1UP





忍者。
―それは日本の歴史に刻まれた伝説的な存在である。
 彼らは巧妙な戦術と驚異的な技巧を持ち合わせ、暗殺や諜報活動をまるで職人のように淡々と行う。
その素顔は闇に紛れ、表舞台には決して姿を現さない。
彼らの存在は、まるで夜の風のように不可視で、そして突如現れては消え去る。

 時は尾張の世。
分裂した国を統一しようとする大名たちが争い、情報戦が日常の風景となっていたこの時代にて、暗躍していた忍者の一族が在った。
 名は【真庭忍軍十二頭領】。
この人格破綻な忍者集団によって殺められた君主たちは数知れず。現代でいうところのすなわち、マッドマーダー集団。

 真庭 白鷺――。彼も気狂い忍の頭領の一人。
物語は、ある夜の出来事から始まる。
彼は唐突に『殺し合い』という危険な任務に強制参加させられてしまった。
 首が爆発した見せしめ…、脳をぶちまける少年、
そして狂気の中で舞い踊る血の匂い…、『FINAL WARS』の開幕。
 冷徹に場を見つめる彼だが、心中は疑問や苦悩などで激しく感情が渦巻いていた。
 この物語は、鮮やかな忍術の華やかなる舞台裏と、主人公の内なる闘いを描き出す。
そして、過酷な運命に立ち向かう一人の忍者の姿に、読者の心が引き込まれていくのである―――…。

(※←)
「!!!!ーーーーーーーーーアアアハッハッハッハッーハ!
 ッい良がる知い思力実の軍忍庭真ら我!
 ぐたたいてせら乗にい合し殺はれお!
 …い白面ククック!!…クククク…!!!!ーーーーーーーーーアアアハッハッハッハッーハ!」


 刀語番外編・真庭忍軍奮闘絵巻。
“さかさ忍者”真庭白鷺 殺しの流儀。
始まり始まり。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆

砂漠の広がる過酷な環境で、3人の姿が揺れていた。

「ねぇーーー、兵長、お腹減ったんだけど。もうないのぉ?」
「…テメェ…骸骨野郎の分まで食ってよくそんなことほざけるな……。」

先頭を歩くのは“兵長”と呼ばれた男リヴァイ・アッカーマン。
巨人討伐調査兵団の兵士長で「人類最強の兵士」と讃えられている、実力面だけ見ればファイナルウォーズ優勝筆頭候補の男だ。
その後ろでハグハグッと缶詰を食べ歩くは、浴衣が映える少女・フウ。
金欠の長旅を行っているため飢えに飢えていた彼女は、支給食料である異臭料理(ナナチごはん)をさも美味そうにかき込んでいた。
そして隣を歩くもう一人の少女が、

「そうだそうだー。いじきたない!この ぶたおんな め!」
「あーーーーー!豚扱いされたー!恵比寿の癖に!ムカつく~~~~っ!」
「くくく。フウ、ぜったい あたまわるい。くくく。」

クスクスと体を震わせる魔法使いの娘・恵比寿だ。
ドクロのマスクを被り、全身を黒で塗り固めた服に身を包んだ異様な風貌をしている。
彼女が背負っているのは大きなカバンからは、もぞもぞと何か生き物が動いている。

彼女らは特別結託した仲間でも、知り合いでもない。
集められた世界もバラバラでこの会場で初めて顔見知りになった同士だ。
そんな3人が共に行動をしている理由は単に「ゲームに参加する気0」という基本思考が一致したからである。

「…ところでテメェ、よくあの缶詰食えたな。あんな酷ぇ見た目で、しかも巨人の臭ぇ口ン中みてぇな臭いのをよ…。」
「えー?私的には全然ご馳走様でした☆、って感じだけどなー。兵長食わず嫌いよくないよー?全然いけたもん!」
「ぷくく。フウ、 なまゴミたべて あとで おべんじょいき。くく。」
「もうっ!また恵比寿ムカつくこと言って―!なんでも食べることはサバイバル精神で大事なんだからぁー!」
「ばかじた! あのかんづめ 100パーセント くさってる!かくていな!」
「ふーんだ、勝手に言っとけばぁ!そう好き嫌いだから恵比寿はおチビで貧相な体なんだよーだ!」
「「……なっ」」
「なんだとおーーーーーっ!わたしは バストまわり100cmの グラマーだぞーっ!この!」
「何言ってんのよバカ!小学生かっ!!」
「…テメェら本気でうるせぇ……。」

夜の砂漠にて、くだらなくてチープな無駄話がダラダラと続く。
時折、砂漠の風が吹き抜け、小さな砂塵が彼女らの足元を舞い上がる。
しかし足取りは揺るがず、決して立ち止まることはない。
彼女らの様子はまるで下校中の小学児童たち。殺し合い中だなんて微塵も感じさせない和気藹々さだ。

「あっそうだ!ねぇ兵長、向日葵の匂いのするお侍さんって知ってたりする?」
「…ぁ?知らねぇよ。…テメェ、『巨人の臭ぇ口ン中みてぇな臭い』でその話連想したのか……」
「くく。へーちょ、フウに また あきれる。」
「そっか…、知らないかー。 
 私ちょっとその人に因縁…みたいなのがあるから聞いたんだけ…

 ―――っ!!!」

敵襲。
突如、前方から勢いよく鋭利な刃物が飛来する。
刃物は容赦なく空気を切り裂き、一行に直撃することを狙っていた。
しかし、リヴァイの素早い動きと優れた剣技が、石の脅威をかわす。
剣は軌跡を描いて風を切り、飛来する刃物を叩き落とした。
突如として先ほどまでの空気が乱れた。リヴァイは戦闘態勢に入りあたりを隈なく見回す。

「…チッ、冗談じゃねぇ…。殺し合いなんてくだらねぇモンに乗りやがって…!」

砂塵が舞い上がる真夜中の荒野。
いくら見渡せども攻撃者の姿は見当たらない。
得体の知れない襲撃者と死闘の始まりに緊張感が漂う。
ふと、フウは先ほど叩き落とされた刃物を見つめる。
和の国日本に生まれ、江戸の浮世で育った彼女だからこそ、唯一その“刃物”の正体に気づいた。

「えっ?これって“手裏剣”?」
「んっ?なに?しゅりけん…?」
「うん、そうよ!これ忍者が使う投擲武器の…」

(※←)
『――――?ぜるやてしに後最番一はのす殺に美褒御、んゃち嬢のこそ。答名ご、うほ』

「「「ッ!」」」

先ほどまで誰もいなかった先方に人影があった。
まるで砂漠の夜に溶け込むように身に纏う闇の衣服、鳥のシラサギがデザインの被り物をするその男。
襲撃者の“忍者”が今、姿を現した。
夜風が砂を運び、砂漠の地が静まり返る。それは激闘の始まりを告げる前兆だった。

「…テメェか。荒野の決闘ってわけだな。…来い、一発で斬ってやる。」

(※←)
「。などけだんーつっ『鷺白のり喋さ逆』称通。だ鷺白庭真、人一が領頭二十軍忍庭真はれお―ぜうらもてせら乗名?
 よなる乗に子調で度程たっ遮剣裏手がかた。…が僧小、っふ」

「ッ…………」

(※←)
「かえね方仕は合場のこ、あま―よどけだ話いしかず恥ものてっる入這らか襖と々堂が者忍」

「……………………あーーっ……あ?」
「え?なんて?」

(※←)
「。―は法忍の鷺白庭真、えねたっ参?
 いかのいた見を法忍のれおになんそ、たんあもとれそ。
 かえねゃじうまちっなくし寂、よえねゃじんすとかし、いおいお」

「テ……テメェ…」

忍者は溢れんばかりの殺気を纏いつつ、腰に差してる鞘から刀を抜き取る。
物凄く訛っているのだか、異国の言語を使っているのだか解せぬが、その口から発せられるマシンガントークは底の知れぬ不気味さを醸し出していた。
ゆらりゆらりと距離を縮めていく。

(※←)
(!っぜるやてじん先らか共期同の庭真てっ残ち勝、い合し殺のこ)

このファイナルウォーズ最初の死闘が間もなく始まる―――。

…はずだったのだが、

「何言ってやがるコイツ………ッ?」
「ぷっ…!
 あーはっはっはっはっはーーーーーー!!!!はははーーー!何喋ってるか全然わっかんない!
 なにあいつーーーーーーーっ?!あははははーーはははっはっはーーーーーーー!!」

説明しよう。
忍者・真庭白鷺は「さかさ言葉」でしか話すことができないかなり奇特な人間である。
そのため、彼が口を開くことは緊張感やシリアスなムードをぶち壊すのを意味するのだ。

(※←)
「???!っいお!?かのぇてれさ殺?だんがやてっ笑にな、いおいお?!………」

「だーひゃひゃひゃひゃっーーーーーーーー!!あのばか なに いってるのかわからない!!!」
「も、もう!恵比寿笑いすぎっ…
 いひひ…あーはっはっはははーーー!!お腹痛い…ひっひっひーあははははーーー!!!」
「……しょうもねぇ。」

涙を浮かべながら地面に転がり笑う恵比寿とフウ両名。
構えを解きため息をするリヴァイ。
そして、ただ呆然とする忍者。
警戒すべき人間から一気に嘲笑の対象へと格落ちしてしまった白鷺であるが、本人はそんなの知ったことではない。
怒りが限界な白鷺は、凶刃を振りかざし、怒涛のように爆笑する少女らに襲いかかる。
彼の目は血走り、憤慨が全身を支配していた。

(※←)
「!!!!!っーーーーが者弱薄神精いしかおになんそがにな」
「…あばよ、馬鹿が」

勝負が決まったのはわずか0.89秒。
リヴァイに剣できれいに20等分された白鷺は、その肉片で荒野の砂を真っ赤に染め上げた。

「うわ グロッ、うぷっ…! げろげろげぇぇぇ~~~~~~~~っ…………」
「あはははは…。――って、うわっ!!恵比寿吐かないでよ!きったない!」

【真庭白鷺@刀語 死亡確認】
【残り81人】




◆◆◆◆◆◆◆◆◆


……
………
(な…なんなんだ…?この暗い場所は…?か、体が動かねぇ…。)

(おれは一体どうなってやがる…!?)

(ま、ま、まさか…おれは死んだっていうのか…!?あ、あの陰険な目をしたクソ小僧なんかに敗れて…?い、いつの間にぃいい…!?)


(……真庭忍軍十二頭領のおれが、こんな所で………?)


――…っと恵比寿!なにしてんのよ?
――……っく…。ちょっと したい かんさつちゅう。…うぷっ
――…鹿じゃないの?!何のためにさ!ほんと恵比寿って馬……

(声が聞こえる…。この声はさっきの生娘共っ…!?な、なにしてやがるんだ…)

(あぁーっ!見えねぇ…!何も見えねぇ…っ!!)

――…っとけ、さっさと海行くぞ……。
――…比寿、先行ってるからねー!悪趣味な遊びもほどほどにしなさいょ……
――…ンフン~♪ バラバラ ばか きたない にくへん~♪ ツンツンツン~♪……

(…小僧!!待ちやがれっ!ま、まだおれとの勝負はついちゃあいねぇってんだよ…っ!)

(ていうかなんだ悪趣味な遊びって!?なんだツンツンって??!おれの死体で何してやがんだ生娘……!)

――…ゲロッ。ぐあい わるくなってきた。もう こんなのみるの よそうか。
――…ょっとまって、フウにへーちょ~。
――……って、あっ。“キクラゲ”………。っ!!
――…こらっ!キクラゲ、なに “まほう” つかってんだ。

(クソッ…クソッ…何たる屈辱…。)

(って…あぁ??…キクラゲ??生娘なにと話してんだっ…?)

――…わあわわ…。まずい。さいあくだああ。“さいせい” はじまっちゃう…
――…のバカキクラゲ!
  …あーーーーーーーーーっ、もう、おしまいだ~~~。

(………再生…?いったい何をして……何が起きていやがるんだ………)

―――その時、白鷺は今まで体感したことのない妙な感覚に襲われた。
腕、肘、肩、首…各関節がゆったりと満たされてゆく――。
上手く言葉に言い表せないが、白鷺はつかの間の癒しと表現できる安らぎに包まれていた。
やがて、真っ暗だった視界は明るみを取り戻し、機能を停止していた肺は酸素を求め動きを再開する。
意識と感覚を取り戻した白鷺は、先ほど同様の真夜中の荒野を目に映した。

(※←)
「…!!!っっあわぐふ」

「うわ もう さいあく。」

◆◆◆◆◆◆◆◆◆

――――蘇生。
一度死んだ者は生き返ることはできない。
死の不可逆性は人間の心に深い傷を刻む。
それは刹那の出来事であるかのように感じられるが、その影響は時を超えて続く。
時が人々の傷を癒すことはあっても、失われた存在を蘇らせることは不可能である。
だからこそ人は死を恐れ、殺し合いを恐れ、自分や愛すべき者が安全に生き抜く道筋を正確に進もうとする。

――――だが、もしも生き返らせる力があったとしたら…
そんな倫理観を超越した未知の力が存在するのならば。
誰もがその力に取り憑かれることだろう。

恵比寿が元居た世界は魔法使いの街だった。
火を噴く魔法、相手の傷をなくす魔法、透明になれる魔法、などまるで個性のように1人1人に魔法能力が備わっていた世界なのである。
恵比寿の支給品は猫の“キクラゲ”。
覆面レスラーのような赤いマスクを被る妙な姿の猫であったが、何もおかしいのは見た目だけではない。
キクラゲには「死者を生き返らせる魔法」を持っていたのだ。

(※←)
「!っえ言を的目?ろだんたれくてし治がたんあ。るかわはにれお。たけ助をれおぜなたんあ…」

「おいキクラゲ!きまぐれで よけいなこと しやがって!」
「ふにゃ~~ん…」

恵比寿の言う通り、キクラゲはなんとなくで生きている動物だ。
地面に落ちていた赤黒い肉に興味を抱き、うっかり魔法を使ったまでに過ぎない。
しかしながら、この『魔法』にて、対象である白鷺の心情は大きく揺らいでいたのであった。

(※←)
「。だんてえねんかっわケワもれお直正。よんもえねしかしカバぇねもつてとてんな当手通普。
 だんたしとうそ殺をらたんあはれお…」
「あー…。なんか はなしてるし。わかったから だまれ バカ!」

(※←)
「!!れくてっ使てしと棒心用をれお。
 娘生、なたっ言てっ寿比恵。
 だんもす通を筋はこそえいはと員一の団集殺暗の悪醜道外らくい!…ぇねけいといなさた果に対絶は恩のこがだ」

『生き返らせてくれた御恩は絶対に果たす。』
『だから俺を用心棒としてお供させてくれ――』といったところか。
白鷺の心は忠義の精神を宿していた。
外道に魂を売った忍者が「復活」という未知の体験を経て改悛したのである。
彼は殺意など皆無のまなざしで、君主となった恵比寿の両手を握る。
――彼女を護衛するために。

「は?はは?はあ?バカ!な、なにをするっ?!」

肝心の忠誠心が恵比寿に全く伝わっていないのは玉に瑕だが。

(※←)
「主・恵比寿。命令とありゃなんなりと申し付けてくれや。」
「わっ!きゅうに ふつうに しゃべんな!バカっ!」

(※←)
「すまねぇ…、割と頑張ってるんだが逆さ言葉を戻すのは難しぜたんもいし難ぃ………!!っ~~~糞わるぎす変大」
「わわっ!バカのやつ また、もとの もくあみ に…。」

(あっ、このバカ もしかしたら カンタンに りようできる かも。なんか めいれいしろ とか いってるし。ぷくく…)

頭が悪い恵比寿だがなんとなく状況が理解できたのであろう。
骸骨マスクの下でニヤニヤと笑みを浮かべながら、『命令』を下すべく近くに落ちてあった枝を拾い上げた。
足元ではキクラゲがゴロゴロと喉を鳴らしている。

「とりあえず このえだ ひろってこい!キクラゲと きょうそうだ!
 わかったか!バカいぬ!
 いけーーーーーーーーーーーー!」

(※←)
「!っーーーー意御」

そう言うと恵比寿は枝を向こう遠くへポーンッと放り投げる。
命令に従い、その身を一瞬にして遠くへ飛び去る白鷺はまるで飼い主に忠実な犬のようだったが、キクラゲは猫らしく気ままに欠伸をするだけであった。

【真庭白鷺@刀語 死亡確認は誤報】
【訂正:残り82人】
ーあなたをちょっと強くする。1UPー

【D1/砂漠/1日目/深夜】
【真庭白鷺@刀語】
[状態]:健康
[装備]:手裏剣、刀@現実
[道具]:食料一式(未確認)
[思考]基本:恵比寿に恩を尽くす。
1:枝を取りに行く。
2:おれは恵比寿に忠誠を誓う…!

【恵比寿@ドロヘドロ】
[状態]:健康
[装備]:キクラゲ@ドロヘドロ
[道具]:なし
[思考]基本:とにかく生き残りたい
1:バカ(白鷺)をとことん利用
2:あれー?そういえばへーちょたちどこ行ったんだ?
3:キクラゲにイライラ

※特殊アイテム『キクラゲ@ドロヘドロ』
死者蘇生の魔法を持つ猫です。
損壊の激しい死体(ミンチ状、焼死体など)には原作同様効果がありません。
ちなみに、蘇生はキクラゲの完全気まぐれで行われるので飼いならさない限り自由に扱えません。
回数制限は特にありませんが、あまり酷使をするとやつれます。
(補足すると、『魔法』は指や口から出てくる煙のようなものです。キクラゲは口から黒い煙を出します。)

【D1/砂漠/1日目/深夜】
【リヴァイ・アッカーマン@進撃の巨人】
[状態]:健康
[装備]:立体起動装置@進撃の巨人
[道具]:なし、その他未確認
[思考]基本:即刻帰還
1:殺し合いなんてせず帰る。
2:邪魔する奴は始末する。

【フウ@サムライチャンプルー】
[状態]:健康、やや空腹
[装備]:不明
[道具]:なし、その他未確認
[思考]基本:生きたい、向日葵の匂いのする侍を探したい
1:リヴァイについていく。

※二人の行く先はお任せします。

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003:シン・海より深い父の愛 004:フューチャークロちゃん
真庭白鷺
恵比寿
リヴァイ
フウ

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最終更新:2023年09月27日 19:03