果てなき希望
「
城戸真司。次はお前だ。」
神崎が無表情でそう告げる。どうやら、あいうえお順で呼ばれているらしい。
俺は「き」だからすぐに名前を呼ばれることになった。
俺の前に蓮、浅倉、北岡さんも出発してる。もうこの部屋には顔見知りは居ない。
- 無残にも殺されてしまった佐野の亡骸だけは例外だけど。
突然知り合いが目の前で死んだ。
確かにあいつに良い印象は無い。散々酷い目に合わされたりもした。
けど、だからって死ぬことはないって!
「早く行け。お前も奴のようになりたいのか?」
そう言って神崎は首から先が無くなった佐野の亡骸を指差した。
何とも言えない怒りが込み上げて来る。
だけど、込み上げてくる怒りの中でも一つだけハッキリしてることがあった。
それは俺が普段思ってることと同じ。なんの因果かは知らないけど、
俺はこういう出来事にばかり巻き込まれてる気がする。
なら何度だって俺は同じ事をしてやる。こんなの間違ってるから。
「神崎・・!俺は絶対に戦わないからな。こんな戦い、俺が止めてやるよ!」
静かなホールに俺の声が響き渡った。しかし目の前に居る神崎は微塵も動揺してる様子を見せてない。
横に積まれてるバッグを手に取る。案外重い。
絶対に止める。こんな戦い。
みんなだってそう思ってるさ。神崎の思い通りにさせてたまるもんか。
その瞬間、眩い光に包まれる。
「な、何だ!?」
気がついてみれば砂浜、どこかの海岸に立っていた。
辺りを見回してみてもホールなんか見当たらない。
目の前には漆黒の闇に照らされた海だけが広がっていた。
静かな空間に波音だけが響く。
良く分かんないけど・・ワープしたのか?
ってことは皆とはバラバラの場所に居るってことだろう。
「参ったなぁ。これじゃ合流しようにも・・。」
思わず腕組みして考え込んでしまう。
どうしたもんか・・。
取り敢えずは荷物を確認してみるかな。バッグに何が入ってるかも気になるし。
何も分からない状況だけに迂闊なことは出来ないよな、うん。
「カードデッキは俺が持ってる・・後は・・。」
「手を挙げなさい。こっちは拳銃を持っているわ。」
肩に下げていたバッグに手を掛けたその時、後ろから声を掛けられた。
女のひとの声。背中に何かを突きつけられる。
も、もしかしてコレ・・マジに銃じゃないか!?
「あ、怪しい者じゃ無いです!俺はただ戦いを止めようと・・」
撃たれたりでもしたらシャレになんないっしょ!と、とにかく手を挙げないと・・!
背中を圧迫する感覚に心臓が跳ね上がる。慌てて手を挙げた。
「信じられないわね。とにかく持ってる物を全て渡しなさい。
そうすれば危害は与えないから。」
未だに姿すら見れてないものの、従うしか道は無い。
肩に下げていたバッグと手に握っていたカードデッキを砂浜に落とした。
「・・そのまま動かないで。動いたら撃つわよ。」
どうやら荷物を拾っているらしい。ゴソゴソと物色する音がする。
暫くすると音が止まった。・・・信じてくれたのか?
「特に問題は無さそうね。良いわ、こっちを向きなさい。」
どうやら信じてくれたみたいだ。背中から銃口を突きつけられている感覚が消える。
助かった~。なんだか短い時間だったのにやたら疲れた・・。寿命も大分縮まった気がする。
小さく息を吐いて、その場で一回転するようにして後ろを振り返る。
そこには銃を構えている小柄な婦警さんが立っていた。
あ!この人、見たこと有る。確か俺の少し前に出発した婦警さんだ。
衣装が目立ってたから凄く印象に残ってるんだよな。
だが、婦警さんの表情は強張っている。今にも発砲しそうな勢いだ。
- 無理もない。こんな状況に巻き込まれてしまったんだから。
俺だって明るい気分なんてなれやしない。それはみんな同じ筈だ。
「貴方、名前は?」
銃を構えたまま口を開く。答えないつもりは無いけど、拒否したらすぐさま撃たれるだろう。
「城戸・・真司。」
「貴方、あの男を知っているようだけど?」
あの男・・神崎のことだろう。アイツが現れた時、つい名前が口から出てしまった。
多分その時のことを覚えてたんだろうな。さすが婦警さんだ。
「知ってるよ。神崎のことでしょ?」
「何でも良いの、あの男について教えて。さすがの私も混乱してるのよ。
何でこんなことになったのか、あの男の目的はなんなのか。分からないことばかりで頭がおかしくなりそうだわ。」
大きなため息と共に婦警さんの口から愚痴とも言える言葉があふれ出した。
当然だよな。こんなことになって、直ぐに順応出来る奴のがおかしい。
「と、とにかく・・銃を降ろして欲しいんですけど・・。
知ってることなら全部話しますから。」
なんて言うか・・銃を突きつけられたままじゃ気が気じゃ無いって。
だが、俺の言葉を婦警さんは信じられないようだった。
「それは無理ね。貴方のこと、信じられないもの。」
即答。
う、疑り深い・・。さすが婦警さん。
でも荷物は全部渡してる訳だし、信じてくれても良いのになぁ。
真っ直ぐこっちを見つめてくる瞳は鋭い。
「俺は戦いを止めようとしてるだけです!こんな馬鹿げたこと、絶対に許せないから・・
信じてください!俺は絶対に殺しあったりしない!」
両手を挙げたまま叫ぶ。何とも情けない姿だろう。
蓮や北岡さんが見たら間違いなく馬鹿にするだろうな。
でも、これだけは譲れない。戦いを止める。
こんなことで人が死ぬなんて有っちゃいけないんだ。その気持ちに嘘なんて無い。
どうか信じて下さい、婦警さん。
「・・貴方、まるであの子みたいだわ。まさかここにも同じような人間が居るなんてね。」
銃が降ろされた。願いが叶った。険しかった表情に温かなものが宿る。
この人、こんな顔出来るんだな。当然といえば当然だけど、
でも何だか凄く嬉しかった。その笑顔を見た瞬間、直ぐに悪い人じゃないって分かったし。
きっとこの人も無駄な争いは望んでなんか無いんだ。
同じ道を歩んで行けるはず。そう確信してる。
「信じてあげる。その眼と同じ眼をした人間を私は知ってるから。」
「婦警さん・・。」
「
小沢澄子。婦警さんは止めて頂戴?城戸君。」
二人の表情は一転して明るくなる。さっきの緊張状態が嘘みたいだ。
取り敢えずは神崎のことを教えないとな。
小沢さんからも色々教えてもらいたいし。力を合わせれば何か良い考えだって浮かぶさ。
「よろしくお願いします、小沢さん。」
神崎の目的。もし、あいつが何か企んでるとしたら・・。
優衣ちゃんを蘇らせるつもりなんだと思う。
神崎、どうしてそれが分からないんだよ。
小沢さんの笑顔を見ながら、俺は何だか泣きそうになってしまった。
絶対止めてみせるから。
だから安心して?優衣ちゃん。
【城戸真司@仮面ライダー龍騎】
【1日目 現時刻:深夜】
【現在地:海岸J2エリア】
[時間軸]:47,8話前後。優衣が消えたことは知っています。
[状態]:健康。小沢澄子を全面的に信頼。若干感傷的に。
[装備]:カードデッキ(龍騎)
[道具]:バッグの中は未確認。
[思考・状況]
1:戦いを絶対に止める。
2:小沢澄子と情報交換。
3:蓮たちを探す。
【小沢澄子@仮面ライダーアギト】
【1日目 現時刻:深夜】
【現在地:海岸J2エリア】
[時間軸]:G3-X完成辺り。
[状態]:健康。割と冷静に物事を捉えられます。真司より深刻な事態であることを自覚しています。
[装備]:精巧に出来たモデルガン。本物でないことを真司には明かすつもりは有りません。
[道具]:カイザポインター@仮面ライダー555
[思考・状況]
1:脱出の方法を考える、首輪の解析(道具と仕組みさえ分かれば分解出来ると考えています)
2:神崎士郎の情報を探る。
3:
氷川誠、
津上翔一と合流する。
最終更新:2018年03月22日 17:07