波打ち際を歩く、白と金の人影。
 二人はひたすらに、歩いていた。
 会話は無い。一人は必要としてないように見え、一人は話は終わったと言わんばかりに、悠然と歩いていた。
 金の体躯を持つ男は、メタリックな輝きで日を反射し、黒のマントを右腕の杖とともに揺らしながら砂に足跡を刻んでいく。
 潮の香りが鼻孔を刺激しながら、将軍と呼ばれた男は思考する。
 ジャークの目的、脱出の為にだ。
 この首輪を外すには、専門の知識を持つ者が必要である。
 こんな殺し合いを主催するなら、普通はそんな知識を持つ人物を参加させないだろう。
 だが、ジャークの知っている、首輪を外せるであろう知識を持つ人物が、名簿には記載されていた。
(ライダーマン、結城丈二。奴にこの首輪の現物を渡せば、余の首輪も造作なく外せるであろう。しかし、それは罠か?)
 そう疑うのも当然である。先程思考したように、そういった技術を持つ者を混ぜているのは罠以外ありえない。
 自分たちを生贄にして、何らかの事をたくらんでいるのは明白だ。だが、神崎士郎とやらの目的は不明である。
 せめて、神崎士郎の目的が分かれば、首輪を解体できそうな技術者を混ぜた事を推理できるかもしれない。
 そこで、ふと思う。
(神崎士郎……奴の名を呼んでいた奴がいたな。なら、このゲームに神崎士郎の知人がいる。
この首輪があること自体興味がないのか、それとも首輪がなくなるような事態に絶対対応ができるのか、確信する必要がある。
余が探すのは、確か……城戸真司といったな。あの時デイバックとともに消えた人間は。
その後だ。結城丈二に協力させねばならぬのは)
 もっとも、仮面ライダーと組むなど論外だ。
 ボスガンとガテゾーンを殺した南光太郎の仲間などと組むことなど、願い下げである。
 洗脳か、人質か。どうにかして結城丈二を支配下に置くことができないか、ジャークは頭を捻る。
 洗脳する為の道具が支給されているかもしれないが、残念ながら手元のアイテムはそういった類ではない。
(なら、人質しかあるまい。無力そうな人間を一人、見繕わなくてはな)
 将軍と呼ばれた自分を、犬のように拘束する忌々しい首輪に視線を落とす。
 南光太郎に対する憎悪を、神崎士郎に対しても抱く。
(待っておれ。今にその場へたどり着き、そっ首を叩き斬ってくれるわ!)
 歩みが強くなり、小山を形成する砂丘を踏み砕く。
 細かな砂塵が足の周りを少し舞い上がり、ジャーク将軍のブーツに積もる。
 右、左と行程を繰り返し、前へと進む。
 その胸に、怒りと矜持を乗せ、風を切って進み続ける。


 ガライは、鼻を刺激する潮の香りを生まれて初めて意識した。
 他にすることが無いということもあるが、彼に芽生え始めた感情が、退屈という感覚を与えていた。
 だからといって何か行動を起こすわけではない。
 足を機械的に動かし、脱出に向けて進むだけだ。
 生き残ることが優先なら、ジャーク将軍とともに行くのが生き残る確率は高い。
 決して、アギトやズーのように信頼できる相手ではないが、利害は一致している。
 ジャーク将軍も同じ考えなのだろう。
 そこまで考え、疑問を持つ。
(信頼……何だ? それは? 確かにアギトやズーが俺を裏切る可能性は低い。
だが、それはフォッグマザーのもと生まれたゆえの摂理。信頼など不確かな揺らぎなどとは、関係ない)
 己の考えを恥じるかのように、砂を強く踏み砕く。
 砂が靴にまで入り、じゃりじゃりした感覚が足に宿る。
 構わず進むが、ふとかさかさと動くヤドカリが視界に入る。
 蹴ると、数メートルを移動し殻に篭った。
 その様子を不快に思い、踏み潰す。
 抵抗も無く簡単につぶれる感覚を足の裏に感じ、右頬が吊りあがる。
 胸に湧き上がるどす黒い感覚に、ヨロイ元帥が相手だったらもっとよかったとガライは思う。
(まあいい。虫けらはまだ多くいる。そいつらを壊す機会など、山ほどある。なら、俺は生き残り、フォッグ・マザーへの生贄を選定すればいい。
だが、神崎士郎。キサマはただでは壊さん。俺を贄に選んだ事を後悔させながら壊してやる!)
 業火のように激しい怒りが彼の胸を一瞬支配する。
 自らの感情の芽生えに気づかず、異星の白い王子は砂の小山を壊して進み続ける。


 やがて二人は目的のH10エリアへとたどり着いた。
 周りを警戒しながら進んだためか、予定より時間を食ってしまった。
 最早太陽は真上に輝き、二回目の放送が近くなっている。
 ジャークは男の死体を無視して、放置されたデイバックを確認する。
 男の武器であろう、刃のついたギターはガライに渡す。
 ガライの剣技はヨロイ元帥を相手に充分見せてもらっている。
 ガライの持っていた剣と、支給された剣があれば充分といえるが、持てる武器は多いに越したことがないだろう。
 やがて、デイバックの中より銀のブレスレットが出てくる。
 説明書によると、コーカサスという強化服を纏う為の道具のようだ。
 しかし、そのためには道具に選ばれる必要があるらしい。
 試しにジャークとガライが着けてみるが、特に反応は無かった。
 これから仲間に引き込めそうな奴に使える者がいれば戦力になるだろうと判断し、自分のデイバックへと収めた。
 やがて、二回目の放送が始まる。

 ジャークは知らない。
 己が手にした変身道具は、脱出の鍵となるアイテムの一つである事を。
【ガライ@仮面ライダーJ】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:海岸H-10】
[時間軸]:本編開始前。
[状態]:火傷(中程度。再生中)
[装備]:剣。装甲声刃。音撃弦・烈斬。
[道具]:ラウズカード(スペードのJとQ、ダイヤの3とQ、クラブの3と4)
[思考・状況]
1:どんな手を使っても生き残る。
2:ジャーク将軍と協力して、首輪を解除する。
3:ついでに生贄を手に入れる。
4:神崎士郎は残酷に壊す。

【ジャーク将軍@仮面ライダーBLACK RX】
【1日目 現時刻:昼】
【現在地:海岸H-10】
[時間軸]:ジャークミドラに改造後。
[状態]:健康。
[装備]:杖、変身後は大刀。
[道具]:不明(グランザイラスにもらったもの。中身は確認済み)ネタばれ地図。首輪。ライダーブレス(コーカサス)
    変身鬼弦・音錠。
[思考・状況]
1:首輪の解析と勝ち残るための仲間探し。とりあえず無駄な戦いは避け、Gトレーラーへ。
2:神崎士郎を殺し、脱出する。
3:RXを殺す。
4:城戸真司を探し、神崎の目的を探る。
5:ライダーマン、結城丈二を支配下に置く。手段は問わない。

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最終更新:2018年11月29日 17:30