冬が終わった。春が来た。ただそれだけで自分は鳥のように空を舞う事も容易くできそうな気持ちになれる。
この頃は人々の服装も身軽になり、晴れやかだ。
電車内もちらほら人がいる程度で、過ごし易い。ボックス席はなく、全席向き合うタイプの車両は、目前に向かいの車窓が広がる。
空はついつい見上げたくなるほど青く美しい。勿論倉田敏郎も例外でなく、気もそぞろにがたんごとんと揺られている。
敏郎の向かいに、一人の青年が座った。脱いだ学ランを手に持ち、白いシャツに薄いベージュのカーディガンを羽織っている。
「た、武士…」
弟は座るなり文庫本を開いた。兄の存在など眼中にない。敏郎も鞄を漁ったが、集中出来るものはなさそうだった。
美しい風景をバックに読書へいそしむ弟を眺めるしかなかった。
しばらく経つと、車内が混んできた。わらわらと人が替わると、武士の隣に女子高生が座っていた。
女子高生だ。
敏郎の隣はまだ空いていたが、次の駅でそこも埋まった。
サラリーマンである。
そこから更に20分先の、終点が倉田家の最寄り駅だ。
席がなく立っている人々の間から、うとうとと船をこぐ女子高生が見えた。
彼女の隣は、やっぱり武士だった。時折もたれてくる女子高生の隣にいる弟が、堪らなく羨ましかった。そのポジションにそ知らぬ顔で自然といる弟が、少し憎くもあった。
窓の外では桜吹雪が川に落ち、濡れぼそっていた。
この頃は人々の服装も身軽になり、晴れやかだ。
電車内もちらほら人がいる程度で、過ごし易い。ボックス席はなく、全席向き合うタイプの車両は、目前に向かいの車窓が広がる。
空はついつい見上げたくなるほど青く美しい。勿論倉田敏郎も例外でなく、気もそぞろにがたんごとんと揺られている。
敏郎の向かいに、一人の青年が座った。脱いだ学ランを手に持ち、白いシャツに薄いベージュのカーディガンを羽織っている。
「た、武士…」
弟は座るなり文庫本を開いた。兄の存在など眼中にない。敏郎も鞄を漁ったが、集中出来るものはなさそうだった。
美しい風景をバックに読書へいそしむ弟を眺めるしかなかった。
しばらく経つと、車内が混んできた。わらわらと人が替わると、武士の隣に女子高生が座っていた。
女子高生だ。
敏郎の隣はまだ空いていたが、次の駅でそこも埋まった。
サラリーマンである。
そこから更に20分先の、終点が倉田家の最寄り駅だ。
席がなく立っている人々の間から、うとうとと船をこぐ女子高生が見えた。
彼女の隣は、やっぱり武士だった。時折もたれてくる女子高生の隣にいる弟が、堪らなく羨ましかった。そのポジションにそ知らぬ顔で自然といる弟が、少し憎くもあった。
窓の外では桜吹雪が川に落ち、濡れぼそっていた。