゲームでは、各々のカードは決まった位置にしか置く事が出来ない。
だがその中で唯一あらゆる位置に置く事が出来る、例外的なカード――ジョーカーが存在する。
そしてアンデッドにも同じ名を持ち、あらゆるアンデッドの姿に変身出来る例外的な存在がいる。
市街地を散策する
相川始はベルトのバックルにハートの5を通すが、何の変化も起こらない。
(くっ……これも神崎士郎の仕業か!?)
本来ジョーカーである始は、ラウズカードを使えばそれに封印されたアンデッドに変身出来る。
だがこの戦いが始まって以来、始はハートのAと2以外のカードではアンデッドに変身出来ないでいた。
(人質を取ってまで殺し合いをさせておいて、能力の制限だと?)
ハートのAを通しても反応は無く、始の表情が獰猛に歪む。
(まだ時間を待たなければカリスにも変身変身出来ない以上、今敵に会えばジョーカーの力を使うしかない)
手に持つ首輪探知機に、3つ……否4つの反応がある。
(固まった3つに少し離れた1つか、離れた1つは罠くさいな。
………どいつから仕掛けても同じ事か、全員を殺す事には変わりないんだからな……)
人間
相川始の姿が、黒い怪物に変貌を遂げる。
◇ ◆ ◇
「ではドクトルGとシャドームーンは敵という事だな」
「いや、シャドームーンはこちらからしかけなければ何もしてこないのだから、敵という訳では……」
「お前の仲間である
南光太郎を狙い、氷川達を見殺しにした奴が敵ではなくて何だというんだ」
「……それは」
近くまで飛んできたガタックゼクターが、天道の肩をつつく。
「分かっている。そう急かすな」
「天道くん、それは?」
「気にするな、こいつは味方だ。悪いが俺はもう行かせてもらう」
「待ってくれ、俺も君に聞きたい事がある。君はカード型の何かを装填する箱型の機械に心当たりはないか」
「無いな。それがどうかしたのか?」
「それには科学者である、俺も知らない技術が使われていた。それを解析出来れば首輪を外す糸口になるかもしれない……」
「伏せろ!!」
天道が丈二をソファーに押し倒す。と同時に天道の頭上を緑に光る刃が通過し、ホテルの壁を破壊した。
「ヴァァァァァァッ!!」
先程の攻撃で破壊された玄関の自動ドアから、黒い全身に緑の顔を持つ怪物が飛び込んでくる。
「変身!」
ソファーから立ち上がった天道が、カブトゼクターをベルトに装着する。
『HENSHIN』
六面体の装甲が全身を覆い、カブト・マスクドフォームを形作った。
次の瞬間に懐に飛び込んできた怪物の緑の刃で、腹から切り上げられる。
「グッ!」
カブトが体勢を立て直す前に、怪物は緑の刃を胸に切り下ろす。
(速い!反撃をする間もない!)
そこから更にカブトの顔目掛け、振り上げる。
「キャストオフ!」
『Cast Off』
カブトの装甲が、怪物ごとはじけ飛ぶ。
『Change Beetle』
空中で一回転して、怪物が着地した。
「クロックアップ!」
『Clock Up』
カブトがその足を払い、怪物を倒す。
『One』
立ち上がろうとする怪物の、顔面を蹴る。
『Two』
大きく振り回そうとする腕を掻い潜って、怪物の腹を殴る。
『Three』
前にのめりこもうとする怪物の顎を、掌で跳ね上げる。
「ライダー、キック。」
『Rider Kick』
カブトの廻し蹴りが、怪物に打ち込まれた。
「グァッ!!」
カブトも同時に衝撃を受けて、壁まで吹き飛ばされる。
『Clock Over』
◇ ◆ ◇
ジョーカーはかろうじて残った、始の意識で思考する。
(やはりな、どれだけ加速しようと決めの一撃を放つ際は動きが止まる)
始は腹を押さえ、膝をついた。
(来ると分かっていても、ジョーカーの身体にこれだけのダメージを与えるはな
だが不意に壁まで殴り飛ばされたあいつも、相応のダメージを負っている筈だ)
壁に叩きつけられたカブトは、まだ立てないでいる。
始は身体を捻り、刃に力を溜める。
(これで、終わりだ!)
「マシンガンアーム!」
ダダダダッ!ダダダダッ!
玄関の外から、ライダーマンがマシンガンで始を銃撃した。
◇ ◆ ◇
(何とか変身が間に合ったか)
銃撃を受けながら、始は光の刃を飛ばしてくる。
横に飛んでそれをかわし、ホテルの向かいにあるビルに走り出す。
(まともに戦ったら、俺ではとてもあいつには敵わない。
だからといって天道くん放って逃げる訳にもいかない。ならば取るべき手段は一つだ)
ライダーマンがビルの中に駆け込んだ時には、始は既にホテルから飛び出していた。
3階まで階段を駆け上り下を見ると、2階の踊り場に始は居る。
目的の部屋の前で、ライダーマンの背中を光の刃が掠める。
部屋の中に飛び込み、立ちすくむ男に叫ぶ。
「助けてくれ、ドクトルG!」
◇ ◆ ◇
始が入った部屋には、自分を銃撃してきたライダーマンともう一人居た。
「
結城丈二、貴様……」
もう一人の男が、ライダーマンを睨み付ける。
「ドクトルG、お前の力ならあいつを倒せる!」
ライダーマンは構わず、ドクトルGに話しかける。
(二人か、ならばより戦力の大きい方に仕掛けるまでだ)
「ヴァァァァァッ!!」
始はドクトルGに斬りかかるも、楯によって防がれた。
「仕方あるまい!」
楯の陰から白い液体が吹きで、カニレーザーが姿を表す。
「アーバラー」
カニレーザーは楯で始を押しのけ、レーザーで始の胴体を撃つ。
「グゥァァァァァッ!!」
(ダメージが大きすぎる、今の状態でこのドクトルGの相手は出来ない)
始は残った力を振り絞り、窓から外へと飛び出した。
◇ ◆ ◇
ライダーマンが窓から外を見た時には、既に始の姿は見えなくなっていた。
(逃げたか……あれだけ負傷をしていたから、天道くんやシャドームーン所へは行かないと思うが………)
ライダーマンの首筋に、カニレーザーの斧が当てられる。
「
結城丈二、どういうつもりだ?」
「どうも何も、仲間に助けを求めたのが問題なのか?」
「ふざけるな!!」
斧に力が入る。
「やはりお前は裏切っていたようだな」
「一体何の話だ!?とにかく落ち着いて俺の話を聞いてくれ」
「今更何を聞いた所で……」
斧を振りかぶる。
「お前が裏切った事実は変わらん」
「デストロンの幹部ドクトルGも、つまらない奴なんだな」
ドアの前に立っていた男が、話しかけてきた。
「お前は何者だ」
男は眉間の前で、天を指す。
「俺は天の道を往き総てを司る男、
天道総司 」
「お前も一緒に、死にたいらしいな」
「俺達を殺して、お前一人で勝ち残るつもりか?いやその前に……」
天道はベルトを腰に巻き、カブトゼクターをかざす。
「俺と結城を、同時に相手にするつもりか?」
ライダーマンがマシンガンアームをドクトルGに向ける。
「お前等……」
「勘違いするな、俺は手を組もうと言ってるんだ」
「信用できると思うか?」
「お婆ちゃんが言っていた。毒のある食材でも食えるように料理出来てこそ、一流の料理人だとな。
どうせこの殺し合いの中で信用できる者など居はしない。ならばそれを前提に組むしかあるまい。
それともデストロンのドクトルGは、信頼の置けない者は使えない程度の器という事か?」
「ふっ、言いたい事はそれだけか?」
ドクトルGは斧を振り下ろし
「……!!?」
ライダーマンの頭上で止める。
「…………いいだろう、だが少しでも不審に思えば今度こそお前等を殺す」
◇ ◆ ◇
始は先程逃げ去ったビルから、隣にある立体駐車場の中に逃げ込んだ。
不意に人間の姿に戻ると同時に、その場に倒れ込む。
(……ぐっ、……ジョーカーの力を使っても、一人も殺せないとはな……)
起き上がり、探知機を見る。
(あいつらは追っては来ないか……ならばここは回復に務めるしかない)
始は奥歯を噛み締め、湧き上がる焦燥に耐える。
(今焦って動く訳にはいかない……俺はこんな所で簡単に死ぬ訳にはいかないんだ!)
道化は身を沈め、密かにその牙を癒し休めた。
◇ ◆ ◇
(やれやれ急ぎの用事があるのに、面倒な事になった)
天道が偶然通りすがった丈二に接触したのは、情報収集をする為だけであって
それが済めばすぐにでも、ガタックゼクターを追うつもりだった。
(だが結城は殺し合いからの脱出を目的とする科学者。脱出の為の貴重な、あるいは唯一無二の人材。見殺しにする訳にはいかない)
しかしガタックゼクターがここにあるという事は、加賀美の身に何かあったという事。そちらも放って置く訳にはいかない。
(どいつも世話が焼ける。まあいい、他の者ならともかく俺ならばこの状況からでも両方を助ける事は可能だ。何しろ俺は―――)
天道が微かに―――そして不敵に笑う。
(天の道を往き総てを司る男だからな)
【相川 始@仮面ライダー剣】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地F-6】
[時間軸]:本編後。
[状態]:全身に負傷。腹部と胸部に切傷。極度の疲労。
[装備]:ラウズカード(ハートのA、2、5、6)。
[道具]:未確認。首輪探知機(レーダー)。
[思考・状況]
1:回復を待ち、その間戦闘を避ける。
2:剣崎を優勝させる。
3:ジェネラルシャドウを含め、このバトルファイトに参加している全員を殺す。
※
相川始は制限に拠り、ハートのA、2以外のラウズカードでは変身出来ません。
【
結城丈二@仮面ライダーV3】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地F-6】
【時間軸:仮面ライダーBLACLRX終了後】
【状態:健康。】
【装備:カセットアーム】
【道具:トランシーバー(現在地から3エリア分まで相互通信可能)、名簿を除くディパックの中身一式】
【思考・状況】
1:氷川くん達を捜し、合流する。
2:シャドームーンの扱いを思案中。
3:首輪を外すために必要な情報をもっている人物と首輪と同様のテクノロジーをもつ道具を探す。
4:同一時間軸から連れて来られたわけではないことを理解。ドクトルGを利用することを模索。
5:ヨロイ元帥を倒す。
【シャドームーン@仮面ライダーBLACK RX】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地F-6】
[時間軸]:RX27話以降
[状態]:気絶。右腕のエルボートリガー破損。腹にドリルによる刺し傷。
[装備]:シャドーセイバー
[道具]:なし
[思考・状況]
1:気絶中
【
天道総司@仮面ライダーカブト】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地F-6】
【時間軸】ハイパーゼクター入手後
【状態】中度の疲労、 全身に軽い打撲。
【装備】カブトゼクター&ベルト
【道具】食料など一式、
【思考・状況】
1:結城と共にドクトルGから逃げ出し、ガタックゼクターを追う。
2:ひよりの救出。
3:一刻も早く、乾、あきらと合流する。
【ドクトルG@仮面ライダーV3】
【1日目 現時刻:午前】
【現在地:市街地F-6】
【時間軸:死亡後】
【状態:軽症】
【装備:斧、盾】
【道具:トランシーバー(現在地から3エリア分まで相互通信可能)】
【思考・状況】
1:
結城丈二と
天道総司に不信感。裏切るような行動を取れば殺す。
2:デーストロンのため、絶対に勝ち抜く。
3:ヨロイ元帥を探す。
※ドクトルGは
結城丈二に不信感は持っていますが、デストロンでないとは思っていません。
最終更新:2018年11月29日 17:29