アットウィキロゴ
新漫画バトルロワイアル
掲示板 掲示板 ページ検索 ページ検索 メニュー メニュー

第二回放送 小さな神の傲慢な掌

最終更新:

Bot(ページ名リンク)

- view
だれでも歓迎! 編集

第二回放送 小さな神の傲慢な掌 ◆L62I.UGyuw



変声期前の少年独特のソプラノが、場違いなほど朗らかに島に響く。

『皆さん調子はどうですか? これから第二回目の放送を始めます。
 今日は良く晴れたいい天気……とはちょっと言えませんよね。
 さっきまではともかく、今は随分雲が増えちゃいましたし。
 まるで皆さんのこの先の運命を暗示しているみたいで……おっと、これは余計なお世話でしたか。
 何にせよ、これからの天気には注意した方がいいかもしれませんよ。
 …………さてと、それじゃ、そろそろ本題に入りましょうか。
 えーと……あ、そうだ、その前に。まぁ大したことじゃないんですけど。
 今回の放送からは、最初に進入禁止エリア、次に死亡者を発表することにしました。
 え? 何でって?
 どうも最初に死んだ人の名前を言うと、何故か進入禁止エリアの発表を聞き逃す人がいるみたいなんですよね。
 全く、困ったことだと思いませんか?
 知らずに進入禁止エリアに入ってドカン、なんて死に方は皆さんもイヤでしょ?
 僕らとしてもそういうのは面白くないので、これからはそこのところを配慮しようってことです。
 それじゃ、早速今から進入禁止エリアと死亡者の発表を始めますので、聞き逃さないように注意して下さいね。

 …………まず新しい進入禁止エリアは

 13:30からD-6
 15:00からG-2
 16:30からH-7

 です。ちゃんと書き取りましたか?
 あ、近くにいる人たちは、なるべく早めに避難した方がいいと思います。

 …………次は今回の死亡者ですけど


 以上20名です。
 なかなか順調ですね。
 ちなみに……お仲間を後ろから刺すつもりの人は、そろそろタイミングを考える頃合でしょうか。
 あんまり慎重になり過ぎて、自分が先に殺されちゃうなんてのは馬鹿馬鹿しいですものね。
 さて、それでは皆さん、引き続き頑張って殺し合って下さい』

ブツリ、と。若干のノイズを残して、傲慢な放送は終わった。


※1:実際にはフルネームが読み上げられています。


*****


道化師が一人、闇の中に音も無く浮かび上がった。
そして十歳くらいに見える男の子の背後から声を掛ける。

「随分と楽しそうですね、セリム・ブラッドレイ。いえ、『プライド』と呼ぶべきでしょうか?」

驚く素振りも見せず、悠然と振り返る少年。
白いワイシャツの上にネクタイを締め、その上から薄茶のベストを着ている。
その一つ一つは地味だが高級そうで、そのせいか、いやに大人びて見える。

「どちらでも構いませんよ。それに、私は与えられた役割を全うしようとしているだけのことです。
 ――ところで、貴方は傍観者に戻るのではなかったのですか、申公豹?」

幼い声。だが老獪さを感じさせるその言い回しは、放送時のそれとはまるで異質だ。
それもそのはず。この少年こそが、七つの大罪の名を冠するホムンクルスの一にして彼ら全ての兄、『プライド』なのだから。
正確には、少年の肉体はセリム・ブラッドレイという名を持つプライドの器に過ぎないのだが。
申公豹は大きく見開いた目をそのままにクスリと微笑む。

「そうですよ。ですからこうやってあなたの仕事振りを眺めに来たのです」

その声は平坦で、プライドにすら真意を悟らせない。
飄然とした申公豹に対して――プライドは気に入らない、と言いたげな雰囲気で煽るような表情を見せた。



「そういえば――聞きましたよ。貴方がた、何でも『彼』に勝負を挑んだとか」

申公豹の瞳の奥に極微の揺らめきが生まれ、だがそれは刹那の間に内なる深淵に呑み込まれた。

「勝てるとでも、思っていたのですか?」

疑問ではなく嘲笑。
七つの大罪。
その一つ、『傲慢』を体現するホムンクルスは、最強の道士に対しても自らを曲げることなく傲然と言い放った。
対する申公豹は、さてどうでしょうとその挑発染みた言葉を軽く受け流す。

「本気で勝てると思っていたのなら、貴方は格好通りの道化者ということになりますね」

更に追い撃ちをかけ、それでも変わらない申公豹の態度を見たプライドは、す、と表情を消して矛先を変える。

「ああ、そうそう。せっかくなので訊いておきます。彼らの居場所を知りませんか?
 何故か先程から姿が見当たらないのですが」
「王天君でしたら、フラスコの中は気分が悪いと言い残して『外』へ。
 かの騎士は『彼』と共に。他の方は判りません」
「ふうん……そうですか……」

周囲の闇が密度を増す。比喩ではない。事実――闇は蠢きながら申公豹を押し潰さんと徐々に四方から迫って来ている。
全方位から押し寄せる圧力。並の人間なら身動き一つ取れなくなるであろうそれを受けて、しかし申公豹は困ったような顔で頬を掻くのみ。
ギョロリと。そんな彼の目の前に、人の身長ほどもある巨大な目が開いた。
気付けば、床に、天井に、幾つもの目と口が出現している。
セリムの体は既に闇に呑まれて見えない。

「……申公豹。貴方、何を企んでいるんですか?
 いえ、貴方だけではありませんよね? わざわざ私の感知範囲外でコソコソと……。
 いいですか、申公豹。処分されたくなければ大人しく役割を果たせと、そう彼らに伝えなさい」

恫喝。
その物言いに、申公豹は無言で露骨に不快感を示す。
空気の絶縁を破る音と共に右手の雷公鞭が明滅し、瞬きの間だけ申公豹の姿を照らし出した。
僅かに漂うオゾンの臭い。

「私は命令されるのが嫌いなんですよ。心配ならご自分でお伝えなさい」

プライドに負けず劣らずの傲慢な発言に、蠢く闇が更に深みを増す。
一触即発。張り詰めた空気が臨界に達しようかというまさにそのとき、

「面白そうな話じゃのー。儂も混ぜてくれんか?」

緊張感をブチ壊して、人を小馬鹿にした声が響いた。
床の闇の一部が盛り上がり、小さな人の形に収束して行く。
そしてオリエンタルな印象を与える衣装を纏った幼女――ムルムルの姿になった。
予期せぬ闖入者に、毒気を抜かれた様子で闇を引っ込めるプライド。

「ムルムル。貴女ももう少し真面目にやって頂きたいのですが」

不満を口にするプライドに対して、ムルムルは手に持った餅を頬張りながら軽い調子で語り出す。

「そんなにカリカリするでない。何が起ころうとも、所詮全ての因果は儂等の掌の上。
 そうじゃろう? 分かったら餅でも食ってその眉間の皺を取るが良い」
「結構です。……まあ、いいでしょう。定められた運命は水面に映る月影のようなもの。
 水面をいくら波立たせたところで、月を消し去ることなど誰にも出来はしないのですから」


*****


幕間。

暗闇に一人佇む道化師の背に、何処からか無機質な光が当たっている。

「さて皆さん。
 楽しい楽しいサーカスもそろそろ半ばに差し掛かろうとしています。
 心を打つ悲劇がありました。腹を抱える喜劇がありました。そして手に汗握る戦いがありました。
 命の輝きとは、それがどのような種類のものであれ、実に心を打つものです。
 ですが――ここまでの出し物は演目の通り。『彼』はきっとそう言うことでしょう。
 しかし」

一旦言葉を切り、道化師はくるりとこちらを向いた。

「我々が道標を討ち滅ぼしたように、彼らならば真実の月を穿つことも出来るかもしれません。
 果たしてこれは私の買い被りでしょうか?」


時系列順で読む


投下順で読む

タグ:

+ タグ編集
  • タグ:
最近更新されたスレッド
ウィキ募集バナー