冒険者達、西へ ◆Z5wk4/jklI



梢の隙間から、僅かに月明かりが漏れる以外は、暗闇に閉ざされた森の中を浅見竜也は一人歩く。
仲間と会話を交わす事さえほとんど叶わずに、追い立てられるように門をくぐった彼は混乱していた。
あの時、四人を未来に帰還させたはずだった。だが、あの広間にはドモンシオンの姿が確かにあった。
そして、二人がいるにも関わらず、姿の見えなかったユウリとアヤセ。
二人だけでも、未来に帰す事が出来たのだろうか。ひょっとしたら・・・
すぐに悪い方に傾こうとする考えを振り払うように、竜也は自分の腕を見た。
そこには本来あるべき、クロノチェンジャーが無い。
代わりのように装着されているのは、Vコマンダー。追い求めた力に裏切られ、凶弾に倒れた滝沢直人に最期に託された物。
『浅見、おまえは変えてみせろ』
事切れる寸前、直人が残した最期の言葉。
立ち止まり、竜也はVコマンダーを握り締めた。

――お前の言った通り、俺は明日を変えてみせる。直人――

噛み締めるように決意を確かめる竜也の前方、一本の木の陰から人影が飛び出した。
ふいの事に、竜也は思わず身構える。
飛び出してきたのは、一人の少女だった。
目に涙を溜め、竜也の前で立ち竦むと、後ずさり肩を抱えしゃがみ込んだ。
「いや、殺さないで・・・」
身構えた姿が、殺意があるように見たのだろうか、震えだした彼女の姿に、構えを解くと竜也はそっと近づいた。
「ごめん。君に何かをするつもりは無かったんだ。ただちょっと驚いただけで」
しゃがみこんだ彼女に目線を合わせるようにかがむと、恐怖に凍りついた少女の表情が僅かに変化する。
その表情の変化に安堵しながら、竜也は言葉を続けた。
「俺は、浅見竜也。竜也でいいよ。君は?」
少女は、まだ震えの残る声で答えを返す。
「菜月。間宮菜月


デイバックを両手で抱え込み、じっと座り込む菜月に、自分のバックから取り出したペットボトルの一本を手渡すと、竜也は隣に腰掛けた。
「じゃあ、菜月ちゃんの仲間は皆、ここに来てるんだ」
問いかけに菜月は、こくりと頷く。
「真墨と、蒼太さんと、チーフに、さくらさん」
「チーフ?」
「えーと、あ、明石暁!」
「・・・まさか、今、名前が思い出せなかったとか?」
心外な、とでもいうように大きく首を振る。だが、その顔は少し赤くなっていた――案外、図星だったのかもしれない。
顔を赤らめたからだろうか、まだ固さは残っていたが、張り詰めた糸のようだった表情が、わずかに緩む。
「俺は二人。ドモンとシオン。それに知り合いが一人、巽マトイという人なんだけど――」
「きゃっ!!」
急に、菜月のデイバックが動き出したかと思うと、昔話にでてくるようなランプが飛び出した。
竜也は思わず受け止めると、手にしたそれをまじまじと覗き込む。
次の瞬間、蓋が跳ね開けられ、騒がしい声が飛び出す。
「旦那ー!!人が寝てる間に、閉じ込めるなんて、麗のアップルパイを全部食べた事、まだ怒っ・・・て・・・」
『猫?』
猫、としか言いようのないものが、ランプから白い顔を出した。
見つめ合う、二人と一匹。
「ハザードレベル285、プレシャス?」
混乱しながらも、妙に冷静に、アクセルラーでハザードレベルを測る菜月。
あっけにとられつつも、思わず竜也は蓋を閉めた。
「またそれ、って閉めるニャー!!俺様はスモーキー。魔法猫だ。そっちの黄色いのは会った事あるのに忘れたのか?」
閉められた蓋を跳ね除けながら、ランプ猫、スモーキーは菜月に話し掛けた。
「知り合い?」
ランプを手渡しながら、問い掛ける竜也に菜月は首を振る
「知らない。ひょっとして、昔の菜月と会った事あるの?」
「昔?」
スモーキーはいぶかしげに答えを返した。
「菜月、二年以上前の記憶が無いの。もし、何か知ってるなら教えて、猫さん」
「教えてって、知ってるのは黄色いのが、ボウケンイエローだって事ぐらいしか・・・」
「でも、菜月、イエローになってから、猫さんと会った事無いよ」
菜月とスモーキーが噛み合わない会話を続け、なぜ、こんな所にいるのか不思議がるスモーキーに竜也がロンの事を話していた時、
急に暗いばかりだった夜空に光が差した。
西の方で火の手があがった事を確認すると、竜也は逡巡した。
本来なら、仲間が戦っているかもしれない場所に駆けつけたい。だが、状況も分からない場所に菜月を連れて行くわけにもいかなかった。
会話の中で、彼女がボウケンジャーという戦隊のメンバーであり、戦う力を持ち合わせている事は聞いていたが、
先程の様子を見る限り、今の彼女が戦えるとはとても思えなかった。だからといって、そんな彼女を放り出して行くわけにもいかない。
炎を見つめながら、思い悩んでいた竜也は菜月に袖を引かれた。
「竜也さん、あそこへ行こう!真墨達か、竜也さんの仲間が戦ってるのかも知れない!」
思いがけない彼女の言葉に驚く。
「平気?」
まだ、目の奥に怯えの残る彼女に、その目を覗き込むようにして尋ねた。
菜月は、両手を握り締めた。
「・・・がんばる!!だって、菜月、強き冒険者だもん!」
「おう、旦那と麗達を探すついでに、俺様が黄色いのを守ってやるぜ!」
「黄色いのじゃなくて、菜月だよ。猫さん」
「だったら、猫って呼ぶな。黄色いの」
「また、黄色いのって言ったー」
子供のように言い争う菜月達を宥めながら、竜也はデイバックを手に取る。
「分かった。信じるよ。菜月ちゃん」

向かうは、B-5エリア。西へ旅立つ彼らを待つのは、果たしてどのような運命なのだろうか――


【浅見竜也@未来戦隊タイムレンジャー】
[時間軸]:Case File 49(滝沢直人死亡後)
[現在地]:B-6森林 1日目 深夜
[状態]:健康 広間にドモンとシオンが居た事へのとまどい 
[装備]:Vコマンダー
[道具]:確認済み、ペットボトルのうち1本は菜月に渡しています。
[思考]
第一行動方針:仲間を探し、ユウリとアヤセの安否を確認する
第二行動方針:菜月の仲間を探す
備考:クロノチェンジャーは、ロンが取り上げました。
   他の参加者のバックの中か、どこかに隠されているかは不明です。

【名前】間宮菜月@轟轟戦隊ボウケンジャー
[時間軸]:Task14後
[現在地]:B-6森林 1日目 深夜
[状態]:健康。まだ僅かに怯えあり
[装備]:アクセルラー、スモーキー@魔法戦隊マジレンジャー(ボウケンジャーVSスーパー戦隊、後)
[道具]:未確認、竜也のペットボトル1本
[思考]
第一行動方針:仲間たちを探す
第二行動方針:竜也の仲間を探す

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最終更新:2018年02月11日 01:20