―漆黒の龍と鋼の猛牛と紫苑の蜘蛛と―
――――あれから、もうどれ位の時間が経っただろうか。
あの男――斬鬼と言ったか。奴を殺した後、俺は変身を解いた。
「………馬鹿め。」
そう呟いた後、先程の二人組みを追いかけるでもなく、歩いた。
ザッザッザッ……耳に入ってくる音は、自分の足音だけ。
ふと振り返れば、砂浜に残った自分の足跡が目に付く。
そして、また歩き始める。もう一人の俺を探して。
城戸真司――龍騎をもう一度俺の中に取り込むために。
こんな事を思っていると、あの時の事を思い出す。
あの時、俺は龍騎との一騎打ちに負け、死んだ。
――――――死んだ、筈だった。
気がつけば、俺は何もない空間にいた。
周りを見渡せば、紫や黒などの禍々しい色が混ざり合い、永遠に続いているようだった。
「…………迎えに来た。」
俺はその声に驚き、振り向く。
「…!?」
声の主を見た瞬間、俺は再度驚愕した。
何故ならば―――
「ついて来い。もう一度だけチャンスを与えてやろう。」
その男は誰あろう、先程消え去ったはずの神崎士郎であったのだから。
だが、ある程度予想はついていた。
「……お前、“この世界”の神崎ではないな?」
そう、この神崎は先程の神崎ではない。“別の世界”での神崎士郎だ。
どういうわけだか知らないが、俺をこの空間――異次元とも言うべき空間に引きずり込んだのだ。
「話が早くて助かる。もう一度戦いを始めるぞ。」
そうして神崎は、ライダー同士のバトルロワイアルや他の世界のライダーについて語り始めた。
俺が知っている以外にも、ライダーがいて、そいつらも招待するらしい。
「貴様にも参加してもらう。いいな。」
再度神崎は迫ってきた。
実のところ、俺は迷っている。一つの疑問があるからだ。
―考えていても、しょうがない。
そう考えた俺は、その疑問をぶつけてみた。
「………………奴は、もう一人の俺は参加するのか?」
しばらく黙った後、神崎は口を開いた。
「――――――――貴様が望むのならば。」
その言葉を聞いた途端、俺の答えは決まった。
「―――――いいだろう。その戦いで、俺は奴を倒す!!」
「………その意気だ。」
その瞬間、神埼が笑った――気がした。
そして、俺の意識はまた闇に飲み込まれていった。
次に目が覚めたとき、俺は海岸に倒れていた。
しばらく歩いていると、ドーム状の建物が立っていた。
不思議に思い、中に入れば、沢山の人が倒れていた。
ざっと数えて50人弱というところか。
男女はもちろん、40くらいの男もいれば、高校生くらいの子供までいた。
その中に一人――神崎が立っていた。
「待っていた。受け取れ!」
言うが早いか、傍に置いてあるデイパックを投げつける。
俺はそれを片手で受け止めると、挟んである紙に気がついた。
中を除いてみれば、人の名前が書いてあった。どうやら招待されたライダーの一覧表らしい。
ざっと目を通すと、ある事に気がついた。
「………俺の名前が入っていないようだが?」
そのことを口に出すと、神崎はまた笑った。
「ああ。貴様は『ジョーカー』だ。」
……?俺には神崎の言っていることが良くわからなかった。
「どういう意味だ?」
周りを見渡した後、神崎が一息ついて話し始めた。
「お前の存在が知れると、計画にいろいろと支障が出る。」
なるほど。そういうことか。
俺が納得すると、神崎は話を続けた。
「もちろんお前の存在で動き方が変わる奴もいるだろう。そいつの様にな。」
神崎はおもむろに一人の男を指差した。
その指の先には――――
「………………城戸真司………ッ」
もう一人の俺である、龍騎――本物の城戸真司が横たわっていた。
チャンスとばかりに、俺は走り出していた。だが―――
「待て。まだ戦いは始まっていない。」
神崎の、静かながら重々しい言葉に俺は思わず動きを止めた。
「さあ行け。お前は52番目のライダー、
リュウガだ。」
52番目のライダー……それもいいかも知れないな。
奴を見つめ、俺は言う。
「俺と戦うまで、そいつは生かしておけよ。」
神崎は笑いを交えて言った。
「さあな。それはそいつ次第だ。」
その言葉を聞いた俺は、柄にもなく笑ってしまった。
ふと気がつけば、さらに時間が経っていた。もう夜が明けかけているようだ。
いつの間にか樹海らしきところまで来ている。
運がいいことに、誰にも出会うことなくここについたようだ。
そして、幸運はもう一つあった。
誰かが残したデイパックがあった。しかも二つ。
そういえば、自分の持ち物の確認をしていなかったな。
そんなことを思いながら俺は、確認の意味も込めてその二つのデイパックと自分のデイパックの中身を見てみることにした。
まずは自分の中身をのぞいてみた。すると―
「……何だコレは?」
自分の予想に反して、一台のカメラが入っていただけだった。
他によく探したが、他に何も入っていなかった。
「…………ハァ…………」
大きなため息をつくと、置いてあるバッグを漁ってみた。
此方には缶詰や米、ミネラルウォーターや冷凍食品が入っていた。そして救急箱も入っていた。
「随分いろいろと入っているな……まぁ役に立つからいいが。」
そういいながら、食料を自分のほうに移すと、デイバックの下に硬いものがあるのに気づいた。
「……………………?」
恐る恐るバッグをどかすと、予想だにしないものがあった。
「…………拳銃?」
拳銃だ。しかも、弾が一つ欠けている。
もしやと思い、辺りを見渡せば……
「…………」
先程は暗くて気づかなかったが。死体が転がっていた。
即頭部に傷。おそらくこの銃の持ち主が撃ったのだろう。
女性のようだ。調べていると、『岬ユリ子』と書かれた名刺と、一本のペンが出てきた。
「岬……どこかで……」
そこまで口にして思い出した。確かリストに載っていた。
リストを広げ、名前を見つける。
「丁度いい。ペンを手に入れたところだ。」
『岬ユリ子』の欄に線を引く。そして――――
「城戸真司…………」
奴の名も見つけた。体の底から色々な感情が沸々とわき上がって来る様だ。
思わず顔を顰める。
「…………この手で必ず…………っ!」
決意を改め、このペンや拳銃もデイバックへ入れる。
そして最後のデイパックへと手をかける。
中身は何の変哲もなく、食料とコンパスだけだった。
空になった二つのデイパックを投げ捨て、歩き出そうとした。
その瞬間、彼女の死体が目に入った。一瞬迷ったが、俺には関係ない。
再び俺は歩き出そうとする。だが――
「俺は一体何をしているのだ……」
俺は、彼女を弔っていた。何故こんな事をしなければならないのか俺にも判らない。
ただ……何故だかしなければならないような気がした。
遺体を埋め終わり、その辺にあった木の枝で十字架を作り、尽き立てた。
「なぜ、俺はこんな事を……」
誰もいないのに。話したってわかるわけないのに。俺は口に出す。
「――――あらあら、お前がそんな事言うなんて……」
その声に驚き、身構えながら振り返ると、二人組みの男達が立っていた。
「まるで墓を立てるのがおかしいみたいな言い草だねえ。お前なら『墓を立てるのは当たり前だ~』位、平気で言いかねない癖に。」
「北岡さん、この人と知り合いなんですか?」
北岡…………どうやら片方の男の名前らしい。
「ああ。こいつは俺の親友さ。なぁ城戸?」
こいつ……俺とあいつを間違えている。
(ここから北岡視点)
ここで城戸と出会うなんて、俺も運が悪い。。
俺の本当の目的がばれてしまうかもしれない。
だが人のいい城戸のことだ――
「ああ。こいつは俺の親友さ。なぁ城戸。」
こう言えば少しは乗ってくれるはず。
だけど――俺の予想は、悪い意味で外れた。
「奴の知り合いか……」
奴?奴って誰?
「それより、ここで叫び声が聞こえたはずだけど。何か知らない?」
問いかけた途端、城戸が視界から消えた。
そう思ったのが早いか、感じたのが早いか。兎に角、俺の首を城戸がつ絞めて上げていた。しかも左手で。
こいつ、こんなに力強かったっけ?いや、こんなことはどうでもいい。
何かがおかしい。こいつに俺に牙を向ける度胸なんてないはず――
一体、こいつに何があった?この状況でおかしくなったか?
てか、こんな力入れられたら、首輪が壊れるっての!
俺、こんな状況でも冷静だな。そういう俺もどっかおかしいのかな?
「……おまえっ……何……か…………おかしい…………!?」
言葉が途切れ途切れになりながら、俺はあることに気付いた。
城戸がいつも来ているあの青いジャンパー。
あれには左肩にワッペンがついているんだが――てか、何で俺こんなこと知ってるんだろ?
・ ・
あのワッペンがついていない。いや、厳密には、右肩についている。
いや、それだけじゃない。服装から髪型、何から何まで左右逆なのだ。
そのことに気付いた途端、俺は気がついた。
・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・
こ い つ は 城 戸 真 司 じ ゃ な い 。
単なる憶測だが、コレなら先程までの奇行も説明がつく。
それなら遠慮はいらない。ここぞとばかりに俺は
「……ウ…………ラァッ!!」
俺はフルパワー(といっても過言ではないくらいの)力で相手の腹を蹴りとばした。
「グッ…………」
奴は少し怯み、その隙に俺は腕から抜け出した。
だが見直せば、相手はもうなんでもないといった感じではないか。
「大丈夫ですか!?首の周りが…………」
上城君が駆け寄ってきてくれた。
言われて気がつくと、どうやらすごい力で締め付けられていたようだ。
首の周りが真っ赤だよ。あー気持ち悪い。
「…………変身」
俺たちの会話を遮る様に放たれた言葉は、俺たちのよく知る言葉だった。
二人して振り向くと、漆黒の龍騎士が立っていた。
その姿は、龍騎によく似ていたが、体は漆黒に彩られていた。
「上城君……用意は、いいかな?」
俺は立ち上がりながら声をかける。
「……はいっ!」
上城君も、威勢のいい返事で返してくれる。
二人同時に構える。そしてベルトが装着される。
徐々にポーズをしていき、
二人同時にその言葉を言い放つ。
「「変身!!」」
カシャーン!<Open up>
カキーン!カキーン!シャキーン!
並び立つのは二人のライダー。
目の前にいるライダーとの、戦いの火蓋が切って落とされた――――
「とりあえず、名前位は聞いておこうかな。お宅の名前は?」
相手は、静かに答えた。
「…………リュウガ。」
「ありがとう。俺はゾルダ、そっちはレンゲル。よろしく。」
名乗り終わった時点で、俺は威嚇も意味を込めて弾を二、三発撃ち込んだ。
相手――リュウガに命中し、煙が上がる。手ごたえは――ない。
案の定、煙が晴れるとそこには何もいなかった。
周りを見渡す。もちろん上城君もだ。
だが見つからない。気配すら感じられない。
逃げたのか?そんな馬鹿な。
「北岡さん!上!」
上城君の声に驚き見上げると、リュウガが、はるか上空に見えた。
奴は――飛んでいる!
あわてて奴のいた場所を見ると、とても深いくぼみができていた。
あいつ、足の力だけであそこまで飛んだよ。どんな足しているんだか。
そうすると、おもむろにデッキからカードを引き抜き、バイザーに装填する。
―STRIKE VENT―
俺たちに似ているが、バイザーの音声が少し濁っているな。
そうこうしているうちに、奴の手に龍の頭を模した篭手が装着され、漆黒の龍が後ろにいた。
俺は直感的に感じた。
不味い――――!
「上城君!よけて!」
とっさに上城君に呼びかける――
「はっ、はい!」
上城君も危機を感じたのか、即座にその場から離れる。
俺も全力で離れる――が、装甲が重くて、あまり早く走れない。
「ハァァァァァァァ…………ダァァァァッ!!」
リュウガがその篭手を突き出す。それと同時に、漆黒の竜が黒き炎を吐き出す。
やられる――覚悟した瞬間、俺は誰かに突き飛ばされた。
「上城君!?」
そう、上城君が俺のことを突き飛ばしたのだ。
そのことで、俺は森の茂みの中に、上城君は奴の真下に倒れる形となった。
「上城君!上城君!!上城く――」
その状態のまま、あの炎は彼の頭上に降りかかった――
目が覚めると、変身が解けていた。
周りを見渡す。あの攻撃は、見た目ほど威力がなかったようだが、それでも周辺の木々は黒焦げていた。
「――――!」
咄嗟に上城君のことを探す。
すると、上城君はすぐに見つかった。
黒焦げの中、傷だらけで横たわっていた。
「上城君……?……上城君!上城君!!」
俺はすぐに傍に駆け寄った。
「ウ…………ウゥ………………」
時々苦しそうに呻く。まだ息はあるようだが、この傷だ。
早く何とかしなくては、この子の命が――――――――
そこまで考えた瞬間、恐れていたことが起こった。
奴が――――リュウガが降りてきた。
万事休すか――そう感じたが、奴は予想を上回る行動を起こした。
なんと、俺たちの目の前で、変身を解いたのだ。
俺の思考が止まっていると、奴がデイパッグの中から救急箱を取り出し、俺たちのほうに投げ捨てた。
「使え。まだ間に合う。」
そういうと、奴は歩き始めた。
ようやく俺の思考が戻り始めたころ、俺は立った数秒の出来事なのに疑問で頭が破裂しそうになった。
だが――こんな事をしている余裕はない!
「待て!」
思わず、奴を呼び止める。
「何故、こんな事を?」
俺の中の一番の疑問を投げかけた。
すると奴は振り返り、こう答えた。
「…………さあな。気まぐれという奴さ。」
そう言って、奴は立ち去ってしまった。
俺は、とりあえず上城君の傷を治すことにした。
【
北岡秀一@仮面ライダー龍騎】
【2日目 現時刻:早朝】
【現在地:樹海B-8エリア】
[時間軸]:本編終盤辺り。
[状態]:手負い。でも軽傷。
[装備]:不明。(袖口に隠し持てる。多分武器)
[道具]:不明。+リュウガから受け取った救急箱(元は岬ユリ子の道具)。
[思考・状況]
1:とりあえず上城君を何とかしなければ。
2:何故あいつはこんな事を?
3:……城戸たちとでも合流してみるか。
【
上城睦月@仮面ライダー剣】
【2日目 現時刻:早朝】
【現在地:樹海B-8エリア】
[時間軸]:本編後。
[状態]:背中に大火傷。早めに手当てしないとヤバ目。
[装備]:ディスカリバー@カブト
[道具]:不明。
[思考・状況]
1:意識を失っているため不明。
2:同上。
3:同上。
【リュウガ@仮面ライダー龍騎】
【2日目 現時刻:早朝】
【現在地:樹海B-8エリア】
[時間軸]: 劇場版登場時期。 龍騎との一騎打ちで敗れた後。
[状態]:健康。
[装備]:ファイズショット@555
[道具]:拳銃(元は明日夢の物)
[思考・状況]
1:もう一人の自分と融合し、最強のライダーになる。
2:殺戮を繰り返す。
3:何故、俺はあんなことを……
最終更新:2018年03月22日 23:18