Blue◆i1BeVxv./w



 暗い闇の中から彼が目覚めると、無数の人間たちの姿がそこにはあった。
 だが、別に驚きはしない。それより優先すべきことがあるからだ。
「メガブルゥゥゥゥゥッ」
 低く震えるような声に、近くの人間が何事かと訝しげな視線を向けるが、そんなことはどうでもいい。
 彼の心を占めているのはただ一人の人物への憎しみ。彼はただ一人の人物を殺すためだけに生まれてきた。
 メガブルー。彼が殺すべき獲物の名前。
「一度とはいえ、オレを倒すなんて、やってくれるねぇ。でも、これで楽しみが増えたよ~。
 もう同じ手は通用しない。今度はオレが殺る番だ。フヒャハハハハッ」
 そして、彼の名はネジブルー。ネジレジアの幹部、ドクターヒネラーがメガレンジャー打倒のために作られた遺伝子生命体。
 ネジブルーは彼にとって、最も間近な記憶を引き出す。
 メガブルーの作戦に嵌り、他のネジレンジャーから孤立させられた彼はメガブルーとメガシルバーの連携攻撃に敗れた。
 ネジレンジャーのスーツを脱ぎ捨て、ネジビザールとして反撃を試みたものの、結果は変わらず、彼の意識は闇に落ちることになる。
 倒すべき敵に逆に破れた彼の憎しみと悔しさは限りなく深い。
 だが、それは今の彼にとっては絶妙なエッセンスだ。
 憎ければ憎いほど、悔しければ悔しいほど、メガブルーへの復讐がそれだけ甘露なものになる。
 ネジブルーの頭の中はメガブルーをいかに追い詰め、そして、どう殺すかでいっぱいになっていた。
 形容すれば、所謂あっちの世界に行っている状態だった。
ネジブルー
「メガブルーを追い詰めたら、まずは仮面を割らなきゃね。素顔も確認したいし、悔しがる顔をしっかり見なきゃ。
 そして、その後は彼の身体を少しずつ、切り刻んでいくんだ。少しずつ、少しずつ。
 まずは手からにしようかな。爪を剥いで、皮膚をむいて、筋の一本一本を奴の眼の前で切り取っていくんだ。
 メガブルーはどんな顔をするかな?どんな悲鳴を聞かせてくれるかな?簡単には殺さないよぉ~ぅ」
「ふぅ、ネジブルー!」
 その大声でようやくネジブルーの意識があっちの世界からこっちの世界へ戻ってくる。
 気がつけば、金髪の男が吐息のかかる程の距離で、ネジブルーの顔を凝視していた。
「誰だい、お前?」
「やれやれ、まったく聞いていなかったのですか?大した集中力です」
 男はロンと名乗り、状況の説明を始める。曰く、最後のひとりになるまで戦え。
「面白そうだけど、オレはメガブルーにしか興味がないんだ。他を当たってもらえないかな?」
「そうはいきません。あなたは選ばれた戦士の一人です。
 拒否するというなら、あなたの首につけられているその首輪。それを使い、またあなたには死んでいただくことになります」
 ネジブルーは自分の首を確認する。そういえば、いつの間に着けられたのか、自分の首には首輪が填まっていた。
「それに……」
 ロンはネジブルーにそっと耳打ちする。
「なるほどねぇ。それはいいよ」
 ネジブルーは笑うと、適当なディパックを取り、門を潜り抜けた。


 ネジブルーが飛ばされた先は、都市エリアE‐5のとあるビルの一室だった。
 部屋には何故か1台の白いバイクが停まっている。
「~♪」
 ネジブルーは鼻歌を歌いながら、ディパックの中身の確認を始める。
 あんパンが6個。1リットルのペットボトルが2つ。地図にメモ帳。ボールペンに時計。
 魚の尾っぽのような形のメガホンに、おそらく眼の前のバイクのキー。
 そして、参加者の名簿。
 ネジブルーは名簿を広げると、ひとりひとり名前を指でなぞっていく。
 まるでいとしい恋人を愛でるように。
「この中に、この中にいるんだね、メガブルー。必ず、必ず、見つけ出してあげるよ」
 彼にロンは囁いた。

――参加者の中にメガブルーとなる者がいます――

 ネジブルーがゲームに乗るには充分過ぎる理由だった。


【名前】ネジブルー@電磁戦隊メガレンジャー
[時間軸]:41話(ネジビザールとして敗れた)後
[現在地]:E-5都市 1日目 深夜
[状態]:健康。精神高揚。
[装備]:ネジトマホーク
[道具]:ソニックメガホン@忍風戦隊ハリケンジャー、マシンハスキー@特捜戦隊デカレンジャー
[思考]
第一行動方針:メガブルーを探し出し、殺す。

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最終更新:2018年02月11日 00:56